「宏観異常現象」の版間の差分
椋平虹についてはトリックを使ったとも考えられ、彼の個人的であまりに特異な主張であるため、伝承等にも多い地震雲の話題に差しかえておく。 |
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'''宏観異常現象'''︵こうかんいじょうげんしょう︶とは、機器の[[測定]]ではなく人間の[[知覚]]に基づいて“[[地震]]の[[前兆]]”と報告される事象<ref name="npn">{{Cite kotobank|word=宏観異常現象|encyclopedia=小学館﹃日本大百科全書(ニッポニカ)﹄|accessdate=2023-03-28}}</ref>。主に[[動物]]の異常な行動、[[地鳴り]]、[[発光]]現象などが取り上げられ、そのほか特異な雲の出現、電気機器の故障、体の痛みなど多岐にわたる<ref name="事典s9-2">地震の事典、§9-2︵483-488頁︶</ref><ref name="事典s9-7">地震の事典、§9-7︵533-535頁︶</ref><ref name="力武p216"> |
'''宏観異常現象'''︵こうかんいじょうげんしょう︶とは、機器の[[測定]]ではなく人間の[[知覚]]に基づいて“[[地震]]の[[前兆]]”と報告される事象<ref name="npn">{{Cite kotobank|word=宏観異常現象|encyclopedia=小学館﹃日本大百科全書(ニッポニカ)﹄|accessdate=2023-03-28}}</ref>。主に[[動物]]の異常な行動、[[地鳴り]]、[[発光]]現象などが取り上げられ、そのほか特異な雲の出現、電気機器の故障、体の痛みなど多岐にわたる<ref name="事典s9-2">地震の事典、§9-2︵483-488頁︶</ref><ref name="事典s9-7">地震の事典、§9-7︵533-535頁︶</ref><ref name="力武p216">{{harvnb|﹃地震予知 : 発展と展望﹄|p=216-251}}</ref>{{R|usgs2}}<ref name="EDIS1">[[#EDIS|災害情報学事典]]、290-291頁 [[中森広道]]﹁前兆現象と広観異常現象の心理﹂</ref>。
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[[地震予知|地震予知・地震予測]]の中では、観測されている[[地殻変動]]や地震活動の変化、[[地磁気]]や[[地下水]]の変化、地下由来の微量元素︵[[ラドン]]等︶の検出などの測定値に表現される[[物理]]的な事象と対比される{{R|npn|事典s9-2|事典s9-7}}。
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[[地震予知|地震予知・地震予測]]の中では、観測されている[[地殻変動]]や地震活動の変化、[[地磁気]]や[[地下水]]の変化、地下由来の微量元素︵[[ラドン]]等︶の検出などの測定値に表現される[[物理]]的な事象と対比される{{R|npn|事典s9-2|事典s9-7}}。
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}}</ref>{{R|Woithetal2018}}。異常現象の科学的検証も試みられており、1930年代には[[寺田寅彦]]や[[武者金吉]]が発光現象や動物の異常行動の研究報告を行っている。戦後に継続して地震予知研究を行った[[力武常次]]は、科学的な分析と[[学際]]的研究の必要性を主張していた{{R|EDIS1}}。
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}}</ref>{{R|Woithetal2018}}。異常現象の科学的検証も試みられており、1930年代には[[寺田寅彦]]や[[武者金吉]]が発光現象や動物の異常行動の研究報告を行っている。戦後に継続して地震予知研究を行った[[力武常次]]は、科学的な分析と[[学際]]的研究の必要性を主張していた{{R|EDIS1}}。
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[[中華人民共和国|中国]]では社会主義体制の下で20世紀後半、市民から動物の行動などの宏観異常を含めた前兆報告を受け付ける仕組みがあり、各種観測値とともに予測の資料としていた。1975年の[[海城地震]]では直前予知に成功したと伝えられたが、実際は活発な[[前震]]によって大地震の発生が危惧されたことが対策強化につながり、当局による避難措置のタイミングが偶然重なったことで人的被害が軽減された。日本や欧米の専門家による検証、また後年の中国国内での検証でも、予測の根拠は曖昧で、ほかの地震にも適用できる法則はなかった |
[[中華人民共和国|中国]]では社会主義体制の下で20世紀後半、市民から動物の行動などの宏観異常を含めた前兆報告を受け付ける仕組みがあり、各種観測値とともに予測の資料としていた。1975年の[[海城地震]]では直前予知に成功したと伝えられたが、実際は活発な[[前震]]によって大地震の発生が危惧されたことが対策強化につながり、当局による避難措置のタイミングが偶然重なったことで人的被害が軽減された。日本や欧米の専門家による検証、また後年の中国国内での検証でも、予測の根拠は曖昧で、ほかの地震にも適用できる法則はなかった{{sfn|『地震予知 : 発展と展望』|p=325-329}}<ref>{{Cite journal |
