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'''原子力発電''' (げんしりょくはつでん) とは、[[原子力]]を利用した[[発電]]のこと。現代の多くの原子力発電は、[[原子核分裂]]時に発生する熱エネルギーで高圧の[[水蒸気]]をつくり、[[蒸気タービン]]及びこれと同軸接続された[[発電機]]を回転させて発電する。ここでは主に軍事用以外の[[商業]]用の原子力発電の全般について説明する。
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'''原子力発電''' (げんしりょくはつでん) とは、[[原子力]]を利用した[[発電]]のこと。現代の多くの原子力発電は、[[原子核分裂]]時に発生する熱エネルギーで高圧の[[水蒸気]]をつくり、[[蒸気タービン]]及びこれと同軸接続された[[発電機]]を回転させて発電する。ここでは主に軍事用以外の[[商業]]用の原子力発電の全般について説明する。
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* 原子力 |
* 原子力・核エネルギーの利用全般については'''[[原子力]]'''を参照 |
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* 特に原子力発電の[[施設]]については'''[[原子力発電所]]'''も参照 |
* 特に原子力発電の[[施設]]については'''[[原子力発電所]]'''も参照 |
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* 原子力を利用した[[炉]]については'''[[原子炉]]''' |
* 原子力を利用した[[炉]]については'''[[原子炉]]'''、'''[[核分裂炉]]'''、'''[[核融合炉]]'''も参照 |
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* 原子力 |
* 原子力を利用した[[電池]]については'''[[原子力電池]]'''を参照 |
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* 原子力 |
* 原子力発電の[[事故]]については'''[[原子力事故]]'''も参照 |
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* 需給に合わせた細かい出力の調整ができない。<ref>[http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-01-02 世界の出力調整運転(試験)の現状 (02-08-01-02)]</ref> |
* 需給に合わせた細かい出力の調整ができない。<ref>[http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-01-02 世界の出力調整運転(試験)の現状 (02-08-01-02)]</ref> |
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== 諸試算、コスト比較 == |
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=== 原子力発電とその他の発電コスト試算 === |
=== 原子力発電とその他の発電コスト試算 === |
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{{現在進行|section=1|date=2011年7月}} |
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==== 政府内閣府による試算 ==== |
==== 政府内閣府による試算 ==== |
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2011年11月8日に内閣府の原子力安全委員会では、深刻な原発事故は1基あたり500年間稼働すると1回発生して5兆円の損害賠償が必要になると仮定し、従来コストに1.6円積み増して原発コストが最大7.6円 |
2011年11月8日に内閣府の原子力安全委員会では、深刻な原発事故は1基あたり500年間稼働すると1回発生するとして5兆円の損害賠償が必要になると仮定し、従来コストに1.6円積み増して原発コストが最大7.6円/kwhと試算する中間報告を出した<ref>[http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111108/dst11110812360009-n1.htm MSN産経ニュース 原発事故コスト試算案 最大1.6円に上方修正] - 2012年4月3日閲覧</ref>。 |
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さらに2011年12月13日、内閣府国家戦略室のコスト検証委員会 |
さらに2011年12月13日、内閣府国家戦略室のコスト検証委員会が発表した各発電コスト発電コスト (円/kwh) の2010年現時点価格と2030年予測は下記の通り<ref>[http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20111213/siryo1.pdf 国家戦略室 コスト等検証委員会報告書案 P63] - 2011年12月13日閲覧</ref>。これによると、既に2010年段階で、原子力と石炭・LNG火力発電コストは約10円/kwhでほぼ等しく、石油火力発電コストと太陽光発電コストは、いずれも約37円/kwhで同等の発電コストになっている。原子力は最低8.9円となっておりリスクモデルに何を取るかによりさらに高価になる、また事故の総費用が正確にわからない現状を反映しているので流動的である。 |
