狭軌
軌間の一覧 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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軌間の差異 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
軌間不連続点 · 三線軌条 · 改軌 · 台車交換 · 軌間可変 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地域別 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
概要[編集]
日本国内での呼び方[編集]
日本の場合、かつての日本国有鉄道︵国鉄︶の軌間は1,067 mmが標準であったためこれを﹁狭軌﹂と呼ぶことは少なく、新幹線やいくつかの私鉄で使用されている1,435 mm軌間︵標準軌︶の方を誤って﹁広軌﹂と呼ぶ人が多かったという[3][注 1]。国鉄の中で買収・国有化路線の中に存在した762 mm軌間の路線︵ナローゲージ︶については特殊狭軌線と呼称され、同じく日本の私鉄でも、三岐鉄道北勢線や四日市あすなろう鉄道などの現存する該当路線に対して、同様の呼び方をする。 なお、特殊狭軌線と軽便鉄道は混同されやすいが、特殊狭軌線は軌間が762 mmの線路を意味し、軽便鉄道法に従って敷設された鉄道という意味である。軽便鉄道法もまた軌間を762 mm以上と定めているため、軽便鉄道の大半は特殊狭軌線ではあるが、西大寺鉄道︵914 mm︶や新宮軽便鉄道︵1,435 mm︶などの例もあり、必ずしも一致するものではない。狭軌の特性と採用されやすい場所[編集]
意図的に狭い軌間を選択する鉄道は、元々機関車さえもない時代の人力や家畜動力のトロッコのような路線から生まれた。こうした鉄道で使用される車両はホイールベースや軌間が小さくても不安定ではなく、むしろ急カーブ︵障害物を避けられるのでトンネルなどの施設費用を抑えられる︶を曲がりやすくなって好都合であったため、機関車が開発されてからも鉱山鉄道や[4]、線路施設が簡易的なもので済むことから木材の伐採が終わったら線路を移動しなくてはならない森林鉄道に採用例が多い。 また、枕木および砂利などの道床にかかるコストも最低限軌間分の幅が必要となるため、標準軌であれば﹁1,435mm+レールの厚み﹂の枕木が必要となるところ、狭軌であればそれだけ短縮でき[注 2]、より低規格かつ低コストの路線を作ることが可能である。そのため第一次世界大戦時には、同盟国と連合国の双方とも前線︵en:front line︶での輸送用に狭軌の鉄道を盛んに建設した。第一次世界戦後︵en:Aftermath of World War I︶のヨーロッパでは、その資材を流用した狭軌鉄道が一時流行した。歴史[編集]
人力による運搬[編集]
蒸気機関車の導入[編集]
1802年にリチャード・トレビシックによってコールブルックデールカンパニーのため製造された世界初の蒸気機関車は、914mm軌間のプレートウェイを走行した。商業的に初めての蒸気機関車は、1812年に製造されたマシュー・マレーのサラマンカで、リーズにあるミドルトン鉄道︵軌間1245 mm︶で利用された。サラマンカは初めてのラック式鉄道の機関車でもあった。1820年代と1830年代、イギリスの多くの産業向けの狭軌鉄道が蒸気機関車を使用していた。1842年、イギリス国外で初めての狭軌の蒸気機関車がベルギーにあるアントワープ - ゲント鉄道[6]︵軌間1100 mm︶で製造された。旅客輸送用の狭軌鉄道で蒸気機関車が初めて使用されたのは1865年で、フェスティニオグ鉄道が、旅客輸送のために導入した[7]。工業のための狭軌の鉄道[編集]
