礼拝所及び墳墓に関する罪
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礼拝所及び墳墓に関する罪 | |
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法律・条文 | 刑法188条 |
保護法益 | 信仰の自由 |
主体 | 礼拝所・墳墓 |
客体 | 人間 |
実行行為 | 損壊・妨害 |
主観 | 故意犯 |
結果 | 結果犯・侵害犯 |
実行の着手 | 礼拝所等の不敬な行為 |
既遂時期 | 不敬行為を着手した時点 |
法定刑 | 各類型による |
未遂・予備 | なし |
日本の刑法 |
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刑事法 |
刑法 |
刑法学 ・ 犯罪 ・ 刑罰 |
罪刑法定主義 |
犯罪論 |
構成要件 ・ 実行行為 ・ 不作為犯 |
間接正犯 ・ 未遂 ・ 既遂 ・ 中止犯 |
不能犯 ・ 因果関係 |
違法性 ・ 違法性阻却事由 |
正当行為 ・ 正当防衛 ・ 緊急避難 |
責任 ・ 責任主義 |
責任能力 ・ 心神喪失 ・ 心神耗弱 |
故意 ・ 故意犯 ・ 錯誤 |
過失 ・ 過失犯 |
期待可能性 |
誤想防衛 ・ 過剰防衛 |
共犯 ・ 正犯 ・ 共同正犯 |
共謀共同正犯 ・ 教唆犯 ・ 幇助犯 |
罪数 |
観念的競合 ・ 牽連犯 ・ 併合罪 |
刑罰論 |
死刑 ・ 懲役 ・ 禁錮 |
罰金 ・ 拘留 ・ 科料 ・ 没収 |
法定刑 ・ 処断刑 ・ 宣告刑 |
自首 ・ 酌量減軽 ・ 執行猶予 |
刑事訴訟法 ・ 刑事政策 |
カテゴリ |
礼拝所及び墳墓に関する罪︵れいはいじょおよびふんぼにかんするつみ︶は、刑法第24章﹁礼拝所及び墳墓に関する罪﹂に規定された犯罪類型の総称。
概説[編集]
礼拝所及び墳墓に関する罪の保護法益は﹁国民の宗教的敬虔感情﹂あるいは﹁宗教的自由の保護﹂である。 礼拝所不敬罪︵刑法188条第1項︶と説教等妨害罪︵刑法188条第2項︶は宗教に関する法益そのものを保護するのに対し、墳墓発掘罪︵刑法189条︶と死体損壊等罪︵刑法190条︶は祭祀礼拝の対象となる死者に対する敬虔感情を保護法益とする[1]。 なお、変死者密葬罪︵刑法192条︶は人の死因を明らかにするという司法的・行政的国家作用を保護法益とするもので本章の他の罪とは性質が異なる[2]。礼拝所不敬罪[編集]
神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対し、公然と不敬な行為をする罪︵刑法第188条第1項︶。法定刑は6月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金︵刑法第188条第1項︶。 本罪の行為は公然と不敬な行為をすることである。例えば、午前2時頃に墓碑を押し倒す行為にも公然性は認められ本罪は成立する︵判例[3]︶。説教等妨害罪[編集]
説教、礼拝又は葬式を妨害する罪︵刑法第188条第2項︶。法定刑は1年以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金︵刑法第188条第2項︶。墳墓発掘罪[編集]
墳墓を発掘する罪︵第189条︶。法定刑は2年以下の懲役︵第189条︶。 本罪の客体は﹁墳墓﹂であるが、現に祭祀礼拝の対象となっているものでなければならず、既にその対象となっていない古墳は本罪の﹁墳墓﹂にあたらない︵判例[4]︶。死体損壊等罪[編集]
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得する罪︵死体等損壊罪、死体等遺棄罪、死体等領得罪。刑法第190条︶。法定刑は3年以下の懲役︵刑法第190条︶。 なお、死体・遺骨・遺髪・棺内収納物の領得により本罪が成立する場合の財産罪の成立について、所有者の支配力が弱まっており窃盗罪︵刑法第235条︶などよりも相対的に法定刑を軽く定めている意味がなくなってしまうとして財産罪は別個には成立しないとする説と、遺族の所有権や占有を保護しない理由はないとして財産罪が別個に成立するとする説がある[5]。墳墓発掘死体損壊等罪[編集]
墳墓発掘罪を犯した者が、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得する罪︵刑法第191条︶。法定刑は3月以上5年以下の懲役︵刑法第191条︶。墳墓発掘罪︵第189条︶と死体損壊等罪︵刑法第190条︶との結合犯である。
変死者密葬罪[編集]
検視を経ないで変死者を葬る罪︵刑法第192条︶。検視とは司法検視︵刑事訴訟法第229条︶及び行政検視︵昭和33年国家公安委員会規則3号︶をいう[6]。法定刑は10万円以下の罰金又は科料︵刑法第192条︶。脚注[編集]
出典[編集]
- ^ 林 1999, pp. 404–405.
- ^ 林 1999, p. 405.
- ^ 最決昭和43年6月5日刑集22巻6号427頁
- ^ 大判昭和9年6月13日刑集13巻747頁
- ^ 林 1999, pp. 407–408.
- ^ 林 1999, p. 410.