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報告書案の63ページ-2011年12月13日</ref> は下記の通り。 |
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これによると、すでに2010年段階で、原子力と石炭・LNG火力発電コストは約10円/kwhでほぼ等しい。石油火力発電コストと太陽光発電コストは、いずれも約37円/kwhで同等の発電コストになっている。原子力は最低8.9円となっておりリスクモデルに何を取るかによりもっと高価になる、また事故の総費用が正確にわからない現状を反映しているので流動的である。 |
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{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small" |
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-------2004年----2010年----2030年 |
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! |発電方法 !! 2004年 !! 2010年 !! 2030年 |
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原子力 |
|原子力発電 || 5.9 || 最低8.9 || 最低8.9 |
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石炭火力---5.7-----9.5-----10.8 |
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|石炭火力発電 || 5.7 || 9.5 || 10.8 |
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LNG火力---6.2-----10.7-----10.9 |
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|LNG火力発電 || 6.2 || 10.7 || 10.9 |
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石油火力 --16.5-----38.9-----36.0 |
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|石油火力発電 || 16.5 || 38.9 || 36.0 |
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|- |
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陸上風力---?-----9.9-17.3---8.8-17.3 |
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|陸上風力発電 || 不明 || 9.9 - 17.3 || 8.8 - 17.3 |
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|- |
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洋上風力---?-----9.4-23.1---8.6-23.1 |
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|洋上風力発電 || 不明 || 9.4 - 23.1 || 8.6 - 23.1 |
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|- |
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地熱-----?-----8.3-10.4---8.3-10.4 |
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|地熱発電 || 不明 || 8.3 - 10.4 || 8.3 - 10.4 |
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|- |
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太陽光----?-----33.4-38.3--9.9-20.0 |
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|太陽光発電 || 不明 || 33.4 - 38.3 || 9.9 - 20.0 |
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|- |
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ガスコジェネ |
|ガスコジェネ || 不明 || 10.6 - 19.7 || 11.5 - 20.1 |
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|} |
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︵注︶ちなみに、2006年における日本のエネルギー別の発電電力量割合<ref>[http://www.kepco.co.jp/knic/post/anser/q1.html 日本の発電電力量比率2006年</ref>は、原子力発電 30.6%、火力発電59.9%︵原油石油 9.2%、石炭 24.7%、LNG 26.0%︶、水力発電 9.1%、新エネルギー 0.6%︵太陽光、風力、ゴミ発電︶ 、地熱 0.3% であった。
