■ ITmediaが利用規約から無断リンク禁止条項を撤廃
Webメディア御三家、つまり、INTERNET Watch、ITmedia︵旧ZDNet JAPAN︶、
日経IT Proと言えば、日本のWeb文化をリードしてきた新時代のマスメディアだ。
旧態新聞会社達が決して扱うことのなかった話題を、いつも期待を裏切ること
なく報道してくれた頼れるメディアだ。たとえばこんな報道があったのも
Webメディアならではと言えよう。
●文化庁、﹁ディープリンクを拒否するつもりはない﹂, ITmediaニュース, 2002年7月10日
旧態マスメディアの主要な何社かが、記事ページへの無断リンクを禁止すると定めているところ、
そのナンセンスさはこれまでにも幾度となく議論されてきた。
しかし、実はITmediaが利用規約で無断リンクを禁止しているというのは、
知る人ぞ知る事実であったものの、あまり積極的に語られることは多くはなかっ
た。なぜなら、その話が出てしまうと、
ITmediaでさえ無断リンクを禁止しているのだから、禁止するのは妥当って
ことなんじゃないの?
という展開となり、元々議論することが難しいこの話題は、腰元からボッキリ
と折られてしまうに違いないからだ。
ITmediaの利用規約は、2005年8月の時点では次のようにリンクについて定めて
いた。
ITmediaはアイティメディア株式会社︵以下、﹁ITM﹂︶が提供するサービスで
す。本規約は、ITMがWebサイト﹁ITmedia︵www.itmedia.co.jp︶﹂において提
供するサービス﹁ITmedia﹂を利用される方すべて︵以下、﹁ユーザー﹂︶に
ついて、ITmediaの利用を開始した時点で適用されます。︵略︶
7. 2次使用︵リンク・転載︶について
ユーザーは、ITmediaへのリンクまたは記事の転載を希望する場合には、事前に、お名前、連絡先、リンク元となるWebサイト︵以下、
﹁貴サイト﹂︶の内容、アドレスおよびリンクの趣旨などをお問い合わせページを通じてITMへ連絡し、ITMから承諾を得る必要があります。
︵i︶ リンクをお断りする場合
︵略︶
︵ii︶ ITmediaのコンテンツを貴サイトに表示する場合
︵略︶
︵iii︶ 画像への直接リンクのお断り
︵略︶
ITmedia 利用規約, 2005年8月当時のもの
つまり、リンクする前にITmediaから承諾を得ねばならないとされていた。
リンク元の内容や、リンクする趣旨まで書いて申し込まないといけないとされ
ているので、事前審査があるのだろうか。
そこで私は、そのお問い合わせページから、
リンクの承諾を得るべく申請を行った。
このとき、リンクする趣旨についてはあえて書かないようにした。きっと、
リンクの趣旨については係員の方が尋ねてくださるのだろうと思った。
すると数日後に次の返事が来た。来たのはまるでテンプレートによる自動応答
のようなメールだった。
平素はITmediaをご利用頂き、誠にありがとうございます。
弊社記事に対するリンクに関して、下記記載事項に従って運用頂く場合は特に事前の連絡の必要はございません。
その際、事後でも結構ですので、ご連絡を頂けると幸いです。
︵以下略︶
なんと、事前に承諾を得る必要があるというのでわざわざ申請手続きをしたの
に、しばらく待って来た返事は、事前の連絡はいらないというのだ。
私がどういう趣旨でリンクしようとしているのか確認していないくせに、だ。
言っていることとやっていることが違うじゃないか! ということで、苦情の
メールを送った。待てど暮らせど返事は来ない。やっぱりここのメールは機械
応答だろうか……と不安になりつつも、返事はまだかと何度か催促してみた。
すると17日後にようやく人間の人から返事を頂くことができた。係員曰く、
このたびは弊社の利用規約に関して、重要なご指摘を頂きながら、迅速なご対応を行っておらず、誠に申し訳ございません。
高木様のご指摘を頂きました様に、弊社の利用規約とその後のご回答に一致していない部分がございます。現在掲載している利用規約はかなり以前に作成したもので、運用の実態と合っておりませんでしたので、本矛盾点を修正すべく作業中でございます。
という。そらみろ、やはりこの手の利用規約は飾りだ。他人の自由を制限する
文書であるにもかかわらず、当人達さえ内容を把握してない。
しばしば、﹁この手の規約は実態がないのだから無視してしまえばよいし、
みんな無視しているが何も問題ない﹂という主張を耳にする。しかし、こうし
