「ユグドラシル」の版間の差分
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[[ファイル:Yggdrasil.jpg|thumb|250px|北欧神話における世界図<br>中心の木がユグドラシルである。<br>﹃[[スノッリのエッダ]]﹄の[[英語]]訳本︵[[1847年]]︶の[[挿絵]]。]]
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'''ユグドラシル'''︵[[古ノルド語]]: {{lang|all|Yggdrasill}}, {{IPA|ˈyɡːˌdrasilː}} |
'''ユグドラシル'''{{Sfn|谷口|1973|p=10}}︵[[古ノルド語]]: {{lang|all|Yggdrasill}}, {{IPA|ˈyɡːˌdrasilː}}{{Efn2|[[二重子音]]は子音を長く発音する{{Sfn|下宮|金子|2006|p=22}}。}}︶は、[[北欧神話]]に登場する1本の[[架空]]の[[木]]。'''ユッグドラシル'''、'''イグドラシル'''とも表記する<ref>{{Cite web|和書|url = https://kotobank.jp/word/イグドラシル-30227 |title = 世界大百科事典 第2版の解説 |publisher = コトバンク |accessdate = 2018-03-25 }}</ref>。
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[[世界]]を体現する巨大な木であり、[[アースガルズ]]、[[ミズガルズ]]、[[ヨトゥンヘイム]]、[[ヘルヘイム]]などの[[九つの世界]]を内包する存在とされる。そのような本質を捉えて英語では "{{sname||World tree}}" |
[[世界]]を体現する巨大な木であり、[[アースガルズ]]、[[ミズガルズ]]、[[ヨトゥンヘイム]]、[[ヘルヘイム]]などの[[九つの世界]]を内包する存在とされる。そのような本質を捉えて英語では "{{sname||World tree}}"、[[日本語]]では、'''[[世界樹]]'''︵せかいじゅ︶{{Efn2|世界樹と呼ばれるのはユグドラシルだけではない。マヤの文化では60mにもなる[[セイバ]]が世界樹と考えられている。宇宙は枝の天界、幹の地界、根の地下界に分かれていて、天界は13あり、太陽、月、金星などや神々が住む。地界は人間界。地下界は9層あり、一番下に死の神がいる。3つの界はまた東西南北の4つの方位に分けられる。その世界の中心に母なる大樹、聖なる樹、緑のセイバの世界樹が生えている。その枝は天界まで延び、その根は地下界まで延びている。[[ティカル]]の[[ピラミッド]]もセイバの木をモデルにしている。}}、'''宇宙樹'''︵うちゅうじゅ︶と呼ばれる。
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[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]の楽劇『[[ニーベルングの指輪]]』における「[[神々の黄昏 (楽劇)|神々の黄昏]]」の冒頭「ワルキューレの岩」で、第一の[[ノルン]](運命の女神)が「一人の大胆な神が水を飲みに泉にやって来て 永遠の叡智を得た代償に片方の目を差し出しました そして世界樹の[[セイヨウトネリコ|トネリコ]]の木から枝を一本折り その枝から槍の柄(つか)を作りました 長い年月とともに その枝の傷は 森のような大樹を弱らせました 葉が黄ばんで落ち 木はついに枯れてしまいました」と歌う。 |
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== 呼称 == |
== 呼称 == |
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=== 原義 === |
=== 原義 === |
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Yggdrasill<!-- |
Yggdrasill<!--︵{{IPA-all|ˈyɡːˌdrasilː}}, ユッグドラシル︶--> という名前の由来には諸説あるが、最も有力な説ではその原義を "Ygg's horse" ︵恐るべき者の[[ウマ|馬]]︶とする。"Yggr" および "Ygg" は主神[[オーディン]]の数ある異名︵[[ケニング]]︶の一つで ︵[[wikt:cf.|''cf.'']] [[w:List of names of Odin|en]]︶、Drasillは'''[[オーディン]]の馬'''を意味していると解釈されている。
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=== 日本語名 === |
=== 日本語名 === |
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[[ファイル:AM 738 4to Yggdrasill.png|thumb|170px|ユグドラシルと、そこに棲みつく様々な生き物達<br |
[[ファイル:AM 738 4to Yggdrasill.png|thumb|170px|ユグドラシルと、そこに棲みつく様々な生き物達<br>[[17世紀]]、[[アイスランド]]の[[写本]]﹃[[AM 738 4to]]﹄の中の1図。]]
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[[日本語]]名は、引用先の言語の違い |
