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モンゴル文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
蒙古文字から転送)
モンゴル文字
モンゴル文字による「モンゴル」
類型: アルファベット
言語: モンゴル語
エヴェンキ語
トゥバ語(歴史的)
発明者: タタ・トゥンガ
時期: 1208年-現在
親の文字体系:

原カナン文字

子の文字体系: 満洲文字
トド文字
ヴァギンターラー文字
Unicode範囲: U+1800-U+18AF
ISO 15924 コード: Mong
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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インノケンティウス4世宛のグユクの勅書の朱印。モンゴル語で「長生なる天の力に依りて。イエケ・モンゴル・ウルスの海(ダライ)のカンの勅…」とある


音素文字の歴史

メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

: Монгол бичиг, Mongγol bičig
13

使[1] 使1994[2] 

歴史

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モンゴル文字は、ウイグル文字そのものでモンゴル語を筆写していた時期の古典的な「ウイグル式モンゴル文字」と、子音母音の文字の整備がより進んだ「現代モンゴル文字」の 2 種類に大別される。

モンゴル帝国時代の「モンゴル文字」

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[3]1204使[4]1222西1246421226

使 kha-i Uyghrī 使




モンゴル国における文字事情

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使使2025[5]

他の文字への派生

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モンゴル文字を基にしてつくられた文字として、の時代にヌルハチがつくらせた満洲語満洲文字モンゴル諸語オイラト語を表記するために考案されたトド文字がある。

文字

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Unicode IPA モンゴル文字 パスパ文字 元朝秘史訳音漢字[6] ラテン文字転写[7] キリル文字
語頭 語中 語末
U+1820 (ᠠ) [a] 阿(1-7-3)[8] a А 語頭を除き、a,e は同形。aは男性語、eは女性語で使われる。子音b,pの後、または女性語の子音k,gの後の本母音の語末形は左にカーブする。
U+1821 (ᠡ) [e] 額(1-4-2) e Э
U+1822 (ᠢ) [i]

[9]

[10]

亦(8-3-1) i, yi И, Й, Ы, Ь 対応する音声言語では、語中の他の母音の影響を受けて様々な母音が対応する。
U+1823 (ᠣ) [o] 斡(1-20-1)、兀(1-11-3) o О o,uは同じ語形。先頭以外の音節ではoは起こらない。
U+1824 (ᠤ) [ɔ] u У
U+1825 (ᠥ) [ɵ] 斡(6-18-1)、兀(5-6-2)[11] ö Ө ö,üは同じ語形。先頭以外の音節ではöは起こらない。この字母は、uと i合字
U+1826 (ᠦ) [u] ü Ү
U+1827 (ᠧ) ē е ēは借用語でのみ使用され、その字形は w と同じ。
U+1828 (ᠨ) [n]

[12]

[13]

訥(1-2-3)(音節頭)、安(11-27-5)(音節末) n Н nは母音の後では点が付くが、それ以外では a,e と同形。
U+1829 (ᠩ) [ŋ] 昂(78-59-1)(音節末で) ng Н, НГ この文字は固有語の音節末にのみ使われるため、語中形と語末形のみをもつ。チベット語の 、サンスクリットの の転写に使われる。この字母は nと gの合字。
U+182A (ᠪ) [b] 巴(1-27-1)、(小字、字尾にある時。)(244-10-2) b Б, В 後続の母音と合字を形成する。
U+182B (ᠫ) [p] p П 中世モンゴル語にはこの文字は無かった。チベット語の 、サンスクリットの प の転写に使われる。bから分化してできた字母。
U+182C (ᠬ) [χ] 合(4-10-1) q (男性語) Х
[x] 可(2-2-1)、(小字、字尾にある時。)(1-8-3) k (女性語) Х 対応する音声言語で区別される k、g は同一の文字であらわされる。
U+182D (ᠭ) [ɢ] 合(4-9-1)、(小字、字尾にある時。)(1-24-3) γ,ġ (男性語) Г この文字の前後に母音が隣接する場合、対応する音声言語では γ が発音されず隣接する母音を長母音として発音することが多い[14]。qから分化してできた字母。
[ɡ] 格(1-12-1) g (女性語) Г k、gは同形。γ同様対応する音声言語では脱落し長母音を成す[15]
U+182E (ᠮ) [m] 馬(2-3-2) m М
U+182F (ᠯ) [ɬ] 剌(1-24-4)、(小字、字尾にある時。)(1-12-5) l Л 音節末において人訳では /n/ 音と混同されることがある。
U+1830 (ᠰ) [s] 撒(6-12-1)、速(u音を伴う)(5-28-3)、速(小字でも字尾でもない。)(270-44-3) s С
U+1831 (ᠱ) [ɕ] 沙(273-13-3)(ただし用字上ではsと混同されることがある) š Ш sから分化してできた字母。元朝秘史の時代の資料では大抵母音 i を伴っていた。
U+1832 (ᠲ) [t] 塔(1-27-2)、(小字、字尾にある時。)(3-22-4)、答(6-23-3) t Т 対応する音声言語で区別される t, d も伝統的には文字上区別されない。外来語はこの限りではない。
U+1833 (ᠳ) [d] d Д
U+1834 (ᠴ) [ʨ, ʦ] 察(2-3-3) č Ч, Ц ハルハ・モンゴル語などで区別される /ʨʰ//ʦʰ/ は対応する文字では伝統的に区別されないが、前者は母音 i を伴うことが多い。チャハル・モンゴル語では前者の音が対応する。
U+1835 (ᠵ) [ʥ, ʣ] 札(1-7-1) ǰ Ж, З č と同様に、ハルハ・モンゴル語では2種類の子音が対応する。初期には y- と混同された。
U+1836 (ᠶ) [j] 牙(34-6-1) y Е, Ё, И, Ю, Я iから分化してできた字母。
U+1837 (ᠷ) [r] 剌(4-9-3)、兒(字尾にある時。小字でない。)(1-3-4) r Р 固有語や古い借用語では語頭に現れない。[16]
U+1838 (ᠸ) [β, w] v В サンスクリットの や漢語ピンインの w の転写に使われる。iから分化してできた字母。
U+1839 (ᠹ) [f] f Ф 中世モンゴル語にこの文字は無かった。bから分化してできた字母。
U+183A (ᠺ) (k,gh) г 外来語の表記に使用。
U+183B (ᠻ) [k] [17] К 中国語の「可」の声母、ロシア語の К などの転写に使われる。gから分化してできた字母。
U+183C (ᠼ) [ʦʰ] (c) (ц) チベット語サンスクリット語 の転写に使われる。一見、下の発音と対になっているように見えるが、現在ではチベット語の影響を受けて /ʦʰ/ という発音を表す。外国語の転写にも用いられる。čから分化してできた字母。
U+183D (ᠽ) [ʣ] (z) (з) チベット語の 、サンスクリット語の の転写に使われる。一見、上の発音と対になっているように見えるが、現在ではチベット語の影響を受けて /ʣ/ という発音になっている。外国語の転写にも用いられる。čから分化してできた字母。
U+183E (ᠾ) [(h)] (h) (г, х) サンスクリット語では に相当する。またこの字は、一部の有声子音の後に直接続けて、有声有気音を表す(lh、つまりチベット語の のように)。外国語の転写にも用いられる。
U+1840 (ᡀ) lh лх 外来語の表記に使用。ᡀᠠᠰᠠ (lhasa) など。
U+183F (ᠿ) [(ʐ)] (ř) (-,-) 内モンゴルで、中国語の'r ()'を転写するのに用いられる(後述の#関連項目参照)。
U+1841 (ᡁ) [(ʈʂ)] (zh) (-,-) 内モンゴルで、中国語の'zh ()'を転写するのに用いられる(後述の#関連項目参照)。母音iを伴う。
U+1842 (ᡂ) [(ʈʂʰ)] (ch) (-,-) 内モンゴルで、中国語の'ch ()'を転写するのに用いられる(後述の#関連項目参照)。母音iを伴う。

