トルコ軍
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トルコ軍 Turk Silahl Kuvvetleri | |
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創設 | |
派生組織 |
主力: 内務省所属: |
本部 | アンカラ |
指揮官 | |
最高司令官 | レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領 |
国防大臣 | フィクリ・イシュク |
参謀長 | フルシ・アカル |
総人員 | |
兵役適齢 | 15ヶ月の徴兵(大卒者は12ヶ月) |
徴兵制度 | あり |
適用年齢 | 18歳~40歳の男性(皆兵制) |
現総人員 | 650,000人 |
財政 | |
予算 | 74.4億米ドル(2009年) |
軍費/GDP | 5.3%(2005年推計)[2] |
産業 | |
国内供給者 |
List of Major Domestic Suppliers |
国外供給者 |
List of Major Foreign Suppliers アメリカ合衆国韓国 ドイツ イギリス ロシア フランス 中国 パキスタン ウクライナ イスラエル オーストラリア インド カナダ |
年間輸入 | $1,540 million (2014)[3] |
年間輸出 | $1,647 million (2014)[4] |
関連項目 | |
歴史 |
トルコ軍︵トルコぐん、トルコ語: Türk Silahlı Kuvvetleri︶は、ヨーロッパ大陸と小アジアにまたがるトルコ共和国の軍隊。兵員数は約65万人で、兵員規模に関しては北大西洋条約機構︵NATO︶加盟国で第2位に位置する。
最高指揮権は平時には大統領に属し、戦時には参謀総長︵Genelkurmay Başkanı︶に属すると憲法によって規定されている。
参謀総長の地位は事実上、陸軍の指定席である。独自の核戦力は保持していないが、2005年まではアメリカ合衆国とニュークリア・シェアリングを行い、核抑止を行っていた。またキューバ危機の解決策として撤去されるまで、核弾頭を搭載したアメリカ空軍の準中距離弾道ミサイル︵MRBM︶﹁ジュピター﹂がソ連に向けて配備されていた。
国父アタテュルク以来の国是である世俗主義原則などの体制の守護者を任じ、1960年、1980年の2度の軍事クーデターと2016年にも軍事クーデター未遂を起こすなど、政治色の強い軍隊として知られ、現在でも高い政治的発言力を持つ。
「トルコ#軍事」も参照
実戦と対外関係[編集]
第一次世界大戦でのオスマン帝国敗北後、ギリシャやアルメニア、フランスの侵攻・占領軍と戦い、現在のトルコ共和国の確立と領土確保の原動力となった︵トルコ革命︶。第二次世界大戦では、末期に日本に形式的な宣戦布告をしたのみで、中立を維持した。
戦後はソ連の脅威に対抗するため米欧と協調して朝鮮戦争に派兵したほか、NATOに参加して南からソ連・東欧諸国︵ワルシャワ条約機構︶を牽制した。一方、同じNATO加盟国であるギリシャとの緊張は続き、キプロス紛争に介入。現在も北キプロスに駐留している。
またアフガニスタンにおける国際治安支援部隊の参加国でもある[5]。
トルコはアナトリア半島南東部にクルド人居住地域を含んでおり、独立を求めるクルディスタン労働者党︵PKK︶の武力闘争に対する鎮圧作戦を長年続けている。PKKなど反トルコ派のクルド人は国境をまたいで居住・活動しているほか、イラク戦争後の混乱やシリア内戦を機に勢力を拡張したイスラム国︵ISIL︶がトルコ本土でテロを起こすようになった。このため親トルコ派勢力の支援も兼ねて、イラクとシリアへの派兵や越境空爆をしばしば行っており、両国政府から主権・領土の侵害として抗議を受けている︵トルコ軍によるシリア侵攻︶[6][7]。
トルコは中近東有数の軍事力を有するうえ、経済発展により国民の自負心が高まっている。こうした背景により、中東・イスラム圏全体に影響力を及ぼそうとする﹁新オスマン主義﹂と呼びうる外交・安全保障政策をとりつつあると指摘されている。2016年には、オスマン帝国が一時支配下に置いていたペルシャ湾岸のカタールの軍事基地を利用する協定を締結[8]。2017年にはソマリアのモガディシオに軍事基地を設けた[9]。2020年ナゴルノ・カラバフ紛争ではアゼルバイジャンを支援し、同国首都バクーで12月10日実施された戦勝式典にはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が主賓格で招かれたほか、トルコ軍兵士も行進に参加した[10]。同年にはリビア内戦にも暫定政権を支援するため派兵した[11]。
