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この項目では、1992年に日本で発売されたオーディオディスクについて説明しています。1980年ごろにドイツで開発されていたオーディオディスクについては「ミニディスク・マイクロディスク」をご覧ください。 |
MiniDisc MD |
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メディアの種類 |
光学ディスク (カートリッジ:あり) |
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記録容量 |
60/74/80 分 |
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コーデック |
ATRAC |
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回転速度 |
1.4 m/s (60 分) ほか |
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策定 |
ソニー |
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主な用途 |
音声 |
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ディスクの直径 |
64 mm |
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大きさ |
H 68 * W 72 * D 5 mm |
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テンプレートを表示 |
各種ディスクメディアとその他カセット型メディア等とのサイズ比較。上段右から2番目の赤いカートリッジがMD。
音楽MD
初期の音楽MDの規格書は "Rainbow Book"と呼ばれている。
メディア
音楽MDメディア
音楽MDメディアは直径64mm︵2.5インチ︶・厚さ1.2mmのディスクが横72mm、縦68mm、厚さ5mmのカートリッジに封入された構造になっている。このため傷やほこりが付きにくく、取り扱いが容易である。
ディスクには再生専用ディスクと録音用ディスク、ハイブリッドディスクの3種類が規定されている。2000年代以降に流通しているディスクはほとんどが録音用ディスクである。
再生専用ディスクはCDと同様の構造の光ディスクである。録音用ディスクと異なりシャッターがディスクの裏側のみにある。CDのように既成曲の入ったパッケージメディアが主にソニー・ミュージックエンタテインメント (日本)︵現‥ソニー・ミュージックレーベルズ︶を中心に発売され、一時期はオリコンチャートも実施されていたが、以下のような理由で普及せず1999年︵平成11年︶に発売が打ち切られた。
●音声圧縮によりCDと比べて基本的に音質や情報量が劣る。特に登場当初はエラー修正に容量を割いていたため記録量が半分しかなく、DATはともかく、競合規格のDCC以上にオーディオマニア層に嫌われた。
●多くのユーザーから﹁MDはCDをコピーして外に持ち出すことのできるメディア﹂として認識されたことで、CDでも発売されているタイトルをわざわざMDで購入するメリットを訴求できなかった。
●初期はポータブル機から普及が進んだため、据え置き型のMDレコーダーやMDデッキ搭載コンポーネントシステムが相対的に普及していなかった。
●ダブルMDデッキがダブルカセットデッキほどは普及しなかったため、複製がCDや音楽テープよりも面倒だった。また複製できても音質がCDからダビングしたものよりも劣っていた。
●MDタイトルのレンタルが存在しなかった。
録音用ディスクは磁界変調オーバーライト方式により記録される光磁気ディスクである。シャッターはディスク両面にある。通常はユーザーが自身で録音を行うためのブランクディスクとして販売されている。ディスクタイプは当初ステレオモードで60分タイプのみだったが、1993年に74分タイプ、1999年に80分タイプが発売され3種となった。最初期の80分ディスクは、74が80に変更されている以外にも、外観を同種の74分ディスクと変えてあるものも存在した。モノラルモードや各種拡張モードを使って録音した場合の分数はこれと一致しない。74分はディスクの回転速度を1.2m/sにすることで︵60分は1.4 m/s︶、80分はこれに加えてトラックピッチを1.5μmにすることで︵60分と74分は1.6μm、規格上は1.5μm - 1.7μm︶、それぞれ実現している。
ハイブリッドディスクは、再生専用エリアと録音用エリアの双方を持つ特殊ディスクである。また、レンズ・ヘッド両用クリーナーで一部存在していた。再生専用エリアでレンズを、録音用エリアでヘッドをクリーニングしていた。
MDソフト
●1992年の発売当初から1998年にかけて、ソニーミュージックを筆頭に各社から順次MDソフトが発売されていたが、その後は発売タイトル数の減少や廃盤タイトルも出始めた。2001年までモーニング娘。の新譜は、CDと同時発売されていた。
●CDと合わせて新譜発売していたソニーミュージック︵販売受託レーベルも含む︶以外のレーベルは人気作品のMD化が中心で、発売タイトルは少なかったもののメーカー合同による販促キャンペーンとして対象ソフトを購入するとスリーブケースが特典として貰える施策もあった。[1]
●ソニーに製造委託をしていたレーベル[2]からMDタイトルが多く発売されていたが、ライバルのDCC陣営の当時松下電器傘下のビクターとテイチクからもMDソフトが供給されていた。[3]
●1990年代後半ソニーマガジンズが発行していた﹃WHAT's IN?﹄の年末号に、MDソフトの総カタログが別冊付録として添付されていた。
●タワーレコードやHMVでは、マイケル・ジャクソンやマライヤ・キャリー・セリーヌ・ディオンなどソニーミュージック所属アーティストのアメリカから輸入されたMDソフトも取り扱われており、日本盤MDとはケースの形態が異なっていた。[4]
