「緊急警報放送」の版間の差分
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※前述の通り、以前は東海地震の警戒宣言が発令された場合に行われる可能性があったが、結局は実績のないままであった。 |
※前述の通り、以前は東海地震の警戒宣言が発令された場合に行われる可能性があったが、結局は実績のないままであった。 |
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== 海外の類例 == |
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== 技術史と普及動向 == |
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⚫ | NHKが開発した緊急警報放送の技術は、1985年に世界で初めて |
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⚫ | NHKが開発した緊急警報放送の技術は、自動起動が特徴である。1985年に世界で初めて自動起動を実現したとして、2016年5月に電気・電子・情報分野の技術的貢献を顕彰する[[IEEEマイルストーン]]に認定されている<ref>「報道発表 [https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/shiryou/kaichou/2016/04/002.pdf 世界の放送技術をリードした“ハイビジョン” と “緊急警報放送” が「IEEE マイルストーン」に認定]」、日本放送協会、2016年4月7日付、2023年1月16日閲覧</ref><ref name="ieee16">「[http://www.ieee-jp.org/japancouncil/jchc/adm/milestone/27ewcsbs.pdf IEEE MILESTONE (27)]」、[[IEEE]] Japan Council、2023年1月16日閲覧</ref>。 |
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=== ISDBの緊急警報放送:フィリピン、南米諸国など === |
=== ISDBの緊急警報放送:フィリピン、南米諸国など === |
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日本︵NHK︶が中心となって開発したデジタル放送方式の[[ISDB]]のうち、地上放送・衛星放送は緊急警報放送(EWBS)を実施できるよう標準化されている。フィリピンや南アメリカのいくつかの国では、日本の戦略的な技術協力によりEWBSの運用が行われている。これらの例では、日本と異なり文字スーパー表示を採用している{{efn2|映像等とは別に受信した信号により、受信機側で文字を表示する。日本の緊急地震速報での文字スーパーと同じ。}}。最初の緊急情報のみならず防災に関する続報の伝達が重視されるためで、文字情報等の伝達にワンセグの帯域を活用し、単純な警報信号というよりは、CAPや[[Lアラート]]のような防災情報の共通[[プロトコル]]の側面が強い。テレビだけではなく[[デジタルサイネージ]]︵[[電光掲示板]]︶やサイレンとの連動が行われ、一般家庭よりも役場、消防、病院などの公共の場での利用が重視されている。また運用には政府の防災機関が介在する<ref name="ieee16"/><ref name="阪口">阪口安司﹁[https://www.jtec.or.jp/activities/ARIB117ewbs.pdf EWBS 現地適合化ソリューションの考案開発など地デジ日本方式︵ISDB-T︶海外普及活動]﹂︵[https://www.jtec.or.jp/activities/ewbs.html EWBS普及促進活動]︶、一般財団法人 海外通信・放送コンサルティング協力、2022年</ref>。
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[[フィリピン]]ではEWBSの実施体制が整い、2016年から販売するテレビへのEWBS機能の搭載が義務付けられている<ref>「世界情報通信事情 > [https://www.soumu.go.jp/g-ict/country/philippines/index.html フィリピン] > [https://www.soumu.go.jp/g-ict/country/philippines/pdf_contents.html 監督機関・法律・政策等]」、総務省、2023年1月16日閲覧</ref>。 |
[[フィリピン]]ではEWBSの実施体制が整い、2016年から販売するテレビへのEWBS機能の搭載が義務付けられている<ref>「世界情報通信事情 > [https://www.soumu.go.jp/g-ict/country/philippines/index.html フィリピン] > [https://www.soumu.go.jp/g-ict/country/philippines/pdf_contents.html 監督機関・法律・政策等]」、総務省、2023年1月16日閲覧</ref>。 |
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[[エルサルバドル]]、[[コスタリカ]]、[[ニカラグア]]では共通仕様でEWBSによる[[地震警報システム|緊急地震速報]](EEW)が試験導入されている<ref name="阪口"/>。 |
