ハイテク建築
ハイテク建築は、1970年代に出現した建築様式であり、ハイテクによって生み出された製品、技術を建築物に意匠として取り込むものである。ハイテク建築は、科学技術が急激に発展していく中で、モダニズムの理念をさらに推し進めていった結果到達する、最終地点に生まれたものである。モダニズムの終焉と、ポストモダニズムの誕生との間に位置づけるべきものであるが、その始まり、および終わりにはっきりとした線引きを求めるのは不可能であり、1980年代には、他のポストモダン建築との区別はより困難となった。ハイテク建築から生まれた多くのテーマやアイディアは、ポストモダンという建築言語の中に吸収されていった。
ローズ・クリケット・グラウンドのメディアセンター
ミュンヘン・オリンピアシュタディオン
ハイテク建築の特徴は多岐にわたるが、全ては科学技術的な要素の強調という点に帰することができる。たとえば、建築物の技術的、機能的な要素を目立つ形で見せること、規則正しい配列、プレファブ部材の使用などが挙げられる。ガラスの壁と鋼鉄のフレームというのも、非常によく見られるものである。
技術的な特徴は、誇らしげに外部に表出され、それは時に構造体に及ぶ。その最も顕著な例が、先述のポンピドゥー・センターであり、通常建物内部に隠蔽される空調ダクトが外部から見える過激な設計となっている。建物内部へのアクセス手段もまた、外部から見える形となっており、エスカレータの入った太いチューブが、観覧客を内部へと誘う形状になっている。
ハイテク建築の様式を取り入れ、なおかつ機能的な要素を失わないよう設計するための、秩序的、論理的方法は、ノーマン・フォスターの香港上海銀行・香港本店ビルに見ることができる。テクノロジーが、突出して建物の特徴として現れているにもかかわらず、そのデザインは徹底的に機能的なものに根ざしている。内部に設けられた広いオープンスペースは、各階へのアクセスを容易にし、銀行としての機能を最大限に引き出すものである。また、建物の各要素は、すばらしく秩序立てて構成されており、これも銀行としての必要条件を論理的に満足させている。これは、各階の平面構成やエスカレーターにも同様に見られる。
ハイテク建築では、ガラスのカーテンウォールと鉄骨構造が一貫して使われている。これは、モダニズム建築の大きな負債とも言うべきものであり、特にミース・ファン・デル・ローエの影響を強く受けている。SOMの設計によるシアーズ・タワーは、ガラスのカーテンウォールと鋼管柱によって527.3メートルという高さが可能となった。ハイテク建築の多くは、大胆な造形を意図したものである。この好例が、ギュンター・ベーニッシュとフライ・オットーによるミュンヘン・オリンピアシュタディオンである。この構造物は、もともと使われなくなった飛行場であったが、現在はスポーツをはじめ、さまざまな目的で使用される空間となっている。