富士山-信仰の対象と芸術の源泉
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英名 | Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration | ||
仏名 | Fujisan, lieu sacré et source d'inspiration artistique | ||
面積 |
20,702 ha (緩衝地域 49,628 ha) | ||
登録区分 | 文化遺産 | ||
登録基準 | (3), (6) | ||
登録年 | 2013年 | ||
公式サイト | 世界遺産センター(英語) | ||
地図 | |||
使用方法・表示 |
信仰の対象[編集]
芸術の源泉[編集]
葛飾北斎作『凱風快晴』(左)と『神奈川沖波裏』(右) |
世界遺産登録の経緯[編集]
登録運動の始まり[編集]
1990年代初めから、富士山をユネスコの世界遺産に登録しようという運動が活発になった。民間レベルでは富士山の世界遺産登録を目指す動きがあったが、政府も含む動向の契機としては1995年︵平成7年︶5月19日の﹁富士山の世界遺産リストへの登録に関する請願﹂の閣議決定が挙げられる[5]。 当初は世界遺産のうち、自然遺産への登録が検討されていたが、1995年︵平成7年︶9月15日 - 18日に開催された﹁自然遺産富士山国際フォーラム﹂において、火山としての平凡性や固有種生態系の無さなどを国際自然保護連合︵IUCN︶から指摘され[6][要文献特定詳細情報]、結果として地元調整もつかず、環境管理︵特にゴミ問題の解決︶が困難なため、政府は推薦を見送った[7][注釈 4]。 2001年︵平成13年︶にはユネスコ世界遺産センターと日本政府の共催で﹁信仰の山の文化的景観に関する専門家会議﹂が開催され、富士山の将来的な世界遺産登録の可能性について言及されるなどしている。また2005年︵平成17年︶7月には山梨県・静岡県が連名にて﹁富士山の世界文化遺産登録についての要望書﹂を文部科学省・文化庁に提出するなど、この時点で文化遺産としての登録を目指す方向で調整されている[5]。推薦書提出にかけて[編集]
2005年︵平成17年︶12月には山梨県・静岡県の18市町村[注釈 5]で構成される﹁富士山世界文化遺産登録推進両県合同会議﹂が発足した[5]。構成資産の選定はこの18市町村からなり、構成資産は当初66件︵両県共通4件・山梨県側37件・静岡県側25件︶が選定された[8][9]。合同会議を構成する18市町村のうち、この時点で富士市と沼津市は構成資産︵両県共通を除く︶を有していなかった。 その後64ヶ所︵両県共通3件・山梨県側36件・静岡県側25件の合計64件︶に絞られ[10]、2006年︵平成18年︶には山梨県・静岡県両知事が文化庁長官に﹁暫定リスト提案書﹂を提出した[11]。この暫定リスト提案書の時点で、構成資産は42件まで絞られている[5]。2007年︵平成19年︶にはユネスコ世界遺産センターにおいて富士山が暫定一覧表に記載された。2009年︵平成21年︶にはイコモス・文化的景観国際学術委員会が日本で開催され、イコモスの委員より富士山の世界遺産一覧表への助言等を受けた[5]。 2011年︵平成23年︶7月には山梨・静岡両県が﹁推薦書原案﹂を文化庁へ提出した。同年9月には日本政府がユネスコ世界遺産センターに﹁推薦書暫定版﹂を提出した。この推薦書暫定版では構成資産は25件であった。平成24年に日本政府はユネスコ世界遺産センターに﹁推薦書﹂︵暫定版でない︶を提出、構成資産は25件であった[5][12]。五合目以下の大半が森林で、特に静岡県側では国有林の特定地理等保護林︵富士山緑の回廊︶であることから、文化遺産候補ながら環境省と林野庁も参画する共同推薦となった。山梨県における同意問題[編集]
2010年︵平成22年︶7月2日に開かれた学術委員会において、富士山の世界遺産登録のための推薦書原案が承認され、富士山の普遍的価値は﹁信仰﹂﹁芸術﹂﹁景観﹂の3つを評価基準とすることとした[13]。 しかし、千円紙幣に題材とされている本栖湖は、国際記念物遺跡会議︵イコモス︶の求める﹁国際的評価のある展望線﹂の条件を満たす可能性が最も高いということから、構成資産に含む方向性となり[注釈 6]、本栖湖の文化財登録の必要性が出てきた[14]。その後本栖湖のみを構成資産候補とする試案が成立したが、﹁なぜ1湖だけ世界遺産になるのか﹂などの一部の反発により[15]、山梨県は富士五湖全体での登録を目指すこととなった。 