おでん
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/ca/Oden.jpg/220px-Oden.jpg)
おでん︵御田︶は、日本料理のうち、煮物料理の一種。
鰹節、昆布等で出汁を取り、醤油等で味付けしたツユに、コンニャク、大根、ゆで卵など様々な具材を入れて煮込んだ料理である。具材の種類は地域や家庭によって異なり、非常に多岐に渡る。
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屋台のおでん鍋。具のバリエーションは豊富である
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おでんの屋台
煮物としては珍しくファースト・フード的な性格を持ち、冬の食物として好まれる。﹁おでん屋﹂と称される小さな一杯飲み屋で酒の肴として供されていることも多い。
かつては、屋台の﹁おでん屋﹂が夜になると町中に店を出して酔客の憩いの場となり、また駄菓子店や食堂などの店先におでんの大鍋を置き、七輪やストーブなどで日がなぐつぐつと煮込んでいる素朴な風景も方々で見られたが、いずれも1980年代以降は廃れつつある。
代わって近年、冬季になるとコンビニエンスストアが電熱式のおでん鍋を置いておでんの煮売りをするようになった。これは一般にも好評で広く定着しており、セブン-イレブンなどのように現在では冬のみならず、一年中おでんを用意しているコンビニも見られる。
煮込み済みのおでん種をつゆごとレトルトパックにした商品も多く売られている。変わり種としては名古屋市の天狗缶詰が缶詰﹁おでん缶﹂を製造しており、秋葉原などの自動販売機で売られている。
名称
室町時代に出現した味噌田楽、田楽と言われる食物が原型である。古く田楽と呼ばれた料理には、現在の味噌田楽および田楽である具を串刺しにして焼いた﹁焼き田楽﹂のほか、具を茹でた煮込み田楽があった。のち、煮込み田楽が女房言葉で田楽の﹁でん﹂に接頭語﹁お﹂を付けた﹁おでん﹂と呼ばれるようになり、単に田楽といえば焼き田楽をさすようになった。その後、江戸時代にそれまでの溜りから濃口醤油が発明され、醤油味の濃い出汁で煮た﹁おでん﹂がつくられるようになった。それが関西に伝わり﹁関東炊き﹂、﹁関東煮︵だき︶﹂と言われる。︵広東煮という説もある︶おでんは江戸では廃れ、関西では昆布で出汁をとったり、薄味にしたりと工夫されたのだが、関東大震災の時、関西から救援に来た人たちの炊き出しで、おでんを﹁関東炊き﹂としてだされることがあり、その後、東京でもおでんが復活するが、関西風のおでんが主流になる。もともとの﹁関東炊き﹂︵濃い醤油味︶は、老舗の味として関西で残っていることもあるし、東京でも一度は消えたが江戸の味はこうだったらしい、ということでつくっている店はある。 なお、1937年︵昭和12年︶発行の﹁軍隊調理法﹂︵旧日本陸軍の調理教本︶においては、本項で述べるおでんが﹁関東煮﹂と表記されており、別途﹁肉味噌おでん﹂として田楽風の料理が記載されている。 通常のおでんとは異なった種類のおでんとして、コンニャクのみを具とする﹁こんにゃくおでん﹂︵﹁味噌おでん﹂とも呼ばれる︶がある。だし汁ではなく湯で煮込んで熱くしたコンニャクに甘い味噌ダレを付けて食べる淡白な食品で、古い時代の煮込み田楽の遺風を残している。![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/db/Yataioden.jpg/180px-Yataioden.jpg)
地域性
日本では麺類のつゆに代表されるように、一般的に関東では濃い味付け、関西では薄い味付けが好まれるとされているが、おでんに関しては別で、関東では薄味、関西では濃い味が好まれる。関西では現在、濃い味のものを関東煮と呼び、薄味のものをおでんと呼ぶ傾向がある。薬味は全国的に練り辛子が主流だが、ネギだれを用いる地域もある。 ●長野県 - 飯田地方では、醤油の出汁で煮た一般的なおでんに、みじん切りにしたネギを醤油に漬け込みネギのエキスにより粘り気の出たタレをかけて食べる。人気の具は豆腐である。 ●静岡県 - 静岡市葵区の繁華街にはおでん店だけが軒を連ねる飲食店街があったり、多くの駄菓子屋でもおでんを販売している。また静岡県のおでん自体も濃口醤油を使い牛スジ肉でだしを取った黒いつゆが特長で、はんぺんは焼津産の黒はんぺん、すべての具に竹串を刺してあるのが特徴で、上に﹁だし粉﹂と呼ばれるイワシの削り節や鰹節、青海苔をかけて食べる。これは﹁静岡おでん﹂(発音は静岡市周辺での﹁静岡﹂の読まれ方にならって﹃しぞーかおでん﹄)と呼ばれている。 ●愛知県 - 地元のどて煮をヒントに八丁味噌をベースにした﹁味噌おでん﹂がある。ダイコン、こんにゃく等の定番の具の他に豚バラ肉が入っている。味噌味の染みた卵をご飯の上に乗せて食べるのが特徴。 ●兵庫県姫路市 - からしの代わりにしょうが醤油をかけて食べる。 ●香川県 - うどん屋では、必ずと言っても良いほど副食として販売されており、客は注文したうどんが出来上がるまでの間などに、甘辛い味噌をつけて食べる。このおでんに使われるダシはうどんに使うダシと共通であることが殆どである。 また、関東を中心に﹁京風おでん﹂﹁京おでん﹂という名称で、薄味のダシのおでんを出す店があるが、京都のおでんに独自性があるわけでもなく、何をもって﹁京風﹂とするかの定義もあいまいである。同じことは、﹁京風うどん﹂﹁京風ラーメン﹂﹁京風スパゲティ﹂にも言える。販売形態
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代表的な具
●大根 - 厚切りにして皮を剥いたもの。ほぼ全国共通で用いられる。 ●茹で卵 - 鶏卵やウズラの卵 ●コンニャク - 黒・白の板状に加え、おでん特有の青海苔・ごま・ゆず・一味などの団子状の物もある。 ●しらたき - 糸こんにゃく。結んで食べやすい形にする。 ●厚揚げ ●がんもどき ●牛スジ - ぶつ切りにしたものを串に刺して供されることが多い。主に関西。 ●さつまあげ ●信田巻 - 野菜を油揚げで包む。 ●昆布 - 出汁を取った後の昆布を取り出し、結んで具として活用する。 ●蛸 - 足の部分を用いるが、おでんの具としては、小さいイイダコが丸々串に刺さっている場合も多い。主に関西。 ●ちくわ ●つみれ ●すじ - 鮫、ぐち等の白身魚の練り物で出来た、魚肉ソーセージの様に上下が閉じてある帯状で、必要な長さに切って鍋に入れる。カットした断面は六角形に近い。 関西の具で﹁すじ﹂と言えば牛スジを指す事が多い。 ●うずら卵巻き ●イカ巻き ●ゴボウ巻き ●ウィンナー - 洋風おでんとして扱っている店もある。 ●ウィンナー巻き ●餃子︵焼売︶巻き ●はんぺん ●真薯揚げ︵しんじょあげ・しんじょうあげ︶ - 海老を磨り潰して卵白と混ぜて揚げたもの。同様に海老の変わりにイカ・かに・ほたて等を用いたものがある。 ●じゃがいも ●ニンジン ●つくね ●加賀巻 - キャベツを中心とした野菜がさつま揚げ状に揚がったもの。同様に紅生姜・枝豆・たこ・イカげそ等がそれぞれさつま揚げ状に揚がったものもある。 ●バクダン - 茹で卵を魚の練り物で包んだ物。主に関西。 ●コロ - 鯨の皮から鯨油を絞った残りを乾燥させたもの。以前は関西のおでんには欠かせない具であったが、捕鯨禁止以降は一部の高級店でしか口に出来ない。 ●さえずり - 関西特有のネタで、鯨の舌を乾燥させたもの。 ●豆腐 - 主に関西。︵焼き豆腐の方が多い︶。 ●ちくわぶ - ちくわ型をした生麩の一種。東京おでんには欠かせない。 ●巾着 - 油揚げの中に餅等の具を入れ、かんぴょう等で口を縛った物。 ●テビチ - 豚足。沖縄のコンビニエンスストアで確認されている。 ●なると - 静岡では一般的。 ●黒はんぺん - 静岡おでんに入れる焼津名産の魚のすり身。 ●つぶ貝 ●キノコ - エリンギ、マイタケ、ブナシメジなどを使う。 ●厚焼き - 焼き蒲鉾の一種で原料に玉子が含まれている。 ごくまれにトマトが入っている店もある。日本国外のおでん
元来は日本でだけ食べられていたが、併合時代に台湾や朝鮮半島などにも広まり、現地では今でも日本語の﹁おでん﹂の名称で親しまれている。韓国では練り物を醤油ベースの出汁で煮込んだものを一般にオデンといい、日本のように他の具が入ることはまずない。台湾語では﹁黑輪﹂と書いて﹁オレン﹂と発音する︵台湾語は濁音のダ行がなく、ラ行になった︶。台湾のコンビニエンスストアや屋台などでは﹁関東煮﹂として広く売られている。 上海の日系コンビニエンスストアなどでもおでんが売られているが、日本のコンビニおでんと異なり、串に刺し、使い捨てのコップに入れて売るという違いがある。上海では﹁熬点﹂とかいて﹁Aódiǎn﹂と発音するが、語源は日本語の﹁おでん﹂である。 タイの日系コンビニエンスストアでもおでんが人気となっており、ほぼ日本と変わらないスタイルで供され、好評を博している。関連項目
- 紀文食品
- 味噌田楽
- 片岡鶴太郎 - 一時期、熱いおでんを頬張る芸を持っていた。
- おでんくん(リリー・フランキーの絵本作品)
- 神奈川県小田原市 - 町興しの一環として、毎年10月におでん祭りを開催している。
- チビ太