「小田急50000形電車」の版間の差分
最後の連接車 普通鉄道は東急300があるため タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 曖昧さ回避ページへのリンク |
どうでもいい内容を載せないこと。 |
||
42行目: | 42行目: | ||
}} |
}} |
||
'''小田急50000形電車'''︵おだきゅう50000がたでんしゃ︶は、[[2005年]]︵[[平成]]17年︶から[[小田急電鉄]]が運用している<ref name="rj464-36"/>[[特急形車両|特急用車両]]<!--小田急では﹁特急形﹂という区分ではないため。2300形の登場当時は竣功図に﹁優等電動客車﹂というように書いてあるようですが-->︵[[小田急ロマンスカー|ロマンスカー]]︶である。
|
'''小田急50000形電車'''︵おだきゅう50000がたでんしゃ︶は、[[2005年]]︵[[平成]]17年︶から[[小田急電鉄]]が運用している<ref name="rj464-36"/>[[特急形車両|特急用車両]]<!--小田急では﹁特急形﹂という区分ではないため。2300形の登場当時は竣功図に﹁優等電動客車﹂というように書いてあるようですが-->︵[[小田急ロマンスカー|ロマンスカー]]︶である。
|
||
本系列は小田急ロマンスカーのみならず大手私鉄車両における最後の普通鉄道用[[連接車]]である。 |
|||
小田急では、編成表記の際には﹁[[新宿駅|新宿]]寄り先頭車両の[[鉄道の車両番号|車両番号]]︵新宿方の車号︶×両数﹂という表記を使用している<ref name="dj145-15"/>ため、本項もそれに倣い、特定の編成を表記する際には﹁50002×10﹂のように表記する。また、[[小田急3000形電車 (初代)|初代3000形]]は﹁SE車﹂、[[小田急3100形電車|3100形]]は﹁NSE車﹂、[[小田急7000形電車|7000形]]は﹁LSE車﹂、[[小田急10000形電車|10000形]]は﹁HiSE車﹂、[[小田急20000形電車|20000形]]は﹁RSE車﹂、[[小田急30000形電車|30000形]]は﹁EXE車﹂、本形式50000形は﹁VSE車﹂、[[小田急70000形電車|70000形]]は﹁GSE車﹂、[[箱根登山鉄道]][[箱根湯本駅]]へ乗り入れる特急列車については﹁箱根特急﹂、[[小田原駅|小田原]]方面に向かって右側を﹁山側﹂・左側を﹁海側﹂と表記する。
|
小田急では、編成表記の際には﹁[[新宿駅|新宿]]寄り先頭車両の[[鉄道の車両番号|車両番号]]︵新宿方の車号︶×両数﹂という表記を使用している<ref name="dj145-15"/>ため、本項もそれに倣い、特定の編成を表記する際には﹁50002×10﹂のように表記する。また、[[小田急3000形電車 (初代)|初代3000形]]は﹁SE車﹂、[[小田急3100形電車|3100形]]は﹁NSE車﹂、[[小田急7000形電車|7000形]]は﹁LSE車﹂、[[小田急10000形電車|10000形]]は﹁HiSE車﹂、[[小田急20000形電車|20000形]]は﹁RSE車﹂、[[小田急30000形電車|30000形]]は﹁EXE車﹂、本形式50000形は﹁VSE車﹂、[[小田急70000形電車|70000形]]は﹁GSE車﹂、[[箱根登山鉄道]][[箱根湯本駅]]へ乗り入れる特急列車については﹁箱根特急﹂、[[小田原駅|小田原]]方面に向かって右側を﹁山側﹂・左側を﹁海側﹂と表記する。
|
||
83行目: | 82行目: | ||
=== 過去に試験をしていた技術の採用 === |
=== 過去に試験をしていた技術の採用 === |
||
また、小田急では |
また、小田急では1960年代から1970年代にかけて、3回にわたって[[車体傾斜式車両|車体傾斜制御]]の試験を行なっていた。[[1961年]]に[[小田原急行鉄道モニ1形電車|デユニ1000形]]の旧車体を活用して行なった﹁空気ばね式自然振り子車﹂は高位置空気ばね支持方式の連接台車を装備しており<ref name="2005-u-128"/>、日本で初めての車体傾斜制御試験であったが、振り遅れの問題があった<ref name="2005-u-128"/>。[[1962年]]には[[小田原急行鉄道1形電車|デニ1101]]を使用して﹁油圧式強制振り子車﹂の試験が行なわれた<ref name="1985-k-127"/>が、[[フェイルセーフ]]の問題があった<ref name="tech12-102"/>。[[1970年]]には[[小田急1600形電車|クハ1658]]を使用して﹁空気ばね式強制振り子車﹂の試験が行なわれ<ref name="1985-k-127"/>、車体傾斜による乗り心地向上効果は確認できた<ref name="2009-a-148"/>ものの、当時の技術水準では曲線への進入を正確に検知することが困難であった<ref name="arc1-16"/>。このほか、[[1967年]]には廃車となった車両を利用して、[[鉄道車両の台車#輪軸操舵機構︵操舵台車︶|操舵台車]]の試験も行なわれていた<ref name="1985-k-127"/>。
|
||
当時は通勤輸送力の増強に注力しなければならなかったこともあり<ref name="rf529-86"/>、実用化は見送られていた<ref name="rf529-87"/>。しかし、技術的な問題については、その後の電子技術の発展等に伴い解決されていた<ref name="2005-u-131"/>。このため、新型特急車両では、乗り心地と快適性の向上をねらって最新の技術を積極的に導入することとなり、1960年代に試験を行なっていた車体傾斜制御と操舵台車も採用することになった<ref name="rj464-39"/>。採用に向けた事前確認のため、2003年にはLSE車︵7002×11︶を使用し<ref name="2012-u-70"/>、車体傾斜制御と高位置空気ばね台車、操舵台車・[[集電装置]]︵パンタグラフ︶の変位について、半年にわたって検証が行なわれた<ref name="2005-u-130"/><ref name="2009-a-149"/><ref name="2012-u-71"/>。
|
当時は通勤輸送力の増強に注力しなければならなかったこともあり<ref name="rf529-86"/>、実用化は見送られていた<ref name="rf529-87"/>。しかし、技術的な問題については、その後の電子技術の発展等に伴い解決されていた<ref name="2005-u-131"/>。このため、新型特急車両では、乗り心地と快適性の向上をねらって最新の技術を積極的に導入することとなり、1960年代に試験を行なっていた車体傾斜制御と操舵台車も採用することになった<ref name="rj464-39"/>。採用に向けた事前確認のため、2003年にはLSE車︵7002×11︶を使用し<ref name="2012-u-70"/>、車体傾斜制御と高位置空気ばね台車、操舵台車・[[集電装置]]︵パンタグラフ︶の変位について、半年にわたって検証が行なわれた<ref name="2005-u-130"/><ref name="2009-a-149"/><ref name="2012-u-71"/>。
