デジタル大辞泉
「時」の意味・読み・例文・類語
じ︻時︼
﹇名﹈
1 時間の単位。1時は一昼夜の24等分の1で、1分の60倍、1秒の3600倍。記号h
2 特定の時刻。特定の時間。﹁ラッシュ時﹂
﹁初夜の―果てむほどに﹂︿源・夕霧﹀
﹇接尾﹈助数詞。時刻を表すのに用いる。﹁七時﹂
[類語]分・秒
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とき【時】
(一)〘 名詞 〙 知覚された事物を配列する尺度の一つ。過去・現在・未来と連続して、止まることなく戻ることなく、永遠に流れ移ってゆくと考えられ、空間と共に認識の最も基本的な形式をなすもの。物事の変化・運動を通して感知され、一般には年・月・日・時・分・秒などの単位を用いて表わされる。
(二)[ 一 ] 時間の流れをさしていうことば。時間。光陰。
(一)[初出の実例]﹁妹が見しやどに花咲き時は経ぬ吾(わ)が泣く涙いまだ干なくに﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶三・四六九)
(二)﹁時過ぎ時きたりよふよふと来る﹂(出典‥雑俳・柳多留‐二四︵1791︶)
(三)[ 二 ] 客観的に定められた時法︵単位と尺度︶によって示される一昼夜のうちの一時点。時法には時代によって変遷があるが、大別して定時法と不定時法とがあり、そのそれぞれにまた多くの種類があって、明治初期までは同じ時代にも複数の時法が行なわれるのがつねであった。時刻。辰刻(しんこく)。刻限。
(一)① ひろく、いずれかの時法で示される一時点。
(一)[初出の実例]﹁又皇太子、初めて漏剋(トキのきさみ)を造る。民をして時(とき)を知ら使む﹂(出典‥日本書紀︵720︶斉明六年五月︵北野本訓︶)
(二)﹁かねはときをしらするためにつく﹂(出典‥幼学読本︵1887︶︿西邨貞﹀二)
(二)② ＝こく︵刻︶[ 二 ]①(イ)・②(イ)
(一)[初出の実例]﹁それのとしのしはすのはつかあまりひとひのひのいぬのときにかどです﹂(出典‥土左日記︵935頃︶承平四年一二月二一日)
(四)[ 三 ] 時間の流れの一部分、または一点をさしていう。
(一)① 特定の事物の生起・事象の推移などに対応して意識される時間の一点。時点。
(一)[初出の実例]﹁時守(ときもり)の打ち鳴(な)す鼓数(よ)み見れば辰(とき)にはなりぬ逢はなくもあやし﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶一一・二六四一)
(二)﹁戸おしあけて、念数するほどに、時は、山寺、わざの貝、四つふくほどになりにたり﹂(出典‥蜻蛉日記︵974頃︶中)
(二)② 時代。年代。世。
(一)[初出の実例]﹁いにしへの神の時より逢ひけらし今の心も常忘らえず﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶一三・三二九〇)
(二)﹁いづれの御時にか女御更衣あまたさぶらひ給けるなかに﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶桐壺)
(三)③ 時節。季節。時候。
(一)[初出の実例]﹁農作(なりはひ)の節(とき)車駕(きみ)未だ以て動きたまふ可からず﹂(出典‥日本書紀︵720︶持統六年三月︵北野本訓︶)
(二)﹁時は春、日は朝(あした)、朝は七時、片岡に露みちて﹂(出典‥海潮音︵1905︶︿上田敏訳﹀春の朝)
(四)④ その時点。現在。当座。
(一)[初出の実例]﹁池辺大宮治二天下一天皇大御身労賜時、歳次丙午年﹂(出典‥金銅薬師仏造像記︵法隆寺所蔵︶‐丁卯年︵607か︶)
(二)﹁されば連歌は歌などにかはる事也。只其の時に人のもてあそぶ風体を賞すべし﹂(出典‥十問最秘抄︵1383︶)
(五)[ 四 ] 順当な時機、然るべき機会などをさしていう。
(一)① ( ﹁秋﹂とも書く ) ふさわしい時期。時宜。ちょうどその時。また、そうしなくてはならない時期、時間。
(一)[初出の実例]﹁天の時(とき)未だ臻(いた)らずして﹂(出典‥古事記︵712︶序)
(二)﹁更に一策を案出して時(トキ)こそ来(きた)れと待ち受けて居た﹂(出典‥園遊会︵1902︶︿国木田独歩﹀二)
