ポセイドーン
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ポセイドーン Ποσειδῶν | |
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海神 地震の神 | |
信仰の中心地 | コリントス, カラウレイア, スニオン岬, タイナロン岬 |
武器 | 三叉戟(トライデント) |
シンボル | 三叉戟, イルカ, 馬, 牡牛 |
配偶神 | アムピトリーテー |
親 | クロノス, レアー |
兄弟 | ヘスティアー, ヘーラー, デーメーテール, ハーデース, ケイローン |
子供 | トリートーン, ロデー, ベンテシキューメー |
ローマ神話 | ネプトゥーヌス |
祝祭 | イストミア競技祭 |
ギリシア神話 |
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主な原典 |
イーリアス - オデュッセイア 神統記 - 仕事と日 イソップ寓話 - ギリシア悲劇 ビブリオテーケー - 変身物語 |
主な内容 |
ティーターノマキアー ギガントマキアー アルゴナウタイ テーバイ圏 - トロイア圏 |
オリュンポス十二神 |
ゼウス - ヘーラー アテーナー - アポローン アプロディーテー - アレース アルテミス - デーメーテール ヘーパイストス - ヘルメース ポセイドーン - ヘスティアー (ディオニューソス) |
その他の神々 |
カオス - ガイア - エロース ウーラノス - ティーターン ヘカトンケイル - キュクロープス ギガンテス - タルタロス ハーデース - ペルセポネー ヘーラクレース - プロメーテウス ムーサ - アキレウス |
主な神殿・史跡 |
パルテノン神殿 ディオニューソス劇場 エピダウロス古代劇場 アポロ・エピクリオス神殿 |
ウィキプロジェクト カテゴリ |
ポセイドーン︵古希: ΠΟΣΕΙΔΩΝ, Ποσειδῶν, Poseidōn︶は、ギリシア神話の海と地震を司る神である[1]。オリュンポス十二神の一柱で、最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸すらポセイドーンの力によって支えられている。地震をもコントロール出来るとされる。また、地下水の支配者でもあり、泉の守護神ともされる。
イオニア方言系ではポセイダーオーンとも呼ばれる。エノシガイオスという名もある[1]。日本語では長母音を省略してポセイドンとも呼ぶ[1]。
概説[編集]
ポセイドーンの地位と実力は、ゼウス・エナリオス︵海のゼウス︶と呼ばれるほど高く、その支配力は全物質界に及んだ[2]。ティーターノマキアーの際にキュクロープスから贈られた三叉の矛︵トリアイナ︶を最大の武器とし、これによって大海と大陸を自在に支配する。これを使えば容易く嵐や津波を引き起こし、大陸をも沈ませることができる上に、万物を木端微塵に砕くことができる。世界そのものを揺さぶる強大な地震を引き起こすことも可能で、そのあまりの凄まじさに、地球が裂けて冥界が露わになってしまうのではないかと冥王ハーデースが危惧したほどである。また、山脈を真っ二つに引き裂いて河の通り道を造ったり、山々と大地を深く切り抜いて海中へと投げて島を造ったこともある。 古くはペラスゴイ人に崇拝された大地の神︵特に地震を司る︶であったと考えられ、異名の1つに﹁大地を揺らす神﹂というものがある[2][1]。また、馬との関わりが深く、競馬の守護神としても崇められた[2]。故にその象徴となる聖獣は馬、牡牛、イルカであり、聖樹は松である。真鍮の蹄と黄金のたてがみを持った馬、またはヒッポカムポスの牽く戦車に乗る。ポセイドーンの宮殿は大洋の中にあり、珊瑚と宝石で飾られているとされる。 また、大地の神であった特質からデーメーテールの夫の位置にいることもあり、ピガリアではデーメーテールとの婚姻も伝えられている。ポセイドーンの名前の意味も、﹁ポシス=ダー︵大地の夫︶﹂からきているとされているが、ジョン・チャドウィックは﹁ダー dā という語彙はギリシア語には1度しか現れないし﹃大地﹄という意味でもない﹂としてこの説を斥けている。系譜[編集]
神話では、クロノスとレアーの子[1]。ハーデースの弟でゼウスの兄[1]。オリュンポス十二神の1柱である。ネーレーイデスの1人であるアムピトリーテーを妻とし、トリートーン、ロデー、ベンテシキューメーが彼女との子である[1]。愛人も数多く存在し、その中でとりわけ有名な人物は後述するメドゥーサである[1]。愛人との間の子にはオーリーオーン、ペーガソスなどがいる。アムピトリーテー[編集]