|
||
155行目: | 154行目: | ||
[[主制御器|制御装置]]はセンサレスベクトル制御と新空転再粘着制御を適用した[[東芝]]<ref name="Toshiba2005-3">{{PDFlink|[https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2005/03/60_03pdf/0903.pdf 東芝レビュー2005年3月号「2005年の技術成果」]}}</ref>製の[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]]2レベル[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]装置<ref name="rj464-41"/>であるSVF-073A0形を採用<ref name="rp829-318"/>、2・4・7・9号車に搭載した<ref name="rp829-283"/>。SE車からEXE車までの特急車両に引き続き東芝製の採用で、1台で4個の電動機の制御を行う方式(1C4M)である<ref name="rp829-283"/>。乗り心地向上を図ってジャーク制御を行なうようにした<ref name="rp829-283"/>。駆動装置はSE車からEXE車までの特急車両とは異なり、通勤車と同一の[[WN駆動方式|WNドライブ]]が採用された<ref name="rp829-283"/>。 |
[[主制御器|制御装置]]はセンサレスベクトル制御と新空転再粘着制御を適用した[[東芝]]<ref name="Toshiba2005-3">{{PDFlink|[https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/techReviewAssets/tech/review/2005/03/60_03pdf/0903.pdf 東芝レビュー2005年3月号「2005年の技術成果」]}}</ref>製の[[絶縁ゲートバイポーラトランジスタ|IGBT]][[半導体素子|素子]]2レベル[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]装置<ref name="rj464-41"/>であるSVF-073A0形を採用<ref name="rp829-318"/>、2・4・7・9号車に搭載した<ref name="rp829-283"/>。SE車からEXE車までの特急車両に引き続き東芝製の採用で、1台で4個の電動機の制御を行う方式(1C4M)である<ref name="rp829-283"/>。乗り心地向上を図ってジャーク制御を行なうようにした<ref name="rp829-283"/>。駆動装置はSE車からEXE車までの特急車両とは異なり、通勤車と同一の[[WN駆動方式|WNドライブ]]が採用された<ref name="rp829-283"/>。 |
||
[[鉄道のブレーキ| |
[[鉄道のブレーキ|ブレーキ]]については、[[応荷重装置]]・電空演算機能付[[遅れ込め制御|遅れ込め方式]]の[[電気指令式ブレーキ|電気指令式電磁直通制動]]とした<ref name="rp829-283"/>。ブレーキ圧力はTIOSを通じて各車軸ごとに要求されるブレーキ力に応じた制御が行なわれる方式で<ref name="rj464-42"/>、全ての車軸に[[滑走#鉄道車両の滑走|滑走]]防止弁を装備した<ref name="rp829-283"/>。
|
||
==== 台車 ==== |
==== 台車 ==== |
||
223行目: | 222行目: | ||
2016年3月26日のダイヤ改正で、平日の江ノ島線系統の﹁ホームウェイ85号﹂で使用されるようになり<ref group="注">2018年3月17日以降は、LSE車︵同年7月10日の運用終了まで︶およびGSE車と共に﹁展望席付き車両﹂として共通運用。</ref>、江ノ島線への定期運用が初めて設定された。
|
2016年3月26日のダイヤ改正で、平日の江ノ島線系統の﹁ホームウェイ85号﹂で使用されるようになり<ref group="注">2018年3月17日以降は、LSE車︵同年7月10日の運用終了まで︶およびGSE車と共に﹁展望席付き車両﹂として共通運用。</ref>、江ノ島線への定期運用が初めて設定された。
|
||
== 引退 == |
=== 引退 === |
||
2018年のGSE車の登場以降も、小田急電鉄ではVSE車を継続して使用するための補修・更新計画について検討していたが、以下のような問題点が浮上した。 |
2018年のGSE車の登場以降も、小田急電鉄ではVSE車を継続して使用するための補修・更新計画について検討していたが、以下のような問題点が浮上した。 |
||
* アルミ合金押出形材によるダブルスキン構造の車体は溶接などの熱を加えての補修や修正が非常に困難で、修理に高度な技術や経験を要する<ref>{{Cite news|title=小田急ロマンスカーで一番映える車両「VSE」が引退を余儀なくされた理由|newspaper=NEWSポストセブン|date=2021-12-19|url= https://www.news-postseven.com/archives/20211219_1715359.html?DETAIL|accessdate=2021-12-20}}</ref>。 |
* アルミ合金押出形材によるダブルスキン構造の車体は溶接などの熱を加えての補修や修正が非常に困難で、修理に高度な技術や経験を要する<ref>{{Cite news|title=小田急ロマンスカーで一番映える車両「VSE」が引退を余儀なくされた理由|newspaper=NEWSポストセブン|date=2021-12-19|url= https://www.news-postseven.com/archives/20211219_1715359.html?DETAIL|accessdate=2021-12-20}}</ref>。 |
||
229行目: | 228行目: | ||
|newspaper=AERA dot.|author=岸田法眼|date=2021-12-29|url=https://dot.asahi.com/amp/dot/2021122700125.html|accessdate=2021-12-30}}</ref>。
|
|newspaper=AERA dot.|author=岸田法眼|date=2021-12-29|url=https://dot.asahi.com/amp/dot/2021122700125.html|accessdate=2021-12-30}}</ref>。
|
||
