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「浮舟 (源氏物語)」の版間の差分

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'''浮舟'''(うきふね)は、

'''浮舟'''(うきふね)は、


#[[]]51'''[[]]'''7[[]][[]][[|]]

#[[]]51[[]]7

#『源氏物語』に登場する架空の人物。第三部「宇治十帖」後半の最重要人物の一人。

== 巻名 ==

巻名は、[[薫]]の庇護を受けていた女が[[匂宮]]に連れ出されて[[淀川|宇治川]]対岸の隠れ家へ向かう途中に詠んだ和歌「橘の小島の色はかはらじをこのうき舟ぞゆくへ知られぬ」(橘の茂る小島の色のようにあなたの心は変わらないかも知れないけれど、水に浮く小舟のような私の身は不安定でどこへ漂ってゆくかも知れません)に因む。


#『源氏物語』に登場する架空の人物。第三部「宇治十帖」の中心人物の一人で、その呼称は巻名の由来ともなった上記の和歌による。詳細は下記。

[[京都大学]]蔵本、[[大阪市立大学]]蔵本、[[天理大学]][[天理図書館]]蔵本など、[[梗概書]]『[[源氏小鏡]]』の中に本巻に「[[狭筵|さむしろ]]」の異名を挙げているものがある。

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{{源氏物語五十四帖}}

==帖のあらすじ==

==帖のあらすじ==

[[File:Ukifune And Niou Screen MET DT1671.jpg|thumb|left|400px|源氏物語図屏風・「浮船」]]

[[薫]]27歳の春の話。

[[薫]]27歳の春の話。




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二月、ようやく宇治を訪れた薫は、浮舟の思い悩むさまを女として成長したものと誤解して喜び、京へ迎える約束をする。宮中の詩宴の夜、浮舟を思って古歌を口ずさむ薫の様子に焦りを覚えた匂宮は、雪を冒して再び宇治に赴き、浮舟を[[淀川|宇治川]]対岸の隠れ家へ連れ出し、そこで二日間を過ごした。

二月、ようやく宇治を訪れた薫は、浮舟の思い悩むさまを女として成長したものと誤解して喜び、京へ迎える約束をする。宮中の詩宴の夜、浮舟を思って古歌を口ずさむ薫の様子に焦りを覚えた匂宮は、雪を冒して再び宇治に赴き、浮舟を[[淀川|宇治川]]対岸の隠れ家へ連れ出し、そこで二日間を過ごした。




使

[[|]]使



退

薫に恨みの歌を送られ、匂宮との板ばさみになって進退窮まった浮舟はついに死を決意する。死を間近に、薫や匂宮、母や中君を恋しく思いながら、浮舟は匂宮と母にのみ最後の文を書きしたためた。


:''[[鐘]]の音の絶ゆるるひびきに音をそへて わが世尽きぬと君に伝へよ''



==人物としての浮舟==

==人物としての浮舟==


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浮舟を再発見した薫を拒絶して、源氏物語は余韻の尽きない幕切れを迎える。

浮舟に話しかける時、薫も匂宮も引歌をしない。これは東育ちの受領の子で音楽の嗜みもない浮舟が、二人から宮廷的な教養と趣味を身につけていない田舎者として見下され軽んじられていたことの傍証であるとの見方がある<ref>伊東祐子「源氏物語の引歌の種々相」(『源氏物語の探求 第十二輯』風間書房 1987)</ref>(ただし浮舟自身が詠んだ和歌は多い)



=== 考察 ===


[[]]

浮舟に話しかける時、薫も匂宮も引歌をしない。これは[[国]]育ちの受領の子で音楽の嗜みもない浮舟が、二人から宮廷的な教養と趣味を身につけていない田舎者として見下され軽んじられていたことの傍証であるとの見方がある<ref>伊東祐子「源氏物語の引歌の種々相」(『源氏物語の探求 第十二輯』風間書房 1987)</ref>。



ただし浮舟自身が詠んだ和歌は多く、源氏物語の中での詠歌の数を人物別に分けて多いものから順に並べると、浮舟は以下のように女性登場人物の中では最も多い<ref>神作光一「「千年紀『源氏物語』の和歌を読む」にあたって(新連載) 」本阿弥書店編『歌壇』第22巻第10号(通号第257号)、本阿弥書店、2008年(平成20年)10月、pp. 96-100。 </ref>。

