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2023年3月22日 (水) 11:51時点における版
概要
公開当初のタイトルは﹃スター・ウォーズ﹄︵Star Wars︶だった。﹁新たなる希望﹂︵A New Hope︶という副題は1976年の脚本の最終稿に見えていたが、公式に付けられたのは1980年の﹃スター・ウォーズ 帝国の逆襲﹄公開前のリバイバル上映からで、オープニング・クロールに加えられるようになったのはVHS版からであった[5]。元々﹁大河ドラマの一部﹂という前提で製作された︵3年に一度続編を作ると言われていたが実際には無理だった︶ための便宜上の副題であったがシリーズ化に成功、更に1999年に前日談となる﹃スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス﹄が公開されて以降、各作品を区別するため正式なタイトルとして﹁エピソード4﹂︵Episode IV︶も付け加えられた。
後に制作される﹃スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐﹄から19年後[6]の物語にあたり、ルーク・スカイウォーカーがかつて自身の父を弟子にしていたオビ=ワン・ケノービとの出会いを切っ掛けにジェダイとしての道を進み始める経緯と、帝国軍と反乱軍との戦いに関わっていく経緯が描かれる。
1997年の︽特別篇︾公開、2004年のDVD版や2011年のブルーレイ版の発売に際し、その都度最新のデジタル技術などを用いて一部内容の修正・変更が行われている。
特撮シーンの評価も高かったが、第一次、第二次世界大戦の記録映像を研究して作り上げられた戦闘機の空中戦シーンとその編集、ベン・バートが制作した既成の音源に頼らないユニークな効果音やキャラクターの声をもそれまでに無い新しさを印象付ける一助となり、アカデミー賞を得ている。
1977年公開当時、1978年公開の映画﹃未知との遭遇﹄などとともに世界的なSFブームを巻き起こし、それまでマニアックな映画としてしか認識されていなかったSF作品を誰でも楽しめるエンターテインメントへと評価を完全に変えた。アメリカ国内のみでの総合興行収入︵インフレーション調整版︶は歴代2位︵世界歴代興行収入上位の映画一覧参照︶。
1989年には、アメリカ議会図書館フィルム保存委員会により永久保存映画に選定された[7]。同年から始まった当制度のリストに登録された最初の作品の一つで、その中で最も新しい作品だった。
ストーリー
遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。
ジェダイ騎士団と旧銀河共和国が滅亡して久しい時代、かつて平和だった銀河系は銀河帝国による圧政下にあった。そんな中、反乱同盟軍のスパイが帝国軍の誇る宇宙要塞である初代デス・スターの極秘設計図のデータを密かに盗み出す事に成功した。帝国の皇帝であるパルパティーンことダース・シディアスが最も信頼を置くシスの暗黒卿のダース・ベイダーは、設計図奪還と反乱軍の本拠地の早期発見を命じられる。
反乱軍の指導者の一人レイア・オーガナ姫は惑星オルデランへ帰還の途上だったが、帝国軍のスター・デストロイヤーに襲撃され輸送船タンティヴィIVは拿捕される。激しい戦闘の最中、レイアは養父ベイル・オーガナ元老院議員の友人のオビ=ワン・ケノービに助けを求めるべく、ドロイドのR2-D2に救援メッセージとデス・スターの設計図を託し、R2-D2は相棒のC-3POと共に船から脱出する事に成功する。
R2-D2とC3POは砂漠の惑星タトゥイーンに漂着する。原住種族のジャワに捕獲されて売りに出された2体は、農場の主人オーウェン・ラーズとベル・ホワイトスン夫妻と甥の農場手伝いの青年ルーク・スカイウォーカーに購入された。ルークによって整備されたR2-D2はふとした拍子にレイアのメッセージを再生してしまう。R2-D2は夜中にラーズ家を抜け出し単身でオビ=ワンにそのメッセージを届けようとするが、後を追ったルークらと共に野盗種族タスケン・レイダーの襲撃に遭い、近所に住む老人ベン・ケノービに助けられる。