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尚、2008年における日本のエネルギー別の発電電力量割合は、原子力 26.0%、石油火力 10.3%、石炭火力 25.2%、LNG火力 28.3%、水力 7.8%、その他2.4%であった<ref>[http://www.kepco.co.jp/knic/post/anser/q1.html 関西電力 原子力発電の占める割合2008年] - 2012年4月3日閲覧</ref>。
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なお、日経新聞<ref>[http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819696E3E5E2E7EA8DE3EAE3E0E0E2E3E39F9FEAE2E2E2 2011年12月19日の日経新聞</ref>報道によると、2011年9月期には原発事故により原子力発電割合が急減しており、代わりに火力発電に用いる原油石油輸入量は前年同期比較で5割、LNG輸入量は2割増加している。
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==== 米国エネルギー省エネルギー情報局による試算 ==== |
==== 米国エネルギー省エネルギー情報局による試算 ==== |
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[[2010年]]に[[米国エネルギー省]][[:en:Wikipedia:Energy Information Administration||エネルギー情報局]](DOE/EIA) が公表した[[2016年]]にアメリカで運用を開始する新規発電所の百万[[kWh]]あたりの発電コストは以下の通り。1ドル=90円としてkwhあたりコストも表示 |
[[2010年]]に[[米国エネルギー省]][[:en:Wikipedia:Energy Information Administration||エネルギー情報局]](DOE/EIA) が公表した[[2016年]]にアメリカで運用を開始する新規発電所の百万[[kWh]]あたりの発電コストは以下の通り。1ドル=90円としてkwhあたりコストも表示<ref>[http://www.eia.doe.gov/oiaf/aeo/electricity_generation.html Levelized Cost of New Generation Resources in the Annual Energy Outlook 2011] - 2011年5月19日閲覧</ref>。 |
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{| class="wikitable" style="text-align:left; font-size:small" |
{| class="wikitable" style="text-align:left; font-size:small" |
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|quote=電源別費用 (単価) の実績 (スライド4の(1)(2)(3)の合計) |
|quote=電源別費用 (単価) の実績 (スライド4の(1)(2)(3)の合計) |
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</ref> |
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* 原子力 10.68 円 |
* 原子力 10.68 円 |
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* 火力 9.90 円 |
* 火力 9.90 円 |
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* [[原子力撤廃]] |
* [[原子力撤廃]] |
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* [[国際原子力パートナーシップ]] |
* [[国際原子力パートナーシップ]] |
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* [[九州電力やらせメール事件]] |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* [http://100.yahoo.co.jp/detail/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB/ |
* [http://100.yahoo.co.jp/detail/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB/ 日本大百科全書 原子力発電] |
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* [http://www.nisa.meti.go.jp/ 原子力安全・保安院] |
* [http://www.nisa.meti.go.jp/ 原子力安全・保安院] |
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* [http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/index.htm エネルギー |
* [http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/index.htm 資源エネルギー庁 エネルギー白書] |
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* [http://www.world-nuclear.org/ 世界原子力協会] |