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|url=http://www.cqvip.com/qk/81539x/2009009/30290539.html |
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|author=孙滔 |
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定説とはなっていないが、挙げられることがあるのが、微小な前震による地鳴り、[[アコースティック・エミッション]](AE)、[[地電流]]の変化、[[地下水]]の水位・温度・成分などの変化、地下からの[[ラドン]]ガスなどの物質の放出、[[荷電粒子|帯電粒子]]の放出、[[電磁波]]、空中[[電場]]の変化、海底や湖底などの状態の変化などを根拠とする[[仮説]]である{{R|npn|事典s9-7}}<ref name="石渡">{{Cite web|和書|url=http://geosociety.jp/faq/content0421.html|title=コラム 地震雲についての雑感|author=石渡明|publisher=日本地質学会|work=e-フェンスター|date=2012-12-27|accessdate=2023-02-08}}</ref>。 |
定説とはなっていないが、挙げられることがあるのが、微小な前震による地鳴り、[[アコースティック・エミッション]](AE)、[[地電流]]の変化、[[地下水]]の水位・温度・成分などの変化、地下からの[[ラドン]]ガスなどの物質の放出、[[荷電粒子|帯電粒子]]の放出、[[電磁波]]、空中[[電場]]の変化、海底や湖底などの状態の変化などを根拠とする[[仮説]]である{{R|npn|事典s9-7}}<ref name="石渡">{{Cite web|和書|url=http://geosociety.jp/faq/content0421.html|title=コラム 地震雲についての雑感|author=石渡明|publisher=日本地質学会|work=e-フェンスター|date=2012-12-27|accessdate=2023-02-08}}</ref>。 |
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なお、力武は各種の報告を統計的にまとめ、異常の出現範囲︵震源域からの距離︶は地震の規模に比例して広くなる傾向があること、異常の発現から地震までの期間はばらばらであるものの、最も早い部類の報告だけを見ると地震の規模が大きいほど早くなる傾向があることを報告している<ref name="力武s2-6"> |
なお、力武は各種の報告を統計的にまとめ、異常の出現範囲︵震源域からの距離︶は地震の規模に比例して広くなる傾向があること、異常の発現から地震までの期間はばらばらであるものの、最も早い部類の報告だけを見ると地震の規模が大きいほど早くなる傾向があることを報告している<ref name="力武s2-6">{{harvnb|﹃地震予知 : 発展と展望﹄|loc=2-6章}}</ref>。また弘原海らが収集した報告には、大地震や“予測情報”などの発信で社会の関心が高まってから約1週間程度は特に件数が増加する傾向が認められている{{R|産総研2002|弘原海2002}}。
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例えば地震と異常とを関連付けるメカニズムが十分に説明できなくとも、十分なデータにより検証されたいわゆる[[経験則]]が確立されれば、予測理論は成立する。しかし、その実証に必要な大地震の発生頻度が低いという難点がある{{R|伊藤ほか1999|ssjfaq3}}。ただし、特に予知を肯定し、“新しい理論は閉鎖的な学界にはなかなか受け入れられず、こうした人たちによって自分達の理論が否定されてきた”と主張する文脈の中で経験則が根拠とされる場合があり、併せて主張される“成功率”もしばしば統計的に不十分で反証の余地があることに注意すべきである。例えば地電流観測を用いた理論である[[VAN法]]でも、高いと主張される成功率には異論がある{{R|伊藤ほか1999|Mulargia}}<ref>{{Harvnb|Orey|2006|p=29,45}}, {{Harvtxt|Geller|1997|p=425,436}}</ref><ref>{{Citation |
例えば地震と異常とを関連付けるメカニズムが十分に説明できなくとも、十分なデータにより検証されたいわゆる[[経験則]]が確立されれば、予測理論は成立する。しかし、その実証に必要な大地震の発生頻度が低いという難点がある{{R|伊藤ほか1999|ssjfaq3}}。ただし、特に予知を肯定し、“新しい理論は閉鎖的な学界にはなかなか受け入れられず、こうした人たちによって自分達の理論が否定されてきた”と主張する文脈の中で経験則が根拠とされる場合があり、併せて主張される“成功率”もしばしば統計的に不十分で反証の余地があることに注意すべきである。例えば地電流観測を用いた理論である[[VAN法]]でも、高いと主張される成功率には異論がある{{R|伊藤ほか1999|Mulargia}}<ref>{{Harvnb|Orey|2006|p=29,45}}, {{Harvtxt|Geller|1997|p=425,436}}</ref><ref>{{Citation |