このような事情を鑑み、EXE車とは異なり更新工事を行わずに早期引退となることが決定し<ref>{{Cite news|title=小田急﹁白いロマンスカー﹂VSE、早すぎる引退理由|newspaper=東洋経済オンライン|author=小佐野 景寿|date=2021-12-21|url=https://toyokeizai.net/articles/-/477761|accessdate=2021-12-21}}</ref>、2022年3月11日をもって定期運行を終了した<ref>{{Cite press release|title=2022年3月11日(金)、特急ロマンスカー・VSEの定期運行を終了|publisher=小田急電鉄|date=2021-12-17|url=https://www.odakyu.jp/news/o5oaa100000214su-att/o5oaa100000214t1.pdf|format=PDF|language=日本語|accessdate=2021-12-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20211217065051/https://www.odakyu.jp/news/o5oaa100000214su-att/o5oaa100000214t1.pdf|archivedate=2021-12-17}}</ref>。今後は |
このような事情を鑑み、EXE車とは異なり更新工事を行わずに早期引退となることが決定し<ref>{{Cite news|title=小田急﹁白いロマンスカー﹂VSE、早すぎる引退理由|newspaper=東洋経済オンライン|author=小佐野 景寿|date=2021-12-21|url=https://toyokeizai.net/articles/-/477761|accessdate=2021-12-21}}</ref>、2022年3月11日をもって定期運行を終了した<ref>{{Cite press release|title=2022年3月11日(金)、特急ロマンスカー・VSEの定期運行を終了|publisher=小田急電鉄|date=2021-12-17|url=https://www.odakyu.jp/news/o5oaa100000214su-att/o5oaa100000214t1.pdf|format=PDF|language=日本語|accessdate=2021-12-17|archiveurl=https://web.archive.org/web/20211217065051/https://www.odakyu.jp/news/o5oaa100000214su-att/o5oaa100000214t1.pdf|archivedate=2021-12-17}}</ref>。今後はイベント列車での使用を経て、2023年秋ごろには完全に引退する予定となっている。
|
||
{{-}} |
{{-}} |
||
<gallery widths="180" style="font-size:80%;"> |
<gallery widths="180" style="font-size:80%;"> |
||
Odakyu 50000 series VSE head logo ever since 2005 20220213.JPG|記念装飾(先端部) |
ファイル:Odakyu 50000 series VSE head logo ever since 2005 20220213.JPG|記念装飾(先端部) |
||
Odakyu 50000 series VSE logo special thanks and forever 20220213.JPG|記念装飾(車体側面) |
ファイル:Odakyu 50000 series VSE logo special thanks and forever 20220213.JPG|記念装飾(車体側面) |
||
|
ファイル:Odakyu 50000 series VSE head logo 20220211.JPG|記念装飾を掲出し走行するVSE車 |
||
</gallery> |
</gallery> |
||
2022年6月17日 (金) 22:55時点における版
小田急50000形電車 Vault Super Express | |
---|---|
![]() 50000形「VSE車」 (栢山駅 - 富水駅間 2020年8月) | |
基本情報 | |
運用者 | 小田急電鉄 |
製造所 | 日本車輌製造[1] |
製造年 | 2004年 - 2005年 |
製造数 | 2編成20両 |
運用開始 | 2005年3月19日 |
運用終了 |
2022年3月11日(定期運行) 2023年秋(完全引退 ※予定) |
主要諸元 | |
編成 | 10両連接車(全電動車)[2] |
軌間 | 1,067 mm(狭軌) |
電気方式 |
直流1,500 V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 110 km/h[5] |
設計最高速度 | 130 km/h[6] |
起動加速度 | 2.0 km/h/s[7] |
減速度(常用) | 4.0 km/h/s[7] |
減速度(非常) | 4.5 km/h/s[7] |
編成定員 | 358名[6] |
編成重量 | 260.2 t[7] |
編成長 | 146.8 m[3] |
全長 |
18,200 mm (先頭車)[4] 13,800 mm (中間車)[4] |
全幅 | 2,800 mm |
全高 |
3,975 mm (先頭車)[4] 4,100 mm (集電装置付中間車)[4] 3,915 mm (集電装置無し中間車)[4] |
車体 | アルミニウム合金 |
台車 |
日本車輌製造 ND-735(連接電動台車)[8] 日本車輌製造 ND-735T(連接付随台車)[8] 日本車輌製造 ND-736T(先頭付随台車)[8] |
主電動機 |
三菱電機 MB-5110-A 全密閉自己通風式かご形三相誘導電動機[4] |
主電動機出力 | 135 kW(端子電圧375 V)[7] |
駆動方式 | WN駆動方式[7] |
歯車比 | 79 : 19 = 4.16[7] |
制御方式 | 純電気ブレーキ対応、定速運転・抑速制動機能付IGBT素子2レベルVVVFインバータ制御 |
制御装置 | 東芝 SVF-073A0[4] |
制動装置 | 回生制動併用電気指令式電磁直通制動[7] |
保安装置 | OM-ATS[7]・D-ATS-P[9][10] |
概要
小田急のフラッグシップモデルとして位置づけられ[13]、箱根方面への特急ロマンスカーに使用されていたHiSE車の置き換え[14]とともに、箱根の魅力向上と活性化[15]、さらには小田急ロマンスカーブランドの復権[16]を目的として登場した。デザインや設計を全面的に見直し[14]、最新技術などを取り入れる[17]とともに、過去に小田急で試験を行なっていながら採用されていなかった技術も採用され[18]、旅客設備についても最高のものを目指した[19]。 客室内の様式から "Vault Super Express"︵略して﹁VSE﹂︶という愛称が設定された[20]。 2005年に照明普及賞優秀施設賞︵照明学会︶[21]、グッドデザイン賞︵日本産業デザイン振興会︶[22]、2006年に第49回ブルーリボン賞︵鉄道友の会︶[20]、アジアデザイン大賞︵香港デザインセンター︶[22]、2007年にiFデザイン賞︵ドイツ・ハノーファー工業デザイン協会︶[23]を受賞している。開発の経緯