* [http://www.world-nuclear.org/ 世界原子力協会] |
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* [http://www.rist.or.jp/atomica/ |
* [http://www.rist.or.jp/atomica/ 財団法人高度情報科学技術研究機構 原子力百科事典 ATOMICA] |
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{{発電の種類}} |
{{発電の種類}} |
2012年4月3日 (火) 04:19時点における版
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a4/Hamaoka_nuclear_pp_mlit1988.jpg/220px-Hamaoka_nuclear_pp_mlit1988.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/db/Tomari_Nuclear_Power_Plant_01.jpg/220px-Tomari_Nuclear_Power_Plant_01.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d5/Chernobylreactor.jpg/220px-Chernobylreactor.jpg)
原理
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/15/Nuclear_fission.svg/200px-Nuclear_fission.svg.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/72/Thermal_reactor_diagram.png/200px-Thermal_reactor_diagram.png)
核分裂反応
基本要素
核燃料
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ae/Nuclear_fuel_pellets.jpeg/200px-Nuclear_fuel_pellets.jpeg)
原子炉
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/60/Wwer-1000-scheme.png/200px-Wwer-1000-scheme.png)
1. 制御棒駆動装置
2. 原子炉上蓋
3. 原子炉圧力容器本体
4. 一次冷却水の入出口
5. 一次冷却水流路
6. 炉心バッフル
7. 炉心
発電施設
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d3/Nuclear.power.plant.Dukovany.jpg/200px-Nuclear.power.plant.Dukovany.jpg)
施設構成
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/bf/Schema_Druckwasserreaktor.png/200px-Schema_Druckwasserreaktor.png)
火力発電所との差異
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6c/Twin_Tower_TEPCO_Yokohama_power_station02.jpg/200px-Twin_Tower_TEPCO_Yokohama_power_station02.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b6/Cook_nuclear_turbine_building_interior.jpg/200px-Cook_nuclear_turbine_building_interior.jpg)
蒸気
タービンを回す蒸気が原子力発電所では約 284 度、 6.8 MPa (メガパスカル)[1]であり、石炭火力発電所の蒸気の約600度、25 MPa[1]よりも温度、圧力が低く設計されている。この理由は、核燃料棒の被覆に使われているジルコニウムが比較的高温に弱いために[2]一次冷却水を高温には出来ないためである。また、火力発電所では超臨界流体である超臨界蒸気が使用されている。超臨界流体とは、液体の性質と気体の性質を持った非常に濃厚な蒸気であり、熱を効率良く運ぶことが出来るが高温高圧状態が必要なため、原子力発電ではこれを利用することは現在は出来ない。これらの理由から一般的な火力発電所の熱効率は約 47 %程度[3]であるのに対し、21世紀初頭現在の原子力発電における熱効率は約 30 %程度である[4]。尚、冷却材に超臨界流体である超臨界圧軽水を用いた超臨界圧軽水冷却炉が現在研究中であり、これを原子力発電に用いれば熱効率は45 %程度まで上昇すると考えられている[5]。タービン
原子力用タービン発電機は4極であるため、回転数は1500 rpm又は1800 rpm。火力用タービン発電機は通常2極であるため3000 rpm又は3600 rpmである[6]。歴史
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/43/Ebr-1.zdv.jpg/200px-Ebr-1.zdv.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0c/Shippingport_Reactor.jpg/200px-Shippingport_Reactor.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/58/Nuclear_Power_History.png/200px-Nuclear_Power_History.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/53/Anti-nuke_rally_in_Harrisburg_USA.jpg/200px-Anti-nuke_rally_in_Harrisburg_USA.jpg)