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* 動物や植物の行動の変化、異常{{R|npn|事典s9-2|事典s9-7|usgs2}} - 学問:[[動物行動学]]など |
* 動物や植物の行動の変化、異常{{R|npn|事典s9-2|事典s9-7|usgs2}} - 学問:[[動物行動学]]など |
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** [[イエネコ|ネコ]]や[[イヌ]]、[[ハムスター]]、[[インコ]]、[[カメ]]などの[[ペット|伴侶動物︵ペット︶]]、[[動物園]]や[[水族館]]の飼育動物が異様に鳴く、吠える、暴れる、震える、神経質になるなどの行動が報告される{{R|菊池1999|弘原海2002}}。また[[ハト]]、[[カラス]]や[[キジ]]などの[[野鳥]]、[[ヘビ]]や[[カエル]]などの[[爬虫類]]、[[ミミズ]]、[[ムカデ]]や[[ゴキブリ]]などの[[昆虫]]、川・海の[[魚]]・[[水生生物]]において、大群が現れた、姿を消した、普段現れない季節に現れた、列をなしたり特定の方向へ移動した、鳴いた、跳ねた、屋根や木に登ったなどが報告される{{R|菊池1999|弘原海2002}} |
** [[イエネコ|ネコ]]や[[イヌ]]、[[ハムスター]]、[[インコ]]、[[カメ]]などの[[ペット|伴侶動物︵ペット︶]]、[[動物園]]や[[水族館]]の飼育動物が異様に鳴く、吠える、暴れる、震える、神経質になるなどの行動が報告される{{R|菊池1999|弘原海2002}}。また[[ハト]]、[[カラス]]や[[キジ]]などの[[野鳥]]、[[ヘビ]]や[[カエル]]などの[[爬虫類]]、[[ミミズ]]、[[ムカデ]]や[[ゴキブリ]]などの[[昆虫]]、川・海の[[魚]]・[[水生生物]]において、大群が現れた、姿を消した、普段現れない季節に現れた、列をなしたり特定の方向へ移動した、鳴いた、跳ねた、屋根や木に登ったなどが報告される{{R|菊池1999|弘原海2002}}{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=2,6,12,13,15,18,22,27,47}}}。
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** 植物では、季節外れに花が咲いた、実がならなかった、枯れたなどが報告される{{R|弘原海2002}}。
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** 植物では、季節外れに花が咲いた、実がならなかった、枯れたなどが報告される{{R|弘原海2002}}。
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** 地震発生前数十秒程度の直前の事象は、単に[[地震波]]のS波とP波の速度差に起因するもの、つまり揺れが大きいS波よりも早く到達するP波に動物は気づくが人間が気づかない例として、また[[前震]]を伴う場合はその揺れによるものとして、それぞれ説明できる{{R|Woithetal2018}}。 |
** 地震発生前数十秒程度の直前の事象は、単に[[地震波]]のS波とP波の速度差に起因するもの、つまり揺れが大きいS波よりも早く到達するP波に動物は気づくが人間が気づかない例として、また[[前震]]を伴う場合はその揺れによるものとして、それぞれ説明できる{{R|Woithetal2018}}。 |
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|language= en |
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** 例えば[[乳牛|乳用牛]]の乳量や[[ニワトリ|鶏]]の産卵率などの長期的かつ定量化されたデータであっても、動物の行動は地震以外の要因を大きく受け誤報を生じうるため、精度は低くならざるを得ず、決定論的な地震予知の根拠とすることは難しいと考えられる。ただし、複数のデータの併用は精度を高めるとも考えられる{{R|Bhargava}}<ref>{{ |
** 例えば[[乳牛|乳用牛]]の乳量や[[ニワトリ|鶏]]の産卵率などの長期的かつ定量化されたデータであっても、動物の行動は地震以外の要因を大きく受け誤報を生じうるため、精度は低くならざるを得ず、決定論的な地震予知の根拠とすることは難しいと考えられる。ただし、複数のデータの併用は精度を高めるとも考えられる{{R|Bhargava}}<ref>{{cite thesis|和書 |author=山内寛之 |url=https://az.repo.nii.ac.jp/records/4096 |title=地震の直前予測へ向けた動物の前兆的行動に関する研究 |publisher=麻布大学 |series=博士︵学術) 甲第61号 |year=2014 |naid=500000929343 |id={{NDLJP|8953072}}}}</ref>。なお、地震に先行した電界や磁界の変化は仮説にとどまる。また、[[嵐]]の直前にも地震と類似の行動パターンを示す例が多いという報告がある{{R|事典s9-7|Bhargava}}。
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|author=山内寛之 |