なお「[[あさきゆめみし]]」ではこの幻は[[光源氏]]の霊として描かれており、後には身の処遇に迷う浮舟に仏門の道を指し示す導き手としても登場している。

# 浮舟 26首

# [[紫の上]] 23首

# [[明石の御方]] 22首

# [[玉鬘 (源氏物語)|玉鬘]] 20首

# [[宇治の中君]] 19首

# [[宇治の大君]] 13首

# [[藤壺]] 12首

# [[六条御息所]] 11首

# [[落葉の宮]] 10首

# [[朧月夜 (源氏物語)|朧月夜]] 9首


亡き姉大君の身代わりの「人形(ひとがた)」にしばしば例えられる。「流される」人物である一方、自殺の決意は彼女の自我の芽生えともとれる。


=== 登場する巻と呼称 ===

浮舟は直接には以下の巻で登場し、本文中ではそれぞれ以下のように表記されている<ref>稲賀敬二「作中人物解説 浮舟」池田亀鑑編『源氏物語事典下巻』東京堂出版 1960年(昭和35年)(合本は1987年(昭和62年)3月15日刊)、p. 322。 ISBN 4-4901-0223-2 </ref><ref>「浮舟」『源氏物語事典』 林田孝和・竹内正彦・針本正行ほか編、大和書房、2002年(平成14年)、p. 67。ISBN 4-4798-4060-5 </ref>。

*[[宿木|第49帖 宿木]] 君、常陸前司殿の姫君、常陸殿、形代、客人

*[[東屋 (源氏物語)|第50帖 東屋]] 君、客人、姫君、御方、人形、本尊、西の御方、内の御方、娘、常陸守の娘

*第51帖 浮舟 君、娘、常陸守の娘、女君、御前

*[[蜻蛉 (源氏物語)|第52帖 蜻蛉]] 常陸守の娘、女君、上、宮の御二条の北の方の御妹(おとうと)

*[[手習 (源氏物語)|第53帖 手習]] 君、姫君、御前、故八の宮の御娘、御妹(おとうと)

*[[夢浮橋|第54帖 夢浮橋]] 君、姫君、女人、入道の姫君


==== 浮舟という呼び名 ====

上記に見られるように、源氏物語の本文中ではこの人物は「姫」「娘」「女」などとさまざまに呼ばれるが固有の名称は存在せず、この人物を「浮舟」と呼ぶことは無い。この人物を「浮舟」と呼ぶことは、[[空蝉_(源氏物語)|空蝉]]、[[夕顔_(源氏物語)|夕顔]]、[[末摘花 (源氏物語)|末摘花]]、[[花散里]]、[[玉鬘 (源氏物語)|玉鬘]]、[[真木柱]]等と同様に「その巻における描写が印象的な人物に巻名を冠して呼ぶ」事例の一つであると言えるが、この「浮舟」の場合やや特殊な事情が存在する。この人物を「浮舟」と呼ぶことについて確認出来る最も早い時期に成立したと考えられる文献は、この人物を「宇治の大将のうき舟の女君」と呼んでいる[[菅原孝標女]]の作とされる[[更級日記]]である。鎌倉時代初期に成立したとみられる[[無名草子]]ではこの人物を「手習の君」と呼んでおり、[[源氏物語古系図|古系図]]では最も古くに成立したと見られる[[九条家本源氏物語系図|九条家本]]から時代的に新しい[[天文本源氏物語系図|天文本]]に至るまで「てならひの君」と表記されている[[秋香台本源氏物語系図|秋香台本]]などわずかな例外を除いてほぼ一貫して「手習三君」と表記されている。古注釈書ではこの人物を「手習の君」と呼ぶことが多く<ref>「浮舟」西沢正史編『源氏物語作中人物事典』東京堂出版、2007年(平成19年)1月、p. 243。 ISBN 978-4-490-10707-4 </ref>、「浮舟」と呼ぶほかに浮舟以外のこの人物が主要な人物として登場する巻の巻名を冠して「手習の君」・「東屋の君」などと呼ばれることもある。「[[すみれ草]]」ではこれらについて「一般的でなくわかりにくい」として現在一般的になった「浮舟」という呼称に改めている。