(二)② 時運にめぐまれ栄えている時期。勢い盛んな時代。得意な時。
(一)[初出の実例]﹁山城の久世の社の草な手折りそ わが時と立ち栄ゆとも草な手折りそ﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶七・一二八六)
(二)﹁時なりける人の、にはかに時なくなりてなげくをみて﹂(出典‥古今和歌集︵905‐914︶雑下・九六七・詞書)
(三)③ 陰陽道で、何か事を行なうに適当な日時。暦の吉日。
(一)[初出の実例]﹁今日はよき日ならむかしとて、暦のはかせ召して、ときとはせなどし給ほどに﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶葵)
(四)④ 天台・真言などの密教で行なう、定時の勤行(ごんぎょう)。時の修法(ずほう)。→時(じ)。
(一)[初出の実例]﹁二十七日結願なるべきを、その夜行幸にて侍しかば、暁の御ときをひきあげて﹂(出典‥弁内侍日記︵1278頃︶建長元年五月)
(五)⑤ 仏教での食事。→とき︵斎︶。
(六)[ 五 ] 行為や状態を表わす連体修飾句を受け、形式名詞として用いる。
(一)① そうする場合、そういう状態である場合、の意を表わす。後の文に続く場合、接続助詞のようなはたらきを兼ねる。場合。ほど。折。
(一)[初出の実例]﹁沖つ鳥 胸見る登岐(トキ) 羽(は)叩(たた)ぎも これは相応(ふさ)はず﹂(出典‥古事記︵712︶上・歌謡)
(二)﹁人、恒の産なきときは、恒の心なし﹂(出典‥徒然草︵1331頃︶一四二)
(二)② ﹁…するときには…する﹂の形で同じ動詞を受ける。
(一)(イ) ( 意図的動作の動詞を受けて ) 普段はその動作をあまりしないが、し出すと普通の人以上に集中的にする、の意を表わす。﹁彼はああは見えても勉強するときには勉強する﹂
(二)(ロ) ( 非意図的動作の動詞を受けて ) まわりからの働きかけとは無関係に十分…する、の意を表わす。﹁ただの風邪なら薬など飲まなくても治るときには治る﹂
(七)[ 六 ] 時制(じせい)のこと。多く﹁文法上の時﹂﹁動詞の時﹂などの形で用いられる。
時の語誌
時法の主なものを挙げると(1)律令時代には陰陽寮所管の漏刻︵水時計︶を用いて時を計り、鼓や鐘を打って時を告げることが行なわれた。定時法で一昼夜を十二辰刻(しんこく)に分け、それを十二支に配して表わした。真夜中︵正子(しょうし)︶が子(ね)の刻で鼓を九回打ち、丑(うし)の刻に八回、寅(とら)の刻に七回、以下一辰刻ごとに打数を一回ずつ減らして、巳(み)の刻に四回打つ。真昼︵正午︶は午(うま)の刻で鼓の打数は再び九回にもどり、以下同様に一回ずつ減らして亥(い)の刻に四回打つ時法であった。なお、鼓の打数に合わせて、九つ…四つとも呼んだ。
(2)江戸時代には日の出・日没を基準にした不定時法が広く用いられ、夜明け︵明け六つ︶から日暮れ︵暮れ六つ︶までの昼間と、日暮れから夜明けまでの夜間とを各六等分した。このため四季によりまた昼夜により、一辰刻の時間は一定でない。時刻の呼び方は前代と同様で、九つ・九つ半から四つ・四つ半まで。また、一夜を初更︵戌︶・二更︵亥︶・三更︵子︶・四更︵丑︶・五更︵寅︶と五分し、または甲夜(こうや)・乙夜(いつや)・丙夜(へいや)・丁夜(ていや)・戊夜(ぼや)と呼ぶ別称もある。
(3)明治六年︵一八七三︶改暦以後は平均太陽時を用い、一日を二十四等分するが、日付が昼間に変わることを避けて、平均太陽が観測地の子午線を通過する時刻を零時とする天文時より一二時間早い真夜中を零時として起算する常用時が採用され、一般には二四時を午前・午後の各一二時に分けて呼ぶ。
じ︻時︼
(一)[1] 〘 名詞 〙
(一)① とき。時刻。
(一)[初出の実例]﹁Ii(ジ)。トキ﹂(出典‥日葡辞書︵1603‐04︶)
(二)② その頃。機会。おり。
(三)③ ある特定の時刻。特に、仏道の勤行(ごんぎょう)の時刻、またその勤行をいう。
(一)[初出の実例]﹁加持すこしして︿略﹀しばしさぶらふべきを、時のほどにもなり侍りぬべければ﹂(出典‥能因本枕︵10Ｃ終︶三一九)