箱根特急の利用者数減少
元来、小田急ロマンスカーは箱根への観光客輸送を目的として設定されており[24]、1966年6月1日から設定された[25]途中駅に停車する特急も、元来は沿線在住の箱根観光客を対象としていた[24]。しかし、1990年代に入るとバブル崩壊後の景気低迷や旅行形態の変化、レジャーの多様化などもあって箱根特急の利用者数は年間5 %程度の減少傾向が続き[26]、その一方で観光客以外の日常利用が増加する[24]など、小田急ロマンスカーの乗客層には変化が生じていた。これに対応して、NSE車を代替する特急車両として[27]、箱根特急の利用者減少を日常的な目的での特急利用者を増加させることで補う意図から[28]1996年にEXE車を導入していた[29]が、EXE車ではそれまでの小田急ロマンスカーの特徴だった前面展望席も連接構造も導入しなかった[30]。 ところが、特急の年間利用者数は1987年時点では1100万人だったものが2003年には1400万人に増加した[31]一方で、箱根特急の利用者数は大幅に減少した。箱根を訪れる観光客も1991年の年間2250万人をピークとして減少傾向ではあったが、2003年時点では年間1970万人とピーク時と比較すると約15 %程度の減少率[31]なのに対し、箱根特急の利用者数は1987年時点では年間550万人だった[31]ものが2003年時点では年間300万人と、約45 %も減少していた[31]。つまり、箱根を訪れる観光客の減少以上に、箱根特急の利用者数は減少していた[31]。 2001年に入り、小田急ではロマンスカーに期待されている事柄を調べるため、市場調査を行なった[32]。その結果、﹁ロマンスカーの利用を検討したい﹂と回答した人の多くは、その理由として展望席を挙げていた[33]。つまり、EXE車には﹁小田急ロマンスカーのイメージ﹂とされた展望席が存在しなかったため、自家用車を中心とした別の交通手段に転移していたと考えられた[31]。現実に、家族旅行で箱根特急を利用する際に、EXE車を見た子供から﹁こんなのはロマンスカーじゃない﹂と言われてしまうことがたびたび発生した[34]。その一方、2001年に東日本旅客鉄道︵JR東日本︶が湘南新宿ラインの運行を開始し[35]、2004年からは増発され、新宿から小田原までの所要時間も小田急ロマンスカーとあまり変わらなくなった[35]。箱根への交通手段は、﹁必ずしもロマンスカーでなくてもよい﹂という状況になっていた[31]。HiSE車の置き換え
こうした状況から、小田急では﹁ロマンスカーのイメージ﹂が展望席のある車両であると再認識し[14]、2002年にはロマンスカーの看板車両として広告ポスターなどに登場する車両を、展望席のあるHiSE車に変更していた[36]。 ところが、2000年に制定された交通バリアフリー法では、大規模な更新の際にはバリアフリー化が義務付けられていた[14]が、更新を検討する時期となっていたHiSE車では、高床構造であることからバリアフリー対応が困難とみられた[14]。既に2001年には新しい特急車両の検討が開始されていたが、HiSE車は更新改造を行なうことなく、新型特急車両によって置き換える方向性が2002年に決定した[14]。 新型特急車両の製造にあたり、今までの小田急ロマンスカーのイメージから全く離れた車両を作るか[37]、小田急ロマンスカーの原点に立ち返って﹁ロマンスカーの中のロマンスカー﹂とするかという選択肢があった[37]が、最終的には後者の方向性で進められることになった[37]。設計に際しては﹁どこにもない車両﹂を目指して[38]、各社の特急車両を視察などもした[38]。さらに、SE車とNSE車の製造時の資料や技術を参考にした[39]結果、他社の車両と比較した小田急の財産や武器として挙げられた技術は、EXE車では採用されていなかった連接構造であった[39]。新型特急車両では、乗り心地の向上のためには不可欠なものとして連接構造が採用されることになった[40]。外部デザイナーの起用
HiSE車が登場した後の1991年、小田急では御殿場線直通特急用としてRSE車を登場させていた[41]が、乗り入れ先の東海旅客鉄道︵JR東海︶では371系電車を直通用として製造していた[42]。この371系はプロのデザイナーによる車体デザインで、小田急の関係者は衝撃を持って受け止めたという[43]。 EXE車でも設計の際には外部のグラフィックデザイナーを起用していた[44]が、RSE車の教訓から、新型特急車両ではデザインや設計を全面的に見直し、社外のデザイナーを起用することになった。日本国外のデザイナーも考えたが[45]、﹁電車で1時間ちょっとでいける場所への1泊2日旅行を理解できるのは日本人しかいない﹂という理由により[45]、日本人デザイナーに依頼することになった[45]。さらに、﹁これまでにない車両を作る﹂という観点から、鉄道車両を手がけたことのないデザイナーが望ましいと考えられた[45]。 小田急では外部デザイナーへの依頼にあたって、﹁前面展望席を設置すること﹂﹁連接式を採用すること﹂﹁ときめきを与える車両﹂の3点を条件とした[46]。これに対し、﹁総合的なデザインをしたい﹂﹁沿線風景の中でどのような存在となるかを考え、技術面を含めてすべてデザインしたい﹂と回答した[46]のが、岡部憲明であった[47]。 小田急では、﹁車内の居住性については他のデザイナーより理解が深く、沿線の景観もデザインすることができる﹂と考え[47]、新型特急車両のデザインを岡部に依頼することにした。岡部にとっては鉄道車両のデザインは初めてである[14]が、岡部は建造物以外にもフィアットのコンセプトカーのデザインや、大型客船の設計など、交通機関のデザインの経験もあった[47][48]ため、これも小田急が岡部を起用する理由の後押しになったという[47]。岡部が新型特急車両に対して最初にイメージしたのは﹁全長が約150 mのオブジェ﹂であったという[49]。 新型特急車両の製造は日本車輌製造が行なうことになったが、小田急では日本車輌に対して﹁岡部の提案は可能な限り実現して欲しい﹂と依頼し[50]、岡部はロマンスカーに何度も乗車した上で、小田急と日本車輌に対してさまざまな提案や要求を行なった。例えば、それまでのNSE車・LSE車・HiSE車では11両連接車であった[51]が、岡部は﹁左右対称にした方が安定感が増す﹂という理由によって車両数を偶数にすることを提案した[52]。10両連接車の構想自体は既にNSE車開発時にもあり[51]、軸重制限の関係から11両連接車になったという経緯があった[51]が、後述するように車体の軽量化を図ることで実現することになった。過去に試験をしていた技術の採用