ベンこそが、名を変えて隠遁していたジェダイの騎士のオビ=ワンであった。オビ=ワンはルークらを自宅へ招くと、ルークに彼の父であるアナキン・スカイウォーカーのライトセーバーを渡し、旧銀河共和国の守護者であったジェダイ騎士団について、自身と同じく騎士だったアナキンについて、ジェダイの騎士の力の源たるエネルギーのフォースについて、そして皇帝の側に付いてジェダイ騎士団を裏切りアナキンはじめ多くの騎士達を殺害したかつての弟子ベイダーの過去を話す。そしてオビ=ワンはレイアのメッセージを受けて、彼女の故郷の惑星オルデランへの旅へルークを誘うが、ルークは叔父が許してくれないと断り、オビ=ワンをアンカーヘッドの街まで送ろうとする。その途中、ルークらはドロイドを売ったジャワたちが帝国軍に襲撃された現場を見てラーズ家の危機を察知し農場へ駆け戻るが、時は既に遅くオーウェンとベルーはストームトルーパーによって無残に殺害され、農場は焼き払われていた。もはやタトゥイーンに留まる理由を無くしたルークは、父のようにジェダイの騎士になる事を誓って、オビ=ワンとオルデランへ行く事を決意する。一行はモス・アイズリー宇宙港で密輸商人のハン・ソロとチューバッカを雇い、彼らの宇宙船ミレニアム・ファルコン号で帝国軍の追跡を振り切ってオルデランへ向かう。
同じ頃、帝国軍に囚われの身であったレイアは執拗な尋問にも頑強に抵抗していた。業を煮やしたデス・スター司令官ターキン総督は、反乱軍の秘密基地の所在を吐かねば故郷オルデランを破壊すると脅し、レイアはやむなく既に放棄された反乱軍の基地の所在を教えるが、ターキンは反乱軍への見せしめとしてオルデランをデス・スターの究極兵器であるスーパーレーザーで破壊してしまう。その瞬間、ファルコン号内でルークにフォースを教えていたオビ=ワンはフォースに異常な乱れが起きた事を感じた。彼らが到着した時には既にオルデランは星くずと化しており、付近にあったデス・スターを衛星だと勘違いしていた一行は、トラクター・ビームによって捕らえられてしまう。
ルークたちはファルコン号の二重床に隠れて捜索をやり過ごし、ストームトルーパーの装甲服を奪って変装すると管制室へ潜入する。R2-D2にデス・スターのコンピューターから情報を引き出させ、トラクター・ビームは複数の電源のうち1つを切るだけで停止することを知ると、オビ=ワンは一人で電源を切りに向かった。その後、R2-D2の解析によりレイアがここに監禁され、処刑を待っている事が分かり、ルークはソロとチューバッカを説得し救出に向かう。帝国軍の猛追を受けながらも三人はレイアの救出に成功し、ファルコン号へと急ぐ。トラクタービームの電源を切り終えてきたオビ=ワンは、ファルコン号の目前でベイダーと再会、ライトセーバーを交える。ファルコン号へ乗り込もうとするルークたちを見たオビ=ワンは突然何かを悟ったかのようにライトセーバーの構えを解く。直後、ベイダーのライトセーバーがオビ=ワンの胴体を切り払うが、オビ=ワンの肉体は消滅して着衣と装具だけが残った。
TIEファイターの追撃を振り切り、ファルコン号はレイアの案内で反乱軍の基地のあるヤヴィン第4衛星へたどり着く。デス・スターの設計図からは﹁反応炉の排熱口が外面に直結している﹂という構造上の弱点が判明し、その排熱口よりプロトン魚雷を撃ち込んで反応炉を破壊する作戦が立案される。その頃、ファルコン号に追跡装置を仕掛けておいた帝国軍はヤヴィン第4衛星にある基地の存在を突き止め、デス・スターの圧倒的な力をもってヤヴィン第4衛星ごと破壊せんと進撃する。ルークはスクランブルする反乱軍のXウイングレッド中隊に加わり、R2-D2を相棒にパイロットとして戦場へ向かうが、礼金を受け取ったソロとチューバッカは早々に基地を立ち去って行く。