日本
1945年8月の第二次世界大戦敗戦後、日本では連合国から原子力に関する研究が全面的に禁止された[注釈 3]。しかし1952年4月に日本国との平和条約 (サンフランシスコ講和条約) が発効したため、原子力研究は解禁されることとなった[20]。 日本における原子力発電は、1954年3月、改進党の中曽根康弘・稲葉修・齋藤憲三・川崎秀二らにより原子力研究開発予算が国会に提出されたことがその起点とされている。この時の予算2億3500万円は、ウラン235にちなんだものであった[21]。 1955年12月19日に原子力基本法が成立し、原子力利用の大綱が定められた。この時に定められた方針が﹁民主・自主・公開﹂[注釈 4]の﹁原子力三原則﹂であった[22]。そして基本法成立を受けて1956年1月1日に原子力委員会が設置された[23]。初代の委員長は読売新聞社社主でもあった正力松太郎である[24]。正力は翌1957年4月29日に原子力平和利用懇談会を立ち上げ、さらに同年5月19日に発足した科学技術庁の初代長官となり、原子力の日本への導入に大きな影響力を発揮した。このことから、正力は日本の﹁原子力の父﹂とも呼ばれている。 1956年6月に日本原子力研究所︵現・独立行政法人日本原子力研究開発機構︶が特殊法人として設立され、研究所が茨城県東海村に設置された[25]。これ以降、東海村は日本の原子力研究の中心地となっていく。 1957年11月1日には、電気事業連合会加盟の9電力会社[注釈 5]および電源開発の出資により日本原子力発電が設立された[26]。 日本で最初の原子力発電が行われたのは1963年10月26日で、東海村に建設された実験炉であるJPDRが初発電を行った。これを記念して毎年10月26日は原子力の日となっている[27]。 尚、日本に初めて設立された商用原子力発電所は同じく東海村に建設された東海発電所であり、運営主体は日本原子力発電である。原子炉の種類は世界最初に実用化されたイギリス製の黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉であった。しかし経済性等の問題[28]によりガス冷却炉はこれ1基にとどまり、後に導入される商用発電炉はすべて軽水炉であった。 2011年には、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に起因する福島第一原子力発電所事故が発生した。国際原子力事象評価尺度に基づく評価は確定していないが、原子力安全・保安院による暫定評価は最悪のレベル7となっており、日本における最大規模の原子力事故である[29]。略年表
●1895年 - 放射線の発見[8]。 ●1939年 - 原子核分裂の発見[8]。 ●1951年 - 世界初の原子力発電がEBR-Iで実施[8]。 ●1953年 - Atoms for Peace提案[13]。 ●1954年 - ソビエト連邦のオブニンスク原子力発電所発電開始[11]。 ●1955年 - 原子力基本法が成立[30]。 ●1956年 - 初の商用原子力発電所、イギリスのコルダーホール発電所運転開始[13]。 ●1957年 - 国際原子力機関発足[13]。 ●1963年 - 日本初の原子力発電実施[13]。 ●1966年 - 日本初の原子力発電所、東海発電所完成[8]。 ●1974年 - アメリカ原子力委員会分割[10]。 ●1979年 - スリーマイル島原子力発電所事故発生[19]。 ●1986年 - チェルノブイリ原子力発電所事故発生[19]。 ●1999年 - 東海村JCO臨界事故発生[31]。 ●2006年 - 国際原子力パートナーシップ発表[32]。 ●2011年 - 福島第一原子力発電所事故発生事故
原子力事故
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7d/Fukushima_I_by_Digital_Globe.jpg/180px-Fukushima_I_by_Digital_Globe.jpg)
炉心溶融
臨界事故
臨界事故とは、制御棒の予期せぬ引き抜け等により想定外の臨界状態になる (持続的な核分裂反応が始まってしまう) ことである。1978年11月2日に福島第一原子力発電所3号機で発生した事例がある[39]。国際原子力事象評価尺度
原子力発電所の事故、故障は国際原子力事象評価尺度に照らされ、0 - 7のレベル (8段階) に分けられることになっている。放射線被曝を伴わない事故の場合でも安全管理不適切と判断され、レベル1以上になることがある[40]。現状
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/ce/Numappara_power_station_survey.jpg/250px-Numappara_power_station_survey.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/64/Nrc_reactors_map.gif/250px-Nrc_reactors_map.gif)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/75/Nuclear_power_station.svg/250px-Nuclear_power_station.svg.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9b/Nuclear_power_percentage.svg/250px-Nuclear_power_percentage.svg.png)
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国は最も多くの量の原子力発電を行っており[42]、原子力発電によってアメリカ国内の総電力の20 %を賄っている[43]。中南米
2005年12月の時点で中南米で原子炉を運転している国はメキシコ、アルゼンチン、ブラジルの3ヶ国である。尚、キューバは1983年に原子力発電所の建設を開始した事があったが、資金面の影響により1992年に工事を中断し、現在に至っている[44]。ロシア