アムピトリーテーは美しい海の女神であるが、大波を引き起こしたり、巨大な怪魚や海獣を数多く飼っているなど、強力な力を秘めていた。ポセイドーンは彼女に求婚するが、アムピトリーテーは彼を嫌い、その追跡の手から逃れるべくオーケアノスの宮殿に隠れてしまった[注 1]。ポセイドーンはイルカたちにアムピトリーテーを探させた。すると、一頭のイルカが彼女を発見し、説得してポセイドーンの元へと連れて行った。その結果、ポセイドーンはアムピトリーテーと結婚することができ、この功績を讃えられてイルカは宇宙に上げられ、いるか座になった。 また、ナクソス島で踊っている時にポセイドーンに誘拐されたという説や、馬やイルカを創造して彼女に贈り、それに気を良くしたアムピトリーテーが結婚を承諾したという説もある。 強力な海の女神であるアムピトリーテーを正妻にしたことで、ポセイドーンは大地と共に海をも司るようになったと言われる。この説はポセイドーンは古くは大地を司る神であったことに由来する。メドゥーサ[編集]
メドゥーサは美しい長髪の女性であり、ポセイドーンが愛するほどの美貌を持っていた。ポセイドーンはメドゥーサと密通を重ねるが、あろうことか処女神アテーナーの神殿で彼女と交わってしまった。アテーナーは怒り狂ったが、高位な大神であるポセイドーンを罰することはできず、代わりにメドゥーサを罰した。アテーナーの怒りによりメドゥーサの自慢の長髪は蛇となり、見る者を石化させてしまう恐ろしい怪物となった。これに抗議したメドゥーサの姉たち、ステンノーとエウリュアレーも同様の姿に変えられた。後にメドゥーサはペルセウスによって首を取られ、その時に飛び散った血と共にポセイドーンとの子であるペーガソスが生まれた。黄金の剣と共にクリューサーオールも生まれ、ペーガソスとは双子にあたる。また、メドゥーサの首はアテーナーの盾に取り付けられ、古代ギリシアでも魔除けとしてメドゥーサの首の絵が描かれるようになった。神話[編集]
ティーターノマキアー[編集]
ポセイドーンら兄弟は、王位簒奪を恐れたクロノスによって呑み込まれていたが、ゼウスによって救出された。ポセイドーンはオリュンポス側としてティーターノマキアーに参戦し、ゼウスやハーデースと共にティーターン神族と戦った。その際、キュクロープスから海と大地を操ることのできる三叉の矛を贈られ、以後彼の主要な武器となる。三叉の矛によって宇宙を揺さぶり、ゼウスたちとの共闘によってティーターン神族を敗北させた。ギガントマキアー[編集]
ポセイドーンは巨人族との戦争であるギガントマキアーにも参戦し、火山や島々を投げ飛ばしては巨人ギガースを戦闘不能にさせていた。また、コス島の岩山をもぎ取り、ギガースの一人であるポリュボーテースに打ち付け、その岩山は後にニーシューロスという火山島になった。岩山に封印されたポリュボーテースが重みに耐えかねて火炎を吹くのである。トロイア戦争[編集]
トロイア戦争ではトロイアの王ラーオメドーンが城壁を建造した際の報酬を踏み倒した事を根に持っていたため、彼はアカイア側に属している[1]。アカイア勢を常に鼓舞し、ゼウスから参戦許可が下りた後は積極的に介入し、三叉の矛で全世界を揺さぶって威圧した。この宇宙規模の地震は冥界に座するハーデースが恐れおののくほどであった。アテーナーとの争い[編集]
ポセイドーンは、アテーナイの支配権をめぐりアテーナーと争ったといわれる[1]。2人がアテーナイの民に贈り物をして、より良い贈り物をした方がアテーナイの守護神となることが裁定で決まり、ポセイドーンは三叉の矛で地を撃って塩水の泉を湧かせ、アテーナーはオリーブの木を生じさせた[1]。オリーブの木がより良い贈り物とみなされ、アテーナイはアテーナーのものとなったという[1]。この結果に納得がいかなかったポセイドーンはアテーナイに洪水を起こしたが、ゼウスが仲介してアテーナイのアクロポリスにアテーナーの神殿を、エーゲ海に突き出すスーニオン岬にポセイドーンの神殿を築き、2人は和解した。アテーナイのアクロポリスには、この塩水の泉が枯れずに残っていたといわれる。この他にも、ゼウスやヘーラー、ディオニューソス、ヘーリオスとも領有地争いを起こしている[2]。-
アテーナーとポセイドーンの紛争(ルネ=アントワーヌ・ウアス作、1689-1706年頃、ヴェルサイユ宮殿蔵)
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スニオン岬にあるポセイドーン神殿
プラトーンの批判[編集]
プラトーンは対話編の中で、この神話について、神々が己にふさわしい地を知らないはずがなく、このような争いがあったとは思われないと批判している。
有名なポセイドーンの青銅像︵アテネ国立考古学博物館蔵︶
ポセイドーンは、ギリシア彫刻の多くにおいて堂々とした威厳ある壮年の男性の姿で描かれる。アルテミシオン沖で発掘された古代盛期の青銅像が著名である。この像ではポセイドーンは裸体で三叉の矛︵紛失してしまっている︶を構えた立像となっている。これを雷霆を投げるゼウスの像とする説もあり、ゼウス像として紹介する場合も少なくない。