多くの狭軌鉄道は工業企業の一部であり、一般輸送ではなく、主に専用鉄道として機能していた。これらの産業用狭軌鉄道の一般的な用途には、採掘、伐採、建設、トンネル掘削、採石、および農産物の運搬が含まれている。狭軌による広範囲のネットワークが世界の多くの地域で構築された。19世紀の森林伐採作業では、製材所から市場に丸太を輸送するために狭軌の鉄道がよく使われていた。キューバ、フィジー、ジャワ、フィリピン、オーストラリアクイーンズランド州では、現在も重要なサトウキビ鉄道が運行されており、トンネルの建設には狭軌の鉄道が一般的に使用されている。内燃機関車の導入[編集]
狭軌の機関車の動力に内燃機関を初めて使用したのは1902年であった。フランシス・クロード・ブレイクは、イギリスのロンドンリッチモンド・アポン・テムズ区モートレイクにあるリッチモンドメイン下水道委員会の下水プラント用に7馬力のガソリン機関車を製造した。この機関車の軌間は838 mmであり、3気筒ガソリンエンジンを搭載していた[8]。第一次世界大戦以降[編集]
第一次世界大戦では、広範な狭軌の鉄道システムが両陣の最前線の塹壕戦に貢献した[9][10]。それらは短期間の軍事用途であり、戦後、余剰設備はヨーロッパの狭軌鉄道の建設に小さなブームをもたらした。利点と欠点[編集]
利点[編集]
狭軌の鉄道は通常、小さい客車や機関車︵小さい車両限界︶、小さい橋やトンネル︵小さい建築限界︶、および、急曲線を使用しているため、建設費用が少なくなる[11]。狭軌は、技術的に大幅に節約できる可能性のある山岳地帯でよく使用されるほか、経済的に成り立つための潜在的な需要の低い人口の少ない地域でも使用される。これは不毛の大地のため人口密度が低く、標準軌の鉄道の運行が厳しいオーストラリアの一部と南部アフリカにほとんどの場合当てはまる。 伐採、鉱業、または大規模な建設プロジェクト︵特に、英仏海峡トンネルなどの限られたスペース︶のような短期間の使用後に撤去される仮設鉄道の場合、狭軌の鉄道は大幅にコストが安く容易に設置・撤去することができる。しかし、そのような鉄道は、現代のトラックの性能の向上によりほとんど姿を消した。 多くの国では、建設コストが低いため、狭軌の鉄道が支線として建設され、標準軌の鉄道に乗り換えてきた。多くの場合、狭軌か標準軌かの鉄道の選択ではなく、狭軌の鉄道か敷設しないかの間で選択であった。欠点とその改良[編集]
互換性[編集]
狭軌の鉄道は、鉄道車両︵客車など︶を標準軌または広軌の鉄道にそのまま乗り入れることはできない。また、旅客と貨物の移動には、旅客の乗り換えや、貨物の積み替えが必要となる[12]。石炭、鉱石、砂利などの一部のバルク商品は機械的に積み替えることができるが、この方法だと時間がかかり、積み替えに必要な設備の維持に手間がかかる。 鉄道網内に異なる軌間がある場合、ピーク需要時に異なる軌間の区域を超えて車両を移動させることができないので、必要な場所に車両を移動することは困難となる。狭軌の鉄道のピーク需要を満たすために十分な車両が利用可能である必要があり、需要が少ない期間には余剰設備となりキャッシュフローを生成しない。狭軌が鉄道網のごく一部を形成している地域では︵かつてのロシアのサハリン地方の鉄道のように︶、狭軌の設備の設計、製造、または輸入には追加の費用が必要となる。 互換性の問題に対する解決策には、輪軸あるいは台車の交換、ロールボック、軌間可変、デュアルゲージ、または改軌がある。高速化の困難さ[編集]
歴史的に、多くの狭軌の鉄道は、安くて早く建設することを優先するために低水準で建設された。その結果、多くの狭軌鉄道は、重量化または高速化の制約を受けることがよくある。例として、急カーブが使われるため、最大許容速度が制限される。日本では、田沢湖線、奥羽本線の一部の在来線︵軌間1067 mm︶を標準軌のミニ新幹線に改軌し、標準軌の新幹線が直通するようにした。ただし、路線の形状により、最大速度は元の狭軌の路線と同じである。日本の提案するスーパー特急のように、狭軌の線路が高水準に建設されている場合、この問題を最小限に抑えることができる。 狭軌の線路が潜在的な成長を考慮して︵または標準軌と同じ基準で︶設計されている場合、将来の成長に対する障害は他の軌間と同様になる。低水準で建設された路線の場合、線路を再調整してカーブを緩やかにし、踏切の数を減らし、車体傾斜式車両を導入することで、速度を上げることができる。高水準化した狭軌の鉄道[編集]
