アラビア文字

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アラビア文字
類型: アブジャドイラククルド語などでは母音記号を必ず付加するためアルファベット
言語: アラビア語ペルシア語バローチ語ウルドゥー語クルド語パシュトー語シンド語など
時期: 400年頃から
親の文字体系:

原カナン文字

Unicode範囲: U+0600-U+06FF(アラビア文字)
U+0750-U+077F(アラビア文字拡張)
U+FB50-U+FDFF(アラビア文字表示形A)
U+FE70-U+FEFF(アラビア文字表示形B)
ISO 15924 コード: Arab
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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音素文字の歴史

メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

使使[1]

[]




3ā, ū, ī /  (alif) [w] (wāw) [j] (yāʾ) 使使

 (ء) 28p, ch, zh, g28

[]


33使4使

7使[ 1]

使



K使1937使[2]

2017100[3][3]4[3][4]

[]


使

西

使使2使29[5]

使



19808

使使使



便

[]



[]


 "ال" (al-)  /l/  َحروف شمسيةurūf shamsiyya, /l/ 調 ()  شمس shams,  ش 

 شمس  الشَّمْسُ ash-shams,  ال 2ت, ث, د, ذ, ر, ز, س, ش, ص, ض, ط, ظ, ل, ن 

[]


 /l/ َحروف قمرية, urūf qamariyya,  قمر qamar,  ق 

قمر  القمر al-qamar,  ال أ (ء) , ب, ج, ح, خ, ع, غ, ف, ق, ك, م, ه, و, ي 
標準アラビア語の子音音素、黄色は太陽文字
  唇音 強調なし 強調音 硬口蓋音 軟口蓋音 口蓋垂音 咽頭音 声門音
歯音 歯茎音 歯音 歯茎音
鼻音 مm نn              
閉鎖音 無声音 تt ط   كk قq   ءʔ
有声音 بb دd ض ج      
摩擦音 無声音 فf ثθ سs   ص شʃ خx ~ χ حħ هh
有声音 ذð زz ظðˤ     غɣ ~ ʁ عʕ  
ふるえ音     رr            
接近音   لl ~ يj وw      

字母[編集]

基本文字表[編集]

アラビア文字の基本字母28字は以下の通り。

(表中の頭字・中字が存在しない文字は、語頭では単独形で、語中では直前の文字が中字を持った文字なら尾字でつなげ、直前の文字が中字を持たない文字なら単独形で書かれる。)

単独形 頭字 中字 尾字 文字名 転写 音価 片仮名転写の例 太陽文字
ا ــا ʾalif - [-](※) ア行
ب بــ ــبــ ــب bāʾ b [b] バ行
ت تــ ــتــ ــت tāʾ t [t] タ行
ث ثــ ــثــ ــث ṯāʾ ṯ / th [θ] サ行
ج جــ ــجــ ــج ǧīm ǧ / j / dj [ʤ] ジャ行
ح حــ ــحــ ــح ḥāʾ [ħ] ハ行
خ خــ ــخــ ــخ ḫāʾ ḫ / ẖ / kh [x] ハ行
د ــد dāl d [d] ダ行
ذ ـــذ ḏāl ḏ / dh [ð] ザ行
ر ــر rāʾ r [r] ラ行
ز ــز zāy z [z] ザ行
س ســ ــســ ــس sīn s [s] サ行
ش شــ ــشــ ــش šīn š / sh [ʃ] シャ行
ص صــ ــصــ ــص ṣād [sˁ] サ行
ض ضــ ــضــ ــض ḍād [dˁ] ダ行/ザ行
ط طــ ــطــ ــط ṭāʾ [tˁ] タ行
ظ ظــ ــظــ ــظ ẓāʾ [ðˁ] ザ行
ع عــ ــعــ ــع ʿayn ʿ / ‘ [ʕ](有声咽頭摩擦音 ア行
غ غــ ــغــ ــغ ġayn ġ / gh [ɣ] ガ行
ف فــ ــفــ ــف fāʾ f [f] ファ行
ق قــ ــقــ ــق qāf q / ḳ [q] カ行
ك كــ ــكــ ــك kāf k [k] カ行
ل لــ ــلــ ــل lām l [l] ラ行
م مــ ــمــ ــم mīm m [m] マ行
ن نــ ــنــ ــن nūn n [n] ナ行
ه هــ ــهــ ــه hāʾ h [h] ハ行
و ــو wāw w [w] ワ行
ي يــ ــيــ ــي yāʾ y [j] ヤ行