反乱軍のパイロットたちは果敢にデス・スターに攻撃を挑むも、対空砲火を掻い潜っての直径2メートルの排熱孔への攻撃は困難を極め、ベイダー自ら率いるTIEファイター部隊により次々と撃墜されていく。デス・スターの攻撃開始が迫る中、遂に最後の攻撃担当となったルークは、内なるオビ=ワンの声に従って自動照準装置に頼らずフォースの導きにより目標を捉えようとする。しかし背後から迫るベイダーにより僚機を失いR2-D2も損傷、絶体絶命と思われたその時にファルコン号が出現、ベイダー機はファルコン号に撃破された部下機と接触して放り出される。思わぬ救援によりルークは見事目標にプロトン魚雷を命中させ、デス・スターは宇宙のもくずと消えた。
戦いの後、ルーク、ソロ、チューバッカの3人は、反乱軍一同の賞賛の中でレイアから勲章を授与されたのだった。
キャスト
日本語吹き替え
- レコード版:「THE STORY OF THE STAR WARS」映画本編のダイジェスト版ともいうべきレコードの日本語版
- 原作:ジョージ・ルーカス、音楽:ジョン・ウィリアムズ、脚本:鏡明/宮崎真由美、制作:高和元彦、演出:上野修
- 劇場公開版:松竹富士リバイバル劇場公開日本語吹き替え版(DVDリミテッドエディション収録)
- 監修:ジョージ・ルーカス、演出:原田眞人、台本:宇津木道子、調整:兼子芳博、スタジオ:新坂スタジオ、担当:ザック・プロモーション
- 日本テレビ版1:1983年10月5日初回放送 日本テレビ「開局30年記念水曜ロードショー/世紀の超大作完全放送 スター・ウォーズ ロボットC-3PO、R2-D2がタモリと一緒にTV局に現れて…」版(TV初放送)
- その他の出演:千田光男、神谷和夫、湯川元敬、佐藤政通、田村勝彦、飯塚昭三、立沢雅人、及川智靖
- 演出:田島荘三、翻訳:大野隆一、監修:野田昌宏、調整:近藤勝之/川崎宗利、録音助手:関範明、音響効果:南部満治/大橋勝次/河合直、スタジオ:コスモスタジオ/NTV映像センター、制作進行:小嶋尚志/本多敬、制作協力:コスモプロモーション、担当:梶原隆/横山宗喜(日本テレビ)、制作:日本テレビ
- その他の出演:西村知道
- 演出:蕨南勝之、翻訳:大野隆一、監修:野田昌宏、調整:近藤勝之、効果:新音響、製作:コスモプロモーション/日本テレビ 奥田誠治
- ソフト版:VHS・DVD・Blu-ray ※DVD以降は特別篇本編に合わせて追加録音・再編集し5.1chにリミックスしたものを収録
- その他の出演:小室正幸、星野充昭、島香裕
- 演出:伊達康将、翻訳:岡田壯平、調整:高久孝雄/飯村靖雄、効果:リレーション、制作:東北新社
- 演出:佐藤敏夫、翻訳:岡田壯平、調整:長井利親、効果:リレーション、編集・録音:ムービーテレビジョン
- その他の出演:佐々木敏、楠見尚己、天田益男、小形満、田島康成、廣田行生
スタッフ
製作
製作背景
本作が製作された1970年代中盤のアメリカ映画は、ベトナム戦争終結等の社会風潮を受け、内省的なアメリカン・ニューシネマが多くを占めていた。ベトナム戦争以前の﹁古きよきアメリカ﹂を描いた﹃アメリカン・グラフィティ﹄で一定の成功をおさめた[注 2]ジョージ・ルーカスは、かつてのアメリカ娯楽映画の復権を意図し、古典コミック﹃フラッシュ・ゴードン﹄の映画化を企画する。しかし様々な問題が絡みこの企画の実現が不可能となり、その設定を取り入れて自ら﹃スター・ウォーズ﹄の脚本を執筆した。そのため、一般的にはSF映画というジャンルに分類されている本作であるが、内容は正に娯楽映画の見本市であり、戦争映画をはじめ、西部劇、海賊映画、ラブロマンス、ヒューマン、ミュージカル、果ては日本の時代劇の要素まで盛り込まれている。
製作にゴーサインが出たとはいえ極端に予算が少なく、様々な作業をこなさなければならなかったルーカス本人が忙しさの余り入院したほどであった。このため、撮影終了後ルーカスはアラバマ州で﹃未知との遭遇﹄を撮影していた友人のスティーヴン・スピルバーグを訪ね、﹁もう大作はこりごりだ﹂と言っていたという[注 3]。
製作時、ほとんどの関係者は﹁毛むくじゃらの猿︵チューバッカ︶が二足歩行しているし、ヒロインは変な団子を付けているし、変な映画だな﹂などと思ったという。中