こうした動きの底流にはキプロス紛争で芽生えたNATOへの不信があり、上海協力機構などの非NATO諸国との関係をより重視するユーラシア主義者の政治家や軍人が存在するとも指摘されている[12][13]。軍事装備は西側のものだけではなく、中華人民共和国の協力で弾道ミサイルのJ-600TユルドゥルムやMRLSのT-300カシルガを開発しており、中国の地対空ミサイルであるHQ-9も購入するも後に撤回した[14][15]。ロシアからはNATOと互換性のない地対空ミサイルのS-400を導入した[16]。また、従来はアメリカ合衆国やイスラエルと行ってきた合同軍事演習アナトリアの鷲を中国とも実施した[17][18][19]。自立志向も強く、装備の国産化率を7割に高め、さらに中東諸国やトルクメニスタン、パキスタンなどに輸出もしている。無人機など装備の開発・改良には、シリアなどでの実戦経験が反映されている[20]。
徴兵制度[編集]
詳細は「en:Conscription in Turkey」を参照
トルコは良心的兵役拒否すら認めない完全な男性皆兵制をとっており、身体の障害などの理由がない限り、男性には15ヶ月間の兵役︵大卒者は12ヶ月︶が課され、陸軍、海軍、空軍、沿岸警備隊のいずれかに配属される。定期バスなどは道端で時々、軍のID検査があり、兵役を逃れている者がいれば、即刻そのまま任地に強制連行される︵一旦、家にも帰れない︶。18歳~40歳までの男性で、IDカード保持者︵国籍保持者の男性︶を対象に行われるが、学生の間は免除される。また、ジャンダルマ︵国家憲兵︶は徴兵制をとっていない。一般には20歳までに兵役に応じ、最下級の兵士︵er︶としての訓練と任務に就くことになる。また、大学を卒業した者は、兵ではなく下士官としての訓練を受ける。
兵役期間中の給与は極めて安く、軍種・兵科・任地などにより異なるが、2004年時点おおむね2,000万トルコリラ︵20新トルコリラ︶程度である。これは、トルコの物価においてタバコ8箱程度であり、そのため一般には兵役は無償︵bedava︶とみなされている。これに対して職業軍人は﹁有給軍人︵para askeri︶﹂と呼ばれる。以前は代人料を払って兵役の期間を短くする制度があったが、貧富で差が出てきて問題になったため、現在は廃止されている。
編成[編集]
トルコ軍は統合参謀本部︵Genelkurmay Başkanlığı︶を頂点に、陸軍、海軍、空軍によって編成されている。また戦時においては、内務省所属のジャンダルマが陸軍の、沿岸警備隊が海軍の指揮下に入ることとされている。陸軍[編集]
詳細は「トルコ陸軍」を参照
首都アンカラの陸軍司令部の下、以下の上級司令部が置かれている。
●第1軍司令部
●第2軍司令部
●第3軍司令部
●エーゲ軍司令部
●第4軍団司令部︵首都防衛︶
●訓練・ドクトリン司令部︵軍級︶
●補給司令部︵軍団級︶
●キプロス駐留トルコ平和部隊司令部︵軍団級︶
●航空司令部︵旅団級︶
さらにこれらの上級司令部の下、以下師団・旅団等の戦闘部隊等が配置されている。
●10個軍団
●2個機械化歩兵師団
●2個機械化歩兵師団司令部
●1個歩兵師団
●1個歩兵訓練師団
●14個機械化歩兵旅団
●14個機甲旅団
●12個歩兵/国内治安旅団
●5個特殊任務旅団
●5個訓練旅団
装備品はできる限り国産化しており、現在、K2をベースとした初の国産戦車となるアルタイを開発中。
現在、イスラエルで開発されたサブラMk.IIの改修パッケージによりM60をM60Tに改修して運用中。
海軍[編集]
詳細は「トルコ海軍」を参照
アンカラの海軍司令部の下、以下の上級司令部が置かれている。
- 艦隊司令部(軍級)
- 北方海洋方面司令部(軍団級)
- 南方海洋方面司令部(軍団級)
- 海洋訓練・教育司令部(軍団級)
さらにこれらの上級司令部の下、以下の艦艇及び戦闘部隊等が配備されている。
過去に所属した艦艇も含めた詳細は、「トルコ海軍艦艇一覧」参照。
空軍[編集]
詳細は「トルコ空軍」を参照
- 戦闘攻撃機 F-16C/Dファイティングファルコン×224機 F-4EファントムⅡ×174機
- 輸送機 CN235-100M×43機 C-130E/H×18機 C-160T×16機 エアバス A400M×2機(最終的に8機)
- 早期警戒管制機 E-7×4機
アンカラの空軍司令部の下、以下の上級司令部が置かれている。
- 第1戦術空軍司令部(軍団級)
- 第2戦術空軍司令部(軍団級)
- 航空補給司令部(軍団級)
- 航空教育司令部(軍団級)
さらにこれらの上級司令部の下、以下の戦闘部隊等が配置されている。
階級[編集]
脚注・出典[編集]
(一)^ ab“TSK Official History Information”. Turkish Armed Forces. Turkish Armed Forces. 2014年1月2日閲覧。