また、小田急では1960年代から1970年代にかけて、3回にわたって車体傾斜制御の試験を行なっていた。1961年にデユニ1000形の旧車体を活用して行なった﹁空気ばね式自然振り子車﹂は高位置空気ばね支持方式の連接台車を装備しており[53]、日本で初めての車体傾斜制御試験であったが、振り遅れの問題があった[53]。1962年にはデニ1101を使用して﹁油圧式強制振り子車﹂の試験が行なわれた[54]が、フェイルセーフの問題があった[55]。1970年にはクハ1658を使用して﹁空気ばね式強制振り子車﹂の試験が行なわれ[54]、車体傾斜による乗り心地向上効果は確認できた[56]ものの、当時の技術水準では曲線への進入を正確に検知することが困難であった[57]。このほか、1967年には廃車となった車両を利用して、操舵台車の試験も行なわれていた[54]。 当時は通勤輸送力の増強に注力しなければならなかったこともあり[58]、実用化は見送られていた[59]。しかし、技術的な問題については、その後の電子技術の発展等に伴い解決されていた[60]。このため、新型特急車両では、乗り心地と快適性の向上をねらって最新の技術を積極的に導入することとなり、1960年代に試験を行なっていた車体傾斜制御と操舵台車も採用することになった[18]。採用に向けた事前確認のため、2003年にはLSE車︵7002×11︶を使用し[61]、車体傾斜制御と高位置空気ばね台車、操舵台車・集電装置︵パンタグラフ︶の変位について、半年にわたって検証が行なわれた[62][63][64]。 こうして、2編成で35億円を投じた[65]、小田急の新たなフラッグシップモデルとして登場したのがVSE車である。車両概説
VSE車は10両連接の固定編成で、先頭車が制御電動車、中間車は電動車である。編成及び形式・車両番号については、巻末の編成表を参照のこと。検査時には5号車と6号車の間で分割を行なう[66]。車体
先頭車は車体長17,800 mm[67]・全長は18,200 mm[4]、中間車は車体長13,400 mm[68]・全長13,800 mm[4]で、車体幅は2,800 mmである[4]。 NSE車・LSE車・HiSE車は11両連接車であったが、左右対称のデザインとするために岡部は偶数両数にすることを要望した[52]。これを実現するためには、軸重の制約条件をクリアしつつ車体長を延長する必要があったため[17]、車体は全てアルミニウム合金製で[17]、展望室部分はシングルスキン構造とし[69]、それ以外の部分は台枠も含めてすべてダブルスキン構造とした[69]。3号車と8号車では屋根上に集電装置︵パンタグラフ︶や列車無線アンテナを装備している[70]が、それ以外の機器は全て床下に設けたため[70]、3号車と8号車以外では天井裏には空調装置のダクトと車内放送のスピーカーしかない[71]。 岡部は側面窓について、当初8,000 mmスパンの窓幅を要求した[72]。これは技術的に不可能であった[72]が、シミュレーションを行なった結果、窓枠の幅は4,000 mmまで拡大することができた[17]。それまでの小田急では前例のなかった広幅の窓とすることによって、連節車の構造上車端部に荷重がかかることになり[73]、設計が難しい部分であった[73]が、窓枠と扉部分については厚さ40 mmのアルミニウム合金製厚板から削りだすことによって[74][75]、必要な車体剛性を確保した[58]。こうした工夫によって、岡部の要望に応えて10両連接車とすることが可能になった[52]。なお、窓の高さは700 mm[19]としたが、3号車・8号車については窓高さを他の車両よりも高くして[76]、立ち客の視界を妨げないようにしている[76]ほか、岡部の発案によって天窓が設けられている[71]。内装
室内は、住空間のように落ち着いた雰囲気で[58]、リビングルームのような明るいくつろぎ感のある移動空間となることを図った[58]。客室
座席
展望席・サルーン
その他客室設備
主要機器
乗務員室
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/c8/OER_50000_inside_Ladder_2.jpg/180px-OER_50000_inside_Ladder_2.jpg)
電装品
主電動機については、各電動機の出力分担を低く抑えた上で[8]数を多くする[94]という手法とし、主電動機の回転数を低く抑えて機械音の低減を図った[8]。採用された主電動機は出力135 kWのかご形三相誘導電動機の[79]三菱電機製MB-5110-A形[4]で、回転時の冷却ファン騒音抑制を図る目的で冷却方式を全密閉自己通風式[97]とした低騒音型主電動機で[79]、小田急での全密閉式主電動機の採用は初めてである[22]。この主電動機は各電動台車に2台ずつ装架し[20]、編成全体では16台搭載となった[8]。歯数比は79 : 19 = 4.16に設定した[79]。将来の130 km/h運転の際に最高速度で走れる時間を長くする目的で、高速域の加速余力を持たせている[94]ほか、箱根登山鉄道線内で使用するノッチパターンも実装している[59]。 制御装置はセンサレスベクトル制御と新空転再粘着制御を適用した東芝[98]製のIGBT素子2レベルVVVFインバータ制御装置[68]であるSVF-073A0形を採用[4]、2・4・7・9号車に搭載した[20]。SE車からEXE車までの特急車両に引き続き東芝製の採用で、1台で4個の電動機の制御を行う方式︵1C4M︶である[20]。乗り心地向上を図ってジャーク制御を行なうようにした[20]。駆動装置はSE車からEXE車までの特急車両とは異なり、通勤車と同一のWNドライブが採用された[20]。 ブレーキについては、応荷重装置・電空演算機能付遅れ込め方式の電気指令式電磁直通制動とした[20]。ブレーキ圧力はTIOSを通じて各車軸ごとに要求されるブレーキ力に応じた制御が行なわれる方式で[79]、全ての車軸に滑走防止弁を装備した[20]。台車
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/41/Jacobs-bogie-of-Odakyu-EMU-Type50000.jpg/180px-Jacobs-bogie-of-Odakyu-EMU-Type50000.jpg)
車体傾斜制御
小田急では前述の通り数次にわたって車体傾斜制御の試験を行なっており、その有効性は確認できた[56]ものの、曲線進入検知や集電装置の変位、さらにフェイルセーフの問題があり[60]、これまで実用化はされていなかった[56]。しかし、これらの問題がその後の電子技術の発展等に伴い解決された[60]ことから、空気ばね式の車体傾斜制御がVSE車で採用されることになった[18]。2003年にはLSE車を使用して、最大3度の車体傾斜制御と高位置空気ばね台車、集電装置︵パンタグラフ︶の変位について検証が行なわれ[62][63]、その結果がVSE車の設計に反映された[77]。小田急では﹁高位置空気ばねによる車体傾斜制御と連接台車の組み合わせは世界初﹂としている[22]。 VSE車では全ての台車に車体傾斜制御用のアクチュエーターを装備し[18]、連接台車は最大2度[104]、先頭台車は最大1.8度の傾斜を行なう[104]。この機構によって、曲線走行時の遠心力を示す左右定常加速度は、従来の車両では0.08 GだったものがVSE車では0.046 Gにまで減少した[104]。 車体傾斜制御の地上位置検知は、車軸回転数から計算された走行距離を、軌道保守用に設置した地上設備より地上位置信号を受信してデータ・デポ装置によって補正する[105]もので、地上設備はクヤ31﹁テクノインスペクター﹂で使用しているシステムを採用した[105]。実際の車体傾斜については、曲線に進入した車両から順に傾斜制御される[104]が、1号車・2号車と9号車・10号車は同時に制御される[104]。空調装置
