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'''アタランテー''' ︵{{lang-grc-short|'''Ἀταλάντη'''}}, {{ラテン翻字|el|Atalantē}}, {{lang-la|Atalanta}}︶ は、[[ギリシア神話]]に登場する女性の英雄である。[[長音]]を省略して'''アタランテ'''とも表記される。俊足の[[狩猟|女狩人]]として有名で<ref name=A131>アイリアーノス、13巻1。</ref><ref name=AP392>アポロドーロス、3巻9・2。</ref><ref name= |
'''アタランテー''' ︵{{lang-grc-short|'''Ἀταλάντη'''}}, {{ラテン翻字|el|Atalantē}}, {{lang-la|Atalanta}}︶ は、[[ギリシア神話]]に登場する女性の英雄である。[[長音]]を省略して'''アタランテ'''とも表記される。俊足の[[狩猟|女狩人]]として有名で<ref name=A131>アイリアーノス、13巻1。</ref><ref name=AP392>アポロドーロス、3巻9・2。</ref><ref name=OV10>オウィディウス﹃変身物語﹄10巻。</ref><ref name=HY185>ヒュギーヌス、185話。</ref>、[[アルゴナウタイ]]の1人<ref name=AP1916>アポロドーロス、1巻9・16。</ref><ref name=SD4412>シケリアのディオドーロス、4巻41・2。</ref>、[[カリュドーンの猪狩り]]に参加した英雄の1人<ref name=AP392 /><ref name=HY185 /><ref name=AP182>アポロドーロス、1巻8・2。</ref><ref name=OV8>オウィディウス﹃変身物語﹄8巻。</ref><ref name=HY173>ヒュギーヌス、173話。</ref><ref name=HY174>ヒュギーヌス、174話。</ref><ref name=SD4344>シケリアのディオドーロス、4巻34・4。</ref>。
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アタランテーはまたその美貌でも知られる<ref name=A131 /><ref name=OV8 />。[[オウィディウス]]の『[[変身物語]]』では「リュカイオスに咲いた花、[[テゲアー]]の乙女アタランテー」と歌われている<ref name=OV8 />。 |
アタランテーはまたその美貌でも知られる<ref name=A131 /><ref name=OV8 />。[[オウィディウス]]の『[[変身物語]]』では「リュカイオスに咲いた花、[[テゲアー]]の乙女アタランテー」と歌われている<ref name=OV8 />。 |
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その後、アタランテーの評判は高まり、多くの求婚者が現れることになったが、彼女は結婚を望んでいなかった。 |
その後、アタランテーの評判は高まり、多くの求婚者が現れることになったが、彼女は結婚を望んでいなかった。 |
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アポロドーロスによると、アタランテーは両親と再会を果たしたが、彼女の父はアタランテーを結婚させようとした<ref name=AP392 />。ヒュギーヌスによると、アタランテーは父に結婚を望んでいないことを告げたが、求婚者が後を絶たなかったので、父親の提案により競走で結婚相手を決めることにした<ref name=HY185 />。さらに[[オウィディウス]]の﹃[[変身物語]]﹄によると、アタランテーが結婚について[[アポローン]]の[[神託]]に伺いを立てたところ、﹁お前に結婚は不要だが、それを避けることは出来ない。そして結婚したならば、お前は本来の自分を失って生き続けなければならない﹂と告げられ、大いに驚いたという<ref name=OV10 |
アポロドーロスによると、アタランテーは両親と再会を果たしたが、彼女の父はアタランテーを結婚させようとした<ref name=AP392 />。ヒュギーヌスによると、アタランテーは父に結婚を望んでいないことを告げたが、求婚者が後を絶たなかったので、父親の提案により競走で結婚相手を決めることにした<ref name=HY185 />。さらに[[オウィディウス]]の﹃[[変身物語]]﹄によると、アタランテーが結婚について[[アポローン]]の[[神託]]に伺いを立てたところ、﹁お前に結婚は不要だが、それを避けることは出来ない。そして結婚したならば、お前は本来の自分を失って生き続けなければならない﹂と告げられ、大いに驚いたという<ref name=OV10 />。
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そこでアタランテーは自分と命を賭けた勝負をさせることで求婚者たちを追い払おうとした。すなわち、求婚者と[[競走]]の勝負をして、勝ったならば結婚をするが、負けたら殺すことを条件としたのである<ref name=AP392 /><ref name=HY185 /><ref name=OV10 />。競走では、アタランテーは武装し、求婚者を先にスタートさせてたがいの速さを競ったが、それでも彼女を負かす者はなかなか現れず、多くの若者が命を落とした<ref name=AP392 /><ref name=HY185 />。またアタランテーは求婚者を殺すたびに、その首を競技場に置いた<ref name=HY185 />。