●2019年現在、MDタイトルで最後に発売された作品は、2009年に発売された倉木麻衣の﹃ALL MY BEST﹄︵品番‥VNYM-9001-2︶である。製造設備の関係からか、再生専用の光ディスクではなく録音用光磁気ディスクを使用し、出荷時に誤消去防止用のツメを開けて固定した状態としていた。
MDソフトを発売していたレーベル
フォーマット
曲情報はTOC (Table Of Contents) 領域に書き込まれる。トラックの移動・分割・結合・消去といった編集を行うこともできる。最大255トラックまで作成できるが、条件次第ではもっと少ないトラック数しか作れないケースもある。音楽データ以外に曲名などの文字情報の記録や編集、録音日時の記録などが可能である。漢字対応のレコーダーも存在している。TOCは0から31までの32セクタが存在するが、実際に使用されているのは0から4までの5セクタのみである。
なおセクタ3は再生専用ディスクでのみ使用され、CDと同じようにディスクのバーコードやISRC︵International Standard Recording Code、曲ごとの固有データ︶が記録される。
録音モード
録音モードにはステレオとモノラルの2種類がある。モノラル録音モードではディスク額面表記の2倍の長時間録音ができるため、会議やラジオ番組の録音などに利用される。どちらのモードで録音した場合も、ソニーが開発したATRAC (Adaptive Transform Acoustic Coding) 符号化方式で音声の非可逆圧縮が行われる。ビットレートは通常ステレオ録音時で292kbps、モノラル録音時で146kbpsであり、これにより記憶容量が小さいMDメディアでCDと同等の録音時間を実現している。
黎明︵最初︶期のMD機器での録音ではエラー制御に容量を割いていたため、音声記録には現在の半分しか割り当てられていなかった。そのため後継モデルのMDや先述の通りMDとほぼ同期に登場した競合規格のDCCに比較してあまり音質が良くなく、特にピュアオーディオファンからはネガティブイメージを持たれていた。
なおATRACはスケールファクタ︵英語版︶が独立しているため、録音後に音量の調整などが可能である。この特徴は一部機器が﹁S.F.エディット﹂機能として利用している。
また、MDLP対応機種ではディスク表示時間のおよそ2倍、4倍と録音が可能。
編集
著作権保護
MD機器には、SCMSおよびHCMSによるコピー制限が適用される。詳細は各項目を参照。
据え置き型のMD機器にはMDドライブを2つ備えたものがあり、これらは2枚のミニディスク間でデジタルのまま音楽データの移動︵ムーブ︶を行えることが多い。いずれもSCMSによる制限内の機能である。
例として1998年にソニーから発売されたMDS-W1はMDからMDへの曲の移動のみの対応で、デジタルでのコピーはできず移動元の曲は消える仕組み︵アナログならばコピーは可能︶。また日本ビクター︵現・JVCケンウッド︶のダブルMDミニコンポはコピーが可能だが、機器内ではアナログ接続されている。シャープのダブル機器も全く同様でありMD倍速録音もCDからMDへの倍速録音ともども1999年8月にいち早く搭載していた。なおケンウッド︵現・JVCケンウッド︶のALLORAではCDを同時に2枚のMDにダビングできる機種も存在した。
編集機能
MDは、録音後に編集が行える。アナログコンパクトカセットと違うのは、もう1台のデッキが要らないことである。
編集モードは曲をつなげるコンバイン (Combine)、曲を分けるディバイド (Divide)、曲順を入れ替えるムーブ (Move)、曲を消すイレース (Erase) の4つがある。なおイレースには、1曲を消すトラックイレース (Track Erase) と全内容を消すオールイレース (All Erase) がある。また、後述の文字入力も厳密には編集機能の1つである。またコンバインはつなげる曲どうしが同じ録音モードである必要がある。同じ録音モードであっても、アナログ録音されたトラックとデジタル録音されたトラックはコンバインできない機種もある。
コンバインについては日本ビクターではジョイン (Join) と呼ばれた。
TOCを更新するタイミング
機器メーカー・個々の製品によって、TOCを更新するタイミングは異なる。
例として、同一ディスク上で任意の編集作業を数回行う場合に、すべての編集作業が終了してディスクをイジェクトする、あるいは電源を切る、MD搭載ワンボディシステム等ではソース切換を行う等の操作をすると、それまでメモリーに蓄積されていたTOC更新情報をまとめてディスクに書き込んで "Complete" 表示を行うものもあれば、一方、個々の編集を行うたびに逐一TOCを更新し "Complete" 表示を行う機種もある。
TOCの書き込み時間自体は数秒だが、書き込み中は実質的に操作不能でありユーザーにとっては待ち時間となるため、特に編集行程が多い場合、後者のシステムでは、前者よりも編集完了までに要する時間が長くなる傾向にある。
編集作業中は﹁編集作業の結果をメモリーに蓄積中だがディスクにはまだ書き込まれていない状態﹂を表す "TOC" 表示が目安となるが、例外もある。日本ビクターのMD搭載ワンボディシステムには "TOC" 表示部がなく、タイトル︵ディスク/トラック/グループ︶入力後のTOC更新情報に限り、即時書き込みされない。ティアックの製品には "TOC" 表示部は存在するものの、タイトル︵ディスク/トラック/グループ︶入力後のTOC更新情報については、ユーザーが能動的にディスクイジェクトする、あるいは別の編集作業を行いその更新情報と合わせて即時書き込みされるよう意図しない限り、ディスクに書き込まれない。"TOC" 表示部が点灯するのは実質的にタイトル関連の編集後だけである。また "TOC" 表示中に電源を切るとその直前の編集内容︵=未書込のタイトル︶が書き込まれないため、やり直す必要がある。︵非推奨ではあるが、意図的に"TOC" 表示中に電池を抜く・電源プラグを抜くといった電源供給を無くす行為をすると、ディスクには情報が書き込まれないため、イレースした曲をディスク上ではなかったことに出来る=曲を取り戻せる︶。
クイック編集機能関連
ケンウッドのMD機器では、一時期クイックムーブ (Quick Move) とクイックイレース (Quick Erase) 機能があった。クイックムーブは20曲までの複数曲を1回の操作で移動できるモード、クイックイレースは1度の操作で複数曲を消去できるモードである。