==浮舟を扱った作品==

==浮舟を扱った作品==


*能

===能===

**「[[浮舟 (能)|浮舟]](四番目物、執心女物)

*[[浮舟 (能)|浮舟]](四番目物、執心女物)

*テレビドラマ


**「浮舟」 - [[1957年]]4月7日「[[東芝日曜劇場]]」内放送、作:[[北條秀司]]、出演:[[松本幸四郎 (9代目)|松本幸四郎]](薫)、[[守田勘弥]](匂宮)、[[岡田茉莉子]](浮舟)

===テレビドラマ===

*映画

**「源氏物語・浮舟 - [[1957年]]、監督・脚本:[[衣笠貞之助]]、作:北條秀司、出演:[[長谷川一夫]](薫)、[[山本富士子]](浮舟)、[[乙羽信子]](中君)、[[市川雷蔵 (8代目)|市川雷蔵]](匂宮

*浮舟 - [[1957年]]4月7日「[[東芝日曜劇場]]」内放送、作:[[北條秀司]]、出演:[[松本幸四郎 (9代目)|松本幸四郎]](薫)、[[守田勘弥]](匂宮)、[[岡田茉莉子]](浮舟


**「源氏物語より『浮舟』 - [[1998年]]、監督:[[篠田正浩]]、人形制作・人形舞:ホリ・ヒロシ、声の出演:[[岩下志麻]](紫式部)、[[葉月里緒奈|葉月里緒菜]](浮舟) / [http://www.genji-daigaku.com/museum/museum/museum.html 宇治市源氏物語ミュージアム]館内で上映されている20分余の人形劇

===映画===

*舞台

*源氏物語・浮舟 - 1957年、監督・脚本:[[衣笠貞之助]]、作:北條秀司、出演:[[長谷川一夫]](薫)、[[山本富士子]](浮舟)、[[乙羽信子]](中君)、[[市川雷蔵 (8代目)|市川雷蔵]](匂宮) / [[平安神宮]]で撮影<ref>平安神宮百年史編纂委員会『平安神宮百年史 年表編』 p.225, </ref>

**「源氏物語千年紀頌 『夢の浮橋』 - [[2008年]]‐[[2009年]]、[[宝塚歌劇団]]・[[月組 (宝塚歌劇)|月組]]公演

*源氏物語より『浮舟』 - [[1998年]]、監督:[[篠田正浩]]、人形制作・人形舞:ホリ・ヒロシ、声の出演:[[岩下志麻]](紫式部)、[[葉月里緒奈|葉月里緒菜]](浮舟) / [http://www.genji-daigaku.com/museum/museum/museum.html 宇治市源氏物語ミュージアム]館内で上映されている20分余の人形劇

:脚本・演出:[[大野拓史]]、出演:[[瀬奈じゅん]](匂宮)、[[霧矢大夢]](薫)、[[羽桜しずく]](浮舟)


*楽曲

===舞台===


**-[[]][[]][[]] [[]][[]][[]]

*舞踏劇『浮舟と薫の君』 - [[1973年]]、[[宝塚歌劇団]]・[[星組 (宝塚歌劇)|星組]]

**「浮舟 - [[2002年]]、歌:[[GO!GO!7188]]、アルバム「鬣」に収録

**作・演出:[[酒井澄夫]]、出演:[[安奈淳]](薫)、[[衣通真由美|衣通月子]](浮舟)、[[但馬久美]](匂宮)/ 宝塚歌劇団の作品については「[[源氏物語 (宝塚歌劇)]]」を参照

*源氏千年夢絵巻 輪舞曲 〜薫と浮船〜 - [[2008年]]、[[OSK日本歌劇団]]

**作・演出:水口一夫、演出・振付:[[花柳錦之輔 (3代目)|花柳錦之輔]]、出演:[[桜花昇ぼる]](薫)、[[高世麻央]](匂宮)、[[朝香櫻子]](浮舟)/ 「レビュー in KYOTO II」の第一部

*源氏物語千年紀頌 『夢の浮橋』 - 2008年‐[[2009年]]、宝塚歌劇団・[[月組 (宝塚歌劇)|月組]]

