イーノー
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イーノー︵古希: Ἰνώ, Īnō︶はギリシア神話に登場する人物である。長母音を省略してイノとも表記する。
テーバイの王女として生まれ、のちにボイオーティアの王妃となった。死後、ゼウスによって女神とされ、海の女神レウコテアー︵Leukothea︶あるいはレウコトエー︵Leukothoe︶として信仰された。レウコテアーとは﹁白い女神﹂の意である。
カドモスとハルモニアーの娘。兄弟にポリュドーロス、イリュリオス。姉妹にアウトノエー、セメレー、アガウエー。ボイオーティアの王アタマースの後妻となり、二人の息子、レアルコスとメリケルテースを生んだ。
ペンテウスを引き裂いて殺すアガウエーとイーノー。紀元前450年か ら425年ごろのアッティカの鉢︵ルーヴル美術館︶
上記とはまったく別の話がある。イーノーは山中で大山猫に襲われ、そのときにバッコス︵ディオニューソス︶の狂乱がイーノーに取り憑き、イーノーは大山猫を引き裂いて殺し、そのままパルナッソス山のマイナスたちの酒宴に加わった。アタマースはイーノーが死んだと思ってテミストーを後妻に迎えた。後になってイーノーが健在であることがわかり、アタマースは乳母といつわってイーノーを宮中に入れた。テミストーはこれを見破り、テミストーの子には白い衣装、イーノーの子には喪服を着けさせるようイーノーにいいつけ、翌日護衛に命じて喪服の子供を殺させた。しかし、イーノーは危険を察して子供の服を取り替えていたので、殺されたのはテミストーの子だった。アタマースはこれによって乱心したのだという。
エウリピデースのギリシア悲劇﹃バッコスの信女﹄では、イーノーは姉妹のアガウエー、アウトノエーとともにディオニューソスの饗宴に加わり、これを阻止しようとしたアガウエーの息子でテーバイ王であるペンテウスの身体を引き裂いて殺す。