書写例

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仿古書体 現代印刷書体(白体)
 
左側の単語を分析すると:
は v の語頭形。
は i の語中形で、子音の後ろに接続するもの。
は k の語中形(後ろの i のために陽性の qではなく、陰性の k が接続している)。
は i の語中形、子音の後ろに接続するもの。
は p の語中形。
は e の語中形(e/a は語中で同形)。
は d の語中形(d/t は語中で同形)。
は i の語中形、子音の後ろに接続するもの。
は y の語中形。
は a の語尾形(e/a は語尾でも同形)。
繋げると、"vikipediya" となる。

文字と発音の対応関係

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γ, g, biy_aiy_e







bars/барtngri/тэнгэрkümün/хүнebedčin/өвчин

Unicode収録位置

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Unicode 3.0 にて収録された(U+18AA のみ Unicode 5.1 にて収録)。

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
1800  ᠎
1810
1820
1830
1840
1850
1860
1870
1880
1890
18A0  ᢩ

パソコンでの実装

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Microsoft Windows 2000/XP/2003OSUniscribeusp10.dllUniscribeOpenTypeMicrosoft Windows Vista/2008Windows Vista/2008Code2000[18]Mongolian Baiti[18]Daicing White[18] 

Uniscribe

UnicodeUnicode

CMs*LinuxUnicode使西OpenOffice.org WriterLibreOffice Writer

Unicode2018UnicodeAB[19]

脚注

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注釈

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出典

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(一)^ 使Mongol chunlian  хoс уянга    - bitxəšï- 2012213

(二)^ 
tianzao : 

 -  - Yahoo! - 201634



 

 |  

(三)^ 13Сравнительная грамматика монгольского письменного языка и халхаского наречия, 1929 - Yahoo!

(四)^ 

(五)^ Official documents to be recorded in both scripts from 2025

(六)^ ae

(七)^  "Grammar of Written Mongolian" 

(八)^ 

(九)^ i

(十)^ yi

(11)^  o, u 

(12)^ n-

(13)^ -n

(14)^ qaγanqaan

(15)^  deger  deer  üge 

(16)^ Русьo270-44-2西

(17)^ xi

(18)^ abc#

(19)^  

参考文献

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Poppe, Nicolas Grammar of Written Mongolian, 3rd ed. Seattle: University of Washington Press, 1974.

: 1981

Jagchid Sechin1987

Владимирцов, Борис Яковлевич西: 1988

[1] : 1999

[2] 2000

: 2003

関連項目

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外部リンク

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Daicing.com - UnicodeDaicing White

Windows XP2000GB18030 Support Package

Last archive copy of James Kass' website - 201118 - Code2000 Unicode 

Mongolian Baiti - Eagle Fonts.com  Mongolian Baiti 

MongolianFont - Almas Inc.3OpenType/AAT2

Google noto Fonts - Noto Sans Mongolian

Mongolian alphabets, pronunciation and language -  Omniglot