最速の列車[編集]
狭軌では安定性が低下することは、その列車が広軌と同じくらいの速度で走ることができないことを意味する。たとえば、標準軌の線路のカーブが時速145 kmまで走行できる場合、狭軌の同じカーブは時速130 kmまでの速度しか走行できない[13]。 ただし、19世紀半ば︵1865年︶の時点でもノルウェーの1067㎜軌間で最高時速56㎞ほど︵標準軌のイギリスでも当時のローカル線はこの程度︶の走行が可能であると分かっており[14]、さらに狭軌でも20世紀前半では朝鮮鉄道の黄海線︵762㎜軌間︶で1935年から最高時速70kmの列車を走らせている[15] など、蒸気機関車時代でもこれより広軌のローカル路線と比べてもそこまで変わらないケースもあった。 日本とオーストラリアのクイーンズランド州では、最近の路線改良により、軌間1067mmの線路で、時速160 kmを超えることができた。クイーンズランド鉄道の車体傾斜式電車は、オーストラリアで最速の電車であり、世界最速の1067 mm軌間の列車で、時速210 kmの記録を樹立した[16]。1067 mm軌間の線路での速度記録は、1978年に南アフリカ共和国で記録された時速245 kmである[17][18][19]。 設計速度が時速137 kmの610 mm軌間の鉄道車両が、オタヴィ鉱山鉄道会社のために製造された[20]。狭軌の主な軌間と採用国の傾向[編集]
主な軌間[編集]
●381mm︵15インチ︶ ●508mm︵20インチ︶ ●597mm ●600mm ●610mm︵24インチ=2フィート︶ ●750mm ●762mm︵30インチ=2フィート6インチ︶﹁ニブロク﹂・﹁特殊狭軌﹂ ●800mm ●914mm︵3フィート︶ ●1000mm﹁メーターゲージ﹂ ●1050mm ●1067mm︵3フィート6インチ︶﹁三六軌間﹂・﹁サブロク﹂ ●1372mm︵4フィート6インチ︶﹁馬車軌間﹂ このうち幹線鉄道に用いられるのは914mm以上のもので、英語では﹁medium gauge ミディアム・ゲージ﹂とも呼ばれる。採用国の傾向[編集]
イギリスから鉄道技術を導入した国々︵日本も含む︶では1067mmが主に用いられ、フランスなどのヨーロッパ大陸諸国の影響下の国では1000mmが、アメリカ合衆国の影響下にあった国では914mmが用いられる傾向にある。 なお、営業用として運行される鉄道で最も狭いゲージは381mm︵15インチ︶で、イギリスのロムニー・ハイス&ディムチャーチ鉄道が有名である。日本の静岡県伊豆市修善寺にある虹の郷には、この鉄道と同規格の車両による園内路線が敷設・運行されている。914mm(3フィート)[編集]
914 mm(3フィート)はアメリカ大陸でよく見られる軌間で、「American Narrow アメリカンナロー」とも呼ばれる。
日本では、北陸地方や九州地方などで見られた。後に両備バスとなった岡山県の西大寺鉄道が廃止されて以来、普通鉄道・軌道としては日本に存在しないが、青森県の青函トンネル記念館にあるケーブルカーの青函トンネル竜飛斜坑線で営業用として使用されている。東京ディズニーランドにかつて存在した路面電車のアトラクションである「ジョリートロリー」やかつて存在したテーマパーク「ウェスタン村」の村内鉄道アトラクション「ウェスタン村鉄道」でも使用されていた。
1067mm(3フィート6インチ・「三六軌間」)[編集]
イギリス帝国の植民地で広く用いられたことから「British imperial gauge(イギリス帝国軌間)」という呼称も存在した。特にケープ植民地(後の南アフリカ)で用いられたことから「Cape gauge」と呼ばれるほか、この軌間を最初に用いたノルウェー人カール・アブラハム・ピルのイニシャルにちなんで「CAP gauge」あるいは「Kapspur」(ドイツ語:CがKに書き換えられている)とも呼ばれる。