普通のムーブやイレースでは、移動または消去により曲順と曲名がずれるが、このモードはそういった計算をしなくてすむため、便利だった。
シャープのMD機器にも同様の機能が搭載されており、それぞれプログラムムーブ (PRGM MOVE) 、プログラムイレース (PRGM ERASE) と呼称していた。
文字入力
MDでは文字入力が可能である。これはコンパクトカセットでは不可能な機能であり、MDユーザーを増やした一因とも言われている。
MDには文字領域が2つあり、半角カタカナと英数字を記録するセクタ1と漢字やひらがなも入力可能なセクタ4がある。それぞれセクタ1はJIS X 0201で、セクタ4はシフトJISで記録される。セクタ1はほとんどの機器で扱えるが、最初期はカタカナを扱えない機種もあり、全盛期の機種でもチューナーがアナログ式の廉価MDシステムや一部のカーオーディオなど液晶や蛍光画面でドット表示が出来ない機種に存在した。アルファベット・カナ入力は当初は他の編集作業ともども本体でしか作業出来なかったが、1998年にリモコンで操作できる機能が付いたほか、キーボードそっくりなやや大きなリモコンがパナソニック︵この当時の社名は松下電器産業︶やアイワ︵現‥ソニーマーケティング︶から登場した。その後ソニーからは普通サイズのリモコンで携帯電話のようなテンキーに50音を割り振ったものが登場、さらに時間短縮にも貢献できる録音中文字入力も可能となりその後のMD機器のリモコンの定番機能となった。セクタ4は対応機器が限られる。
セクタ4の入力は1997年以降、コンポーネントステレオやシステムステレオの上級機種で対応した。漢字入力は、パナソニックの機種はデッキにPC/AT用のキーボードを接続して行った。ソニーのピクシー・システムステレオではPCのシリアルポート・USBに接続するデバイス﹁PCリンクキット﹂の付属ソフト﹃Media Communicator﹄︵NetMDの音楽転送機能を省いたもの︶上やタッチパネル式リモコンで入力したタイトル情報を転送する。ただし、コンポでは本体画面にセクタ1表示のみの機種が多い。2000年10月に発売されたMDデッキ搭載の﹁バイオMXシリーズ﹂では、PCリンクキット相当の機能が内蔵されている。NetMD・Hi-MD機種ではセクタ4の編集・タイトル表示が標準化されている。ポータブルMDでは、1999年8月にシャープから発売された﹁MT-832﹂に初めて、PCリンクと同等の﹁パソコン・ザウルス接続対応﹂と、﹁漢字表示対応リモコン﹂が装備された。パソコンにインストールするためのソフトはシャープから無料でダウンロードできた。ソニーでは2001年10月にMDウォークマン﹁MZ-E909﹂以降の再生専用上位機種やNetMD対応の録再機種が発売されるまでセクタ4表示機能がなかった。漢字表示自体は1997年9月以降のモデルで対応。
データ領域はそれぞれ2332バイトあるものの、一部領域がトラック管理などで利用されるため半角約1700文字、全角約800文字に制限される。なお、半角カタカナも約800文字に制限される。これは、カタカナは内部でローマ字入力されているためで、それと一緒にカタカナ開始・終了のコードを打ち込むことで、カタカナ対応機器ではカタカナに変換されて表示され、カタカナ非対応機種ではローマ字とコードが表示される。
録音日時の記録
MDには録音日時を記録する機能もある。日時情報はセクタ2に記録される。セクタ2の対応機器は主に生録が可能なもの、特にポータブルMDレコーダーに多い。
MDLP
2000年以降より導入されたMDLP (MiniDisc Long-Play mode) は従来の音楽MD規格に2倍、4倍の長時間録音モードを追加する上位規格である。
MDLPはメーカー・ユーザーのいずれからも歓迎され、登場から数年で、市場で従来型の音楽MD機器を置き換えた。現在では、MD機器には欠かせないモードとなっている。
録音モード
追加録音モードはそれぞれLP2モード、LP4モードとよばれ従来のステレオモード(MDLP対応機器ではSPあるいはSTモードと呼ばれる)のそれぞれ2倍、4倍の時間、録音できる。
MDLPにおける各録音モードと使用ディスク、録音可能時間の関係
モード名 |
符号化方式など |
CH |
80分ディスク |
74分ディスク |
60分ディスク |
表記時間比 |
適した用途
|
SP-STEREO |
ATRAC 292kbps |
ステレオ |
80分 |
74分 |
60分 |
1.0倍 |
CDからの録音、音楽演奏の収音など
|
SP-MONO |
ATRAC 146kbps |
モノラル |
160分 |
148分 |
120分 |
2.0倍 |
モノラル音源(ナレーション等)の録音など
|
LP2 |
ATRAC3 132kbps |
ステレオ |
160分 |
148分 |
120分 |
2.0倍 |
楽器の練習など
|
LP4 |
ATRAC3 66kbps |
ステレオ |
320分 |
296分 |
240分 |
4.0倍 |
会議やラジオの録音など
|
LPモードの符号化方式には表のとおりATRAC3を採用しビットレートはLP2モードで132kbps、LP4モードで66kbpsである。
LP4モードではステレオ音声の左右相関を利用して圧縮するJoint Stereoを導入することで、ビットレートの不足を補っている。各LPモードにはいずれもモノラル録音モードはない。また、ATRACと違いスケールファクターが存在しないため音量の調整は出来ない。
なお、これらLPモードのビットレートはSPモード (292kbps) の2分の1、4分の1より若干小さい。これは、MDLP非対応機器でLP形式のトラックを再生した際に問題が起こるのを避けるために各サウンドグループ(212バイト)毎に20バイトのダミーデータが挿入されているためである。
互換性
MDLP規格で録音されたディスクはMDLP非対応機器でも認識が可能で、そのうちSPモードで記録されたトラックは正常に再生できる。ただし、LP2・LP4モードで記録したトラックを再生すると曲名欄の先頭に「LP:」と表示され、音声が流れない。なお、録音機の設定によりトラック名に「LP:」を付加せずに記録されたトラックの再生時には「LP:」の表示もされない。