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そこでアタランテーは自分と命を賭けた勝負をさせることで求婚者たちを追い払おうとした。すなわち、求婚者と[[競走]]の勝負をして、勝ったならば結婚をするが、負けたら殺すことを条件としたのである<ref name=AP392 /><ref name=HY185 /><ref name=OV10 />。競走では、アタランテーは武装し、求婚者を先にスタートさせてたがいの速さを競ったが、それでも彼女を負かす者はなかなか現れず、多くの若者が命を落とした<ref name=AP392 /><ref name=HY185 />。またアタランテーは求婚者を殺すたびに、その首を競技場に置いた<ref name=HY185 />。
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2022年7月9日 (土) 10:42時点における版
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/60/Neschwitz_Schlosspark_Atalante.jpg/300px-Neschwitz_Schlosspark_Atalante.jpg)
系譜伝承
アタランテーの系譜伝承に関しては諸説ある。アポロドーロスはアタランテーをアルカディアー地方の王イーアソスと、オルコメノス王ミニュアースの娘クリュメネーとしている[2]。しかしヒュギーヌスはイーアシオス[12][13]、アイリアーノスはイーアシオーンの娘としており[1]、父親の名前はよく似た名前と混同されている[14]。 アポロドーロスはさらに異なる2つの説を挙げている。そのうちの1つはスコイネウスの娘とするもので、同様の説を採る古代の詩人や著述家は多い[5][7][9][15][6][11][16][17][18][19]。スコイネウスはボイオーティア地方のオルコメノス王アタマースの子レウコーンの子で、アルカディアー地方に移住したらしい[15]。アポロドーロスやピロデーモスはこの説をヘーシオドスに由来するとしているほか[20][21]、いくつかのパピュルスの断片によって、伝ヘーシオドスの﹃名婦列伝﹄において同様の伝承が歌われていたことが明らかとなっている[22][23][24]。 もう1つは悲劇詩人エウリーピデースに由来するとして、マイナロスの娘とする説を挙げている[25]。 またアタランテーをテーバイ攻めの七将の1人パルテノパイオスの母とする伝承も散見している[12][13][26][16][17][27][28][29][30][31][32]。神話
幼少期
アイリアーノスによると、父イーアシオーン︵アポロドーロスではイーアソス︶は男子を欲していたため、アタランテーは生れるとアルカディアー地方のパルテニオン山の泉のそばに捨てられた。そこに牝熊が現れて乳を与えた。この牝熊は狩人に子供を奪われて、乳を吸う者がいなかったため、赤子を気に入って親代わりになったのであった。しかし狩人たちは牝熊が餌を探しに出かけている間に赤子を連れ去った。赤子はアタランテーと名づけられ、狩人たちによって育てられた。成長するにつれてアタランテーはアルテミスにならい、結婚せずに処女を守って生きることを望み、男を避け、孤独な生活に憧れて、アルカディアー地方の中で最も高い山の洞窟で暮らした。アタランテーはこの場所で、葡萄を育てながら狩りに明け暮れた[1][2]。 アタランテーは幼い頃から驚異的な足の速さを誇り、獣であろうと人間であろうと、アタランテーから逃れることはできなかった。また誰もアタランテーを捕まえることができなかった[1]。 体格はすでに並みの女性よりも大きく、また当時のペロポネーソス半島に住むどの女性よりも美しかった。そのため彼女の噂を聞き及んで恋する者もいたほどであった。しかし山野で自らを錬磨し、狩に明け暮れ、誰にも頼ることなく生活していたため、目つきは男のように厳しく、激しい気性の持ち主であり、少女らしさはかけらも持ち合わせていなかった[1][注釈 1]。ヒュライオスとロイコス
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/12/Chalkidian_Hyria_Munich_Inscription_Painter_2.jpg/270px-Chalkidian_Hyria_Munich_Inscription_Painter_2.jpg)
アルゴー船の冒険
いくつかの文献はアタランテーがイアーソーン率いるアルゴー船の冒険に参加したと伝えている[5][6]。シケリアのディオドーロスの物語によると、アルゴナウタイがメーデイアの手引きで金毛羊の毛皮を入手したのち、アイエーテース率いるコルキス人と戦闘になり、アタランテーも戦って負傷したことが語られている[34]。これに対してロドスのアポローニオスの叙事詩﹃アルゴナウティカ﹄ではアタランテーは不参加となっている。アタランテー本人は熱烈にアルゴナウタイに加わることを望み、イアーソーンがマイナロスを訪れた際には自らの槍を贈ったほどだった。しかしイアーソーンは英雄たちが美しい彼女をめぐって争うことを恐れたため、アタランテーの申し出を断った。その代わりにイアーソーンはアタランテーから贈られた槍を携えて冒険に出発したという[35]。またヒュギーヌスもアタランテーをアルゴナウタイに加えていない[36]。 イアーソーンの帰還後に催されたペリアースの葬礼競技では、アキレウスの父親ペーレウスとレスリングの競技で戦い[2][37]、勝利したともいう[2]。カリュドーンの猪狩り