[[エルサルバドル]]、[[コスタリカ]]、[[ニカラグア]]では共通仕様でEWBSによる[[地震警報システム|緊急地震速報]](EEW)が試験導入されている<ref name="阪口"/>。 |
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=== アメリカ === |
=== アメリカ合衆国 === |
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{{main|緊急警報システム}} |
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[[アメリカ合衆国]]では、[[緊急警報システム]]として1950年代より多数の放送局に統一化された形式で警報を伝達するシステムが構築され、2012年現在は第3世代の[[:en:Emergency Alert System|Emergency Alert System]] (EAS)が整備され、全米のテレビ・ラジオ局を対象にしている。国家レベルの警報発信時には[[アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁|緊急事態管理庁]](FEMA)経由で国内基幹放送局に、州や郡レベルの警報発信時には州レベルの放送局に、それぞれ警報を伝達、そこから各支局に伝達して放送内容をコントロールする。ただし、日本の緊急警報放送のように受信機を強制起動するシステムではなく、合衆国政府や州政府が発信する統一形式の情報を各放送局に送り、自動化された警報文を字幕や音声で伝えるものである<ref name="nhkbr100403"/>。
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[[アメリカ合衆国]]では、[[緊急警報システム]]として1950年代より多数の放送局に統一化された形式で警報を伝達するシステムが構築され、2012年現在は第3世代の[[:en:Emergency Alert System|Emergency Alert System]] (EAS)が整備され、全米のテレビ・ラジオ局を対象にしている。国家レベルの警報発信時には[[アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁|緊急事態管理庁]](FEMA)経由で国内基幹放送局に、州や郡レベルの警報発信時には州レベルの放送局に、それぞれ警報を伝達、そこから各支局に伝達して放送内容をコントロールする。ただし、日本の緊急警報放送のように受信機を強制起動するシステムではなく、合衆国政府や州政府が発信する統一形式の情報を各放送局に送り、自動化された警報文を字幕や音声で伝えるものである<ref name="nhkbr100403"/>。
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=== イギリス === |
=== イギリス === |
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[[イギリス]]には緊急警報放送に近い「Protect and Survive(プロテクト・アンド・サバイヴ:防護と生存)<ref>[https://www.slideshare.net/kumicit/protect-and-survive 防護と生存(日本語訳版)]</ref>」という非常事態用マニュアルが存在し、東西[[冷戦]]時の[[1970年代]]から[[1980年代|80年代]]まで冊子がイギリス国民に配布されたほか、[[英国放送協会|BBC]]によりテレビ放映されていた{{efn2|映像構成や内容が不気味であるため、イギリスには「Protect and Survive」に恐怖心を覚えている世代が存在するという。}}。[[核攻撃]]時の[[避難]]方法から犠牲者の[[死体]]処理まで幅広くマニュアル化されている。 |
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*[[核攻撃]]時の[[避難]]方法から犠牲者の[[死体]]処理まで幅広くマニュアル化されている。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
2023年1月19日 (木) 22:01時点における版
概要
該当する地域の住民の生命・財産の保護のため、放送局が緊急警報信号︵Emergency Warning Signal, 略称‥EWS[2]︶と呼ばれる特別な信号を前置したうえで臨時に行う放送であり、1985年9月1日から日本放送協会 (NHK) および13の民間放送局で導入を開始した[3]。また、NHKでは同日に初めての試験放送を実施している[4]。 以下の条件のいずれかに該当する場合に行われる︵放送法施行規則第82条[注 3]および無線局運用規則138条の2に規定している[5][6]。 ●津波警報・大津波警報が発表された場合 ●災害対策基本法第57条に基づく都道府県知事や市町村長︵東京特別区の区長を含む︶からの要請があった場合 ※かつては東海地震の警戒宣言が発令された場合においても行われる可能性があった。 緊急警報放送の受信に対応した受信機は、待機状態でも緊急警報信号を受信するための回路を作動させており、緊急警報信号を受信した際にはただちに電源をオンにして放送の受信状態に移行する。これにより、緊急警報放送の開始時に受信機の電源がオフの状態であったとしても、放送を受信することが可能である[5]。 