一方、MDLP対応機器は従来型音楽MDとの上位互換性を確保しているため、従来機器で記録されたディスク・トラックの再生及びSPモードでの録音が問題なく行える。なお曲名欄の先頭に「LP:」を付加して記録されたトラックを再生した場合は、「LP:」は表示されない。
このように、MDLPは従来仕様との互換性が比較的高いのが特徴である。これはMDLPが録音モードの追加を目的としているため、ディスク・ファイルフォーマットなどが従来のまま引き継がれたことが大きい。しかしこのことで、ディスクあたりに記録できるトラック数は最大255トラックまで、および入力できる文字数は最大半角約1700文字・全角約800文字という従来の制約も引き継いだ。そのため、使用法によっては、残記録可能時間に余裕があるのに録音できない、条件次第では全曲に曲名をつけられないなど、せっかくの長時間録音を活かせない。
LP4で長時間録音したタイトルをディバイド(分割)する時は、MDLP非対応機種でディバイドした方が早い。LP4で録音したタイトルをMDLP非対応機種にかけると音は出ないが時間表示は半分で表示されディバイドなどは可能なため、非対応機種で30分ごとでディバイドしたのを対応機種にかけると1時間ごとにディバイドされている。早送りに必要な時間が半分になるのでMDLP対応機種でやるより短時間で済む。これは、ラジオ番組などをLP4で5時間録音したのを手早くディバイドする時に有効な手段である。ただし、音が流れないため分割ポイントの確認はできない。
MDLP録音したタイトルを、SONYのW1にてディスク間ムーブで他のMDに移動すると、モノラル録音の無音タイトルになる。
グループ機能
2001年にはMDLPグループという、ディスク内の各曲を幾つかのグループに振り分けることで簡易的なフォルダ分けを行う機能が登場した。これは、前年のMDLPの導入で1ディスクあたりの録音可能曲数が増えたことがトラックの閲覧性の低下を招いており、グループ機能の導入はこの問題に対する解決策となった。
なお、この機能には以下のような制約がある。
●作成できるグループの数は最大で99である。各グループ名の長さによってはこれより短くなることもある。
●複数の曲をひとつのグループに入れる場合、それらのトラック番号は必ず連続していなければならない。もし散在している場合はグループ化する前にトラックの並べ替えを行い、連番に直す必要がある。
●グループ非対応機ではグループ機能は利用できず、ディスクタイトルに管理用の文字列がそのまま表示される。
実際に記録されるグループ情報は、従来から存在するディスクタイトル領域に一定の書式に従って入力された文字列である。したがって、グループ機能に対応していないレコーダーでもタイトル入力機能があれば手動でグループ情報を入力することができる。
グループ機能の書式の例
0;WikiMD//1-5;J_Pops//6-11;World//
この例の場合、ディスクタイトルはWikiMDとなり1曲目から5曲目までがJ_Popsグループ、6曲目から11曲目までがWorldグループに振り分けられる。
Net MD
Net MDウォークマン MZ-N920
Net MDは、MD・PC間の音楽転送規格。2001年6月27日にソニーによって発表された。このシステムは、当時流行の兆しを見せていたデジタルオーディオプレーヤーのように、PCに録りためた音楽を転送して持ち出すスタイルをMDに持ち込んだ。登場当初はフラッシュメモリが高額であり、MDは当時のメモリーカードや内蔵メモリタイプのオーディオプレーヤーに比べて、容量単価が安価だった。
Net MD対応機器としては、単品コンポーネントデッキ・Net MD ウォークマンなどの対応ポータブルMD・オーディオコンポ・パソコン内蔵Net MDデバイスがソニーをはじめとする各社から発売された。MD機器を発売するほとんどのメーカーが参入し、ポータブルMDからカーMDと幅広い機器に採用されたため後述のHi-MDよりも採用メーカーは多い。
MD機器とPCの接続にはUSBを使用・もしくはPCに内蔵されているNet MDデバイスを用いて、SonicStage︵旧OpenMG JukeBox︶・BeatJamにてATRAC3方式へリッピングとOpenMGで暗号化した、もしくはBitmusicなどのEMDで購入・ダウンロードファイルをMagicGateでPCとNet MD機器間を認証し相互転送する。Net MD機器でのMDへの録音・転送はATRAC3︵MDLP相当︶もしくはATRAC︵SP相当︶であるため、記録内容は従来のMD (MDLP) プレーヤーでも問題なく再生できる事が利点として宣伝された。ただし、編集は一部制限される。またPC側でMD機器側と接続制御するソフトウェアの制限などによりPC側のソフトウェアに履歴の無い楽曲データ、つまり別のPCでMDにチェックアウトした楽曲のチェックイン︵リッピング︶は不可となっている。通常のMDレコーダーで録音したトラックをリッピングする事はごく一部の機種で対応していた。
2001年10月以降にソニーから発売されたWindows XP Home Edition搭載ミニタワー型デスクトップPCのVAIOMXシリーズではNet MDドライブが本体に搭載され、2002年に発売されたVAIOノートNVシリーズでは付け外しが可能な﹁Net MDベイユニット﹂がオプションもしくは標準装備された。これはPCにリッピングした音楽ファイルをそのままNet MDへ転送︵チェックアウト︶出来る。当初はチェックアウト回数が一律3回までとなっており、同一ファイルは同時に3台までの機器・MGメモリースティックに転送する事が可能だった。チェックアウト回数を超えて別の機器に転送したい場合はチェックアウト済みの機器からPCへチェックイン︵ムーブ︶させて、カウント回数を戻す必要があった。2004年発表の﹁SonicStage2.3﹂以降のバージョンでは、音楽CDなどからリッピングしたファイルについてはチェックアウト回数の制限が撤廃されている。
2004年にHi-MDが発表されたが、Hi-MD機器であってもNetMDモードとして記録可能なものも多い。
2009年時点で流通していたNet MD対応機器はMZ-N920︵ソニー・録音再生対応MDウォークマン︶とMZ-RH1︵ソニー・録音再生対応Hi-MDウォークマン︶があった。2015年現在は全ての機種が生産終了となっている。