アラビア文字の書き順 - YouTube

※「ا」(ʾalif) は、アラム語等の子音字配列順におけるアブジャドの「ア」に相当。元々は語頭にある「ʾ」(声門閉鎖音/声門破裂音)がその音価であった。しかし長母音āを示すのにも使われたため後代になり語頭で声門閉鎖音/声門破裂音を示す場合の発音を表記するために「ء」(ハムザ)が考案され、ハムザを伴わないアリフは固有の音価を持たない長母音形成パーツとして見なされるようになった。

  1. 語頭では声門閉鎖音ハムザとしての発音になり/a/ /i/ /u/ いずれかの母音と組み合わせる (※アリフが表記されない「ء」(hamza, /ʔ/) の台になっていると考える)
  2. 語中・語末で他の文字に後続してその直前にある子音字が伴っている短母音aを長母音化して長母音アー/aː/を形成する
  3. 語中・語末で/a/の音価を後続もしくは先行させる「ء」(hamza, /ʔ/) の台字になる

といった形で用いられる。

なおアラビア語文法学では、アブジャド(慣用名称:アルファベット)順1文字目のアリフは長母音アリフではなくアリフを台座とした声門閉鎖音/声門破裂音(ハムザ)のことを指していると考える。アラビア語におけるアルファベット文字数が28文字説であっても29文字説であってもアリフという名をまとったハムザが第1文字目に来るとする(*ハムザを29文字目の位置に置く訳ではない)。28文字説では声門閉鎖音/声門破裂音としての機能と長母音パーツとしての機能を併せ持ったものが1文字目のアリフであるとし、29文字説では声門閉鎖音/声門破裂音としての機能が1文字目の「アリフ」ことハムザが担い、長母音アリフとしての機能はوとيの間に置かれるلاに含まれるアリフが担うと考えるなどする。

その他の文字[編集]

単独形 頭字 中字 尾字 文字名 転写 音価 意味・役割
ة ــة tāʾ marbūṭa h / t / ʰ / ẗ [h], [t] 古いアラビア語で用いられていた女性形表示のための「ت」(ṯāʾ, /t/)と「ه」(hāʾ,/h/)を融合させた字。 名詞・形容詞の語尾に付いて女性形にする。
ى ىــ ــىــ ــى ʾalif maqṣūra ā / ỳ [aː]

の一部

長母音アリフが通常表す長母音ā部分に用いる。元の語根が弱文字「ي」(y)である語末が語形上ā音になっている箇所を表現することが多い。يに弁別点を加える前から使われていた古い形状が由来。エジプトでは今でもيに弁別点をつけない古形を使っておりىと同形。
ھ ھــ ــھــ ــھ Dochasmee hā [hāː] 「ه」の変形。特にウルドゥ語などではよく使われる。
لا ــلا lām ʾalif [laː](※) 「ل」(lam, /l/) と「ا」(alif) の合字。単独では発音できない長母音アリフをアルファベット順の中に登場させるためにしばしば用いられてきた。(※)

ا(alif) ال(al) /(ʔ)a/ /(ʔ)i/ /(ʔ)u/ ا(alif) ل(lam, /l/) لا/laː/ /l(ʔ)a/ /l(ʔ)i/ /l(ʔ)u/ إسلام (Islām) + ال (al)  الإسلام (al-Islām) /laː/ /aː/ا(alif) ل(lam, /l/) لا

[]


 /ʔ/ 

 /ʔ/ א(alef) ا(alif) 調ع(ayn, /ʕ/)  /ʔ/ 

ا(alif) (ل(lam, /l/) لا)ي(ya, /j/)و(waw, /w/) ي(ya, /j/) 2ئ
単独形 台字付き 文字名 転写 音価 意味・役割
ء أ إ لأ لإ ئ ؤ hamza ʾ / ’ / ‚ [ʔ] 声門破裂音