ロシアで運転している原子炉は計27基2.319万kW[45]、2005年の発電量に占める原子力発電の割合は15.8 %[46]。ロシアでの問題は老朽化である。運転中の原子炉の内、6割が老朽化していると言われている[47]。ヨーロッパ
ヨーロッパ全体での発電量に占める原子力発電の割合は2009年の時点で28 %[48]。欧州連合 (EU) での原子力政策は加盟各国によってまちまちであり、ノルウェー、アイスランド、ポーランド、イタリア等の国では原子力発電は行われていない[48]。反対にフランスは発電量に占める原子力発電の割合が世界で最も高い国である。59基もの原発が稼動しており[48]、総電力の約80 %もの電気エネルギーを原子炉から得ている[43]。2007年には国内純発電量の12.4 %に相当する電力を輸出している[49]。 また、ベルギーでは2004年の時点で7基の原子炉を使用しているが、既に2003年1月に脱原子力法が議会で可決・成立しており、2025年までに原発を廃止するとしている[50]。アフリカ
アフリカ地域の1人あたりの電力使用量は先進国と比べるとまだまだ低い水準であり[51]、原子力発電を実施している国は南アフリカ共和国ただ1国である。実施は1984年。発電量に占める原子力発電の割合は2005年の実績では5.5 %であった[52]。その他、エジプト、ケニア、ナイジェリアといった国々が2011年2月時点では原子力発電の導入を検討しているとされた[53]。中東
中東地域ではイランのブシェール原子力発電所が唯一の稼動中の原子力発電所である[54]。しかし、トルコ[55]、アラブ首長国連邦 (UAE)[56]で原子力発電所の新規建設が決定されている。中国
中華人民共和国における原子力発電は1994年に開始されたばかりで、後発国といえる。2003年の発電量に占める原子力発電の割合は1.5 %となっているが 、今後の経済発展に伴う需要増に対応するため中国政府は相当数の原発建設を計画している。[57]。日本
日本の原子力発電は、経済性や安全性から軽水炉の2つのタイプ、沸騰水型原子炉 (BWR) と加圧水型原子炉 (PWR) が使われている。また、需要に合わせた電気出力の増減、負荷追従運転は行わず、常時一定の電力供給を専門としている。 2010年現在、日本における電力量の約23 %を原子力が担っている[43]。一次エネルギーとしての原子力エネルギーは電力事業のみであり、日本での一次エネルギーに対する割合は2002年の時点で15 %程度となっている[58]。 また、2010年3月に営業運転期間が40年に達した敦賀発電所1号機をはじめ、長期運転を行う原子炉が増加する見込みである事から、これらの安全性の維持が課題となっている、と指摘された (2010年11月時点)[59]。ただし福島第一原子力発電所事故の影響により、世論のみならず国会内部においても﹁反原発﹂、﹁脱原発﹂の動きが活発になったことから先行きは不透明である。発電比率
日本の各電力会社での全発電量 (売買電力量を含む) に占める/占めていた原子力発電比率 (2009年前後) は以下の通り。- 北海道電力: 約40 %[60]
- 東北電力: 約16 %[61]
- 東京電力: 約23 %[62]
- 中部電力: 約15 %[63]
- 北陸電力: 約33 %[64]
- 関西電力: 約48 %[65]
- 中国電力: 約8 %[66]
- 四国電力: 約38 %[67]
- 九州電力: 約41 %[68]
- 沖縄電力: 0 %[69]
世界の原子力発電所開発状況
![アメリカ合衆国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a4/Flag_of_the_United_States.svg/25px-Flag_of_the_United_States.svg.png)
![フランスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/93/Flag_of_France_%281794%E2%80%931815%2C_1830%E2%80%931974%29.svg/25px-Flag_of_France_%281794%E2%80%931815%2C_1830%E2%80%931974%29.svg.png)
![日本の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9e/Flag_of_Japan.svg/25px-Flag_of_Japan.svg.png)
![ロシアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f3/Flag_of_Russia.svg/25px-Flag_of_Russia.svg.png)
![ドイツの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/ba/Flag_of_Germany.svg/25px-Flag_of_Germany.svg.png)
![大韓民国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/09/Flag_of_South_Korea.svg/25px-Flag_of_South_Korea.svg.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/49/Flag_of_Ukraine.svg/25px-Flag_of_Ukraine.svg.png)
![カナダの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/cf/Flag_of_Canada.svg/25px-Flag_of_Canada.svg.png)
![イギリスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/83/Flag_of_the_United_Kingdom_%283-5%29.svg/25px-Flag_of_the_United_Kingdom_%283-5%29.svg.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Flag_of_Sweden.svg/25px-Flag_of_Sweden.svg.png)
![中華人民共和国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/fa/Flag_of_the_People%27s_Republic_of_China.svg/25px-Flag_of_the_People%27s_Republic_of_China.svg.png)
![スペインの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9a/Flag_of_Spain.svg/25px-Flag_of_Spain.svg.png)
![ベルギーの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/65/Flag_of_Belgium.svg/23px-Flag_of_Belgium.svg.png)
![中華民国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/72/Flag_of_the_Republic_of_China.svg/25px-Flag_of_the_Republic_of_China.svg.png)
![インドの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/41/Flag_of_India.svg/25px-Flag_of_India.svg.png)
原子力発電の推進/撤退をめぐる状況
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f7/Nuclear_Fuel_Cycle.png/220px-Nuclear_Fuel_Cycle.png)
原子力撤廃
原子力推進
日本
経済産業省の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の原子力部会は、2006年6月時点でまとめた報告書に﹁日本の原子力政策は、原子力設備の更新が予想される2030年以後も原子力発電が現在の総発電量の3割程度という水準か、それ以上の割合を占める事が適切である﹂といったことを記載し、それが資源エネルギー庁のウェブサイトにも掲載された[79]。 また、増え続ける使用済み核燃料に含まれるプルトニウムの処分方法とウラニウムの輸入量を減らすための解決策として、高速増殖炉計画が推進され、2010年現在は原型炉のもんじゅが試験を繰り返し行っている。並行して核燃料サイクル政策としてMOX燃料によるプルサーマル計画が進められている。原子力産業
諸議論 (原子力発電の利点と問題点)
利点
現行の原子力発電の利点として、以下の諸点が主張されている。 環境汚染が少ない ●発電時に地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しない[82]。 ●酸性雨や光化学スモッグなど大気汚染の原因とされる窒素酸化物や硫黄酸化物を排出しない[83]。 コストが安い ●発電コストに占める燃料費の割合が他の発電方法に比べ極めて低いため、燃料価格が上昇してもトータルの発電コストが上昇しにくい[84]。 ●燃料のエネルギー密度が高く、備蓄及び輸送が容易[85]。 ●燃料を一度装填すると一年程度は交換する必要がないこと[85]。 ●発電量当りの単価が安いため、経済性が高い[86]。 原料の安定供給 ●中東に大きく依存するガスや石油と違い、ウラン供給国は政情の安定した国が多い[87]。 ●核燃料物質の国際的な入手ルート・価格がほぼ確立し安定している為に、化石燃料型の発電に比べて相対的に安定した電力供給が期待できる[88]。 技術の国際的アピール ●優秀な原発技術を国外へ売り込むことができる[89]。 実用化できれば有利となる条件 ●比較的少量の核燃料を繰り返し使用する核燃料サイクルの確立できれば、化石燃料資源の乏しい国でも核燃料物質の入手に関わる制約を緩和できる[90]。 ●海水からのウラン採取が実現すれば燃料はさらに豊富となる。技術自体は既に存在している[91] 地元の経済効果 ●日本では、原子力発電所ができると地元には一定の雇用が期待できるほか、電源立地地域対策交付金などの電源三法交付金、固定資産税、法人税などの税収も確保できる[92]。問題点
現行の原子力発電には以下の問題点が主張されている。 並外れた危険性 ●軽水炉の場合、万一 水が止まってしまうと、大量に発生し続ける崩壊熱を除去できなくなり、30分後には核燃料が溶けはじめてばらばらになり、2時間ほどで原子炉が損傷、破壊されるという構造上の不安定性をかかえている[7]。このような事態は、放射性降下物︵一般的に死の灰と呼ばれる︶の大量放出、社会的な非常事態に直結している[7]。 ●重大事故が発生すると周辺環境に多大な被害を与え、その影響は地球規模に及ぶ。国土が狭い日本において、いったんチェルノブイリ級の事故が発生した場合、放射性物質による国土の汚染は日本国内の非常に広範囲に及ぶ[93]。 ●放射性廃棄物の後始末ができない[7]。 ●数万年という長い半減期を持つ高レベル放射性廃棄物に対しては、地下深くに埋設して処分する深地層処分が検討されている。しかし、放射性物質の漏洩のリスクなどから、地域住民の多くがその近隣での処分に反対するため、広大な国土を持つアメリカ合衆国やロシアのような例を除き、多くの国で地下埋設の処分地確保に問題を抱えている[94] ●原子炉の解体処分にともない、低レベル放射性廃棄物に相当する廃棄物が大量に発生するため、これらの処分方法が課題となっている[95]。 ●日本では高レベル放射性廃棄物の最終処分地が決まらない[96]。 ●冷却に大量の海水を使う場合、立地場所が海岸沿いに限定され[97]、津波の被害を受ける可能性がある[98]。 ●後進国や発展途上国で原発が建設された場合、安全性が懸念される[99]。 ●発電施設および核廃棄物処理施設へのテロリズムの危険[100]。