ケイローン
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ケイローン 古希: Χείρων, Cheirōn | |
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住処 | テッサリア |
配偶神 | カリクロー |
親 | 父クロノス、母ピリュラー |
兄弟 | ヘスティアー、デーメーテール、ヘーラー、ハーデース、ポセイドーン、ゼウス |
子供 |
娘ヒッペー、娘エンデーイス、娘オクロエ(オシロエ)、 息子カリストゥス |
ケイローン︵古希: Χείρων KY-rən︵発音記号‥[ˈkaɪrən]︶[注釈 1]は、ギリシア神話に登場するケンタウロス族の賢者。野蛮で粗暴とされたケンタウロスとしては例外的な存在であり、英雄たちの養育者あるいは教師として知られる。ラテン語ではキロン︵ラテン語: Chiron︶。日本語では長母音を省略してケイロンとも表記される。
![](//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a8/Palais_Bourbon%2C_Malerei_in_der_Kuppel_der_Poesie%2C_Szene-_Erziehung_des_Achill_%28Eug%C3%A8ne_Delacroix%29.jpg/250px-Palais_Bourbon%2C_Malerei_in_der_Kuppel_der_Poesie%2C_Szene-_Erziehung_des_Achill_%28Eug%C3%A8ne_Delacroix%29.jpg)
L'éducation d'Achille ︵ウジェーヌ・ドラク ロワ画︶ ケイローンの背に乗ったアキレウスが描かれている。
ケイローンは一般的なケンタウロスとは出自が異なり、ティーターンの王クロノスとニュンペーのピリュラーの子で[2][3][4]、クロノスは妻レアーの目を逃れるために馬に姿を変えてピリュラーと交わったことから、半人半馬となったという[5]。またドロプスという兄弟がいたともいわれる[3]。ニュムペーのカリクローとの間にヒッペーをもうけた。一説によるとアイアコスの妻でペーレウスとテラモーンの母エンデーイスはケイローンの娘であり[6]、さらに別の説によるとペーレウスと結婚した女神テティスもまたケイローンの娘とされる[7][8][9][10]。
系譜[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a8/Palais_Bourbon%2C_Malerei_in_der_Kuppel_der_Poesie%2C_Szene-_Erziehung_des_Achill_%28Eug%C3%A8ne_Delacroix%29.jpg/250px-Palais_Bourbon%2C_Malerei_in_der_Kuppel_der_Poesie%2C_Szene-_Erziehung_des_Achill_%28Eug%C3%A8ne_Delacroix%29.jpg)
神話[編集]
ケイローンはアポローンから音楽、医学、予言の技を、アルテミスから狩猟を学んだという。ケイローンはペーリオン山の洞穴に住み、薬草を栽培しながら病人を助けて暮らした。またヘーラクレースやカストールら英雄たちに請われて武術や馬術を教え、イアーソーンや[11][12]アクタイオーンを養育し[13]、アスクレーピオスには医術を授けた[12][14][15]。アキレウスの師でもあった。弓を持つケンタウロスのモチーフは知恵の象徴であるケイローンに由来している。 ヘーラクレースとケンタウロスたちとの争いに巻き込まれ、ヘーラクレースの放った毒矢が誤ってケイローンの膝に命中し、不死身のケイローンは苦痛から逃れるために、ゼウスに頼んで不死身の能力をプロメーテウスに譲り、死を選んだ。その死を惜しんだゼウスはケイローンの姿を星にかたどり、射手座にしたという[16]。 ダンテの﹃神曲﹄﹁地獄篇﹂第十二曲においてダンテ及びウェルギリウスと言葉を交わし、ネッソスに地獄の道案内をするよう命じた。関係者[編集]
家族 ●クロノス - 父。馬に化けていたティーターンの王。︵ゼウスたちとケイローンは異腹兄弟︶ ●ピリュラー- 母。ニュンペー。恥と嫌悪感からケイローンを捨てる。 ●アポローン - 養父。竪琴、弓術、医学、占星術などを教える。︵アポローンがゼウスの子であるため、叔父・甥の関係でもある。︶ ●アルテミス - 養母。弓術と狩猟を教える。︵アポローンの妹︶ ●カリクロー - 妻 ●ヒッペー(Hippe) - 娘。こうま座の神話の一つに登場する。 ●エンデーイス(Endeïs) - 娘 ●オクロエ︵オシロエ︶(Ocyrhoe) - 娘 ●カリストゥス(Carystus) - 息子師弟関係[編集]
著述家クセノポーンによると、ケイローンはアポローンとアルテミスから狩猟と猟犬について学び、それを生徒である英雄たちに教えたとされる[17]。クセノポーンは、ケイローンに学んだ英雄を次のように列挙している[18]。ビザンツ帝国では、ディオニューソスも弟子としている。ギャラリー[編集]
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「ケイーロンとアキレウス」(石棺の装飾。トラッチャ、カシリーナ邸、3世紀)
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「ケイローンに対面するティーターン王とアキレウス」(バロワ美術館)
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ピエール・ピュジェ「アキレウスを導くケイローン」(1690年頃)
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ヨハン・バルタザール・プロバスト「幼いケンタウロスを託されるケイローン」 (17/18世紀)
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ポンペオ・バトーニ「ケンタウロスのケイローンの元へアキレウスを引き取りに来たティーターン王 」(1770年)
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ジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニ「投げ槍を習うアキレウス」 (1776年頃)