(二)^ “Military of Turkey Statistics”. CIA - The World Factbook (2012年11月6日). 2012年11月11日閲覧。
(三)^ “Türkiye'nin ihracatı arttı ithalatı azaldı”. TRT News. 2015年11月30日閲覧。
(四)^ Ramazan Ercan. “Türk savunma sanayi ihracatta hız kesmedi”. Anadolu Agency Newspaper. 2015年1月9日閲覧。
(五)^ ﹁米軍、アフガン最大拠点撤収 トルコ軍、警備で駐留も﹂﹃日本経済新聞﹄朝刊2021年7月3日︵国際面︶同日閲覧
(六)^ “トルコ軍、イラクとシリアで越境空爆﹁テロ準備﹂主張”. 朝日新聞デジタル. (2017年4月25日)
(七)^ “イラク トルコと対立/モスル奪還作戦、参加を拒否”. ﹃毎日新聞﹄朝刊. (2016年10月25日)
(八)^ ﹁新オスマン主義﹂﹃読売新聞﹄朝刊2017年4月26日
(九)^ ﹁紅海沿岸 各国が進出/海上交通の要衝 基地や開発拠点﹂﹃毎日新聞﹄朝刊2021年5月24日︵国際面︶同日閲覧
(十)^ ナゴルノ停戦 アゼルバイジャン﹁戦勝﹂パレード 旧ソ連圏 トルコ存在感﹃朝日新聞﹄朝刊2020年12月13日︵2021年5月24日閲覧︶
(11)^ ﹁トルコ、リビア暫定政権支援へ部隊派遣 代理戦争…混迷深まる﹂ 産経新聞ニュース︵2020年1月7日︶2020年1月9日閲覧
(12)^ “Turkey Adopts Eurasianism” (英語). Middle East Forum (2019年7月30日). 2019年8月5日閲覧。
(13)^ “Turkey Trot: Military Cooperation between Beijing and Ankara” (英語). ジェームズタウン財団 (2009年4月16日). 2019年7月13日閲覧。
(14)^ Toksabay, Ece (26 September 2013). "Chinese firm wins Turkey's missile defense system tender".Reuters.
(15)^ Butler, Daren; Karadeniz, Tulay; Martina, Michael (18 November 2015). Mark, Heinrich (ed.). "UPDATE 2-Turkey confirms cancellation of $3.4-bln missile defence project awarded to China". Reuters.
(16)^ “トルコにロシア製ミサイル防衛システム納品開始-米国は導入に反発”. ブルームバーグ. (2019年7月12日) 2019年7月13日閲覧。
(17)^ “Sino-Turkish Strategic Partnership: Implications of Anatolian Eagle 2010”. The Jamestown Foundation. (2011年1月14日) 2019年6月30日閲覧。
(18)^ “The Anatolian Eagle Is Looking Eastward”. The Daily Signal. (2010年10月15日) 2019年7月13日閲覧。
(19)^ “Growing Ties Between Turkey, China, Iran Worry Israel and US”. ハアレツ. (2010年10月7日) 2019年7月13日閲覧。
(20)^ (世界発2019)トルコ進む武器国産化/無人機・攻撃ヘリ・長距離砲・電子戦システムなど…自給率7割に/きっかけは米国禁輸の衝撃/西側依存避けロシアに接近﹃朝日新聞﹄朝刊2019年6月20日︵国際面︶同日閲覧。
関連項目[編集]
- トルコの軍事史
- 1960年トルコクーデター
- 9月12日クーデター(1980年トルコクーデター)
- 2016年トルコクーデター未遂事件
- トルコのディープステート ‐ 軍の政治関与(ディープステート)について。
- トルコ共和国参謀本部
- トルコ共和国国家安全保障会議
- トルコの軍服
- ロシア軍爆撃機撃墜事件
- トルコの装備
- トルコの防衛産業
- NATO
- NATOにおけるトルコ
- キュレジク・レーダー基地、Kisecik Radar Station - トルコにあるNATOのレーダー基地。
- コンヤ空港(コンヤ空軍基地) ‐ トルコ国内にあるNATOが使える空軍基地。
- その他の国の基地利用
- インジルリク空軍基地 - 核爆弾配備基地。アメリカ軍とトルコ軍が主に使うが、イギリスやサウジアラビア、スペインなどが利用する。
- 在外基地 - 保有国と在外基地の一覧。