亀井俊介
来歴[編集]
岐阜県中津川市生まれ。新制岐阜県立中津高等学校卒業。1953年、東京大学文学部英文科卒。1952年、同大学院比較文学比較文化専攻修士課程修了。はじめ詩人を目指していた。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程在学中に休学し、セントルイスのワシントン大学に留学[1]。メリーランド大学大学院などをへて、1962年に帰国して大学院に復学。1963年、東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士課程単位取得退学。師の一人に島田謹二がいる。
1963年東京大学教養学部助教授、1984年教授、1993年定年退官、名誉教授、東京女子大学教授、2003年岐阜女子大学教授。2020年同退職。
1971年に﹃近代文学におけるホイットマンの運命﹄で日本学士院賞を受賞している。1973年には日本学術振興会派遣海外研究員として、ニューヨーク州立大学オルバニー校に留学して、アメリカ大衆文化研究の先駆けとなった。
2023年8月18日、病気のため死去[2]。91歳没。
人物[編集]
●著書が多数あり、アメリカ大衆文化に詳しく、性革命に関する著作もあり、﹃マリリン・モンロー﹄を刊行したときは、東大教授が岩波新書で出したというので話題になった。
●司馬遼太郎の愛読者でもあり、新潮文庫版の﹃峠﹄や﹃アメリカ素描﹄の解説を書いている。また日本女子大学教授だった妻亀井規子︵旧姓山名、規子の父は法学者の山名寿三︶の死後、遺著﹁ヴィクトリア朝の小説﹂︵研究社︶を刊行している。手記﹃わが妻の﹁死の美学﹂﹄を出した。
●2007年にはその研究活動の出発点であった﹁アメリカ産の日本詩人﹂ヨネ・ノグチ︵日本名野口米次郎、イサム・ノグチの父︶の復権を目指し、﹃ヨネ・ノグチ英文著作集﹄全6巻を編集、別冊日本語解説を書いた。
受賞歴[編集]
●1970年、博士論文﹃近代文学におけるホイットマンの運命﹄で日本学士院賞 ●1976年、﹃サーカスが来た!﹄で日本エッセイスト・クラブ賞 ●1976年、﹃サーカスが来た!﹄で日米友好基金図書賞。 ●1994年、﹃アメリカン・ヒーローの系譜﹄で大佛次郎賞 ●2008年、瑞宝中綬章受勲 ●2015年、﹃有島武郎﹄で和辻哲郎文化賞受賞 ●2017年、﹃日本近代詩の成立﹄で日本詩人クラブ詩界賞受賞著作[編集]
●﹃近代文学におけるホイットマンの運命﹄︵研究社出版︶ 1970 ●﹃ナショナリズムの文学﹄︵研究社出版︶ 1971、のち講談社学術文庫 1988 ●﹃アメリカの心 日本の心﹄︵日本経済新聞社︶ 1975、のち講談社学術文庫 1986 ●﹃サーカスが来た!アメリカ大衆文化覚書﹄︵東京大学出版会︶ 1976、のち文春文庫 1980、のち岩波同時代ライブラリー 1992、のち平凡社ライブラリー 2013 ●﹃内村鑑三 明治精神の道標﹄︵中公新書︶ 1977 ●﹃摩天楼は荒野にそびえ わがアメリカ文化誌﹄︵日本経済新聞社︶ 1978、のち旺文社文庫 1984 ●﹃自由の聖地 日本人のアメリカ﹄︵研究社出版︶ 1978 ●﹃メリケンからアメリカへ 日米文化交渉史覚書﹄︵東京大学出版会︶ 1979 ●﹃バスのアメリカ﹄︵冬樹社︶ 1979、のち旺文社文庫 1984 ●﹃カバンひとつでアメリカン﹄︵冬樹社︶ 1982 ●﹃本のアメリカ﹄︵冬樹社︶ 1982 ●﹃アメリカのイヴたち﹄︵文藝春秋︶ 1983 ●﹃ハックルベリー・フィンは、いま﹄︵講談社︶ 1985、のち講談社学術文庫 1991 ●﹃マリリン・モンロー﹄︵岩波新書︶ 1987 ●﹃ピューリタンの末裔たち アメリカ文化と性﹄︵研究社出版︶ 1987 ●﹁亀井俊介の仕事﹂全5巻︵南雲堂︶ (一)﹃荒野のアメリカ﹄ 1987 (二)﹃わが古典アメリカ文学﹄ 1988 (三)﹃西洋が見えてきた頃﹄ 1988 (四)﹃マーク・トウェインの世界﹄ 1995 (五)﹃本めくり東西遊記﹄ 1990 ●﹃性革命のアメリカ ユートピアはどこに﹄︵講談社︶ 1989 ●﹃﹁金メッキ時代﹂への私的考察﹄︵PHP研究所︶ 1990 ●﹃アメリカ人の知恵 荒野と摩天楼の夢案内﹄︵ベストセラーズ、ワニ文庫︶ 1990 ●﹃現代の風景 亀井俊介コラム集﹄︵河合出版︶ 1991 ●﹃わが妻の﹁死の美学﹂﹄︵リバティ書房︶ 1993 ●﹃アメリカン・ヒーローの系譜﹄︵研究社出版︶ 1993 ●﹃アメリカの歌声が聞こえる﹄︵岩波書店︶ 1994 ●﹁アメリカ文学史講義﹂全3巻︵南雲堂︶ 1997 - 2000 (一)﹃新世界の夢 植民地時代から南北戦争まで﹄ (二)﹃自然と文明の争い 金めっき時代から一九二〇年代まで﹄ (三)﹃現代人の運命 一九三〇年代から現代まで﹄ ●﹃アメリカ文化と日本 ﹁拝米﹂と﹁排米﹂を超えて﹄︵岩波書店︶ 2000 ●﹃ニューヨーク﹄︵岩波新書︶ 2002 ●﹃わがアメリカ文化誌﹄︵岩波書店︶ 2003 ●﹃ひそかにラディカル?わが人生ノート﹄︵南雲堂︶ 2003 ●﹃アメリカでいちばん美しい人 マリリン・モンローの文化史﹄︵岩波書店︶ 2004 ●﹃わがアメリカ文学誌﹄︵岩波書店︶ 2007 ●﹃ハックルベリー・フィンのアメリカ ﹁自由﹂はどこにあるか﹄︵中公新書︶ 2009 ●﹃英文学者 夏目漱石﹄︵松柏社︶ 2011 ●﹃ヤンキー・ガールと荒野の大熊 アメリカの文化と文学を語る﹄︵南雲堂︶ 2012 ●﹃有島武郎 世間に対して真剣勝負をし続けて﹄︵ミネルヴァ書房、日本評伝選︶ 2013 ●﹃日本近代詩の成立﹄︵南雲堂︶ 2016 ●﹃英文学者 坪内逍遥﹄︵松柏社︶ 2021 ●﹃魂の声 英詩を楽しむ﹄︵南雲堂︶ 2021共著・編著[編集]
●﹃現代比較文学の展望﹄︵編、研究社出版︶ 1972、のち改題﹃現代の比較文学﹄︵講談社学術文庫︶ 1994 ●﹃講座比較文学﹄全8巻︵芳賀徹, 平川祐弘, 小堀桂一郎共編、東京大学出版会︶ 1973 - 1976 ●﹃日本とアメリカ - 比較文化論﹄全3巻︵斎藤眞, 本間長世共責任編集、南雲堂︶ 1973 ●﹃アメリカの大衆文化﹄︵本間長世共編、研究社出版︶ 1975 ●﹃アメリカ古典文庫5ウォルト・ホイットマン﹄[3]︵編、研究社出版︶ 1976 ●﹃アメリカ古典文庫23日本人のアメリカ論﹄︵編、研究社出版︶ 1977 ●﹃文章の解釈﹄︵平川祐弘, 小堀桂一郎共編、東京大学出版会︶ 1977 ●﹃日本とアメリカ﹄︵加藤秀俊共編、日本学術振興会︶ 1977 ●﹃アメリカ﹄︵鶴見俊輔共著、文藝春秋︶ 1980 ●﹃横断鉄道の時代﹄︵編、集英社、人物アメリカ史3︶ 1984 ●﹃日米文化交流事典﹄︵編、南雲堂︶ 1988 ●﹃パチンコけんけん学々﹄︵編、善本社︶ 1990 ●﹃自伝でたどるアメリカン・ドリーム﹄︵鈴木健次共編、河合出版︶ 1992 ●﹃アメリカの文化 現代文明をつくった人たち﹄︵編、弘文堂︶ 1992 ●﹃アメリカン・ベストセラー小説38﹄︵編著、丸善ライブラリー︶ 1992 ●﹃近代日本の翻訳文化﹄︵編、中央公論社、叢書比較文学比較文化3︶ 1994‥退官記念論文集 ●﹃世界の歴史23アメリカ合衆国の膨張﹄︵紀平英作共著、中央公論新社︶ 1998、のち中公文庫 2008 ●﹃文学を旅する﹄︵小池滋, 川本三郎共著、朝日選書︶ 2002 ●﹃名詩名訳ものがたり 異郷の調べ﹄︵沓掛良彦共著、岩波書店︶ 2005 ●﹃ヨネ・ノグチ<野口米次郎> 英文著作集‥詩集・小説・評論﹄︵編、東京‥Edition Synapse︶ 2007 全6巻+別冊解説‥ Collected English Works of Yone Noguchi Poems, Novels and Literary Essays ●﹃アメリカ文化史入門 植民地時代から現代まで﹄︵編、昭和堂︶ 2006 ●﹃アメリカの旅の文学 ワンダーの世界を歩く﹄︵編、昭和堂︶ 2009 ●﹃﹁セックス・シンボル﹂から﹁女神﹂へ - マリリン・モンローの世界﹄︵編、昭和堂︶ 2010 ●﹃亀井俊介 オーラル・ヒストリー﹄[4]︵研究社︶ 2017翻訳[編集]
●﹁グリーン・ノウ物語﹂︵ルーシー・M・ボストン、評論社︶、のち新版 2008 1﹃グリーン・ノウの子どもたち﹄ 1972 2﹃グリーン・ノウの煙突﹄ 1977 3﹃グリーン・ノウの川﹄ 1970 4﹃グリーン・ノウのお客さま﹄ 1968 5﹃グリーン・ノウの魔女﹄ 1969 別巻﹃グリーン・ノウの石﹄ 1981 ●﹃ミカド 日本の父なる力﹄︵W・E・グリフィス、研究社出版︶ 1972、のち岩波文庫 1995 ●﹃大西部の開拓者たち﹄マーティン・ヒルマン、集英社、図説 探検の世界史9︶ 1975 ●﹃うさぎどんきつねどん﹄︵J・C・ハリス、集英社︶ 1980 ●﹃内村鑑三英文論説翻訳篇 上﹄︵岩波書店︶ 1984 ●﹃トム・ソーヤの冒険﹄︵マーク・トウェイン、集英社、少年少女世界名作の森︶ 1990、のち集英社みらい文庫 2011 ●﹃アメリカ名詩選﹄︵川本皓嗣共編訳、岩波文庫︶ 1993 ●﹃対訳 ディキンソン詩集﹄︵岩波文庫︶ 1998監修[編集]
●﹃アメリカ古典大衆小説コレクション﹄︵巽孝之と共同監修、松柏社︶ 2003 - 2017脚注[編集]
- ^ 『亀井俊介オーラル・ヒストリー 戦後日本における一文学研究者の軌跡』
- ^ “東大名誉教授・亀井俊介さん死去、91歳…「アメリカン・ヒーローの系譜」で大仏次郎賞”. 読売新聞. (2023年8月26日) 2023年8月26日閲覧。
- ^ 他に『1) ベンジャミン・フランクリン』『4) H・D・ソロー』『12) D・H・ロレンス』を解説担当
- ^ 語りと若手研究者によるインタビュー(オーラル・ヒストリー)での学問回想、副題は「戦後日本における一文学研究者の軌跡」
参考文献[編集]
- 『わが妻の「死の美学」』(半自伝)
- 「亀井俊介教授著作目録:1953年-1992年」『比較文學研究』(63)1993-06
- 「亀井俊介教授著作目録 1993-2003年」 (亀井俊介教授古稀記念号)『Aurora』(8), 2004
- 小谷野敦『東大駒場学派物語』新書館