(四)④ 特に仏教で、存在をして三世の時間的差別を生じさせるものを仮に立てるときの時をいう。その梵語は kāla ︵迦羅︶で、samaya ︵三摩耶︶と区別する。︹大智度論‐一︺
(二)[2] 〘 接尾語 〙
(一)① 一昼夜を六分した、晨朝(しんちょう)・日中・日没・初夜・中夜・後夜の六時。また朝夕に二分して二時という。
(一)[初出の実例]﹁昼夜の六時のつとめに、みづからの蓮の上の願ひをば﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶明石)
(二)② 時間の単位。一昼夜を二十四分したものの一つ。六〇分。古くは一昼夜を十二分したものの一つ。明治初期には﹁字﹂を当てることが多かった。
(一)[初出の実例]﹁あか月九のはんしほとに御まいりにて、︿略﹀七時に夕かたのくこともおなしくまいる﹂(出典‥御湯殿上日記‐文明一三年︵1481︶二月二三日)
(二)﹁時計ではかれば四字三ミニウト斗りなる﹂(出典‥西洋道中膝栗毛︵1870‐76︶︿仮名垣魯文﹀六)
(三)[その他の文献]︹周礼‐秋官・司寤氏︺
どき︻時︼
(一)〘 造語要素 〙 ( 名詞およびこれに準ずる語に付いて )
(二)① 時刻、時間、時期の意を表わす。﹁夜明けどき﹂﹁昼どき﹂﹁四どき﹂﹁今どき﹂など。
(三)② 特に、上にくる語の意味する行動をとるのに最適の、または都合のよい時刻・時期の意を表わす。﹁ひけどき﹂﹁花見どき﹂など。
さだ︻時︼
(一)〘 名詞 〙
(二)① とき。機会。→さだすぐ。
(三)② 男女の盛りの年頃。壮齢。としごろ。→さだすぐ
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
時
とき
東流する牧(まき)田(だ)川の流域一帯をさす広域通称名。中世には北の多(た)良(ら)地区を含め土岐多良庄として推移し、近世にも時村という支配単位または通称名として存続する。慶長四年︵一五九九︶の諸大名・旗本分限帳︵内閣文庫蔵︶に関一政知行分として土岐多羅三万石とみえる。同六年の高木四家知行書立︵市田文書︶には時村二千一七五石余とある。慶長郷帳には土岐村二千一九四石余とあり、旗本高木貞友︵東高木家︶・同貞俊︵北高木家︶・同貞盛︵西高木家︶の知行となっている。元和二年︵一六一六︶の村高領知改帳でも同三家の知行分として村名が記される。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
時【とき】
辰刻とも書く。日本の時刻の単位。日本で完全な形で知られる最古の時刻制度は延喜式で，1日を12時，1時を4刻に分け，時は十二支で表した。一部宮中のみで用いられたものとはいえ，定時法であり，日本で創案されたものと考えられている。各時に鼓鐘を打って知らせたが，その音の数が江戸時代に入って九つ〜四つという時の呼称になった。江戸時代には不定時法︵太陽の出入の時点を基準にして昼夜の時間を等分する制度︶で行われ，また時の真中を半と呼び︵たとえば九つ半︶，1時を4分割︵子の一つ，丑の三つなど︶または3分割︵上刻，中刻，下刻︶し，また時を刻とも呼んだ。
→関連項目干支｜時刻
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
時 (じ)
hour
時間の単位で，記号はh。1h＝60min＝3600sと定義される。国際単位系︵SI︶以外の単位であるが，SIと併用される単位となっている。
執筆者‥大井 みさほ
時 (とき)
〈時間〉あるいは〈時刻〉の意。各項を参照されたい。
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
じ【時】
時間の単位。記号は﹁h﹂。1時間は1秒の3600倍、1分の60倍。
出典 講談社単位名がわかる辞典について 情報
世界大百科事典（旧版）内の時の言及
【時間】より
…世界におけるすべての変化および無変化において保持されている何ものかを時間と呼ぶ。一面から言えば，時間はまた人間と外の世界との接点に現れるものでもある。…
【時刻】より
…移りゆく時の一つの点を時刻という。時刻と時刻との間の時の長さを時間という。…
※「時」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」