NetMDのデバイスドライバは2007年発表の﹁Sonic Stage CP﹂のバージョンまではOpenMG機器として認識され、チェックアウト操作などが可能であるが、2008年発表の新バージョンである﹁Sonic Stage V﹂ではNetMDに非対応とした。このため、旧バージョンである﹁CP (4.4)﹂のソフトウェアを継続してダウンロードできる。なお、ソニーでは当初NetMD機器の動作保証OSをWindows XPまでとしていたが、MZ-RH1については2010年10月リリースの﹁X-アプリ Ver.2.0﹂が対応した事でWindows Vista、Windows 7にも正式対応となった。
Hi-MD
Hi-MDウォークマン第1弾 MZ-NH1
Hi-MD︵ハイエムディー︶は高音質化や長時間録音、PCとの親和性向上など多岐に渡る拡張がなされた規格。2004年1月8日、ソニーによって発表された。音楽MDの拡張規格だが、PCデータや写真などの保存も想定されている。
以前の音楽MD・MDLP・Net MDからの主な変更点や特徴は次の通り。
●新たに発表された大容量ディスクを使い、最大45時間の長時間録音ができる
●従来のディスクはHi-MD用に初期化することで、以前の約2倍の容量で利用できる
●48kbpsから352kbpsまでの、幅広い用途に使える圧縮録音モードが追加された
●MDでは初となる、44.1kHz、16ビットリニアPCMによる非圧縮録音モードに対応した
●録音したトラックをPCに吸い出せるようになった
●PCからミニディスクをストレージメディアとして利用でき、USBメモリと同じように文書、音楽、写真ファイルを保存可能
●別売りのHi-MD専用カードリーダーを使用して、Hi-MDモードのディスク︵従来MDを初期化したものを含む︶へ画像データの転送ができる
また、2005年3月2日には規格拡張が発表された。
●DCF・Exifをベースにした写真管理用規格Hi-MD PHOTOを追加
●これにあわせ、音楽用規格の名称はHi-MD AUDIOに変更
●Hi-MD AUDIOの対応コーデックにオプション扱いでMP3を追加
Hi-MDは従来のMD機器をベースに、普及が拡大している記録装置内蔵型デジタルオーディオプレーヤーの特長を取り入れた規格と考えられている。しかし規格発表と同じ2004年にはソニーもHDDタイプのウォークマンを投入、その後はそれに力を入れるようになった。ソニー以外のメーカーでHi-MD製品を投入しているのはオンキヨー・バッファロー︵ソニーから海外向けウォークマンをベースとした機種をOEM供給︶等数社であり、Hi-MDフォーマットの投入から程なくiPodなどのデジタルオーディオプレーヤーが圧倒的に市民権を得たことやHi-MDフォーマットそのものの投入が余りにも遅すぎたこと、更に録音・再生機器の価格が高額過ぎたことから搭載機種︵製品︶は既存のMDLPやNet MDほどの普及までには至らず、結果的に短命に終わった。
2008年時点ではオンキヨーのHi-MDデッキ2機種 (MD-133・MD-105FX) と、ソニーのポータブルHi-MD録音再生機﹁Hi-MDウォークマン MZ-RH1﹂1機種が流通しており、2004年 - 2005年にかけて発売されたオーディオコンポやMZ-DH10P︵Hi-MD Photoに対応したデジタルカメラ付きHi-MDウォークマン︶などは全機種生産終了している。このMZ-RH1は2006年4月に発売され、最新のHi-MD機器でかつ最後に発売されたMDウォークマンである。また日本国外向けにはほぼ同様の機種が業務用扱いで、﹁MZ-M200﹂として発売されていた。2011年7月にはポータブル録音再生機﹁Hi-MDウォークマン MZ-RH1﹂が、2012年9月にはHi-MDディスク﹁HMD1GA﹂がそれぞれ出荷終了︵製造終了︶となり[5]、通常のMDより早くHi-MD規格が終了した。
メディアとフォーマット
左:音楽用MDディスク
右:Hi-MD専用ディスク
Hi-MDフォーマットでは信号処理技術が変更されたことで高密度化され、従来に比べ大幅な大容量化を実現している。
80分、74分、60分の従来型ミニディスクは、Hi-MDフォーマットで初期化することで約2倍の容量を持たせることができる。例えば80分ディスク (177MB) は、Hi-MD機器で初期化すると305MBの容量になる。
一方で、Hi-MDフォーマット専用の大容量ディスクも追加された。このディスクは1GBの容量を持ち、Hi-MD AUDIOの最低音質 (48kbps) では45時間の録音ができる。発売当初の価格は1枚700円前後。
ただし最低音質の48kbpsは音楽としては実用的なビットレートではない。音楽の場合最低64kbpsほどは必要とされるため、48kbpsはラジオ録音などの用途向けといえる。
ファイルシステムにはFATを採用している。パソコンからMOやDVD-RAMやUSBメモリのように、大容量の外部記憶メディアとして手軽に利用できる。なおHi-MD AUDIO機器から利用される音楽トラックもFAT領域に格納されているが、PCからは不可視の"Proprietary Area"に記録された情報により暗号化されているため、SonicStageなどの対応ソフトウェア以外ではPC上での再生・コピーを行うことはできない。
Hi-MD AUDIO
録音モード
Hi-MD AUDIOでは多くの録音モードがサポートされ、幅広い用途に対応できるようになった。しかし録音操作の複雑化を避けるためか録音モードの多くはPCからの転送のみの扱いであり、Hi-MD機器本体のみで録音できるモードは3モードに絞られている。
また、MD創生期から利用されていたATRACの両モード (292kbps、146kbps) は廃止となった。このため、Hi-MD機器でこれらのモードを利用したい場合には従来フォーマットでディスクを使う必要がある。
Hi-MD AUDIOが対応する録音モードは以下のとおり。
ATRAC3plus 352kbps、256kbps、192kbps、64kbps、48kbps
256kbpsはHi-SPモード、64kbpsはHi-LPモードと呼ばれHi-MD機器単体で録音ができる。
一方で352bps、192kbps、48kbpsにはモード名が無く、録音手段はPCからの転送のみである。
ATRAC3 132kbps、105kbps、66kbps