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5b/Peter_Paul_Rubens_-_Meleager_and_Atalante_%28ca._1635%29.jpg/220px-Peter_Paul_Rubens_-_Meleager_and_Atalante_%28ca._1635%29.jpg)
結婚
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/57/Hip%C3%B3menes_y_Atalanta_%28Reni%29.jpg/330px-Hip%C3%B3menes_y_Atalanta_%28Reni%29.jpg)
変身譚
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/45/Atalanta_en_Hippomenes_in_leeuwen_veranderd_Metamorfosen_van_Ovidius_%28serietitel%29%2C_RP-P-OB-15.962.jpg/300px-Atalanta_en_Hippomenes_in_leeuwen_veranderd_Metamorfosen_van_Ovidius_%28serietitel%29%2C_RP-P-OB-15.962.jpg)
備考
小惑星帯の比較的大きな小惑星アタランテや、イタリアのプロサッカークラブ、アタランタBCの名前は、ギリシア神話のアタランテーに由来している[45]。系図
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アガメーデース |
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ケルキュオーン |
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ヒッポトオス |
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| アエロポス |
| アンカイオス |
| エポコス |
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| アムピダマース |
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| クリュメネー |
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アイピュトス |
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| エケモス |
| アガペーノール |
| エウリュステウス |
| アンティマケー |
| メラニオーン |
| アタランテー |
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クレスポンテース |
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| ポリュポンテース |
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ギャラリー
- アタランテとメレアグロス
-
ピーテル・パウル・ルーベンス『メレアグロスとアタランテ』1616年頃 メトロポリタン美術館所蔵
-
ヤーコブ・ヨルダーンス『メレアグロスとアタランテ』アントワープ王立美術館所蔵
-
ヤーコブ・ヨルダーンス『メレアグロスとアタランテ』プラド美術館所蔵
-
ヤン・ファン・デン・ヘッケ『メレアグロスとアタランテ』オルレアン美術館所蔵
- アタランテとピッポメネース
-
ニコラ・コロンベル『アタランテとヒッポメネス』1680年
-
ウィレム・ファン・エルプ『アタランテとヒッポメネス』1632年
-
ヨハン・ハインリッヒ・シェーンフェルト『アタランテとヒッポメネス』1650年頃
-
ノエル・アレ『アタランテとヒッポメネス』1765年頃
- 彫刻
-
『バルベリーニのアタランテ』紀元前1世紀頃 ヴァチカン美術館所蔵
-
ピエール・ルポートル『アタランテ』1804年 ルーヴル美術館所蔵
-
ジェームス・プラディエ『アタランテの化粧』1850年 ルーヴル美術館所蔵
-
フランシス・ダーウェント・ウッド『アタランテ』1907年頃 マンチェスター市立美術館所蔵
-
ポール・ハワード・マンシップ『アタランテ』1921年 ナショナル・ギャラリー所蔵
脚注
注釈
出典
参考文献
- アイリアノス『ギリシャ奇談集』松平千秋、中務哲郎訳、岩波文庫(1989年)
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- アントーニーヌス・リーベラーリス『ギリシア変身物語集』安村典子訳、講談社文芸文庫(2006年)
- オウィディウス『変身物語(上)』中村善也訳、岩波文庫(1982年)
- 『オデュッセイア/アルゴナウティカ』松平千秋・岡道男訳、講談社(1982年)
- 『ギリシア悲劇I アイスキュロス』「テーバイ攻めの七将」高津春繁訳、ちくま文庫(1985年)
- 『ギリシア悲劇II ソポクレス』「コローノスのオイディプース」高津春繁訳、ちくま文庫(1986年)
- 『ギリシア悲劇III エウリピデス(上)』「救いを求める女たち」中山恒夫訳、ちくま文庫(1986年)
- 『ギリシア悲劇IV エウリピデス(下)』「フェニキアの女たち」岡道男訳、ちくま文庫(1986年)
- 『ギリシア悲劇全集6 エウリーピデースII』「ヒケティデス」橋本隆夫訳、岩波書店(1991年)
- 『ギリシア悲劇全集8 エウリーピデースIV』「ポイニッサイ」安西眞訳、岩波書店(1991年)
- ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)