た無断リンク禁止の規約を真に受けている人もいる。実際に見た事例としてこ
ういうケースがあった。
掲示板である種の話題が盛り上がると、﹁まとめサイト﹂というものが作られ
ることがよくある。まとめサイトでは事件の概要とともに、関係する報道の
一覧を作ることで事件の性質をわかりやすくまとめるといった手法が使われる。
あるまとめサイトの編集者がITmeidaの記事へのリンクを作ったとき、掲示板
で何者かが﹁ITmedaiは無断リンク禁止だよ﹂との指摘を書き込んだ。すると、
まとめサイトの編集者はそれにしたがって一旦リンクを削除した。そして編集
者はITmediaに承諾を求める申請をした︵と掲示板に報告があった︶。ITmedia
から承諾の返事が来る数日後まで、まとめサイトの表現内容は制限されたのだ。
こういうことが実際に起きているわけである。
そして、9月30日、ITmediaの利用規約は改定された。リンクに関する記述は
以下のようになっている。
7. 2次使用︵リンク・転載︶について
ユーザーは、下記の場合を除き、ITmediaへのリンクを行うことが
できます。記事の転載を希望する場合には、事前に、お名前、連絡
先、Webサイト︵以下、﹁貴サイト﹂︶の内容、アドレスおよび趣旨などを、
お問い合わせページを通じてITMへ連絡してください。ITMでは営利目的の継続
的なリンクと記事転載を、有償サービスとして提供しております。
<リンクをお断りする場合>
以下の事項のいずれかに該当する場合は、リンク自体をお断りする場合があり
ます。
●営利を目的としたものである場合
●ITmediaに掲載された画像に対する直接リンクの場合︵画像表示について︶
●ITMの設立目的、企業理念またはイメージ等に合わない場合
●ITMに経済的損失が生じると考えられる場合
●ITMのページへのリンクである旨を表示しない場合
●独自のフレームの中に、ITMのWebサイトを取り込んだ形でリンクされる場合
●第三者が著作権を保有する記事へのリンクの場合
●お名前またはリンクの趣旨等事前に連絡された事項に虚偽があった場合
●その他ITMの運営に支障を来す恐れがあるとITMが判断した場合
ITmedia 利用規約, 2005年9月30日改訂版
無許諾リンクを禁ずる条項は撤廃された。めでたい。
これで目の上のたんこぶが取れたと言えよう。
ちなみに、他のWeb系メディアはどうかというと、リンクに許諾が必要などと
いうことは言っていない。
●impress Watch -
本サイトのご利用について
◆本ウェブサイトへのリンク
本ウェブサイトへのリンクは、トップページ・記事ページとも、当社に連絡することなく自由にリンクしていただいて構いません。ただし、画像ファイルへのリンク、およびフレームを使用したHTMLページ内で表示する形でのリンクはご遠慮ください。
●日経 ITPro
- このサイトについて
リンクについて
各コンテンツへは原則として自由にリンクいただいて結構ですが,URLは事前に予告なく変更・削除する可能性があることをご了承願います。
●@IT
アットマーク・アイティ - 著作権 リンク 免責事項
リンクについて
当サイトへのリンクは、原則として自由に行って構いません。また、その際の
許諾確認のご連絡も不要です。リンクの際は、各サイトのトップページ︵略︶
あるいは各フォーラムおよびコーナーのトップへのリンクを推奨い
たします。直接、記事ページへのリンクをされても構いませんが、URLは事前
に予告なく変更される可能性がありますので、あらかじめご了承ください
。リンクの際には、下記のバナーを用意しておりますので、ご自由にお使いく
ださい。
●MYCOM
PC WEB - 著作権とリンク
リンクについて
●MYCOM PC WEBへのリンクは原則として自由です。
●リンクには、MYCOM PC WEBへのリンクであることを明記して下さい。
●リンクは自然な形式でお願いします。フレーム内で表示される形でのリ
ンク等、弊誌の運用に差し支える形式はお断りしております。
そのほかのケースにつきましては、個別に対応させて頂くことになりますので、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。
これが標準なのだから、このような条件ならそもそも﹁リンク条件﹂だとか
﹁リンクポリシー﹂などというページを用意する必要さえ本来はない。