**作・演出:[[大野拓史]]、出演:[[瀬奈じゅん]](匂宮)、[[霧矢大夢]](薫)、[[中島亜梨沙|羽桜しずく]](浮舟)


===楽曲===

*新浮舟 -[[地歌]]、[[箏曲]][[手事物]] [[松浦検校]]作曲、[[八重崎検校]][[箏]]手付

*浮舟 - [[2002年]]、歌:[[GO!GO!7188]]、アルバム「鬣」に収録



== 脚注 ==

== 脚注 ==

{{reflist}}

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==外部リンク==

== 外部リンク ==

*[[渋谷栄一]]による定家本の[http://www.sainet.or.jp/~eshibuya/text51.html 本文]・[http://www.sainet.or.jp/~eshibuya/modern51.html 現代語訳]

*[http://www.aozora.gr.jp/cards/000052/card5068.html 『源氏物語 53 浮舟』与謝野 晶子訳:新字新仮名]([[青空文庫]])

* {{青空文庫|000052|5068|新字新仮名|源氏物語 53 浮舟}}([[与謝野晶子]]訳)

*[http://nohmask.exblog.jp/i8 能面 長澤重春能面集:小面]

*[https://nohmask.exblog.jp/i8 能面 長澤重春能面集:小面]


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[[Category:源氏物語の巻]]

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[[Category:架空の尼僧]]


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2022年11月10日 (木) 16:11時点における最新版

源氏物語五十四帖
各帖のあらすじ
 帖     名     帖     名   
1 桐壺 28 野分
2 帚木 29 行幸
3 空蝉 30 藤袴
4 夕顔 31 真木柱
5 若紫 32 梅枝
6 末摘花 33 藤裏葉
7 紅葉賀 34 若菜
8 花宴 35 柏木
9 36 横笛
10 賢木 37 鈴虫
11 花散里 38 夕霧
12 須磨 39 御法
13 明石 40
14 澪標 41 雲隠
15 蓬生 42 匂宮
16 関屋 43 紅梅
17 絵合 44 竹河
18 松風 45 橋姫
19 薄雲 46 椎本
20 朝顔 47 総角
21 少女 48 早蕨
22 玉鬘 49 宿木
23 初音 50 東屋
24 胡蝶 51 浮舟
25 52 蜻蛉
26 常夏 53 手習
27 篝火 54 夢浮橋



(一)517

(二)

[]





[]


27





使

退

 

[]


宿6

20




[]


[1]

[2]

(一)26

(二)23

(三)22

(四)20

(五)19

(六)13

(七)12

(八)11

(九)10

(十)9


[]


[3][4]

49 宿 殿殿

50  西

51  

52  

53  

54  

[]


[5]

浮舟を扱った作品[編集]

[編集]

  • 浮舟(四番目物、執心女物)

テレビドラマ[編集]

映画[編集]

舞台[編集]

楽曲[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 伊東祐子「源氏物語の引歌の種々相」(『源氏物語の探求 第十二輯』風間書房 1987)
  2. ^ 神作光一「「千年紀『源氏物語』の和歌を読む」にあたって(新連載) 」本阿弥書店編『歌壇』第22巻第10号(通号第257号)、本阿弥書店、2008年(平成20年)10月、pp. 96-100。
  3. ^ 稲賀敬二「作中人物解説 浮舟」池田亀鑑編『源氏物語事典下巻』東京堂出版 1960年(昭和35年)(合本は1987年(昭和62年)3月15日刊)、p. 322。 ISBN 4-4901-0223-2
  4. ^ 「浮舟」『源氏物語事典』 林田孝和・竹内正彦・針本正行ほか編、大和書房、2002年(平成14年)、p. 67。ISBN 4-4798-4060-5
  5. ^ 「浮舟」西沢正史編『源氏物語作中人物事典』東京堂出版、2007年(平成19年)1月、p. 243。 ISBN 978-4-490-10707-4
  6. ^ 平安神宮百年史編纂委員会『平安神宮百年史 年表編』 p.225,

外部リンク[編集]