[[日本語]]名は、引用先の言語の違いと仮名転写の際の言語的揺らぎにより、"Ygg-" が「ユッグ」「ユグ」「イッグ」「イグ」に、"drasill" が「ドラシル」「ドラジル」にそれぞれ読みが分かれ、これらの組み合わせによって多数の異形が存在する。 |
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== 特徴 == |
== 特徴 == |
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三つの[[根]]が[[幹]]を支えている。﹃[[グリームニルの言葉]]﹄第31節によると、それぞれの下に[[ヘルヘイム]]、[[霜の巨人]]、人間が住んでいる<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄55頁。</ref>。また﹃[[ギュルヴィたぶらかし]]﹄での説明では、根は[[アースガルズ]]、[[霜の巨人]]の住む世界、[[ニヴルヘイム]]の上へと通じている<ref name="kodai236">﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄236頁。</ref>。
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三つの[[根]]が[[幹]]を支えている。﹃[[グリームニルの言葉]]﹄第31節によると、それぞれの下に[[ヘルヘイム]]、[[霜の巨人]]、人間が住んでいる<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄55頁。</ref>。また﹃[[ギュルヴィたぶらかし]]﹄での説明では、根は[[アースガルズ]]、[[霜の巨人]]の住む世界、[[ニヴルヘイム]]の上へと通じている<ref name="kodai236">﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄236頁。</ref>。
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アースガルズに向かう根のすぐ下には神聖な[[ウルズの泉]]があり<ref>『エッダ 古代北欧歌謡集』237頁。</ref>、霜の巨人の元へ向かう根のすぐ下には[[ミーミルの泉]]がある<ref name="kodai236" />。 |
アースガルズに向かう根のすぐ下には神聖な[[ウルズの泉]]があり<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄237頁。</ref>、霜の巨人の元へ向かう根のすぐ下には[[ミーミルの泉]]がある<ref name="kodai236" />。根の下には、ヨルムンガンドが住んでいるとも言われている。
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この木に棲む[[リス|栗鼠]]の[[ラタトスク]]が各々の世界間に情報を伝えるメッセンジャーとなっている。 |
この木に棲む[[リス|栗鼠]]の[[ラタトスク]]が各々の世界間に情報を伝えるメッセンジャーとなっている。木の頂きには一羽の[[鷲]]︵[[フレースヴェルグ]]とされる︶が留まっており、その[[目|眼]]の間に[[ヴェズルフェルニル]]と呼ばれる[[鷹]]が止まっているという<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄238頁。</ref>。
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木の頂きには一羽の[[鷲]]([[フレースヴェルグ]]とされる)が留まっており、その[[目|眼]]の間に[[ヴェズルフェルニル]]と呼ばれる[[鷹]]が止まっているという<ref>『エッダ 古代北欧歌謡集』238頁。</ref>。 |
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ユグドラシルの根は、[[ヘビ|蛇]]の[[ニーズヘッグ]]によって齧られている。また、[[ダーイン、ドヴァリン、ドゥネイル、ドゥラスロール|ダーインとドヴァリン、ドゥネイルとドゥラスロール]] ([[古ノルド語]]: {{lang|all|Dáinn ok Dvalinn, Dúneyrr ok Duraþrór}}, [[w:Dáinn, Dvalinn, Duneyrr and Duraþrór|en]]) という四頭の[[鹿|牡鹿]]がユグドラシルの[[樹皮]]を食料としている<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄55、238-239頁。</ref>。また、﹃[[グリームニルの言葉]]﹄第25節によると、[[ヤギ|山羊]]の[[ヘイズルーン]]が[[レーラズ]]という樹木の葉を食料にしているとされる<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄54頁。</ref>が、レーラズがユグドラシルと同じ樹木かははっきりしていない<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄59頁。</ref>。