そのためには、業者などの地権者の同意が必要であり、規制強化を懸念する業者などからの同意が得られないことから、同意書の手続きがなかなか進まなかった。また一部で違法営業しているボート業者なども存在し、事態が複雑化することとなった[16]。背景として、貸しボート業者らに対する湖岸の占用許可は、1965年︵昭和40年︶の改正河川法施行以来、一度も見直されていないために、業者が無許可で桟橋を拡張し、それを所管する山梨県が黙認してきたという経緯がある[17]。 この問題に山梨県知事なども介入することとなり、﹁桟橋などの違法個所も、直ちに強権的に撤去はしない﹂などと説明を繰り返し、なんとか妥協案を探ることとなった[18]。また﹁富士五湖文化財指定に向けた同意のお願い﹂という横内正明知事署名入りの文書を送り、﹁違法状態を黙認することはできないが、長年湖で生業を営まれてきた実情を勘案して、直ちに強制的な撤去はしない﹂などと記し、同意書獲得の拡大に務めた[19]。 しかしそれでも多くで同意が得られずに、文化庁への提出を目指していた推薦書原案の提出を見送ることを決めた[20]。推薦書原案の提出は年1回に限られるために次回の提出は2011年7月末となった[21]。2011年に入ると、富士五湖の文化財指定に同意した権利者が約97%に達した[22]。2011年7月には上述のように推薦書原案を文化庁長官に提出した[23]。イコモス勧告から正式登録まで[編集]
2012年︵平成24年︶の日本政府によるユネスコ世界遺産センターへの推薦書提出からイコモスの現地調査を経て、2013年︵平成25年︶4月30日にはイコモス勧告が出された[5]。イコモス勧告の内容は、同年6月にカンボジアで開かれる世界遺産委員会で富士山を文化遺産として登録するよう勧告するというものであった。また、名称を﹁富士山﹂から﹁富士山と信仰・芸術の関連遺産群﹂へと変更した。ただし、構成資産のうち三保松原を除いた上で登録すべきという条件付の勧告であった[24][25][26][27]。 2012年︵平成24年︶12月に、三保松原を除外するよう事前要請された時点では、日本国政府は欠かせない要素として除外を拒否したが[28]、正式な勧告でも、富士山から45 km 離れていて、山としての完全性を証明することに寄与していないという理由で、除外すべきと勧告された[29]。これを受けて日本政府は事実誤認の訂正表を作成し、2013年︵平成25年︶5月にはイコモスへ送付した[5]。 2013年6月16日よりカンボジアのプノンペンで第37回世界遺産委員会が開催され、6月22日に富士山は世界文化遺産に登録された。なお、国際記念物遺跡会議が除外すべきとしていた三保松原も含まれることとなり、世界遺産としての正式な登録名は﹁富士山-信仰の対象と芸術の源泉﹂︵英: Fujisan, sacred place and source of artistic inspiration / 仏: Fujisan, lieu sacré et source d'inspiration artistique︶となった。登録後の課題[編集]
登山者数抑制案や噴火時の危機管理対策などを、2016年の第40回世界遺産委員会での保全状況︵SOC︶審議において確認する条件が付された上での登録となった[30]。 世界遺産委員会開催前から世界遺産センターとイコモスによって提出された保全状況報告書の精査が進められており、三保松原における巡礼路の特定[31]や構成資産外の巡礼路︵当初構成資産候補であった鎌倉往還や江戸時代の富士講がたどった道︶の特定まで求めるなど[32]、追加要請が出されている。構成資産[編集]
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富士山域[編集]
富士山域 (Fujisan Mountain Area, 1418-001) の登録面積は19311.9 haである。これには、 ●山頂の信仰遺跡群 - 富士山本宮浅間大社奥宮、久須志神社、金明水、銀明水、内院、安河原、八神峰︵お鉢巡り︶、鳥居︵9箇所︶、山頂の石仏群・石碑群など ●大宮・村山口登山道︵現富士宮口登山道︶ - 六合目︵標高約2,490m︶から頂上の間 ●須山口登山道︵現御殿場口登山道︶ - 旧二合八勺︵標高約2,050m︶から頂上の間および、須山御胎内周辺︵標高約1,435〜1,690m︶ ●須走口登山道 - 五合目︵標高約2,000m︶から頂上の間 ●吉田口登山道 - 北口本宮冨士浅間神社から頂上の間 ●北口本宮冨士浅間神社 ●西湖 ●精進湖 ●本栖湖 ●青木ヶ原樹海 が含まれる[33]。所在地は山梨県富士吉田市、身延町、鳴沢村、富士河口湖町、静岡県富士宮市、富士市、裾野市、御殿場市、小山町にまたがり、県境未確定地を含む。静岡県域[編集]