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|title=地震の直前予測へ向けた動物の前兆的行動に関する研究 |
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|journal=麻布大学 学位論文 |date=2014-09 |
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}}</ref>。なお、地震に先行した電界や磁界の変化は仮説にとどまる。また、[[嵐]]の直前にも地震と類似の行動パターンを示す例が多いという報告がある{{R|事典s9-7|Bhargava}}。
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* [[地鳴り]]{{R|事典s9-2|事典s9-7}} - [[音響学]]など |
* [[地鳴り]]{{R|事典s9-2|事典s9-7}} - [[音響学]]など |
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** 古いものでは474年中国の記録に遡り、世界各地に例がある。1950年代に旧ソ連のガルム地方で初めて計器観測が行われた。1960年代後半の[[松代群発地震]]や1980年[[伊豆半島東方沖地震 (1980年)|伊豆半島東方沖地震]]では観測が行われたが検出されなかった。1872年[[浜田地震]]や1854年[[伊賀上野地震]]では前震に伴う複数回の地鳴りが記録されている。1923年[[関東地震]]では軍人が大砲の砲撃音のようなものを聞いたという。1933年[[昭和三陸地震]]では地震前に地鳴りや風声のような音を聞いたという住民の証言があったが、地震発生後大きな揺れが到達する前に音を聞いたものと分析されている。なお、体感では初期微動を前兆的な鳴動と勘違いする可能性があり、また不明な点も多い<ref>{{Cite journal
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** 古いものでは474年中国の記録に遡り、世界各地に例がある。1950年代に旧ソ連のガルム地方で初めて計器観測が行われた。1960年代後半の[[松代群発地震]]や1980年[[伊豆半島東方沖地震 (1980年)|伊豆半島東方沖地震]]では観測が行われたが検出されなかった。1872年[[浜田地震]]や1854年[[伊賀上野地震]]では前震に伴う複数回の地鳴りが記録されている。1923年[[関東地震]]では軍人が大砲の砲撃音のようなものを聞いたという。1933年[[昭和三陸地震]]では地震前に地鳴りや風声のような音を聞いたという住民の証言があったが、地震発生後大きな揺れが到達する前に音を聞いたものと分析されている。なお、体感では初期微動を前兆的な鳴動と勘違いする可能性があり、また不明な点も多い<ref>{{Cite journal|和書
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|title=AE |
|title=AE |
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|journal=気象研究所技術報告 |publisher=気象庁気象研究所 |date=1990-03 |issue=26 |pp=39-41 |
|journal=気象研究所技術報告 |publisher=気象庁気象研究所 |date=1990-03 |issue=26 |pp=39-41 |
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|url=https://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/DATA/VOL_26/26.html |
|url=https://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/DATA/VOL_26/26.html |
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|doi=10.11483/mritechrepo.26 |
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}}</ref><ref>{{cite book|和書|author=今村明恒, 那須信治 |title=大地震の前兆に関する資料 : 今村明恒博士遺稿 |publisher=古今書院 |year=1977 |id={{NDLJP|9583347}} |url=https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001339470 |quote=国立国会図書館デジタルコレクション}}</ref><ref>{{Cite journal|和書 |
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|author=井上宇胤 |
|author=井上宇胤 |
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|title=昭和8年3月3日の地震に伴った音響に就いて |
|title=昭和8年3月3日の地震に伴った音響に就いて |