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ユグドラシルの根は、[[ヘビ|蛇]]の[[ニーズヘッグ]]によって齧られている。また、[[ダーイン、ドヴァリン、ドゥネイル、ドゥラスロール|ダーインとドヴァリン、ドゥネイルとドゥラスロール]] ([[古ノルド語]]: {{lang|all|Dáinn ok Dvalinn, Dúneyrr ok Duraþrór}}, [[w:Dáinn, Dvalinn, Duneyrr and Duraþrór|en]]) という四頭の[[鹿|牡鹿]]がユグドラシルの[[樹皮]]を食料としている<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄55、238-239頁。</ref>。また、﹃[[グリームニルの言葉]]﹄第25節によると、[[ヤギ|山羊]]の[[ヘイズルーン]]が[[レーラズ]]という樹木の葉を食料にしているとされる<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄54頁。</ref>が、レーラズがユグドラシルと同じ樹木かははっきりしていない<ref>﹃エッダ 古代北欧歌謡集﹄59頁。</ref>。
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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* {{Cite book|和書|editor={{仮リンク|グスタフ・ネッケル|en|Gustav Neckel|label=G.ネッケル}}他|translator=[[谷口幸男]] |year=1973 |title=エッダ 古代北欧歌謡集 |publisher=[[新潮社]] |date=1973-08-30 |isbn=978-4-10-313701-6 |ref={{SfnRef|谷口|1973}} }} |
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* {{Cite book|和書|author1=下宮忠雄|authorlink1=下宮忠雄 |author2=金子貞雄 |year=2006 |title=古アイスランド語入門 |publisher=[[大学書林]] |date=2006-01-30 |isbn=4-475-01872-2 |ref={{SfnRef|下宮|金子|2006}} }} |
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== 関連項目 == |
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* [[北欧神話]] - [[九つの世界]] |
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** [[トネリコ属#人間との関係]] - [[セイヨウトネリコ]] |
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* [[須弥山]] |
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* [[世界軸]] |
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* [[生命の樹]] |
* [[生命の木]] - [[生命の樹 (旧約聖書)]] |
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* [[天までとどく木]](ハンガリー) |
* [[天までとどく木]](ハンガリー) |
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* [[扶桑]] - [[山海経]]に記されている、中国の東の海に生えているという世界樹。10個の[[太陽]]が生っているとされる。 |
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* V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』[[谷口幸男]]訳、[[新潮社]]、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。 |
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* 下宮忠雄、金子貞雄 共著『古アイスランド語入門』大学書林、2006年。 |
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{{DEFAULTSORT:ゆくとらしる}} |
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[[Category:北欧神話の地名]] |
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2024年1月1日 (月) 00:40時点における最新版
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b9/Yggdrasil.jpg/250px-Yggdrasil.jpg)
中心の木がユグドラシルである。
『スノッリのエッダ』の英語訳本(1847年)の挿絵。
呼称[編集]
原義[編集]
Yggdrasill という名前の由来には諸説あるが、最も有力な説ではその原義を "Ygg's horse" ︵恐るべき者の馬︶とする。"Yggr" および "Ygg" は主神オーディンの数ある異名︵ケニング︶の一つで ︵cf. en︶、Drasillはオーディンの馬を意味していると解釈されている。日本語名[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/02/AM_738_4to_Yggdrasill.png/170px-AM_738_4to_Yggdrasill.png)