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三重水素

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トリチウムから転送)
三重水素
核種の一覧における三重水素の位置

核種の一覧

概要
名称、記号 トリチウム,3H
中性子 2
陽子 1
核種情報
天然存在比 10-18[1]
半減期 12.32
崩壊生成物 3He
同位体質量 3.0160492 u
スピン角運動量 1/2+
余剰エネルギー 14,949.794± 0.001 keV
結合エネルギー 8,481.821± 0.004 keV

崩壊モード

崩壊エネルギー

ベータ崩壊 0.018590 MeV

: tritium: T31212.323Heβ72 PBq7.2[ 1][2]

2H3Hheavy hydrogen (: triton) 

31.51

[]


1H112H (0.0115%[ 2][3]) [ 3]60kg50[4]4710-22

HTO[ 4][ 5]HTOHTCH3T3 Bq/L[ 6][ 7]

72 PBq7.2[ 8][2][ 9][ 10][9]

D-T[10]

1[11][12]2[ 11][13][14]

[]


: tritium: Tτρίτος(trítosTD220Tn

[15][16][17][18]

3-: hydrogen-3: 3H使

[]


1929

1933

19343

1934

19351Norsk hydro Enters

1942

19457165.55×1016Bq

1945CANDU

1949V. Faltings

1950131

1950PUREX

19521112.4×1020Bq

1953142

1953812

195431

196131

196385調

1964西441

1970使

19772

19781×1016 Bq/

19811

19932×1016 Bq/

20021DOENNSA[19]

20051

2011311

2016240kmen:Indian Point Energy Center102[19]

2017119

2023824

[]

使

β18.6 keV β3 (3He) beta-emitter12.32[20][21]


 5.7 keV βHTO[22][ 12][ 13]

[]


DTD-TD-D


1952D-D[23]ITER

[]


HDODHTO

235 (235U) 239 (239Pu) 使 10B


200 (2×1014 Bq)20 (2×1013 Bq) [24]HTOH2O, HHO[ 14][ 15][26][27][ 16][ 17]

Li4 (4He) [28][ 18]2



[ 19]

[]


0.2  (= ~0.2 /cm2sec)  5.1×1014 m2 72 PBq (= ~72×1015 Bq)[2]1018 1 TU (Tritium Unit) 


[]


1996Institute for Energy and Environmental Research19551988225 kg199675 kg CANDU使25002.5 kg[30]

用途[編集]

トリチウムライトのキーホルダー

トリチウムは1グラムあたり300万円(2004年)と高価なため、これに見合う用途に限られる。

原子爆弾の出力増強剤(ブースト型核分裂兵器
原子爆弾のエネルギ―を重水素-トリチウム水素の混合ガスに照射してD-T反応を起こし、それで生じた中性子で核分裂反応を促進し核爆弾の威力を増強したもの。爆弾1個当たり2 g程度のトリチウムを使用し、壊変で消滅して失われる分を補給するため8年に1回トリチウムガスを交換する。また、アイビー作戦マイク実験においては、核融合装置(水素爆弾)内の液体重水素を核融合反応させるために、テラー・ウラム型デザインの一環として、セカンダリーにトリチウムとプルトニウム製のスパーク・プラグが用いられた。
中性子爆弾原料
ブースト型と同様にD-T反応を利用した爆弾で、爆発の威力を増強せず、中性子の放出を増加させることを目指している。中性子は質量がほぼ等しい水素との相互作用が大きい。この性質を利用し水素原子を多く含む生体を殺傷し、建物などを破壊しない兵器として開発された。
核融合炉燃料
核融合炉の一種で実用化に最も近い重水素とトリチウム核が融合するD-T反応で生じるエネルギーを利用するトカマク型炉で使われる。
本炉では点火時に約3 kg程度のトリチウムの使用が予定され、これはCANDU炉から供給することを予定している。
同様にレーザー核融合用燃料ペレットに核燃料として重水素と共に封入されている事が多く、実用発電炉では重水素と三重水素混合超低温固体燃料を使う事も構想されている。
生体試験用トレーサー/オートラジオグラフィー用試薬
生体分子の元素の一部を検出感度の高い放射性物質に置き換えた化合物で生体中のその分子の移動を求めるのがトレーサー法で分子の2次元画像で集積位置を求めるのがオートラジオグラフィー法である。対象が有機物質の場合、放射性物質として14Cを使う方法とトリチウムを使う方法があるが比放射能高いトリチウムが多く用いられる。
またトリチウムが放出するβ線の飛程が短い事から分解能の高い画像が得られる。用途にチミジンがDNA合成量、ウリジルがRNA合成量の定量に使用される。またチミジンが細胞のDNA合成期である細胞周期のS期に取り込まれることを利用した研究が行われている。
トリチウムライト
トリチウムが放出するβ線を蛍光物質にあてて発光させるライトで腕時計の文字盤や銃器の暗視スコープなどに使用されている。また小銃などに用いられるドットサイトの光源として使われる例もある。
電池
トリチウムライトの光を太陽電池素子に照射することで電気を作る原子力電池の一種。
年代測定
雨水中のトリチウムの初期濃度Coと地下水の採取位置での濃度Ctならびにトリチウムの半減期に 年数=半減期・log[Co/Ct]/log(2) という関係がある、これより地下水の年代が求められる。富士山の湧き水の年代などが測定されている。

トリチウム水の環境への放出[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 1 PBq(1ペタベクレル)=1015 Bq(1千兆ベクレル)
  2. ^ 温帯地方の天然水における割合。不確かさは±0.0070%。
  3. ^ 半減期12.32年
  4. ^ 水分子は水素原子2個と酸素原子1個からなることから、その化学式は良く知られているように、
    である。これを全原子を明示する形に冗長に書けば、
    となる。地球上に存在する大半の水素と酸素の質量数はそれぞれ1と16であるので、質量数を明示する形でさらに冗長に書けば、
    3
    と書ける。さらに、三重水素 には特別な略記号が与えられていた。すなわち、は単純にに置き換えて良い。したがって、
    と書ける。ここで最後に、左肩の質量数の添字を省略すれば、トリチウム水を表す水分子の式は、


    ^  HTO H2OHTHTO[5][6]調

    ^ 2320145121900 Bq/L[7]1991291991218490 Bq/L199011190 Bq/L

    ^ IAEAGNIPGlobal Network for Isotopes in PrecipitationGNIP調NETS DB

    ^ 1 PBq1=1015 Bq1

    ^ 200[8]

    ^ 21977199631ATOMICA

    ^ ( 1995, pp. 9f.) ICRP

    ^ 

    ^  13 Bq/L [8] 3He CNIC

    ^ 殿使

    ^ [25]

    ^ CANDUCANDU使CANDU使使

    ^ 2015
  5. ^ ほか、工藤 (1985) に詳しい
  6. ^ 本来、原子炉内で核分裂に寄与しない中性子は、燃料棒などに含まれるウラン238プルトニウム239に核変換させるために利用させるため、この方法ではプルトニウムを作る代わりにトリチウムを作るということになり、プルトニウム価格に応じて高くなる [29]

出典[編集]



(一)^ "Tritium". Encyclopedia Britannica. Britannica. 2021415

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[]

外部リンク[編集]