使

ا(alif) /ʔa/ /ʔi/ /ʔu/ /a//u/أ/i/ إء

أ/ʔa/ئ/ʔi/ؤ/ʔu/ ء
i > u >a/ʔ//u//ʔ//i//i/ئ/a//i//u/ئؤ
/a/ أ/i/ ئ/u/ؤ

/(-a)ʔ/أ/(-i)ʔ/ئ/(-u)ʔ/ؤء


字形(母音記号付き) 字形 音価 場所
أَ- أ- /ʔa/ 語頭
إِ- إ- /ʔi/
أُ- أ- /ʔu/
-أَ-
(-ئَ-)
(-ؤَ-)
-أ-
(-ئ-)
(-ؤ-)
/ʔa/
(/(-i)ʔa/)
(/(-u)ʔa/)
語中(後続母音あり)
-ئِ- -ئ- /ʔi/
-ؤُ-
(-ئُ-)
-ؤ-
(-ئ-)
/ʔu/
(/(-i)ʔu/)
-أْ /(-a)ʔ/ 語中(後続母音なし)
及び
語末
-ئْ /(-i)ʔ/
-ؤْ /(-u)ʔ/

記号類[編集]

これら記号の多くは、通常の表記においては省かれ、主に教育・解説用のテキストでのみ用いられる。

母音記号

記号 名称 音価 意味・役割
ـَ fatḥa

ファトハ

[a] 短母音のア
ـِ kasra

カスラ

[i] 短母音のイ
ـُ ḍamma

ダンマ

[u] 短母音のウ
ـْ sukūn

スクーン

[-] 母音除去記号。付いた文字の母音は発音されない。
ـً fatḥatān

ファトハターン

[an] 対格のuに非限定を示すnを加えたアン。対格かつ非限定を表す。
ـٍ kasratān

カスラターン

[in] 属格のiに非限定を示すnを加えたイン。属格かつ非限定を表す。
ـٌ ḍammatān

ダンマターン

[un] 主格のuに非限定を示すnを加えたウン。主格かつ非限定を表す。

アリフ・子音関連

記号 名称 音価 意味・役割
آ madda

マッダ

[ʔaː]
([lʔaː])
ハムザ付きアリフ「أ」にアリフ「ا」が後続した状態を表す、専用の長音符。
音価が/ʔa/のハムザ付きアリフ「أ」及び、その合字版である「لأ」にのみ付く。
ٱ waṣla

ワスラ

[-] 語頭ハムザト・アル=ワスル(ハムザトゥルワスル、ハムザトルワスル、接続ハムザ)専用の消音明示記号。語頭にあるアリフを台とした接続ハムザは文頭でいきなり子音から始まらないよう補助的に置かれているものなので、文中でその前に他の語彙が来ることで)不要となり発音されなくなる。それを明示するのがこのワスラ記号。
ٰ alif khanjariyya

短剣アリフ

[aː] 表記上省略された長母音アリフを明示するための記号。小アリフ、短剣アリフ。(※)
ـّ shadda

シャッダ

[CC] 子音重複記号、長子音記号、促音記号。「無母音の子音+子音+母音」の順番で何らかの子音が2つ重なっていることを表す。

(なおWindowsパソコンなどではワスラ記号や短剣アリフはキーボードから直接入力できない。)

※ちなみに、イスラム教の神である「アラー」(アッラーフ)のアラビア文字表記は「الله」であり、「 ّ 」(shadda) の上に斜めの短い線が書かれているが、これも、特殊な形ではあるが、小アリフ(短剣アリフ)の一種である。キーボードでは、アラビア文字で「ل」(lam) + 「ل」(lam) + 「ه」(ha) を入力すると、自動的にこの記号付き表記に変換される。

伝統的な文字順[編集]

現在使われている文字の順序では字形の似たものを1箇所にまとめているが、これとは異なり、アブジャド順というフェニキア文字以来の伝統的な文字順序も存在する。地域によって違いがあるが、もっとも一般的に行われている順序は以下のとおりである(右から左に進む)。アラビア文字を数字として使うときにもこの順序が使われる。

ن م ل ك ي ط ح ز و ه د ج ب ا (أ) 文字
n m l k y z w h d j b ʼ 翻字
50 40 30 20 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 数価
غ ظ ض ذ خ ث ت ش ر ق ص ف ع س 文字
t š r q f s 翻字
1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 90 80 70 60 数価

8つに分割して適当な母音を補い、「أبجد هوز حطي كلمن سعفص قرشت ثخذ ضظغ」('abjad hawwaz ḥuṭṭī kalaman sa‘faṣ qurišat ṯaḵaḏ ḍaẓaḡ)のように唱える。