富士宮市域[編集]
富士山本宮浅間大社富士山本宮浅間大社 (Fujisan Hongu Sengen Taisha Shrine, 1418-002) の登録面積は4.8 ha である。
山宮浅間神社
山宮浅間神社 (Yamamiya Sengen-jinja Shrine, 1418-003) の登録面積は 0.5 ha である。
村山浅間神社
村山浅間神社 (Murayama Sengen-jinja Shrine, 1418-004) の登録面積は 3.6 ha である。
人穴富士講遺跡
人穴富士講遺跡 (Hitoana Fuji-ko Iseki, 1418-023) の登録面積は2.8 ha である。
白糸ノ滝
白糸ノ滝 (Shiraito no Taki waterfalls, 1418-024) の登録面積は 1.8 ha である。
裾野市域[編集]
須山浅間神社
須山浅間神社 (Suyama Sengen-jinja Shrine, 1418-005) の登録面積は 0.9 ha である。
駿東郡小山町域[編集]
冨士浅間神社(須走浅間神社)
冨士浅間神社(須走浅間神社)(Fuji Sengen-jinja Shrine (Subashiri Sengen-jinja Shrine), 1418-006) の登録面積は 1.8 ha である。
静岡市清水区域[編集]
三保松原
三保松原 (Mihonomatsubara pine tree grove, 1418-025) の登録面積は 64.4 ha である。前述のようにICOMOSの勧告では除外が相当とされていたが、世界遺産委員会の場では、多くの委員国の賛同を得て登録が認められた。
山梨県域[編集]
南都留郡富士河口湖町域[編集]
河口浅間神社
河口浅間神社 (Kawaguchi Asama-jinja Shrine, 1418-007) の登録面積は 1.6 ha である。
冨士御室浅間神社
冨士御室浅間神社 (Fuji Omuro Segen-jinja Shrine, 1418-008) の登録面積は 2.6 ha である。
河口湖
河口湖 (Lake Kawaguchiko, 1418-012) の登録面積は 592.8 ha である。
船津胎内樹型
船津胎内樹型 (Funatsu lava tree molds, 1418-021) の登録面積は 8.2 ha である。所在地は山梨県南都留郡富士河口湖町
富士吉田市域[編集]
御師住宅(旧外川家住宅)
御師住宅(旧外川家住宅)(“Oshi” Lodging House (Former House of the Togawa Family), 1418-009) の登録面積を世界遺産センターは明記していない。所在地は山梨県富士吉田市。
御師住宅(小佐野家住宅)
御師住宅(小佐野家住宅)(“Oshi” Lodging House (House of the Osano Family), 1418-010) の登録面積は 0.1 ha である。所在地は山梨県富士吉田市。
吉田胎内樹型
吉田胎内樹型 (Yoshida lava tree molds, 1418-022) の登録面積は 5.8 ha である。所在地は山梨県富士吉田市
山中湖村域[編集]
山中湖
山中湖 (Lake Yamanakako, 1418-011) の登録面積は698.1 ha である。所在地は山梨県南都留郡山中湖村。
忍野村域[編集]
忍野八海
分布図[編集]
太字は登録対象﹁富士山域﹂に含まれる物件。登録基準[編集]
ガイダンス施設[編集]
公式なガイダンス施設として2016年(平成28年)6月22日に山梨県富士河口湖町に山梨県立富士山世界遺産センターが、2017年(平成29年)12月23日に静岡県富士宮市に静岡県富士山世界遺産センターが開館した。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
参考文献[編集]
地図外部リンク | |
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全構成資産の地図 - Googleマップ | |
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- Japan(日本国政府・文化庁) (2012), Nomination of Fujisan for inscription on the World Heritage List (PDF)