冷房装置については、3号車と8号車以外は23,000 kcal/hの冷凍能力を有するセパレート式冷房装置のCU231形を採用した[8]。室内機を出入台屋根上︵1号車と10号車は車掌室上︶に搭載し[16]、室外機は各車両の床下に設置し[8]、2,550 mmの天井高さを確保した[8]。室内機には出力7.5 kWの電気ヒーターを2台内蔵している[105]ほか、空調装置内に加湿装置も設けられ[105]、加湿用の水タンクが床下に設置された[16]。 編成両端の展望室には、4,500 kcal/hの冷凍能力を有するセパレート式冷房装置のCU232形を採用[105]、室内機を展望席に、室外機は先頭床下に設置した[105]。室内機には出力4.0 kWの電気ヒーターを1台内蔵している[105]。 3号車と8号車では、セミ集中式冷房装置として4,300 kcal/hの冷凍能力を有するCU195G形を各車両3台搭載した[105]。出力2.5 kWの電気ヒーターを2台内蔵している[105]。 換気装置は全車両に設置し、TIOSにより乗車率に応じた制御が行なわれるようにした[16]。また、3号車と8号車では喫煙コーナー専用の換気装置も設置した[105]。その他機器
展望室最前部と運転席の外側両脇には監視カメラを設け、運転室に設置した機器に表示させることで、運転視界の死角をカバーすることを図った[7]。展望室最前部のカメラ映像は、3号車と8号車のタッチパネル式表示装置の画面にも送信される[7]。なお、車内案内表示・タッチパネル式表示装置・カメラ映像は﹁TVOS﹂ ("Train Vision Odakyu System") により制御される[16]。 集電装置︵パンタグラフ︶は、車体傾斜に対応して摺り板の長さをそれまでの500 mmから750 mmに拡大した[79]PT7113-D形シングルアーム型パンタグラフを採用[7]、3号車と8号車の屋根上に2基搭載した[66]。補助電源装置は新変調方式により従来よりも高効率化が図られた、出力210 kVAのIGBT素子式の東芝[98]製静止形インバータ (IGBT-SIV) を5号車と6号車に搭載した[106]。電動空気圧縮機 (CP) については交流スクロール式のRC1500形を1号車・5号車・10号車に搭載した[106]。 警笛については、通常の空気笛と2代目3000・4000形同様の電子笛のほか、SE車からRSE車まで設けられていた補助警報音の音色をリニューアルしたミュージックホーンが採用された[107][注 1]。ミュージックホーンは3号車と8号車の屋根上に設置されたスピーカーからも流される[94]運用上の特徴
サービス
乗務員
VSE車専任の運転士と車掌は社内で実施される筆記試験と面接試験に合格した者が選抜され[109]、外部講師によりホスピタリティマインド教育を受けた上でVSE車に乗務する[109]。制服についてもVSE車専用のものが用意されており[31]、狭い運転室の中でも動きやすくするためベストを採用した[95]ほか、乗務員の頭上空間を確保するために[49]帽子の徽章を外すことで3 cmほどの余裕を確保した[96]。 車内のシートサービスを担当する﹁ロマンスカーアテンダント﹂にもVSE車専用の制服が用意され[110]、スカーフは季節に応じて5種類の色が用意された[110][注 4]。沿革
第1編成︵50001×10︶は2004年11月23日に小田急線に入線した[111]。このときは車体全体が保護シールで覆われた状態で甲種輸送され[112]、同年11月29日に大野工場で﹁お披露目式﹂が行われた[注 5]。関係者以外にVSE車の外観が公開されたのはこれが初である[113]。第1編成は同年12月24日から試運転を開始し[114]、定期運用では入線しない江ノ島線[115]や多摩線[116]でも試運転が行われた。2005年2月6日には第2編成︵50002×10︶が入線した[111]。 2005年3月19日より運用を開始し、平日5往復・土休日6往復の固定運用に投入された[117]。VSE車では﹁箱根観光特急﹂として明確な差別化を図るため[15]、車両運用は﹁はこね﹂﹁スーパーはこね﹂の箱根特急に特化したものとし[15]、原則として﹁さがみ﹂﹁えのしま﹂では使用されない[118]。 2006年9月10日にはブルーリボン賞受賞記念式典が実施された。 2007年1月1日には﹁ニューイヤーエクスプレス﹂に充当され、営業運転では初めて江ノ島線にも入線した[119]。2007年3月18日に特急ロマンスカーが車内全面禁煙となった事を受け、喫煙コーナーは使用停止となり[120]、その後はパンフレットスペースとして使用されている[66]。また、2008年3月には3号車に自動体外式除細動器 (AED) が設置された[106]。 2010年1月中旬より、LSE車とHiSE車は部品の一部に不具合が見つかったことを理由として[121]全面的に運用から離脱した。その最中の同年1月20日には本来LSE車・HiSE車で運行される﹁ホームウェイ75号﹂に使用され[122]、営業運転では初の多摩線入線となった。同年9月には第2編成が日本車輌でD-ATS-Pの設置改造を行い[9]、2011年1月には第1編成も同様の改造が行われた[10]。-
運用初日の出発式(2005年3月19日)
-
「スーパーはこね」運用時の種別表示
-
ブルーリボン賞受賞記念式典(2006年9月10日)
引退
2018年のGSE車の登場以降も、小田急電鉄ではVSE車を継続して使用するための補修・更新計画について検討していたが、以下のような問題点が浮上した。 ●アルミ合金押出形材によるダブルスキン構造の車体は溶接などの熱を加えての補修や修正が非常に困難で、修理に高度な技術や経験を要する[123]。 ●連接構造や車体傾斜制御などに特殊な構造を多く採用しており、経年劣化に伴う主要機器の更新が難しく、性能を維持できない[124]。 このような事情を鑑み、EXE車とは異なり更新工事を行わずに早期引退となることが決定し[125]、2022年3月11日をもって定期運行を終了した[126]。今後はイベント列車での使用を経て、2023年秋ごろには完全に引退する予定となっている。-
記念装飾(先端部)
-
記念装飾(車体側面)
-
記念装飾を掲出し走行するVSE車
編成表
- 凡例
- Mc … 制御電動車、M … 電動車、CONT … 制御装置、SIV … 補助電源装置、CP … 電動空気圧縮機、> < …集電装置
乗 … 乗務員室、展 … 展望席、個 … サルーン、喫 … カフェカウンター、煙 … 喫煙コーナー、WC … トイレ・化粧室
← 箱根湯本 新宿 → | ||||||||||||||||||||||||||||||
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
形式 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | デハ50000 | ||||||||||||||||||||
区分 | 50900 (M10c) |
50800 (M9) |
50700 (M8) |
50600 (M7) |
50500 (M6) |
50400 (M5) |