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ポンペオ・バトーニ「ケイーロンとアキレウス」
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ベニーニュ・ガグネロー「アキレウスの教育」(1785年)
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ジェームズ・バリー「アキレウスの教育」
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「若いアキレウスに地理を教えるケンタウロスのケイローン」 (ロサンゼルス郡立美術館)
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「アキレウスの教育」(リトグラフ、1798年)原作は1782年のジャン=バプティスト・ルニョー作品
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リナルド・リナルディ「アキレウスにキタラの演奏を教えるケイローン」 (1817年)
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オーギュスト=クレマン・クレティエン「アキレウスの教育」(1861年)
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ウジェーヌ・ドラクロワ「アキレウスの教育」(1862年頃)
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マックスフィールド・パリッシュ「イアーソーンと師 」(1909年)
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「息子アキレウスをケイローンに託すペーレウス」(1921年)
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ジョルジオ・ゾンマー、 エドモンド・ベーレス 「ケイーロンとアキレウス」(20世紀初頭)
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
(一)^ ホメーロス﹃イーリアス﹄。"11.831"。
(二)^ アポロドーロス、1巻2・4。
(三)^ abヒュギーヌス、序文。
(四)^ ヒュギーヌス、138話。
(五)^ ロドスのアポローニオス、2巻1231行-1241行。
(六)^ ヒュギーヌス、14話。
(七)^ ヒュギーヌス﹃天文譜﹄2巻18話。
(八)^ ロドスのアポローニオス、1巻558への古註。
(九)^ ディクテュス、1巻14。
(十)^ ディクテュス、6巻7。
(11)^ ピンダロス﹃ピュティア祝勝歌﹄第4歌102行-103行。
(12)^ abピンダロス﹃ネメア祝勝歌﹄第3歌53行-55行。
(13)^ アポロドーロス、3巻4・4。
(14)^ ピンダロス﹃ピュティア祝勝歌﹄第3歌1行-7行。
(15)^ アポロドーロス、3巻10・3。
(16)^ ブルフィンチ 1970, p. 235
(17)^ クセノポン﹁1章1﹂﹃狩猟について﹄Perseus Digital Library。2022年1月28日閲覧。
(18)^ クセノポン﹁1章2﹂﹃狩猟について﹄Perseus Digital Library。2022年1月28日閲覧。
(19)^ ドナート・クレティ、イタリア、1671年生-1749年没。
参考文献[編集]
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●アポロドーロス 著、高津春繁 訳﹁第一巻﹂﹃ギリシヤ神話﹄岩波書店、1953年、1-50頁。doi:10.11501/2982641。巻末に固有名詞索引あり。国立国会図書館デジタルコレクション 、閲覧は国立国会図書館内限定、遠隔複写サービス可、NDLJP:2982641。
●ホメロス、アポロニオス 著、松平千秋、岡道男 訳﹃オデュッセイア/アルゴナウティカ﹄講談社︿世界文学全集﹀、1982年6月。doi:10.11501/12445130。国立国会図書館デジタルコレクション、閲覧は国立国会図書館内限定、遠隔複写サービス可、NDLJP:12445130。
●ホメロス﹃オデュッセイア﹄松平千秋 訳
●アポロニオス﹃アルゴナウティカ‥アルゴ船物語﹄ 岡道男 訳
●高津春繁﹃ギリシア・ローマ神話辞典﹄岩波書店、1960年。doi:10.11501/2982681。国立国会図書館デジタルコレクション、閲覧は国立国会図書館内限定、遠隔複写サービス可、NDLJP:2982681。
●ディクテュス、ダーレス 著、岡三郎 訳﹃ディクテュスとダーレスのトロイア戦争物語﹄ 第1、国文社︿トロイア叢書﹀、2001年12月。全国書誌番号:20253572。
●ディクテュス ﹃トロイア戦争日誌﹄原題‥Dictys Cretensis ephemeridos belli Troiani︵Werner Eisenhut ed.︶。底本は、トイブナー版︵1958年初版、73年第2版も参照︶、ウェルナー・アイゼンフート校訂﹃クレタ島のディクテュスのトロイア戦争日誌﹄。
●ダーレス﹃トロイア滅亡の歴史物語﹄原題‥Daretis Phrygii de excidio Troioe historia︵Ferdinandus Meister ed.︶。底本は、トイブナー版︵1873年初版︶、フェルディナンドス・マイスター校訂﹃フリュギア人ダーレスのトロイア滅亡の歴史物語﹄。
●ヒュギーヌス 著、松田治、青山照男 訳﹃ギリシャ神話集﹄講談社︿講談社学術文庫﹀、2005年2月。全国書誌番号:20749706。原題‥Fabulae。目次あり。
●ピンダロス 著、内田次信 訳﹃祝勝歌集/断片選﹄京都大学学術出版会︿西洋古典叢書﹀、2001年9月。。固有名詞解説・索引: 巻末p1-38。
●底本は、B・スネル 著Pindari carmina cum fragmentis ︵ライプツィヒ‥H・メーラー出版、パートI第6版‥1980年、パートII第4版‥1975年︶。
●トマス・ブルフィンチ 著、大久保博 訳﹃ギリシア・ローマ神話 : 伝説の時代 完訳﹄角川書店︿角川文庫﹀、1970年、235頁。全国書誌番号:75061018。