には﹁ゴミ映画だ﹂とぼやいたカメラマンもいたほどだった。ルーカスが、スピルバーグやブライアン・デ・パルマなどの友人たちを招いて自宅で完成前のラッシュ試写を行った際には、気まずい空気が流れ、デ・パルマは﹁ダース・ベイダーは陳腐な悪玉﹂﹁フォースという名の都合のよい便利な魔法﹂﹁レイア姫の菓子パンのような三つ編み﹂﹁冒頭の長すぎるスーパーインポーズ﹂などと酷評した。ルーカスは﹁よく言うね。君は映画で成功したことがないくせに。僕はせめて5000万ドルは儲けてやる!﹂と言い返した。反対にスピルバーグは﹁5000万ドルなんてものじゃない。1億ドルは儲かる﹂と評価した。完成後の試写会と同時にそうした低評価の感想は減っていたが、関係者の中では試写中に居眠りをする者もいた。
アメリカの各映画館は当時、子供やマニア向けのB級映画と低く見なして上映することを渋り、配給会社である20世紀フォックスも他の映画作品との抱き合わせるかたちで売り込みを行わざるを得なかった。完全に自信を失ったルーカスは映画が大失敗すると思い込み、結果を聞くまいとプレミア公開翌日にハワイ旅行に出かけ、電話もテレビもない別荘に籠っていたという。ルーカスはプレミア公開時にチャイニーズ・シアターで本作に並ぶ行列に出くわしたが、﹁こんなにヒットする映画なんてうらやましいな﹂と思ったという。本作の失敗を確信していたルーカスは、自身が受け取る本作の収益歩合と、スピルバーグが受け取る﹃未知との遭遇﹄の収益歩合を交換しようと持ち掛け、ルーカス本人以上に本作を高く評価していたスピルバーグはこれを了承し、印税の2.5%を交換することにした。公開と同時に大ヒットしたことを、電話のつながらない場所にいるルーカスにいち早く伝えたのもスピルバーグである。結果として﹃スター・ウォーズ﹄は﹃未知との遭遇﹄を超える大ヒットとなり、現在になってもその印税収入は、スピルバーグに利益をもたらしている。
影響
ルーカスは特撮映画の巨匠レイ・ハリーハウゼンに大きな影響を受けており、﹁僕達のほとんどが子供の頃から彼の影響を受けてきた。その存在なくして﹃スター・ウォーズ﹄は生まれなかった。﹂と語っている[9]。製作にあたっては黒澤明監督の﹃隠し砦の三悪人﹄を元にしたとも言われる[10]。特に物語のキーパーソンとなるC-3PO、R2-D2の2体のドロイドのモデルは﹃隠し砦の三悪人﹄に登場した戦国時代の2人の百姓、太平︵千秋実︶と又七︵藤原釜足︶であるとルーカス自身が認めており、同じく姫から褒美をもらうというラストシーンも双方の作品に見受けられる。
序盤のモス・アイズリー宇宙港の酒場で、オビ=ワンが自身とルークに因縁をつけてきたゴロツキの宇宙人2人の腕を切り落とすシーンは﹃用心棒﹄によく似たシーンが存在し、中盤にデス・スター内でミレニアム・ファルコンの床に隠れるシーンは﹃椿三十郎﹄の若侍を三十郎が隠すシーンを彷彿させる。また、オビ=ワン役︵もしくはベイダー役︶で三船敏郎に出演依頼があったという逸話もある[10]。
特撮
脚本にゴーサインがなかなか出ないためルーカスは友人のバーウッドとロビンスから紹介されたイラストレーターのラルフ・マクォーリー︵以降﹃スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲﹄、﹃スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還﹄でもデザインを担当︶にキャラクターや宇宙船のイメージ画制作を依頼し、それらも用いたプレゼンテーションを経てようやく20世紀フォックスから制作のゴーサインを得た。