50300 (M4) |
50200 (M3) |
50100 (M2) |
50000 (M1c) | ||||||||||||||||||||
車両番号 | 50901 | 50801 | 50701 | 50601 | 50501 | 50401 | 50301 | 50201 | 50101 | 50001 | ||||||||||||||||||||
50902 | 50802 | 50702 | 50602 | 50502 | 50402 | 50302 | 50202 | 50102 | 50002 | |||||||||||||||||||||
搭載機器 | CP | CONT | > < |
CONT | SIV, CP | SIV | CONT | > < |
CONT | CP | ||||||||||||||||||||
台車形式 | ND-736T | ND-735 | ND-735 | ND-735 | ND-735 | ND-735T | ND-735 | ND-735 | ND-735 | ND-735 | ND-736T | |||||||||||||||||||
自重 | 29.7 t | 24.7 t | 25.7 t | 25.7 t | 24.5 t | 24.3 t | 25.5 t | 25.6 t | 24.6 t | 29.9 t | ||||||||||||||||||||
車内設備 | 乗、展 | 個、喫、煙、WC | 喫、煙、WC | 乗、展 | ||||||||||||||||||||||||||
定員 | 48 | 40 | 12 | 40 | 40 | 40 | 40 | 10 | 40 | 48 |
脚注
注釈
出典
{{cite con
ference}}
: |publisher=
で外部リンクを指定しないでください (説明); 不明な引数|coauthors=
が空白で指定されています。 (説明)
(98)^ ab東芝レビュー2005年3月号﹁2005年の技術成果﹂ (PDF)
(99)^ 青田孝﹃ゼロ戦から夢の超特急 小田急SE車世界新記録誕生秘話﹄ (2009) p.146
(100)^ ﹃鉄道ジャーナル﹄通巻464号 ﹁小田急ロマンスカーVSE 50000形特急車両﹂ (2005) pp.38-39
(101)^ 小山育男、諸河久﹃私鉄の車両2小田急﹄ (1985) p.124
(102)^ ab﹃鉄道のテクノロジー Vol.12―車両技術から鉄道を理解しよう﹄ ﹁VSEの車体傾斜システム﹂ (2011) p.38
(103)^ ﹃鉄道のテクノロジー Vol.12―車両技術から鉄道を理解しよう﹄ ﹁VSEの車体傾斜システム﹂ (2011) p.37
(104)^ abcde﹃鉄道のテクノロジー Vol.12―車両技術から鉄道を理解しよう﹄ ﹁VSEの車体傾斜システム﹂ (2011) p.35
(105)^ abcdefghij﹃鉄道ファン﹄通巻529号 小田急電鉄︵株︶運転車両部﹁小田急電鉄50000形﹁VSE﹂﹂ (2005) p.89
(106)^ abc﹃鉄道ピクトリアル﹄通巻829号 岸上明彦﹁小田急電鉄現有車両プロフィール﹂ (2010) p.285
(107)^ ab﹃鉄道ピクトリアル﹄通巻829号 中山嘉彦﹁小田急車両 -音と色-﹂ (2010) p.190
(108)^ ﹃鉄道ダイヤ情報﹄通巻277号 結解喜幸﹁小田急ロマンスカーのあゆみ﹂ (2007) p.8
(109)^ ab﹃鉄道ピクトリアル﹄通巻829号 近藤和弘、猪原亜紗﹁駅務、乗務区のあらまし﹂ (2010) p.36
(110)^ abcd青田孝﹃箱根の山に挑んだ鉄路 ﹁天下の険﹂を越えた技﹄ (2011) p.232
(111)^ ab生方良雄﹃小田急ロマンスカー総覧﹄ (2005) p.169
(112)^ 生方良雄﹃小田急ロマンスカー総覧﹄ (2005) p.121
(113)^ abc﹃鉄道画報﹄通巻1号 生方良雄、諸河久﹁小田急ロマンスカー物語﹂ (2005) p.24
(114)^ ﹃鉄道画報﹄通巻1号 生方良雄、諸河久﹁小田急ロマンスカー物語﹂ (2005) p.26
(115)^ 生方良雄﹃小田急ロマンスカー総覧﹄ (2005) p.24
(116)^ 生方良雄﹃小田急ロマンスカー総覧﹄ (2005) p.32
(117)^ ﹃鉄道ジャーナル﹄通巻464号 鶴通孝・山﨑友也﹁列車追跡シリーズ548 何度でも乗ってみたい特急ロマンスカー わくわくの85分﹂ (2005) p.26
(118)^ ﹃鉄道ダイヤ情報﹄通巻277号 結解喜幸﹁2007小田急ロマンスカーオールガイド﹂ (2007) p.13
(119)^ ﹃鉄道ピクトリアル﹄通巻829号 寺西知幸﹁沿線に住んで20年 江ノ島線の変化を振り返る﹂ (2010) p.163
(120)^ ﹃鉄道ピクトリアル﹄通巻829号 丹克暁、大路弘幸、亀井進﹁車両総説﹂ (2010) p.57
(121)^ ﹃鉄道ジャーナル﹄通巻522号 ﹁Railway Topics ﹃小田急LSE・HiSEが運用から外れる﹄﹂ (2010) p.147
(122)^ “小田急ロマンスカーの代走運用が拡大”. 交友社﹃鉄道ファン﹄railf.jp 鉄道ニュース (2010年1月21日). 2011年8月25日閲覧。
(123)^ “小田急ロマンスカーで一番映える車両﹁VSE﹂が引退を余儀なくされた理由”. NEWSポストセブン. (2021年12月19日) 2021年12月20日閲覧。
(124)^ 岸田法眼 (2021年12月29日). “小田急ロマンスカー50000形VSEよ、永遠に わずか19年で﹁引退﹂が決まった理由とは”. AERA dot. 2021年12月30日閲覧。
(125)^ 小佐野 景寿 (2021年12月21日). “小田急﹁白いロマンスカー﹂VSE、早すぎる引退理由”. 東洋経済オンライン 2021年12月21日閲覧。
(126)^ "2022年3月11日(金)、特急ロマンスカー・VSEの定期運行を終了" (PDF) (Press release). 小田急電鉄. 17 December 2021. 2021年12月17日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2021年12月17日閲覧。
参考文献
書籍
