「DONET」の版間の差分
編集の要約なし |
編集の要約なし |
||
(15人の利用者による、間の40版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
[[File:RuptureAreasNankaiMegathrust.png|thumb|220px|東海・[[東南海地震|東南海]]・[[南海地震]]震源域、この'''C領域'''がDONETの観測域]] |
|||
'''DONET'''とは、 |
'''DONET'''とは、'''D'''ense '''O'''ceanfloor '''N'''etwork system for '''E'''arthquakes and '''T'''sunamisの略称で[[ 海洋研究開発機構]]により構築され[[防災科学技術研究所]]が運用管理する[[熊野灘]]沖の[[南海トラフ]]で発生すると想定されている[[東南海地震]]の想定震源域の一部に敷設されている'''地震・津波観測監視システム'''のひとつ。DONET1とも表記することがある。なお、南海地震の想定震源域には、[[DONET2]]が敷設されている。
|
||
== |
== 概要 == |
||
[[File:DONET Owase land station.jpg|thumb|DONET尾鷲陸上局]] |
|||
⚫ | #地震によって発生する震動及び津波の発生を震源に近い場所で捉え、陸上観測点より10数秒早く検知し被害を最小限に抑えるための警報を発する。 |
||
観測ケーブルの基点となる陸上局は[[三重県]][[尾鷲市]]古江町にあり、紀伊半沖合約125km先の水深約1,900〜4,300mの海底に総延長約250kmのループ上の基幹ケーブルが敷設されている。ケーブルの途中5カ所には拡張用分岐装置があり、それぞれ4つ合計20カ所の観測点が接続され、稠密に配置された観測点により地震や津波等のリアルタイム観測が高精度で行われている。 |
|||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | * [[2006年]] [[文部科学省]]から海洋研究開発機構への補助事業として「地震・津波観測監視システム開発」の研究開発着手。 |
||
⚫ | |||
観測データは陸上局から専用回線によりアルタイムで防災科学技術研究所、[[気象庁]]に配信され[[緊急地震速報]]、[[津波警報]]、地震の震源解析などの為に利用されている。 |
|||
⚫ | |||
[[海洋研究開発機構]]が運用管理し、[[海溝型地震]]と地震により発生する[[津波]]を常時観測監視するための、陸上局とケーブル式の海底地震計や水圧計などにより構成されている。 |
|||
[[三重県]][[尾鷲市]]に設置された陸上局から、[[紀伊半島]]の沖約125km先まで総延長約250kmの基幹ケーブルをループ状に敷設した地震・津波観測システムで、途中5箇所の拡張用分岐装置に、それぞれ4つの観測点が接続されている。 |
|||
観測機器の敷設には、潜行深度を4,500mまで対応させたROV[[ハイパードルフィン]]と支援母船として海洋調査船の[[かいよう]]が使用された<ref>{{PDFlink|[http://www.jamstec.go.jp/maritec/j/blueearth/2012/program/pdf/oral/BE12-07.pdf DONET 運用開始と観測網展開計画]}} 海洋研究開発機構</ref>。 |
|||
⚫ | |||
#通信用海底ケーブル技術を用いた高信頼性能を持つ両端陸揚げの基幹ケーブルシステム。 |
#通信用海底ケーブル技術を用いた高信頼性能を持つ両端陸揚げの基幹ケーブルシステム。 |
||
#海底における科学観測を実施するために必要な機能が集約されたノード。 |
#海底における科学観測を実施するために必要な機能が集約されたノード。 |
||
#最新鋭のセンサー群から構成される交換可能な観測装置。 |
#最新鋭のセンサー群から構成される交換可能な観測装置。 |
||
=== 地震計 === |
|||
東南海・南海地震の想定震源域では、超低周波地震が発生している事を防災科学技術研究所の[[高感度地震観測網]]が捉えていたが、震源から離れた陸上の観測点であるため滑り箇所(断層)の特定までは行えていなかった。この超低周波地震で発生する周期50秒から1秒の長周期帯域の地震波の観測を、想定震源近くの複数観測で行い高品位のデータを採集することが必要とされたが、従来から海底地震計として使用されてきた自己浮上型海底地震計(OBS)は、長周期帯域の地震波の観測能力が無いほか、海底広帯域地震計は海底の水流の影響で揺り動かされるため、観測データはノイズに埋もれ高品位のデータは得ることが出来なかった。この問題を解決するため、地震計は海底下を約1m掘削し埋設される。特に、水深1,500mよりも浅い海域では、[[底引き網]]からケーブルと観測機器を守る必要性も生じる。 |
|||
* 強震計 - Metrozet TSA-100S<ref>{{PDFlink|[https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/eew-hyoka/t04/20121001_siryou2.pdf 緊急地震速報評価・改善検討会 技術部会(第4回)資料2 説明資料]}}</ref> |
|||
⚫ | |||
統合国際深海掘削計画(IODP)「南海トラフ地震発生帯掘削計画ステージ4に基づき[[ちきゅう]]が敷設した超深度掘削孔の計測機器と接続(予定)。 |
|||
⚫ | # 地震によって発生する震動及び津波の発生を震源に近い場所で捉え、陸上観測点より10数秒早く検知し被害を最小限に抑えるための警報を発する。 |