緊急警報信号の形式はアナログとデジタルで異なる。アナログ放送では音声に周波数偏移変調 (FSK)[注 4]の警報信号を多重するが、1024または640Hzの可聴音であるため、耳で聞き取ることができる︵俗に﹁ピロピロ音﹂と称される︶。一方、デジタル放送では放送波の中の制御信号︵音声などには変換されない︶に織り込まれているため、聞き取ることはできない[6]。ただし、デジタル放送では緊急警報放送を受信して自動で電源が入った後には、メッセージ︵﹁緊急警報放送が放送されています﹂︶が表示されるだけで警報音が鳴らない機種がほとんどのため、NHKではデジタル放送でもアラーム代わりとして信号音を送出している。 放送の内容は通常の災害報道であり、安否情報や火の元の安全を呼びかける放送、津波の到達が予想される場合は警報・注意報の発表状況、津波の到達予想時刻などが繰り返し放送される。信号
緊急警報信号の種類
緊急警報放送の開始・終了の際に使用される緊急警報信号には第1種開始信号、第2種開始信号、終了信号の3種ある[5]。 ●第1種信号は 各自治体︵都道府県、並びに市区町村︶の首長から避難指示や緊急安全確保の発動がなされた場合などに送信される︵第1種、第2種ともに約16秒間鳴らされる︶。 ●第2種信号は (大)津波警報が発表された時のみ送信される。第1種信号は強制的に動作するが、第2種信号は受信側で動作させない設定が可能である︵特に、海岸や川の河口から遠く離れている地域や内陸の地域︶。 ●終了信号は、第1種開始信号や第2種開始信号が送信された場合、すみやかに送信される︵おおむね10分以内であり、信号音は2秒間で4回鳴らされる︶。 ●試験信号は、終了信号と同一であるが開始信号を送信することなく終了信号のみが送信された場合を意味しており、受信機が正常に動作するかを確認するための信号である︵事実上、緊急警報放送の定期放送ともされている︶。アナログ放送
アナログ放送では、音声搬送波にデジタルの警報信号を多重して送信される。開始信号が96ビット・終了信号が192ビットの長さ、通信速度64bps︵よって、開始信号は1.5秒間、終了信号は3秒間︶で、開始/終了、地域区分、日付や時間を示す情報が織り込まれている。この信号の情報は、FSK変調[注 4]により、﹁1﹂を1024Hzの音声信号、﹁0﹂を640Hzの音声信号とするデジタル信号に変換されて音声搬送波に多重され、送信される[6]。対応する受信器︵テレビ︶はこれを復調して信号を検出する回路を持っており、信号に応じてスイッチを入れるなどの動作をする[7]。なお、開始信号では受信確率が高まるよう4 - 10回、終了信号は2 - 4回繰り返される[6]。デジタル放送
デジタル放送では、制御信号の緊急警報放送識別子というデータで送信される。具体的には、伝送制御信号TMCC (Transmission and Multiplexing Configuration and Control) の中の﹁起動制御信号﹂︵起動フラグ︶と、MPEG-TS信号のPMT (Program Map Table) の緊急情報記述子の中の信号、2種類を用いる。起動制御信号は全204ビットあるTMCCビット列の中の26番目に設定されており、これが﹁1﹂のときが緊急警報放送﹁放送中﹂、﹁0﹂の時が終了・通常放送中である。緊急情報記述子の中の関連する部分は、﹁1﹂﹁0﹂で放送中か否かを表す"start_end_flag"︵1ビット︶、第1種/第2種種別を示す符号︵1ビット︶、間に予備ビット︵6ビット︶を挟み、地域符号の長さを示す符号︵8ビット︶、地域符号︵12ビット︶から構成される。受信機は起動制御信号を常時監視し、﹁1﹂となったら次は"start_end_flag"を監視し、これも﹁1﹂となったら緊急警報放送の受信を開始する。また、"start_end_flag"が﹁0﹂になるか起動制御信号が﹁0﹂になれば、受信を終了する。この信号は理論上はワンセグでも受信でき、現状機種は対応していない︵ただし、ワンセグ対応携帯電話は一部機種を除いてエリアメールで代用可能︶が、その手法の検討がいくつか行われている[6][8][9]。 その信号を受信した放送局に合わせると、﹁このチャンネルで緊急警報放送が放送されています﹂︵シャープ製品の場合︶[注 5]というような情報が確認することができる。なお、対応機種はごく限られているため、すべてのデジタル放送受信機で表示されるわけではない。デジタル放送でも、アナログ放送のEWS信号音を音声信号と見なして放送できることが法律で認められている。地域符号
緊急警報信号には、特定の県にだけ警報を発する﹁県域符号﹂、より範囲の広い﹁広域符号﹂、全域に発する﹁地域共通符号﹂がある[6]。放送の制限
緊急警報放送はその役割から、放送法施行規則第82条及び無線局運用規則第138条に、規定された理由以外での使用をしてはならないとしている。しかしながら、2010年3月7日に放映された﹃サンデーモーニング﹄ (TBS) において、前週の2010年2月28日に放映した内容を録画放映した際に、チリ地震による大津波警報・津波警報・津波注意報が日本各地に発表されたときの緊急警報放送が入ったままのVTRを放映し、一部受信機が動作した事例が存在する。この事例では番組終了間際に終了信号の送信が行われた[10]。試験信号放送
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「今から、緊急警報放送の試験信号をNHKから放送します。緊急警報受信機をお持ちの方は、受信機が信号を正しく受信するかどうか確かめてください」 (信号音:終了信号と同じく2秒間で4回鳴らされる) |