映像化にはストップモーション・アニメーションやマット画といった古典的手法から大量の模型制作、光学合成、ミニチュアの爆破に至るまで幅広い技術が必要だったが、当時視覚効果スタジオは閉鎖が続き本作で想定されたような映像を作り出すには数々のノウハウを一から生み出す必要があった。ルーカスとプロデューサーのカーツは﹁インダストリアル・ライト&マジック︵ILM︶﹂という社名で撮影スタジオや工房に使うための倉庫をヴァン・ナイスに借り、自主映画で特撮の研究をしていた学生やカメラマン、デザイナー、特殊メイクのアーティストを多数雇い入れた。ベテランの特撮スタッフも参加しており、﹁P.S.﹂名義でマット・ペインティングを手がけたハリソン・エレンショウ︵ディズニーの特撮映画でペインターを務めたピーター・エレンショウの息子︶はディズニーに所属していたが本作をディズニー作品と兼任で担当する事を依頼され、本来断るところが作品の面白さに惚れ込み承諾したという。
﹃2001年宇宙の旅﹄以後宇宙を舞台にした﹃サイレント・ランニング﹄を監督し、テレビシリーズ﹃スターロスト宇宙船アーク﹄のプロデューサーも務めていたダグラス・トランブルに視覚効果の統括が依頼されたが、トランブルは﹁もう宇宙はたくさん﹂と言って断った。しかし﹃サイレント・ランニング﹄に参加した後もトランブルのスタジオに出入りしていたジョン・ダイクストラがこの話を知る。模型の移動装置とカメラの光学系操作をコンピュータで連動させることに成功しており、劇場映画に用立てる事を望んでいたダイクストラはルーカスとカーツに売り込み正式に依頼された[注 4]。
夥しい数の要素を合わせプリントを重ねる光学合成プロセスが必須であり、画質の劣化を最小限に止める為には大面積のフィルムで撮影する事が望ましかったが、トランブルのスタジオで使われていた65mmフィルムのシステムはフィルムからカメラ機材に至るまで高価で予算に収まらず、1961年の映画﹃片目のジャック﹄[注 5]以降使われず枯れた技術となったビスタビジョン方式を採用。中古のビスタビジョン・カメラやプリンターも非常に安く調達可能で、35mmの汎用フィルムを使用しながら高画質が得られる利点は大きかった。
こうしてスタートした通称﹁トリック・ユニット﹂は本作でSFXの流行を呼び、映像化可能になった、あるいは大ヒットの可能性を見せた事で着手されるあてのなかったSF映画の企画の多くが一気に映画化に動き出す。本作後に一度解散した後、次作﹃エピソード5/帝国の逆襲﹄で再結成されたILMはアカデミー賞視覚効果部門で何年も連続受賞するなど大活躍を見せる。視覚効果デザイン部門のジョー・ジョンストンはやがてSFXを多用した映画の監督にも転進し、ダイクストラ、リチャード・エドランド、フィル・ティペット、ピーター・クランなども独立してそれぞれのスタジオを構えることになる。
リドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、ローランド・エメリッヒやピーター・ジャクソンなど高い技術を持ち自作に自由や融通の利く特撮工房を設立する映画監督の例はデジタル時代になると数々現れる。彼らは、皆に人生を変えるほどの影響を本作から受けたと語っている[注 6]。
本作の製作をきっかけにダイクストラにより開発されたダイクストラフレックス︵Dykstraflex[注 7]︶はその後の特撮映画に大きな影響を与える[注 8]。
劇中の撮影用のミニチュア︵プロップ︶の表面のディテールはプラモデルの部品を張り付けているが、これは一々彫刻するのが面倒だからである[注 9]。これは当時のアメリカのSF映画では広く普及していた手法である[注 10]。
また、惑星タトゥイーンの場面は主にチュニジアで撮影されたが、隣国であるリビアが巨大輸送車サンドクローラーを軍用車両と勘違いし、危うく国際的な紛争が発生するところであった[12]。
コンピュータ・アニメーションとの関わり
本シリーズは、その当初から当時としては珍しくCGIと関わりがあった。
物語後半、分析されたデス・スターの設計図がブリーフィングで投影される場面があるが、これは手描きの動画ではなく、コンピュータで制作したCGを映したモニター画面をコマ撮りカメラで撮影し、フィルム投射したものである。USC時代のルーカスの後輩であるダン・オバノンが監修したもので、ソフトウェア開発はトーマス・デファンティ、プログラミングはラリー・キューバによる。
