シェイクスピアの推定執筆年代
シェイクスピアの推定執筆年代︵シェイクスピアのすいていしっぴつねんだい︶について解説する。
概観[編集]
ウィリアム・シェイクスピア作品の創作年代︵ならびに劇の場合は初演日︶の正確な年表を作ることは、それを裏付ける決定的な証拠がない以上、不可能である。 おそらくほとんどの劇は出版前に上演されたものと思われる。出版に関しては、いくつかの作品は﹁四折版﹂で出ていたが、多くは1623年の﹁ファースト・フォリオ﹂が出るまで未発表だった。同時代人によるシェイクスピア劇への言及も不足しているし、執筆にあたってのシェイクスピアの役割に関しても諸説がある。 エドモンド・マローン以来、多くの研究者たちがシェイクスピアの年表作成を試みたが、その根拠としたものは、以下のものである。 ●書籍出版業組合記録への登録 ●出版の日付 ●本の表紙の記述 ●フランシス・ミアズ︵Francis Meres︶﹃知恵の宝庫﹄︵1958年︶にあるシェイクスピア劇のリスト ●同時代人による言及︵日記、書簡、など︶ ●上演の記録 ●その他、印象、スタイルの分析など。 しかし、シェイクスピア別人説を含めたさまざまな立場から、いまだに議論が絶えない。作品別推定年代[編集]
●ヴィーナスとアドーニス︵詩︶︵1593年4月18日登録/同年出版︶
●タイタス・アンドロニカス︵1594年2月6日登録/同年出版/1598年﹃知恵の宝庫﹄︶
●アーデン版の編者ジョナサン・ベイトは創作年代を1584年から1589年頃だと推定している[1]
●ヘンリー六世 第2部︵1594年3月12日登録/同年出版︶
●フィリップ・ヘンスローの日記に1592年3月3日にLord Strange's Menが﹃ヘンリー六世﹄を上演したと書かれてある。
●ルークリース凌辱︵詩︶︵1594年5月9日登録/同年出版︶
●ヘンリー六世 第3部︵1595年出版︶
●1592年にロバート・グリーンがパロディにしている。
●エドワード三世︵1596年出版︶
●ロミオとジュリエット︵1597年出版/1598年﹃知恵の宝庫﹄︶
●アーデン版の編者ブライアン・ギボンズは創作年代を1591年から1595年のいつかと推定している[2]。
●リチャード二世︵1597年8月29日登録/1598年出版/1598年﹃知恵の宝庫﹄︶
●リチャード三世︵1597年10月20日登録/同年出版/1598年﹃知恵の宝庫﹄︶
●恋の骨折り損︵1598年出版/1598年﹃知恵の宝庫﹄︶
●アーデン版の編者はじめ多くのは1595年か1596年に書かれたものと推定している[3]。
●ヘンリー四世 第1部︵1598年2月25日登録/同年出版/1598年﹃知恵の宝庫﹄︶
●ケンブリッジ版の編者ハーバート・ウェイルとジュディ・ウェイルは1597年までに上演されたのは間違いないとしている[4]。
●ヴェニスの商人︵1598年7月22日登録/1598年﹃知恵の宝庫﹄/1600年出版︶
●ヘンリー六世 第1部︵1598年登録/1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1592年8月登録のトマス・ナッシュ︵Thomas Nashe︶の戯曲﹃Pierce Penniless﹄にタルボット卿を扱った人気劇への言及がある。
●﹃ヘンリー六世 第2部﹄﹃第3部﹄より前に書かれたのなら創作年代はその前になる。
●間違いの喜劇︵1598年﹃知恵の宝庫﹄/1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●ミアズのリストでは﹁Errors﹂とある。
●1594年12月28日に﹃The Night of Errors﹄という劇が上演されたという記録がある。
●オックスフォード版の編チャールズ・ウィトワースは創作年代を1594年と推定している[5]。
●ジョン王︵1598年﹃知恵の宝庫﹄/1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●オックスフォード版の編者スタンリー・ウェルズとゲイリー・テイラーは創作年代を1595年か1596年と推定している[6]。
﹃ジョン王の乱世﹄も参照。
●ヴェローナの二紳士︵1598年﹃知恵の宝庫﹄/1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●恋の骨折り甲斐︵1598年﹃知恵の宝庫﹄/失われた戯曲?他の喜劇の別名?︶
●長く﹃じゃじゃ馬ならし﹄のことではないかと言われてきたが、1603年のクリストファー・ハントの記録では﹃じゃじゃ馬ならし﹄と別の作品になっていた[7]。
●夏の夜の夢︵1598年﹃知恵の宝庫﹄/1600年10月8日登録/同年出版︶
●ヘンリー四世 第2部︵1600年登録/同年出版︶
●ヘンリー五世︵1600年8月14日登録/同年出版︶
●プロローグにエセックス伯によるアイルランド遠征︵1599年︶への言及がある。
●オックスフォード版の編者はエセックス伯の言及から創作年代を1599年初め頃と推定している[8]。
●お気に召すまま︵1600年8月4日登録/1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●空騒ぎ︵1600年出版︶
●ノートン版の編者は初演を1598年から1599年の秋か冬と推定している[9]。
●不死鳥と雉鳩︵詩︶︵1601年出版︶
●ウィンザーの陽気な女房たち︵1602年1月18日登録/同年出版︶
●ハムレット︵1602年7月26日登録/1603年出版︶
●登録の際﹁最近上演﹂とされていた。
﹃原ハムレット﹄も参照。
●トロイラスとクレシダ︵1603年2月7日登録/1609年出版︶
●リア王︵1606年12月26日登録/1608年出版︶
●創作年代は普通1603年から1606年の間とされるが、アーデン版の編者R.A. Foakesは1605年から1606年と推定している[10]。
﹃レア王﹄も参照。
●アントニーとクレオパトラ︵1608年5月登録/1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●ペリクリーズ︵1609年出版︶
●ソネット集︵1609年出版︶
●オセロ︵1621年10月6日登録/1622年出版︶
●1604年11月1日にホワイトホール宮殿で上演したとの記録がある。
●文体論的に見て、創作年代は一般に1603年か1604年とされるが、1601年か1602年とする意見もある[11]。
●じゃじゃ馬ならし︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●フィリップ・ヘンスローの1594年6月13日の日記に﹃the Tamynge of A Shrowe﹄という劇の上演のことが書かれている。
●1603年のクリストファー・ハントのリストに入っている。
●リヴァーサイド版の編者は創作年代を1590年から1594年の間と推定している[12]。
●ジュリアス・シーザー︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1599年9月21日にロンドンのグローブ座でこの劇を見たとトマス・プラッターが言及している[13]。