後述するように、日本で多く用いられている軌間はこの1067mm、3フィート6インチである。日本国内では「三六軌間」と呼ばれている(「三六」は3フィート6インチから)。→#日本の三六軌間
世界で1067mm、3フィート6インチを用いた国々・地域[編集]
1067mmの軌間を採用したことのある国・地域、現在もしている国・地域の例は以下の通り。
- アフリカ
- オセアニア
- 南アメリカ
- 北アメリカ
- アメリカ合衆国
- カナダ
- ニューファンドランド島内のカナディアン・ナショナル鉄道(1988年廃止)
- アジア
なおノルウェーやスウェーデンでは19世紀に1067mm軌間の鉄道網が作られたが、後に1435mmへ改軌された。
1372mm(4フィート6インチ・「馬車軌間」)[編集]
1,372 mm(4フィート6インチ)軌間は、かつてスコットランドの一部で採用されていた[注 3] ため、英語ではスコッチ・ゲージ(Scotch gauge)と呼ばれる。
日本では東京とその周辺で一時広く採用されたのに対し、日本国内のみならず世界的に見ても、東京(とその周辺)以外での使用例がきわめて少ないことから、これを東京ゲージと呼ぶ鉄道史家もいる[21][22]。
日本国内ではその出自から「馬車軌間」とも呼ばれ、標準軌・旧国鉄採用軌間とも違うことや日本で使用された線区の特殊性から、日本では「偏軌」・「変則軌道」とも言われる。 →#日本国内の1372mm
欧州の狭軌[編集]
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日本の狭軌[編集]
日本の三六軌間[編集]
- JRグループ/日本国有鉄道および旧国鉄・JR路線を転換した第三セクター鉄道(新幹線・博多南線・上越線越後湯沢駅 - ガーラ湯沢駅間および新在直通区間を除く)
- 東京地下鉄(銀座線、丸ノ内線を除く)
- 札幌市交通局(札幌市電一条線、山鼻西線、山鼻線、都心線)
- 仙台市交通局(南北線)
- 関東鉄道
- 京王電鉄(井の頭線)
- 東急電鉄(世田谷線を除く)
- 小田急電鉄
- 江ノ島電鉄
- 小田急箱根(小田原駅 - 箱根湯本駅間)
- 西武鉄道
- 東武鉄道
- 秩父鉄道
- 相模鉄道
- 東京都交通局(都営三田線)
- 東京臨海高速鉄道(りんかい線)
- 首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス線)
- 名古屋鉄道
- 名古屋市交通局(鶴舞線、桜通線、上飯田線)
- 名古屋臨海高速鉄道(あおなみ線)
- 京阪電気鉄道(鋼索線)
- 南海電気鉄道
- 泉北高速鉄道
- 近畿日本鉄道(南大阪線系統、生駒鋼索線)
- 伊賀鉄道
- 養老鉄道
- 西日本鉄道(貝塚線)
- 豊橋鉄道
- 静岡鉄道
- 富士山麓電気鉄道
- 伊豆急行
- 伊豆箱根鉄道
- 遠州鉄道
- 大井川鐵道
- 三岐鉄道(三岐線)
- 上信電鉄
- 上毛電鉄
- 上田電鉄
- 長野電鉄
- えちぜん鉄道
- 福井鉄道
- 北陸鉄道
- 富山地方鉄道
- 弘南鉄道
- 津軽鉄道
- 水間鉄道
- 神戸電鉄
- 福岡市交通局(七隈線を除く)
- 鋼索線(小田急箱根鋼索線、十国峠十国鋼索線、鞍馬山鋼索鉄道、能勢電鉄妙見の森ケーブルを除く)
- 岡山電気軌道
- 一畑電車
- 伊予鉄道
- 土佐電気鉄道
- 島原鉄道
- 熊本電気鉄道
- 近江鉄道
- 宇都宮ライトライン(宇都宮芳賀ライトレール線)
日本国内の1372mm[編集]
日本の特殊狭軌線[編集]
日本における狭軌の保存鉄道[編集]
- 千葉県成田市にある成田ゆめ牧場において、狭軌鉄道 (610mm) の保存が行われている。
- 762mm軌間のものは石川県小松市に尾小屋鉄道の動態保存があるほか、森林鉄道など全国で数か所の動態保存がある。詳細は軽便鉄道を参照。