いずれもPCからの転送のみ対応。132kbps、66kbpsはMDLPで導入済みだが、105kbpsはHi-MD AUDIOで新たに追加された。このビットレートは従来からネットワークウォークマンなどで利用されていたがMDには導入されていなかったため、使いまわしに難があった。132kbps、66kbpsの呼称として従来使われていたLP2、LP4というモード名は廃止され、ビットレートで呼ばれる。
リニアPCM (1.4Mbps)
無圧縮モード。従来のMDはどの録音モードでも必ず非可逆圧縮がかかっていたため高音質を求める層には敬遠されていたが、これが追加されたことでそれらの層にもアピールできるようになった。
また、これにあわせてソニーからはHi-MDの音声トラックをPC上で汎用のWAV形式に変換するWindows用のソフトウェアWAV Conversion Toolが無償公開された。なお、現在この機能はSonicStageに統合されている。
なお変換元トラックの録音モードはPCMに限らずどれであっても問題ないが、いずれの場合でもディスクがHi-MDフォーマットのみに限定されている。
MP3 32kbps - 320kbps
2005年春の規格拡張で追加されたコーデック。サンプリング周波数は44.1kHz、ビットレートは32 - 320kbps︵固定・可変両対応︶である。PCからの転送においては、他のコーデックと同様にSonicStageなどの専用ソフトウェアで暗号化を行う必要がある。
なおこのコーデックはオプション扱いであり、2005年春以降のすべてのHi-MD AUDIO機器が再生に対応するわけではない。
Hi-MDにおける各録音モードと使用ディスク、録音可能時間の関係
モード名 |
符号化方式など |
録音手段 |
1GBディスク |
80分ディスク |
74分ディスク |
60分ディスク |
備考
|
PCM |
リニアPCM 1.4Mbps |
本体・PC |
約1時間34分 |
約28分 |
約26分 |
約21分 |
MD初の無圧縮モード。
|
Hi-SP |
ATRAC3plus 256kbps |
本体・PC |
約7時間55分 |
約2時間20分 |
約2時間10分 |
約1時間45分 |
|
Hi-LP |
ATRAC3plus 64kbps |
本体・PC |
約34時間00分 |
約10時間10分 |
約9時間25分 |
約7時間40分 |
|
名称なし |
ATRAC3plus 48kbps |
PCのみ |
約45時間00分 |
約13時間30分 |
約12時間30分 |
約1時間45分 |
|
(旧・LP2) |
ATRAC3 132kbps |
PCのみ |
約16時間30分 |
約4時間50分 |
約4時間30分 |
約3時間40分 |
|
名称なし |
ATRAC3 105kbps |
PCのみ |
約20時間50分 |
約6時間10分 |
約5時間40分 |
約4時間40分 |
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(旧・LP4) |
ATRAC3 66kbps |
PCのみ |
約32時間50分 |
約9時間50分 |
約9時間00分 |
約7時間20分 |
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名称なし |
MP3 128kbps |
PCのみ |
約17時間00分 |
約5時間00分 |
約4時間30分 |
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MP3対応機種のみ再生可能。 これ以外にも多くのレートが利用できる。
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互換性
Hi-MD専用ディスクは従来の音楽MD・MDLP機器からは一切の認識・再生が出来ず、Hi-MDフォーマットで初期化された従来ディスクはディスク名がHi-MD DISCと表示されるだけで編集や再生はできない。一方、Hi-MD AUDIO機器側では従来の音楽MD・MDLP規格との上位互換性を確保している。このため従来規格で録音されたディスクの再生が可能である。従来規格での録音は一部機種のみ。
Hi-MD PHOTO
Hi-MD PHOTOは、2005年春のHi-MD規格拡張の際に発表された画像記録用規格。
ベースはデジタルカメラのアプリケーションフォーマットとしてデファクト・スタンダードとなっているDCF・Exifだが、独自にサムネイル用キャッシュファイルの仕組みを追加することで画像閲覧の高速化を図っている。
この規格の発表と同時に、対応機器の第1弾であるHi-MDウォークマン﹁MZ-DH10P﹂が発表された。この機種は約130万画素のCMOSカメラと1.5インチのカラー液晶を内蔵しており、撮影した画像はHi-MDへ記録される。またHi-MD AUDIOにも対応しているため、音楽再生中に写真をスライドショー再生する機能や内蔵カメラでCDなどのジャケットを撮影してHi-MD AUDIOトラックのジャケット画像として登録する機能などもある。
PC対応MDデッキ
ソニーが1997年に発売したMDS-PC1という機種であり当時は59000円とかなり安い価格で販売されていた。
パソコンに付属のCD-ROMを使ってソフトウェアをインストールしパソコンのUSB端子からイヤホンジャックにさす。
そうして対応CDプレーヤーからの録音や編集などができる物だった。ただ、このMDデッキはSPしか対応していないためMDLPで録音したMDは再生出来ない。
使用ディスクは通常の録音用のディスク対応となっている。
なお、この商品の販売は終了となっており入手するには中古かジャンクでしか手に入らないこの機種の後機種は、MDS-PC2,MDS-PC3となっている。
MD DATA
音楽用MDの数年後には、MDをデータ記録用に活用するMD DATAも開発された。容量は140MBで、ファイルフォーマットには特定のOSに依存しない独自のものを採用していた。
記録ディスクにはMD DATA専用のものが用いられており、音楽用ディスクとはシャッターのサイズが異なっている。非公式ではあるが安価な音楽用ディスクをMD DATAドライブにてフォーマットすることで使用可能だった。
容量が当時の3.5インチMOと同等だったことやコンパクトさから普及が期待されたが、読み書き速度が遅い (150KByte/s) などの理由により敬遠され、PC用メディアとして普及することはなかった。