●十二夜︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●法学生ジョン・マニンガムは1602年2月2日に法曹院の1つMiddle Templeでこの劇を見たと書いている[14]。
●マクベス︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1611年4月にグローブ座でこの劇を見たとサイモン・フォアマンは書いている[15]
●多くの研究家は1603年から1606年の間に書かれたと信じている[16][17]
●尺には尺を︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1604年12月26日に上演されたという記録がある。
●シンベリン︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1611年の春にこの劇を見たとサイモン・フォアマンは書いている。
●テンペスト (シェイクスピア)︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1611年11月1日にホワイトホール宮殿のジェームズ1世の御前で国王一座によって上演されたという記録がある。
●終わりよければ全てよし︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●冬物語︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1611年11月5日に王宮で上演されたという記録がある。
●多くの評論家は創作年代を1610年か1611年としている[18]。
●ヘンリー八世︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●1613年6月29日にこの劇を上演していてグローブ座が全焼したという記録が多数ある。
●コリオレイナス︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●アテネのタイモン︵1623年出版﹁ファースト・フォリオ﹂︶
●二人の貴公子︵1634年4月8日登録/同年出版︶
●1614年のベン・ジョンソンの戯曲﹃バーソロミューの市﹄に主人公パラモンへの言及がある。
●カルデーニオ︵1653年9月9日登録︶
●1613年に国王一座が上演したという記録がある。
脚注[編集]
- ^ Bate, Titus, 70.
- ^ Gibbons, Brian (1980). Romeo and Juliet, Arden Shakespeare. London: Methuen. ISBN 0416178502.
- ^ Woudhuysen, H. R., ed. Love's Labour's Lost (London: Arden Shakespeare, 1998): 59
- ^ Weil and Weil, p. 4.
- ^ Charles Walters Whitworth, ed., The Comedy of Errors, Oxford, Oxford University press, 2003; pp. 1-10.
- ^ ^ Wells and Taylor (1988, 397).
- ^ The RSC Shakespeare: The Complete Works
- ^ Shakespeare, William. Henry V. Gary Taylor, editor. Oxford: Oxford University Press, 1982: 5
- ^ See textual notes to Much Ado about Nothing in The Norton Shakespeare (W. W. Norton & Company, 1997 ISBN 0-393-97087-6) p. 1387
- ^ R.A. Foakes, ed. King Lear. London: Arden, 1997), 89-90.
- ^ Shakespeare, William. Four Tragedies: Hamlet, Othello, King Lear, Macbeth. Bantam Books, 1988.
- ^ Evans, G. Blakemore: "The Riverside Shakespeare", page 106 Houghton Mifflin Company, 1974
- ^ Marvin Spevack, Introduction to Julius Caesar by William Shakespeare, New Cambridge Shakespeare (Cambridge University Press, 1988), p.3-4)
- ^ Shakespeare, William; Smith, Bruce R. (2001). Twelfth Night: Texts and Contexts. Boston: Bedford/St Martin's, p. 2. ISBN 0312202199
- ^ Wels and Dobson, p. 101.
- ^ Charles Boyce, Encyclopaedia of Shakespeare, New York, Roundtable Press, 1990, p. 350.
- ^ A.R. Braunmuller, ed. Macbeth (CUP, 1997), 5-8.
- ^ F. E. Halliday, A Shakespeare Companion 1564-1964, Baltimore, Penguin, 1964; p. 532.
外部リンク[編集]
- Narrative and Dramatic Sources of all Shakespeare's works Also publication years and chronology of Shakespeare plays
- http://shakespeareauthorship.com/howdowe.html#1
- http://shakespeare.palomar.edu/meres.htm
- http://www.dlhoffman.com/publiclibrary/Shakespeare/by-year.html
- http://www.shakespeare-online.com/keydates/playchron.html
- http://web.uvic.ca/shakespeare/Library/SLT/reference/plays1588-1595.html
- http://www.shaksper.net/archives/files/chronology.html
- Shakespeare's Works: A Timeline