CG研究の第一人者とされるジョン・ホイットニー・ジュニアとキューバの2人は、完成上映後にXウイングの飛行映像をCGで製作し、ルーカスにプレゼンテーションを行った。﹃エピソード5/帝国の逆襲﹄では不採用だったものの、ルーカスもCGに将来性を見出し、ほどなくILMにCG研究部門が新設された。﹃エピソード6/ジェダイの帰還﹄ではやはり3DCGによる作戦図を製作したトム・ダフ、ウィリアム・リーヴスを含むこのチームは、ピクサーの母体となる[注 11]。
ルーカスが﹁未完成﹂と語り技術の限界から映像化を断念せざるを得なかったシーンは、20年後公開の﹃特別篇﹄でデジタル・アニメーションを駆使して作り直された。後の新三部作も、背景やキャラクターなど多くがCGで作られた。
カットされたシーン
小説版にも存在する、ルークが冒頭の宇宙戦を地上から観察する場面があるが、この場面は元々﹁映画が始まってから20分もの間、主人公が不在なのはおかしい﹂という制作当時の考えからとりあえず撮影だけはされたものの、編集段階でカットされた。なお、この場面では本編では一切使用することのなかったチューリップハット調の帽子を被ったルークを見ることができる[注 12]。2011年発売のブルーレイ版に特典映像として収録された。
公開・反響
ファースト・ランはわずか全米50館での公開であったものの、結果として良質な娯楽映画とポジティブなストーリーに飢えていた大衆は本作に熱狂し各地でヒットを記録、世界的な社会現象となった。公開初日からそれまでの興行収入も一挙に塗り変え、それまでB級、キワモノという扱いだったSF映画に対する評価も一挙に引き上げるまでになった。このことを伝えるためスピルバーグはルーカスがこもっているハワイの別荘へ行き、そこで﹃インディ・ジョーンズ﹄の構想が生まれたといわれる。なお、本作をもってルーカスは監督業からは一時期離れることになる。
日本公開時、20世紀フォックスの重役であったアラン・ラッド・ジュニアは来日してプレミア上映に参加した[13]。本国アメリカやヨーロッパでは上映中や上映終了後には、拍手と歓声などで賞賛されたが、日本の劇場は静まり返っており、その沈黙という反応に不安を覚えたという[14]。上映後、﹁日本人は、上映中は騒がないし、静かにじっと鑑賞する事が賞賛の形だ﹂と聞き、安心したという[14]。
また、本作の商品化ライセンスを取得していたケナー・プロダクツ︵現ハズブロ︶は本作が失敗すると考え、玩具などの関連商品の販売はごく少数しか予定していなかった。しかし予想外のヒットによって供給が不足し、公開年のクリスマス商戦︵アメリカの玩具メーカーにとって最大の書き入れ時︶までに充分な商品を販売することが出来なかった。そのため、﹃スター・ウォーズ﹄は映画関連のコンテンツ・ビジネスの成功例の嚆矢とも言われている。
日本におけるテレビ放映
初放映
1983年10月5日午後8時より日本テレビ系の﹁水曜特別ロードショー﹂︵﹁金曜ロードショー﹂の前身︶にて日本語吹替版が放送された。
この時は、﹁日本テレビ開局30年 記念特別番組﹂という名目で放送され、この日の日本テレビは、朝から生番組にC-3POとR2-D2を出演させて宣伝したり、夜7時からの1時間枠に﹁ウルトラ宇宙クイズ・秋のSF大決戦 スター・ウォーズまで後60分!!全国子供博士大集合﹂という特別番組を放映したほか、映画本編も通常夜9時からの﹁水曜ロードショー﹂の放映枠を1時間前倒しし、3時間の特別編成を敷いた。
本編が始まる直前にも、日本テレビ局舎内で行われたタモリ[注 13]、研ナオコ[注 14]、徳光和夫[注 15]やC-3PO・R2-D2、愛川欽也による解説、放送開始スイッチを押すまでの劇を行った。この時、本編の世界観を模したセットのあるスタジオでオーケストラを用いたテーマ演奏が行われた。この劇は、C-3POとR2-D2が日本テレビにやってくる場面から始まり、途中行われていたオーケストラ︵SWテーマ︶の演奏に浸っていたC-3POが、タモリ扮する警備員と揉め事を起こしたり研ナオコをヨーダの娘と思ったりするというストーリーで、このシークエンスの後、スタジオに着いたC-3POが時間が既に8時を過ぎていることに驚いて放送開始スイッチを押すという更なるシークエンスを挟んで本編に移行するというものであったが、C-3POが﹁放送開始﹂とボタンを押すたびにCMが流れ、﹁押すボタンを間違えた。本当のボタンはどこだ﹂と局内を移動する演出であったために著しい不評を買い、﹁早く映画を始めろ!﹂﹁ふざけるな!﹂といった苦情電話が殺到したことにより、後日ディレクターがコメントするという一幕もあった。