母音の表現[編集]

アラビア語の母音は、基本的にア/a/、イ/i/、ウ/u/ の3つ、及びそれを長音化したものと、組み合わせた二重母音のみである。

二重母音に関しては「ي」(ya, /j/)を用いた表記ayが二重母音ai、「و」(waw, /w/) を用いたawが二重母音awに相当する。

短母音[編集]

短母音は子音字に母音記号を付加することで表現できる。(母音記号は通常の表記では省かれる。)

記号 音価 意味
َ [a] 短母音ア
ِ [i] 短母音イ
ُ [u] 短母音ウ

ちなみに、ハムザの項目で上述したように、「ء」(hamza, /ʔ/) が語頭の「ا」(alif) に付き、/ʔa/ /ʔi/ /ʔu/ といった発音を形成する場合に限り、「ء」(hamza, /ʔ/) の記号は、母音記号と連動する格好で、「ا」(alif) の上に付いたり、下に付いたりする。

語頭ハムザ付きアリフ
(母音記号付き)
語頭ハムザ付きアリフ 音価 意味
أَ- أ- [ʔa] 語頭の
声門破裂音 /ʔ/
+短母音ア
إِ- إ- [ʔi] 語頭の
声門破裂音 /ʔ/
+短母音イ
أُ- أ- [ʔu] 語頭の
声門破裂音 /ʔ/
+短母音ウ

また、子音重複記号である「 ّ 」(shadda) が書かれる場合、母音記号は、字母ではなく、この記号の上下に書かれる。

シャッダ
(母音記号付き)
音価 意味

[a] 重複子音
+短母音ア

[i] 重複子音
+短母音イ

[u] 重複子音
+短母音ウ

長母音[編集]

長母音は、上記の短母音に、それぞれ「ا」(alif, /a/)、「ي」(ya, /j/)、「و」(waw, /w/) を後続させることで、表現される。(母音記号は、通常の表記では省かれる。)

記号 音価 意味
ـَا [aː] 長母音アー(※)
ـِي [iː] 長母音イー
ـُو [uː] 長母音ウー

※なお、前項の記号類の項目でも書いてあるように、/ʔa/ の音価を持ったハムザ付きアリフ「أ」に、アリフ「ا」が後続し、/ʔaː/ という長母音になる場合に限り、ハムザ付きアリフ専用の長音符であるマッダが用いられる。(「آ」)

二重母音[編集]

二重母音も同じく、短母音ア/a/ に「ي」(ya, /j/)、「و」(waw, /w/) を後続させることで、表現される。(母音記号は、通常の表記では省かれる。)

記号 音価 意味
ـَيْ [ai] 二重母音アイ
ـَوْ [au] 二重母音アウ

非アラビア語における使用と、特殊な字母・記号[編集]






 









 

 







使

コンピュータ[編集]

キー配列[編集]


Windows

[]




ASMO 449 - 7

ASMO-708 - ASMO-449 8IBM PC

ISO/IEC 8859-6 - 8 ASMO-708 

MS-DOS  7208859-6

MS-DOS  864

Microsoft Windows  1256(ÿ )

Unicode 

Arabic (U+0600 - U+06FF)

Arabic Supplement (U+0750 - U+077F) 

Arabic Extended-A (U+08A0 - U+08FF) () 使[6]

Arabic Presentation Forms-A (U+FB50-FDFF)

Arabic Presentation Forms-B (U+FE70-FEFF)

[]

注釈[編集]

  1. ^ 同時代の世俗的な碑文等では、点は既に現行のものにかなり近い形で使われている。

出典[編集]



(一)^ Arabic Alphabet.  Encyclopaedia Britannica online. 20154262015516

(二)^ K 198248

(三)^ abcAusta Somvichian-Clausen (20171016). . .  . 2022225

(四)^ Henri Neuendorf (20171019). Debunking Viral Story, Art Historian Says Allah Does Not Appear on Ancient Viking Garment. Artnet News. 2022225

(五)^  2845

(六)^ Lorna A. Priest, Martin Hosken (SIL International) (2010812). Proposal to add Arabic script characters for African and Asian languages. 20131017

関連項目[編集]

外部リンク[編集]