||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | * [[2006年]] [[文部科学省]]から[[海洋研究開発機構]]への補助事業として「地震・津波観測監視システム開発」の研究開発着手<ref>[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu5/009/siryo/08090829/004.htm 地震・津波リアルタイムモニタリングシステム高度化(平成20年8月現在)] 文部科学省</ref>。 |
||
⚫ | |||
* [[2013年]] [[ちきゅう]]が設置した長期孔内観測装置と接続、リアルタイム監視を開始<ref>[https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20130205/index.html 地球深部探査船「ちきゅう」により設置した長期孔内観測装置を使ったリアルタイム観測を開始] 2013年2月5日 (独)海洋研究開発機構</ref>。 |
|||
* [[2014年]] 5月30日から20観測点のうち4地点からの観測データが入手できない状態であることが発表された<ref>[https://www.jamstec.go.jp/donet/j/topics/20140605/ DONET観測データの一部欠測について] 海洋研究開発機構 2014年6月5日</ref>。 |
|||
* [[2015年]]3月31日 2014年5月末から欠測していた観測点の機器を交換し、観測データが正常に配信されていることが発表された<ref>[https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20150331/ 地震・津波観測監視システム(DONET)の復旧について] 海洋研究開発機構 2015年3月31日</ref>。 |
|||
* [[2016年]]4月1日 管理主体が海洋研究開発機構から防災科学技術研究所に移管された<ref>{{PDFlink|[http://www.bosai.go.jp/press/2016/pdf/20160401_01_press.pdf 地震・津波観測監視システム「DONET」の移管について] 防災科学技術研究所 2016年4月1日}}</ref>。 |
|||
== 汎用 == |
|||
DONETで得られた情報は即時、[[東海旅客鉄道|JR東海]]・[[東海道新幹線]]の[[新幹線総合指令所]]や[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]・[[山陽新幹線]]の[[運転指令所]]へ転送提供され、必要に応じて[[新幹線]]を[[非常ブレーキ|緊急停止]]させるために活用される<ref>[http://www.bosaijoho.jp/association/item_7905.html 〈新幹線〉防災科研の海底観測網データ、新幹線の緊急停止に活用] [[防災情報新聞]]2017年12月12日</ref>。 |
|||
== 類似の観測網 == |
== 類似の観測網 == |
||
* [[ |
* [[DONET2]] - [[紀伊水道]]から四国沖に敷設され、南海地震の想定震源域を観測 |
||
*[[DONET3|N-net]] - [[日向灘]](都井岬)から四国沖(室戸岬)を結ぶ海域において整備が進められている地震津波観測網 |
|||
* [[日本海溝海底地震津波観測網]]<ref>{{PDFlink|[ |
* [[日本海溝海底地震津波観測網]]<ref>{{PDFlink|[https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/haihu89/siryo3-4-2.pdf 日本海溝海底地震津波観測網の構築機関について]}}</ref> - [[東北地方太平洋沖地震]]をきっかけとして整備済み |
||
* 室戸岬沖 |
* 室戸岬沖 |
||
* 御前崎沖 |
* 御前崎沖 |
||
29行目: | 43行目: | ||
== 出典 == |
== 出典 == |
||
* [ |
* [https://www.seafloor.bosai.go.jp/ 海底海底地震津波観測網] 防災科学技術研究所 |
||
* [https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20110826_2/ 「地震・津波観測監視システム(DONET)」の本格運用開始について] (独)[[海洋研究開発機構]] |
|||
* {{PDFlink|[ |
* {{PDFlink|[https://www.jma.go.jp/jma/press/1203/02b/sankou_system_kousei.pdf 海底地震計システムの構成]}} |
||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
||
<references /> |
<references /> |
||
== 関連項目 == |
|||
* [[地震観測網]] |
|||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
* [ |
* [https://www.jamstec.go.jp/ 海洋研究開発機構] |
||
** [ |
** [https://www.jamstec.go.jp/donet/j/donet/ 地震・津波観測監視システム] |
||
|
* [https://www.bosai.go.jp/ 防災科学技術研究所] |
||
* [ |