主な吹替の声優はルーク‥渡辺徹、レイア‥大場久美子、ハン・ソロ‥松崎しげる。本編終了後、愛川欽也と渡辺・大場・鈴木宏昌︵上述の演奏の指揮を担当。︶の対談が入り、タモリに優しく手を振られながら去っていくC-3POとR2-D2の姿が映し出され、本編を模したクレジットとともに番組は終了する。
番組開始から映画本編開始までCMを含めて22分、映画本編終了から番組終了まで9分を要している。初放映と2回目の放送時間差が27分であることから順当な穴埋めと言える。
2度目の放映
2度目のテレビ放映も同じく日本テレビの﹁金曜ロードショー﹂枠︵水曜から放送曜日移動︶。新しい吹き替えバージョンとして、番組内で水野晴郎にも紹介された︵初回放送時の解説であった愛川欽也は、映画解説というよりも﹁レイア姫、いい女だ﹂など個人的な感想しか述べず、そういう意味でも改善された︶。主な声優はルーク‥水島裕、レイア‥島本須美、ハン・ソロ‥村井国夫という、その後のシリーズ作と同じ組合わせでなされた。その際、ベイダー役は坂口芳貞となっていたが、その後のシリーズではベイダー役のみ初放映時の鈴木瑞穂が再び担当している。ちなみに、次週予告のテロップが流れる際、﹁新吹き替えで放送します﹂と入った。
地上波放送履歴
回数
|
テレビ局
|
番組名
|
放送日
|
放送時間
|
吹替版
|
初回 |
日本テレビ |
水曜ロードショー |
1983年10月5日 |
20:00-22:49 |
日本テレビ版1
|
2回目 |
金曜ロードショー |
1985年10月11日 |
21:02-23:24 |
日本テレビ版2
|
3回目 |
1988年4月1日 |
21:00-23:21
|
4回目 |
TBS |
火曜ビッグシアター |
1989年8月29日 |
20:00-21:54
|
5回目 |
水曜ロードショー |
1991年6月26日 |
21:00-22:54
|
6回目 |
フジテレビ |
ゴールデン洋画劇場 |
1993年7月31日 |
21:02-22:54
|
7回目[注 16] |
日本テレビ |
金曜ロードショー |
2002年5月3日 |
21:03-23:29 |
日本テレビ版3
|
8回目 |
フジテレビ |
プレミアムステージ |
2004年10月30日 |
21:00-23:24
|
9回目 |
テレビ朝日 |
日曜洋画劇場 |
2005年7月3日 |
21:00-23:19 |
ソフト版
|
10回目 |
日本テレビ |
金曜ロードSHOW! |
2015年12月18日 |
21:00-22:54
|
11回目 |
2018年6月29日 |
21:00-22:54
|
受賞
トリビア
●邦題は当初﹃惑星大戦争﹄になる予定だったが、本作の本国アメリカでの大ヒットや、日本ではアメリカの翌年に公開されるなどの理由で中止になったため、最終的に1977年に公開された日本映画︵﹃惑星大戦争﹄︶のタイトルに流用された[15]。
●黒澤明の映画が大好きなルーカスは、まずオビ=ワン役を黒澤映画の顔であった三船敏郎に依頼したが三船に断られた[15]。
●ミレニアム・ファルコンの当初のデザインが、イギリスのSFテレビ番組である﹃スペース1999﹄に登場するイーグル・トランスポーターと似ているという意見をルーカスが気にしたため、1976年の本作の撮影直前になってファルコンのデザインやミニチュアはタンティヴIVとして流用された[16]。