●青田孝﹃ゼロ戦から夢の超特急 小田急SE車世界新記録誕生秘話﹄交通新聞社︿交通新聞社新書008﹀、2009年。ISBN 978-4330105093。 ●青田孝﹃箱根の山に挑んだ鉄路 ﹁天下の険﹂を越えた技﹄交通新聞社︿交通新聞社新書032﹀、2011年。ISBN 978-4330231112。 ●生方良雄﹃小田急ロマンスカー総覧﹄大正出版、2005年。ISBN 978-4811706559。 ●生方良雄、諸河久﹁小田急ロマンスカー物語﹂﹃鉄道画報﹄第1号、誠文堂新光社、2005年5月、4-47頁、ISBN 4416805195。 ●生方良雄、諸河久﹃小田急ロマンスカー﹄JTBパブリッシング︿JTBキャンブックス﹀、2012年。ISBN 978-4533086175。 ●小山育男、諸河久﹃私鉄の車両2小田急﹄保育社、1985年。ISBN 4586532025。 ●PHP研究所編﹃小田急電鉄のひみつ﹄PHP研究所、2012年。ISBN 978-4569802442。 ●﹃2009 小田急時刻表﹄交通新聞社︿トラベルムック﹀、2009年。ISBN 978-4330053097。 ●﹁SPECIAL INTERVIEW 建築デザイナー 岡部憲明氏﹂﹃鉄道のテクノロジー Vol.12―車両技術から鉄道を理解しよう﹄三栄書房︿SAN-EI MOOK﹀、2011年10月、26-31頁。ISBN 978-4779613494。 ●﹁VSEの車体傾斜システム﹂﹃鉄道のテクノロジー Vol.12―車両技術から鉄道を理解しよう﹄三栄書房︿SAN-EI MOOK﹀、2011年10月、32-39頁。ISBN 978-4779613494。 ●﹁小田急の技術﹂﹃鉄道のテクノロジー Vol.12―車両技術から鉄道を理解しよう﹄三栄書房︿SAN-EI MOOK﹀、2011年10月、100-109頁。ISBN 978-4779613494。 ●﹃2012 小田急時刻表﹄交通新聞社︿トラベルムック﹀、2012年。ISBN 978-4330279121。雑誌記事
●生方良雄﹁小田急ロマンスカーの移り変わり﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第491号、電気車研究会、1988年2月、10-15頁。 ●小田急電鉄︵株︶運転車両部﹁小田急電鉄50000形﹁VSE﹂﹂﹃鉄道ファン﹄第529号、交友社、2005年5月、82-90頁。 ●小田急電鉄︵株︶車両部車両課﹁小田急ロマンスカーVSE 50000形特急車両﹂﹃鉄道ジャーナル﹄第464号、鉄道ジャーナル社、2005年6月、36-43頁。 ●岸上明彦﹁小田急電鉄現有車両プロフィール﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、241-295頁。 ●岸上明彦﹁小田急電鉄 車歴表﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、300-309頁。 ●岸上明彦﹁小田急電鉄 主要諸元表﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、310-318頁。 ●草門隆﹁車両総説﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第679号、電気車研究会、1999年12月、36-41頁。 ●國廣誠、曽根悟﹁小田急電鉄50000形"VSE"の技術﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第767号、電気車研究会、2005年10月、26-36頁。 ●結解喜幸﹁小田急ロマンスカーのあゆみ﹂﹃鉄道ダイヤ情報﹄第277号、交通新聞社、2007年5月、4-9頁。 ●結解喜幸﹁2007小田急ロマンスカーオールガイド﹂﹃鉄道ダイヤ情報﹄第277号、交通新聞社、2007年5月、10-25頁。 ●近藤和弘、猪原亜紗﹁駅務、乗務区のあらまし﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、34-37頁。 ●佐藤寛之﹁近年の箱根観光輸送﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、28-33頁。 ●杉田弘志﹁小田急電鉄 列車運転の変遷とその興味﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、204-219頁。 ●丹克暁、大路弘幸、亀井進﹁車両総説﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、49-58頁。 ●鶴通孝・山﨑友也﹁列車追跡シリーズ548 何度でも乗ってみたい特急ロマンスカー わくわくの85分﹂﹃鉄道ジャーナル﹄第464号、鉄道ジャーナル社、2005年6月、25-35頁。 ●寺西知幸﹁沿線に住んで20年 江ノ島線の変化を振り返る﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、158-164頁。 ●中山嘉彦﹁小田急車両 -音と色-﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、189-191頁。 ●﹁EXE 115DAYS﹂﹃鉄道ダイヤ情報﹄第145号、弘済出版社、1996年5月、14-32頁。 ●﹁開発担当者 EXEを語る﹂﹃鉄道ダイヤ情報﹄第145号、弘済出版社、1996年5月、42-48頁。 ●﹁Railway Topics﹃小田急 ダイヤ改正で多停車型特急<サポート>登場﹄﹂﹃鉄道ジャーナル﹄第396号、鉄道ジャーナル社、1999年10月、91-97頁。 ●﹁小田急座談 (Part1) 車両編﹂﹃鉄道ピクトリアル アーカイブスセレクション﹄第1号、電気車研究会、2002年9月、6-16頁。 ●﹁VSE&MSEの車内を見る﹂﹃鉄道ピクトリアル﹄第829号、電気車研究会、2010年1月、238-239頁。 ●﹁Railway Topics ﹃小田急LSE・HiSEが運用から外れる﹄﹂﹃鉄道ジャーナル﹄第522号、鉄道ジャーナル社、2010年4月、147頁。外部リンク
●ロマンスカーラインナップと座席の種類 > VSE︵50000形︶︵小田急電鉄・インターネットアーカイブ︶ ●小田急電鉄殿向け50000形 - 日本車輌製造 ●新型ロマンスカーの製造を決定﹁箱根の旅﹂をより楽しくより快適に 2005年3月デビュー︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2004年時点の版︶ ●﹁箱根の旅﹂をより楽しく快適に 2005年3月営業運転を開始﹁特急ロマンスカー・VSE﹂誕生︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2006年時点の版︶ ●﹁箱根の旅﹂をより楽しく快適に3月19日︵土︶から新型﹁小田急ロマンスカー﹂の営業運転を開始します︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2005年時点の版︶ ●新型﹁小田急ロマンスカー﹂試乗会を開催します 3月5日︵土︶合計300名様をご招待︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2005年時点の版︶ ●﹁小田急ロマンスカー・VSE﹂がグッド・デサイン賞 受賞記念として﹁Gマーク﹂を掲出して運転します (PDF) ︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2006年時点の版︶ ●小田急ロマンスカー・VSE運転開始1周年にあわせて3月19日︵日︶から小田急ロマンスカー・VSEの入線時・出発時に補助警報を鳴らします (PDF) ︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2006年時点の版︶ ●﹁小田急ロマンスカー・VSE﹂がブルーリボン賞を受賞 (PDF) ︵小田急電鉄ニューリリース・インターネットアーカイブ・2006年時点の版︶