PC用ドライブはソニーが1993年7月に発売したSCSI接続のポータブル型ドライブMDH-10が唯一の存在で、このドライブは通常の音楽用MDの再生も可能である。録音は不可。
一方、PC以外ではソニーの自己完結型スキャナDATA EATAやヤマハのマルチトラックレコーダーMD4S、MD8、デジタルカメラなど多岐に渡る製品で利用され、一部には現在でも使用されているものもある。
また、MD DATAで画像を扱うための規格としてPicture MDがある。この規格の採用製品はデジタルカメラが主で、ソニーのMDサイバーショット (DSC-MD1) やシャープのMDデジタルビューハンター (MD-PS1) [6]などがある。
なおPicture MD規格で規定された要素は、MDを使用しないタイプのソニー製デジタルカメラにもそのまま流用され、初期のサイバーショットではPicture MD規格準拠の画像形式︵JPEGベース、拡張子pmp︶が使われていた。
MD DATA2
1996年末、容量を650MBに大容量化し転送速度を9.4Mbpsに高速化したMD DATA2が発表された[7]。
1999年末に発売されたMDビデオカメラMD DISCAM︵ソニーDCM-M1︶で初採用され映像記録にMPEG-2、音声にATRACを利用し動画は最大20分、静止画約4,500枚、音声最大260分が記録できた。
MDのランダムアクセス性を活かしたカメラ単体でのノンリニア編集や10BASE-TによるPCとの連携に対応するなど意欲的なカメラだった。しかし、後継機種が出ないまま販売が終了した。
MD製品としては一世代限りのものとして終わったが、ディスクの利便性を持つビデオカメラはDVDビデオカメラとして普及した。なお、DVDビデオカメラはこの半年後の2000年8月に日立製作所が初めて市販化[8]した。ソニーは2004年に国内で発売したDVDハンディカムを初めて発売した。
普及と衰退
1992年︵平成4年︶11月1日、ソニーが初のMDプレーヤー﹁MZ-1﹂と60分のブランクディスク﹁MDW-60﹂を、翌1993年︵平成5年︶4月10日に74分タイプの﹁MDW-74﹂を発売した。同年10月には富士フイルム︵AXIA︶やTDK、日立マクセル︵現・マクセル︶のそれぞれがブランクメディアを発売した。当初は録再機器もディスクも非常に高価格であったため、全くと言っていいほど市場が拡大しなかったが、90年代中頃以降、ソフトを持ち運ぶ必要があるカーオーディオや携帯音楽プレーヤーなど、若年層をターゲットとする業界では、その手軽さ︵CDに比べて︶と高音質︵カセットに比べて︶が受け、カーオーディオではCD+MDの2DIN一体機が、携帯プレーヤーではMDウォークマンタイプが主流となった。その後、これら持ち運び文化のある若年層の更なる需要に応えるべく、1999年︵平成11年︶2月10日にはソニーから80分ディスク﹁MDW-80H﹂が発売され、また2000年代に入ると、今度はMDLP対応機種が発売されて、長時間の再生に対応したことや、カーオーディオやMDウォークマン等でMDに馴れた若年層の間で、今度は家庭用MDコンポやMDラジカセ等も普及したことで、全盛期を迎えた。但し、前述のようにセパレートタイプのステレオやデッキの製品数が少なかったことから、オーディオマニアの間ではほとんど普及せず、また従来型のラジカセを愛用する保守的な中高年齢層にも受け入れられなかったため、コンパクトカセットを完全に代替するには至らなかった。また録再の機械の故障も多々あった。
海外では全く普及せず、当初のコンセプトでもあったコンパクトカセット並みの普及には程遠い結果となり、音楽ソフトも前述のソニー・ミュージック系を中心としたものがわずかに存在した程度だった。MDに用いられているATRACも、ネットワークウォークマンの海外向けモデルでは2007年︵平成19年︶秋頃から対応が打ち切られるなど、こちらも海外では全く普及しなかった。MDおよびATRACは事実上、日本独自のメディアフォーマットになっている。
当初はソニーが海外向けにウォークマンのみならず据置型デッキ・ミニコンポ・カーオーディオ機器を開発・発売し、オーバーシーズモデルのカタログにも掲載されていた。一部完全な海外専用モデルも存在したが、既に生産・販売終了となっている。
その結果、現在販売されている海外向けオーディオフォーマットはCD︵CD-R/CD-RWを含む︶とコンパクトカセットが主流である。
2019年︵平成31年︶現在、iPodやメモリータイプのウォークマンなどに代表されるデジタルオーディオプレーヤーやデジタルメディアプレーヤー、Google Play Musicのロッカー機能などのオンラインストレージサービス、音楽再生に対応したスマートフォンなどの普及により、MD市場はほぼ終焉している。またCDからの録音に関しては2000年代に入り、CD-R/CD-RWが普及し、更に会議・会話・野外録音などの分野では同じく2000年代にICレコーダー︵前者・中者︶、およびリニアPCMレコーダー︵後者︶が着実に普及したためMDを使用するメリットは相対的に低下した。
特にポータブルMDプレーヤー/レコーダーに関しては2007年︵平成19年︶3月以降パナソニックを皮切りに各メーカーが次々と生産・販売から撤退し始め、これ以降約1年間でソニー以外のメーカーは全てポータブルMDプレーヤー/レコーダーの生産を終了した。2009年︵平成21年︶以降はソニー製の録音・再生対応Hi-MDウォークマン、MZ-RH1が唯一現行機種としてカタログに残っていたが、2009年︵平成21年︶10月頃には取り寄せ不可になる販売店が出始め、2011年︵平成23年︶7月7日にはソニーから﹁MZ-RH1の生産、出荷を2011年9月をもって完了する﹂と発表された。なお、ソニーの予想を上回る駆け込み需要が発生し、予定より早く2011年︵平成23年︶8月に生産を完了した。ポータブルMDに必須のガム型電池の生産の縮小も進み、新品で購入可能なポータブルMDは事実上、市場からほぼ完全に消滅した。