●当初反乱軍でのルークの所属部隊の名はブルー中隊で、Xウィングの機体にあるラインの色はブルーだったが、ブルーのラインがブルーバック合成では消えてしまうためレッド中隊に変更された[17]。後年ブルー中隊は、本作の直前までを描いた映画﹃ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー﹄に登場した。
●1982年のトルコの映画﹁世界を救った男﹂は本作の映像や音楽を許可なく使用し﹁トルコのスター・ウォーズ﹂として知られるが、その内容は評論家から酷評されている[18][19][20]。
脚注
注釈
(一)^ VHSのみ。
(二)^ ただし、ルーカスが﹁スター・ウォーズ﹂の企画を始めたのは﹃アメリカン・グラフィティ﹄の完成直後の1973年4月であり、映画会社側から﹁失敗作﹂と思われていた﹃アメリカン・グラフィティ﹄が公開されて﹁大成功﹂したのは1973年8月1日からである[8]。
(三)^ その後ルーカスは、﹃スター・ウォーズ﹄シリーズ﹁エピソード1〜6﹂や﹃インディ・ジョーンズ﹄シリーズなどの大作を次々と手がけることになる。
(四)^ 本作を断ったトランブルは﹃未知との遭遇﹄の後ダイクストラと1979年の﹃スター・トレック﹄の視覚効果を共同で手掛ける。
(五)^ マーロン・ブランド監督・主演作でアカデミー撮影賞ノミネート。もともと﹃2001〜﹄のスタンリー・キューブリックによる企画だった。
(六)^ エメリッヒは自ら特撮工房を構え本作で爆破撮影を担当したジョー・ヴィスコシルを迎えアカデミー賞を獲得した﹃インデペンデンス・デイ﹄の公開後、偶然会ったルーカスに﹁なぜILMに視覚効果を依頼して来なかった?﹂と問われ﹁あなたと同じ事をした﹂と答えている。
(七)^ コンピュータによるモーション・コントロールカメラのシステム。﹁ダイクストラ・カメラ﹂とも呼ばれた。
(八)^ 使用料︵同様の撮影システム開発に支払いが見込まれる特許使用料、またはILMからの同システムのレンタル料︶の高額さに二の足を踏み、導入・活用が遅れた特撮邦画は特撮CG技術の確立・台頭の時代まで、人工臨場感演出技術で大きく水を空けられることとなる。
(九)^ 当時アメリカで高評価だったタミヤ、ハセガワ、バンダイなどの日本製のプラスチック模型が多用されている[11]。
(十)^ プロップの完全再現を目指すモデラーの中には各種資料を元に実際に使われた流用パーツを特定して製作する者がいる︵﹃モデルグラフィックス﹄連載企画﹁考古学的SWモデリング﹂など︶。
(11)^ ﹃特別篇﹄の公開後、ピクサー社は2001年にエピソード4のクライマックスをパロディに、TIEファイターに追われるXウィングがデス・スター調のTHXロゴを攻撃するというTHXトレイラー︵予告篇︶を製作した。スカイウォーカー・サウンドによってシリーズでお馴染みの音響効果も付けられている。
(12)^ この帽子を被ったルークのシーンは、日本公開時のパンフレットにモノクロのスチル写真として掲載されていた。
(13)^ 最初の登場時は、下述の通り片目のレンズが取れたサングラス︵当時﹃今夜は最高!﹄などで使用︶をかけた警備員、次の登場時にはこの当時の風貌だった真ん中分けにレイバンのサングラスではなく﹃森田一義アワー 笑っていいとも!﹄︵フジテレビ系列︶で当時着用していた七三分けに色の薄いサングラス、アイビールックという姿で登場した。
(14)^ 最初の登場時は日本テレビの受付の女性という設定、その後は研ナオコ本人として登場。
(15)^ 当時同局のアナウンサーだった徳光は、後姿のみ登場の社長︵後頭部に﹁社長﹂と書かれた紙が貼られている︶に﹁小林完吾がタレントになることが我慢できない﹂と辞職願を出そうとしていた設定。これは当時日本テレビと系列各局で放送されていたキャンペーンCM﹁おもしろまじめ放送局﹂で小林が﹁レコード会社から歌手デビューのオファーが来た﹂として社長に辞表を出すが、徳光に﹁今の人気は一時的なもの、目を覚まして﹂と止められるくだりのオマージュ。
(16)^ この回以降は特別篇。
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