** [https://www.seafloor.bosai.go.jp/ 海底海底地震津波観測網] |
||
* [http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/kyoukun/rep/1944-tounankaiJISHIN/index.html 災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成19年3月 (1944 東南海地震・1945 三河地震)] 内閣府 中央防災会議 |
|||
{{南海トラフ巨大地震}} |
{{南海トラフ巨大地震}} |
||
⚫ | |||
{{日本の防災情報}} |
{{日本の防災情報}} |
||
⚫ | |||
⚫ | |||
⚫ | |||
{{DEFAULTSORT: |
{{DEFAULTSORT:とうねつと}} |
||
[[Category:地震学]] |
[[Category:地震学]] |
||
[[Category:災害情報]] |
[[Category:災害情報]] |
||
52行目: | 71行目: | ||
[[Category:情報システム]] |
[[Category:情報システム]] |
||
[[Category:日本の防災]] |
[[Category:日本の防災]] |
||
⚫ | |||
⚫ |
2023年6月9日 (金) 00:11時点における最新版
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d8/RuptureAreasNankaiMegathrust.png/220px-RuptureAreasNankaiMegathrust.png)
概要[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/36/DONET_Owase_land_station.jpg/220px-DONET_Owase_land_station.jpg)
地震計[編集]
東南海・南海地震の想定震源域では、超低周波地震が発生している事を防災科学技術研究所の高感度地震観測網が捉えていたが、震源から離れた陸上の観測点であるため滑り箇所︵断層︶の特定までは行えていなかった。この超低周波地震で発生する周期50秒から1秒の長周期帯域の地震波の観測を、想定震源近くの複数観測で行い高品位のデータを採集することが必要とされたが、従来から海底地震計として使用されてきた自己浮上型海底地震計︵OBS︶は、長周期帯域の地震波の観測能力が無いほか、海底広帯域地震計は海底の水流の影響で揺り動かされるため、観測データはノイズに埋もれ高品位のデータは得ることが出来なかった。この問題を解決するため、地震計は海底下を約1m掘削し埋設される。特に、水深1,500mよりも浅い海域では、底引き網からケーブルと観測機器を守る必要性も生じる。 ●強震計 - Metrozet TSA-100S[2]目的[編集]
(一)地震によって発生する震動及び津波の発生を震源に近い場所で捉え、陸上観測点より10数秒早く検知し被害を最小限に抑えるための警報を発する。 (二)想定震源域で発生する陸上では捉えられない微小な地震を、多点同時、リアルタイムで観測し地震発生メカニズムを解明する。略歴[編集]
●2006年 文部科学省から海洋研究開発機構への補助事業として﹁地震・津波観測監視システム開発﹂の研究開発着手[3]。 ●2011年8月26日 本格運用開始。 ●2013年 ちきゅうが設置した長期孔内観測装置と接続、リアルタイム監視を開始[4]。 ●2014年5月30日から20観測点のうち4地点からの観測データが入手できない状態であることが発表された[5]。 ●2015年3月31日 2014年5月末から欠測していた観測点の機器を交換し、観測データが正常に配信されていることが発表された[6]。 ●2016年4月1日 管理主体が海洋研究開発機構から防災科学技術研究所に移管された[7]。汎用[編集]
DONETで得られた情報は即時、JR東海・東海道新幹線の新幹線総合指令所やJR西日本・山陽新幹線の運転指令所へ転送提供され、必要に応じて新幹線を緊急停止させるために活用される[8]。類似の観測網[編集]
- DONET2 - 紀伊水道から四国沖に敷設され、南海地震の想定震源域を観測
- N-net - 日向灘(都井岬)から四国沖(室戸岬)を結ぶ海域において整備が進められている地震津波観測網
- 日本海溝海底地震津波観測網[9] - 東北地方太平洋沖地震をきっかけとして整備済み
- 室戸岬沖
- 御前崎沖
- 釧路・十勝沖
出典[編集]
- 海底海底地震津波観測網 防災科学技術研究所
- 「地震・津波観測監視システム(DONET)」の本格運用開始について (独)海洋研究開発機構
- 海底地震計システムの構成 (PDF)
脚注[編集]
- ^ DONET 運用開始と観測網展開計画 (PDF) 海洋研究開発機構
- ^ 緊急地震速報評価・改善検討会 技術部会(第4回)資料2 説明資料 (PDF)
- ^ 地震・津波リアルタイムモニタリングシステム高度化(平成20年8月現在) 文部科学省
- ^ 地球深部探査船「ちきゅう」により設置した長期孔内観測装置を使ったリアルタイム観測を開始 2013年2月5日 (独)海洋研究開発機構
- ^ DONET観測データの一部欠測について 海洋研究開発機構 2014年6月5日
- ^ 地震・津波観測監視システム(DONET)の復旧について 海洋研究開発機構 2015年3月31日
- ^ 地震・津波観測監視システム「DONET」の移管について 防災科学技術研究所 2016年4月1日 (PDF)
- ^ 〈新幹線〉防災科研の海底観測網データ、新幹線の緊急停止に活用 防災情報新聞2017年12月12日
- ^ 日本海溝海底地震津波観測網の構築機関について (PDF)