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小目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

小目(こもく)は囲碁用語の一つで、空きスミへの着手を指す言葉のひとつ。碁盤の隅から数えて(3,4)または(4,3)の地点に打つことをいう。下図黒1、あるいはaの位置が小目である。と並び、隅を占める手の中で最もよく打たれる着点である。定石の種類も、隅の着点の中で最も多い。

なお「小目」は隅のの一路辺寄りの(低い)位置を指すものであり、辺の星の一路低い位置は、小目でなく「星下」と呼ばれる。



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小ゲイマジマリ[編集]

黒1が小ゲイマジマリ。これによって隅の地を確実に10目程度確保できる。堅固なシマリであり、白からaやbあたりに近づいて来られても危険がないため、後を強く戦える。このため最も基本的であり、よく打たれるシマリである。ただし、周囲の状況によってはcから侵入される場合もある。dの肩ツキで黒の勢力を制限するのは呉清源が推奨し、人工知能がこの手をよく打つため、世界で流行した。eのツケから黒を凝り形にさせる手段も、人工知能の登場以降よく打たれるようになった。

一間ジマリ[編集]


1abcde

大ゲイマジマリ[編集]

上図黒1が大ゲイマジマリ。隅の地を大きく確保できる可能性がある代わり、白にaと迫られると白bのツケなどから隅を荒らされる手が残る。また人工知能により、cのツケから形を決めていく手が打たれ、流行している。

二間ジマリ[編集]

黒1が二間ジマリ。かつては、隅の隙が大きいため、中央の模様を大きく広げたい場合の趣向として打たれる程度であった。しかし2016年に登場したAlphaGoなどの人工知能はこのシマリを多用し、その影響で人間の棋士にも使用者が増えている。白からはaと迫ってシマリのスソをうかがい、bとツケて荒らすなどの狙いがある。

カカリ[編集]

小目からのシマリが大きな価値を持つ以上、それを妨害する手、すなわちカカリの価値も同様に大きい。主に小ゲイマガカリ・一間高ガカリ・大ゲイマガカリ・二間高ガカリなどが用いられる。

ケイマガカリ[編集]

小目へ白1とケイマにカカった場合、黒はa~fまでのハサミで、この石を攻撃に向かうことが多い。ただし人工知能の登場以降は、ハサミに対しては白gのカケで打てるという考えが主流になり、ハサまずにgのコスミやhのケイマに受けるケースが増えた。iの二間などに受けることもある。jのコスミツケは、かつては悪手とされていたが、人工知能出現後に見直され、使用が増えた。また、カカられたまま黒が手を抜いて他に先着すれば、白の目ハズシに黒がケイマガカリしたのと同形になる。

一間高ガカリ[編集]

白1の一間高ガカリに対しては、aの下ツケがよく見られる応手で、ここからツケヒキ定石ナダレ定石などの代表的定石が発生する。左辺を重視するなら、bの上ツケやcのケイマが考えられる。戦いに持ち込みたいなら、d~fなどとハサんでカカってきた石を挟撃する。fの二間高バサミは難解な変化を含み、「村正の妖刀」と称される。このまま黒が手を抜いて他に先着すれば、白の高目に黒が小目ガカリしたのと同形になる。

大ゲイマガカリ[編集]

上記のカカリではハサミを打たれ、不利と判断した場合は白1と大ゲイマにカカる手が打たれる。黒はaと打って隅を確保することが多い。左辺を模様化したい場合にはbの肩ツキもある。またcの二間ビラキはあっさりと左辺を地化する打ち方。もしハサんで打つなら、dやeなどに打つことが多い。

二間高ガカリ[編集]

白1と二間に高くカカる手もある。黒はaとカドに打って隅の地を確保するか、bと左辺に展開するのが普通。ハサむ場合はcなどが多い。

裏ガカリ[編集]

黒▲に石がある中国流布石などの場合、通常のカカリでは不利になるため、白1などと左辺側からカカる手が打たれることがある。比較的新しい手法であり、カカる位置も白1の他a~dなどが試されている。まだ発展途上であり、新しい定石が次々と登場している分野である。

ツケ[編集]


[1]a[2]

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小目を主体とした布石[編集]

秀策流[編集]


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向かい小目[編集]

黒の配置が向かい小目。下辺白に対して左右のカカリを見合いにしており、模様を張るにも実利を重視するにも向いたバランスの良い配置。黒が5手目にaやbに構える手は張栩らが一時期愛用した。

並び小目[編集]


黒の配置が並び小目。やや偏った配置であるため打たれることは少ないが、さらにaの星を占める布石を張栩が若手時代に多用し、「張栩スペシャル」と称されたことがある。また、2015年前後には七冠王・井山裕太も一時的に多用した。

ケンカ小目[編集]



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現代における、小目からのシマリを省いた中国流布石の展開例。白は右下隅の小目に直接カカらずに白6と辺から圧力をかけ、黒は黒7で隅を守りつつ6の石への攻撃を狙い、白は8に守った。

この他小目からシマリを省いて辺へ展開する布石に「ミニ中国流」、「小林流」などがある。

脚注[編集]

  1. ^ 「天下の奇譜と奇手」 高木祥一著 日本棋院 1993年 p.169
  2. ^ 「布石革命」 芝野虎丸著 日本棋院 2021年 p.17