据置型デッキ・ミニコンポ・MDシステムについては、ラジオ放送や地上・BSデジタル放送の録音用およびMDからハードディスク、内蔵メモリー︵ビクターのMemory COMPOシリーズなど︶などへのダビング用途や、パソコンやメモリーなど利用しないでCDなどからデジタルで高音質録音という点では一定の需要があるが、2011年︵平成23年︶2月頃より、各メーカーが相次いでMD搭載のミニコンポ、ラジカセ等の生産を終了した。パナソニックはSC-PM870SD、ビクターはUX-Z2、ケンウッドはMDX-L1、シャープはSD-FX200がMDを搭載した最終機種となり、いずれも2011年︵平成23年︶6月までにMD搭載機種を全て生産終了とした。なお、シャープはオーディオ事業そのものから事実上撤退している。撤退について、パナソニックは﹁需要の減少﹂、JVC、ケンウッドは﹁MD機構部品の調達が困難﹂を理由としている。
開発元であるソニーの日本国内向け製品でMDが搭載されていたのは、オールインワンコンポ﹁CMT-M35WM﹂の1機種のみで、2013年︵平成25年︶3月で出荷終了。これをもってソニーはMDプレーヤーの販売をすべて終了し、レコーダー/プレーヤー事業からも撤退した[9]。2011年︵平成23年︶に生産・出荷を終了したHi-MDウォークマン﹁MZ-RH1﹂の場合と同様に、ソニーの予想を大幅に上回る駆け込み需要が発生したため、予定時期より早く2013年︵平成25年︶2月に出荷を終了した。なお、CMT-M35WMは、国外生産のまま2010年より生産拠点を変更して2013年︵平成25年︶1月まで継続生産された。ソニーは同社製︵当時︶PCのVAIOにもデスクトップPC、ノートPCに関わらずごく一部にMDデッキ搭載モデルを発売していたが、こちらは2003年夏モデルを以て展開を終了しており、最終モデルはPCV-W121である。
2013年︵平成25年︶3月当時でソニー以外の日本国内向け製品の場合でMDが搭載されていたのはオンキヨーのCD/MDチューナーアンプ+スピーカーシステム一式セットモデルX-N7XX(D)、およびCD/MDチューナーアンプ単品モデルFR-N9NX(S)で、いずれも2013年︵平成25年︶7月に生産を終了した。この2機種が、カーオーディオ、および業務用機器を除けば日本国内で最後まで販売︵ただし、製造は両者共に国外(マレーシア)で製造︶されていた据え置きMDコンポであり、2012年︵平成24年︶6月に発売されたX-N7XXが日本国内で最後に発売されたMD搭載機種である。
2013年︵平成25年︶8月より順次発売開始された事実上の後継モデルとなるX-NFR7、およびNFR-9︵いずれも2016年12月現在販売終了済み︶では両機種の製品コンセプトの変更によって遂にMDが割愛され、代わりにMP3のほかにfs44.1kHz/16ビットのリニアPCM︵WAV︶によるリッピング及びダイレクトエンコード︵録音︶機能に対応したUSB、及びSDメモリーカード︵32GBまでのSDHCメモリーカードに対応︶の各種スロットとBluetoothが搭載された[10][11]。
また、据置型デッキについては2019年︵平成31年︶1月現在、ティアックから業務用︵TASCAMブランド︶向けに販売されているCDプレーヤー/MDレコーダーのコンビネーションデッキであるMD-CD1MkⅢ︵XLR端子なし︶とMD-CD1BMkⅢ︵XLR端子あり︶の2機種、そしてTEACブランドでコンシューマー用CDプレーヤー/MDレコーダーのコンビネーションデッキのMD-70CDも現行モデルとして販売されているが、これら3機種が最終機種となる見込みである。
カーオーディオについては1DIN規格のMDチューナー、各メーカー専用品︵1DINカセット、CDチューナーなどと組み合わせて利用する方式︶のMDプレーヤーは2010年代以降、2013年︵平成25年︶中頃に三菱電機が特定車種向け1DINCD/MDチューナーを、2014年︵平成26年︶内にパイオニアと三菱電機がそれぞれCD-RW対応1DINCD/MDメインユニットの生産・販売をそれぞれ終了したことで市場から姿を消した。一方2DIN規格のMP3対応CD/MDチューナーやUSBメモリーに対応した製品は2017年︵平成29年︶2月現在、パイオニアのFH-P530MD-B/-S(及び同機種の品番を変更した三菱自動車のディーラーオプション品)のみ生産・販売が継続されているが、それ以外のメーカーでは各自動車メーカーの標準装備品・メーカーオプションにディーラーオプション、社外品共に全て生産・販売が終了している。加え、AVカーナビゲーションの分野からも2005年︵平成17年︶以降MDは段階的に淘汰され、代わりにDVDビデオ、CD-Rや機種によってはDVD-R、SDカード、メモリースティック、USBメモリに記録されたMP3などの再生機能がより充実するようになる。これらの再生機能はUSBを除くとMD時代にも一部存在していた。
このように、2019年︵令和元年︶9月︵﹁平成﹂は4月で終了した︶現在は、据え置き型はTASCAMブランドを含む一部のティアック製CDプレーヤー/MDレコーダーのコンビネーションデッキを除き、MDに対応したミニコンポ並びにラジカセ型のパーソナルシステム、ポータブル機器、カーオーディオなどMD機器がほぼ全て生産終了となっており、ミニディスクという規格自体が事実上ほぼ終焉した状態である。ただし、現在流通している音声記録メディアではCDレコーダーやDATとともに、パソコンを使用せずにCDなどからの音源をデジタル録音できる数少ないメディアであるため、パソコンやスマホを持たない、あるいは持っていても十分に使用することが困難なユーザーなど、一部では未だに根強い需要がある。そのためミニディスクそのものは、スーパーマーケットなどでも大抵は5巻パックなどが揃っている場合が多い。ただし、ビクターアドバンストメディア︵Victorブランド︶製﹁MD-80RX5/MD-80RX10﹂とパナソニック︵AY-MD74D、2001年1月発売︶がそれぞれ生産・販売終了となった為、2018年︵平成30年︶10月現在の時点における国内メーカーでは唯一、ソニー︵MDW80T、2015年11月発売︶だけがディスクを生産・販売している状況である。その他の単品ディスクは大創産業からも発売しているが、徐々に取り扱う店舗が減ってきている。
尚、普及当時は莫大なライセンス料の支払いという意味での敗者になることを避けるため、競合規格のDCC共々ソニー・フィリップス・松下電器産業︵現‥パナソニック︶の3社で共同ライセンスしていた[12]。
脚注
関連項目
外部リンク
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