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* [[地下水]]・[[海]] - [[水文学]]など |
* [[地下水]]・[[海]] - [[水文学]]など |
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** 前震を伴った1810年[[羽後地震]]では[[八郎潟]]の湖水が石油とも推定される赤黒い濁りを生じ魚が死んだ記録がある{{R|石渡2011}}。このほか、“[[井戸]]が枯れた、水量が増えた、濁った”“温泉が濁った”“海が濁った”{{R|弘原海2002|石渡2011}} |
** 前震を伴った1810年[[羽後地震]]では[[八郎潟]]の湖水が石油とも推定される赤黒い濁りを生じ魚が死んだ記録がある{{R|石渡2011}}。このほか、“[[井戸]]が枯れた、水量が増えた、濁った”“温泉が濁った”“海が濁った”{{R|弘原海2002|石渡2011}}{{sfn|消防庁 防災に関わる「言い伝え」|p=42}} “井戸から音が聞こえた”などが報告される。 |
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* 異臭 - “ガスのような臭い”“腐ったような臭い”などが報告される{{R|弘原海2002}}。天然ガスの噴出が関係する可能性もある{{R|石渡2011}}。 |
* 異臭 - “ガスのような臭い”“腐ったような臭い”などが報告される{{R|弘原海2002}}。天然ガスの噴出が関係する可能性もある{{R|石渡2011}}。 |
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* 特異な気象現象、天体の見え方の変化 - [[気象学]]・[[天文学]]など |
* 特異な気象現象、天体の見え方の変化 - [[気象学]]・[[天文学]]など |
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** “空の色が不気味”{{R|弘原海2002}}“月が赤く変わった色をしている” |
** “空の色が不気味”{{R|弘原海2002}}“月が赤く変わった色をしている”{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=27}}、特殊な雲や霧の発生、気温の異常{{R|事典s9-7|力武p216}}などが報告される。“日照りや長雨のあとに地震”{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=27}}“地震は風のないどんよりとした日によく起こる”{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=27}}などの口承もあるが、例えば“静かで蒸し暑いときに地震”は過去の大地震の時偶然そうであったため成立したと考えられる{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=41}}。
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** [[地震雲]]{{R|npn|事典s9-7| |
** [[地震雲]]{{R|npn|事典s9-7|}}{{harv|﹃地震予知 : 発展と展望﹄|p=216}} - “長い直線の雲”“明瞭な太い雲”“竜巻のような雲”“くっきりと分かれた空と雲の境界”“赤みを帯びた雲”などが報告される{{R|弘原海2002}}。
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* {{Anchors|電磁的現象}}電気・電子機器の異常や故障{{R|npn}} - [[電気工学]]など |
* {{Anchors|電磁的現象}}電気・電子機器の異常や故障{{R|npn}} - [[電気工学]]など |
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** [[テレビ]]・[[ラジオ]]の雑音やノイズ、[[時計]]や[[カーナビゲーション|カーナビ]]の異常、家電の[[リモコン]]や[[インターホン]]の不具合、家電の異音などが報告される{{R|弘原海2002}}。
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** [[テレビ]]・[[ラジオ]]の雑音やノイズ、[[時計]]や[[カーナビゲーション|カーナビ]]の異常、家電の[[リモコン]]や[[インターホン]]の不具合、家電の異音などが報告される{{R|弘原海2002}}。
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== 海棲生物の例に見る地震との「結び付け」 == |
== 海棲生物の例に見る地震との「結び付け」 == |
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海洋に生息する[[イワシ]]や[[ウナギ]]など特定の魚、あるいは[[イカ]]や[[アワビ]]などが大漁になった、[[クジラ]]が湾に迷い込んだり浜に打ち上げられた︵[[座礁鯨|座礁鯨類、ストランディング]]︶、[[リュウグウノツカイ]]などの珍しい[[深海魚]]が獲れた・漂着したなどの事象も地震の﹁前兆﹂として報告されることがある{{R|弘原海2002|石渡2011}} |
海洋に生息する[[イワシ]]や[[ウナギ]]など特定の魚、あるいは[[イカ]]や[[アワビ]]などが大漁になった、[[クジラ]]が湾に迷い込んだり浜に打ち上げられた︵[[座礁鯨|座礁鯨類、ストランディング]]︶、[[リュウグウノツカイ]]などの珍しい[[深海魚]]が獲れた・漂着したなどの事象も地震の﹁前兆﹂として報告されることがある{{R|弘原海2002|石渡2011}}{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=27}}<ref name="織原2019"/>。中には、過去の大地震の時偶然そうであったため成立した“大漁の翌年に大津波がくる”というような口伝もある{{sfn|消防庁 防災に関わる﹁言い伝え﹂|p=3}}。
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この種の事象は、災害や疫病などの凶兆あるいは戦争終結など事態好転の[[瑞兆|吉兆]]と考えられた近世の予言獣、例えば[[件]](くだん)、[[アマビエ]]([[アマビコ]])などに似たイメージが形成されている。イメージは時代とともに変化することがあり、日本におけるリュウグウノツカイの例では、かつて台風・地震・豊漁の兆しなど混交していたイメージが、1990年代以降の新聞・雑誌では主に地震の兆しのイメージに変化しており、この時期社会的に地震への不安が高まった影響も指摘されている<ref>{{Cite journal |
この種の事象は、災害や疫病などの凶兆あるいは戦争終結など事態好転の[[瑞兆|吉兆]]と考えられた近世の予言獣、例えば[[件]](くだん)、[[アマビエ]]([[アマビコ]])などに似たイメージが形成されている。イメージは時代とともに変化することがあり、日本におけるリュウグウノツカイの例では、かつて台風・地震・豊漁の兆しなど混交していたイメージが、1990年代以降の新聞・雑誌では主に地震の兆しのイメージに変化しており、この時期社会的に地震への不安が高まった影響も指摘されている<ref>{{Cite journal |
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{{Main|大鯰|鯰絵}} |
{{Main|大鯰|鯰絵}} |
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[[ファイル:Namazu-e.jpg|right|thumb|250px|地下に棲み、身体を揺することで地震を起こすと言われてきた[[大鯰]]]] |
[[ファイル:Namazu-e.jpg|right|thumb|250px|地下に棲み、身体を揺することで地震を起こすと言われてきた[[大鯰]]]] |
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日本には地震と[[ナマズ]]を関連付ける伝承があり、“ナマズが動く/騒ぐ/ひげを動かすと地震が起こる”という口伝も残る。1855年[[安政の大地震]]の後には[[鯰絵]]が流行した{{R|npn}} |
日本には地震と[[ナマズ]]を関連付ける伝承があり、“ナマズが動く/騒ぐ/ひげを動かすと地震が起こる”という口伝も残る。1855年[[安政の大地震]]の後には[[鯰絵]]が流行した{{R|npn}}{{sfn|消防庁 防災に関わる「言い伝え」|p=14,19,22,27,47}}。 |
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東京都水産試験場は1976年から1992年にわたって「ナマズの観察により地震予知をする」研究をしていた。地中からの何らかの信号を感じて行動が変化するとの仮定のもと、水槽で飼育するナマズの観察が行われた<ref>{{Cite journal |
東京都水産試験場は1976年から1992年にわたって「ナマズの観察により地震予知をする」研究をしていた。地中からの何らかの信号を感じて行動が変化するとの仮定のもと、水槽で飼育するナマズの観察が行われた<ref>{{Cite journal |
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| author = 力武常次 |
| author = 力武常次 |
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| year = 2001 |
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| publisher = 日本専門図書出版 |
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* {{Cite report|和書|title=全国災害伝承情報 |chapter=2. 防災に関わる「言い伝え」 |url=https://www.fdma.go.jp/publication/database/database009.html |chapterurl=https://www.fdma.go.jp/publication/database/item/database009_02_02.pdf |series=全国災害伝承情報 データベース| publisher=総務省[[消防庁]] |accessdate=2024-05-27 |ref={{harvid|消防庁 防災に関わる「言い伝え」}}}} |
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