軍事目標としての脆弱性[101]。 ウランは多くない ●ウラン資源の可採埋蔵量に由来する資源枯渇問題。 ●地殻中のウラン235のみの利用を考えた場合、資源がそれほど豊富なわけではない[102]。 軍事転用の危険 ●天然ウランから核燃料を作る工程で発生する劣化ウランは劣化ウラン弾として使用可能[103]。 ●使用済み核燃料に含まれるプルトニウムは核兵器の材料となり得る︵開発国に対しては核拡散防止条約の批准を義務付けることが必要︶。ただし、抽出には非常に高い技術と専用の設備が必要である[104]。 コストが高い ●電力料金を通じて支払われている電源開発促進税を主財源とする財政費用は、原子力が最も高い[105]。 ●バックエンド費用は莫大な額にのぼる[105]。 ●消費者が現在負担している費用は、あくまで六ヶ所再処理工場における再処理に関するもののみであり、全量再処理するのであれば、実際にはさらに費用の負担が必要になる[105]。 ●原子力発電所の稼動中に発生する放射線への対処が必要となる。 ●原子炉の運転に伴い中性子線やガンマ線が発生するため、発電施設で働く作業者が過度に被曝しないよう、遮蔽を考慮した設計にする、管理区域を設けるなど特別の対応をする必要がある[106]。 その他 ●日本では、将来の原子力発電を担う技術者が減少傾向にある[107]。 ●日本では原子力関係の学科が減少傾向にある[108]。 ●通常停止の場合、停止までの所要時間が長い[109]。 ●需給に合わせた細かい出力の調整ができない。[110]諸試算、コスト比較
原子力発電とその他の発電コスト試算
経済産業省による試算
1999年に通商産業省︵現経済産業省︶資源エネルギー庁が発表した試算によれば、1kWhあたりの発電コストは次のように試算された[111]。 ●原子力 5.9円 ●LNG火力 6.4円 ●石炭火力 6.5円 ●石油火力10.2円 ●水力 13.6円 なお、この内原子力発電コストの見積もりについては、原子炉建設の際の漁業補償金、原子力に特有な再処理費用、1kWhあたり1 - 2円の燃料費等のバックエンドコストは含んでいるが、電源三法による地元への交付金 (税金)、電力企業からの地元対策寄付金、原子炉廃炉解体費用、原発事故の際の賠償金等は含んでいないため、これらを算入すると原子力発電コストはさらに高くなる。 また、2010年に同庁は、各エネルギーにおける1kWhあたりの発電コストを次のように試算した[112]: ●太陽光49円 ●風力 ︵大規模︶ 10 - 14円 ●水力 ︵小規模除く︶8 - 13円 ●火力 7 - 8円 ●原子力 5 - 6円 ●地熱 8 - 22円政府内閣府による試算
2011年11月8日に内閣府の原子力安全委員会では、深刻な原発事故は1基あたり500年間稼働すると1回発生するとして5兆円の損害賠償が必要になると仮定し、従来コストに1.6円積み増して原発コストが最大7.6円/kwhと試算する中間報告を出した[113]。 さらに2011年12月13日、内閣府国家戦略室のコスト検証委員会が発表した各発電コスト発電コスト (円/kwh) の2010年現時点価格と2030年予測は下記の通り[114]。これによると、既に2010年段階で、原子力と石炭・LNG火力発電コストは約10円/kwhでほぼ等しく、石油火力発電コストと太陽光発電コストは、いずれも約37円/kwhで同等の発電コストになっている。原子力は最低8.9円となっておりリスクモデルに何を取るかによりさらに高価になる、また事故の総費用が正確にわからない現状を反映しているので流動的である。発電方法 | 2004年 | 2010年 | 2030年 |
---|---|---|---|
原子力発電 | 5.9 | 最低8.9 | 最低8.9 |
石炭火力発電 | 5.7 | 9.5 | 10.8 |
LNG火力発電 | 6.2 | 10.7 | 10.9 |
石油火力発電 | 16.5 | 38.9 | 36.0 |
陸上風力発電 | 不明 | 9.9 - 17.3 | 8.8 - 17.3 |
洋上風力発電 | 不明 | 9.4 - 23.1 | 8.6 - 23.1 |
地熱発電 | 不明 | 8.3 - 10.4 | 8.3 - 10.4 |
太陽光発電 | 不明 | 33.4 - 38.3 | 9.9 - 20.0 |
ガスコジェネ | 不明 | 10.6 - 19.7 | 11.5 - 20.1 |
米国エネルギー省エネルギー情報局による試算
2010年に米国エネルギー省|エネルギー情報局(DOE/EIA) が公表した2016年にアメリカで運用を開始する新規発電所の百万kWhあたりの発電コストは以下の通り。1ドル=90円としてkwhあたりコストも表示[116]。発電方法 | 発電コスト(米ドル/百万khw) | 発電コスト(円/kwh) | |
---|---|---|---|
石炭火力 | 従来型石炭火力 | $94.8 | \8.5 |
改良型石炭火力 | $109.4 | \9.8 | |
改良型二酸化炭素貯留石炭火力 | $136.2 | \12.2 | |
天然ガス(LNG発電) | コンバインドサイクル | $66.1 | \5.9 |
改良型コンバインドサイクル | $63.1 | \5.7 | |
改良型二酸化炭素貯留コンバインドサイクル | $89.3 | \8.0 | |
従来型燃焼タービン | $124.5 | \11.2 | |
改良型燃焼タービン | $103.5 | \9.3 | |
改良型原子力発電 | $113.9 | \10.3 | |
風力 | $97.0 | \8.7 | |
洋上風力 | $243.2 | \21.9 | |
太陽光発電 | $210.7 | \19.0 | |
太陽熱発電 | $311.8 | \28.1 | |
地熱発電 | $101.7 | \9.2 | |
バイオマス | $112.5 | \10.1 | |
水力発電 | $86.4 | \7.8 |
原子力資料情報室による試算
立命館大学国際関係学部 大島堅一教授による試算
エネルギー政策が専門の大学教授である大島堅一は、各エネルギーにおける1kWhあたりの発電コストを次のように試算した[118]。 ●原子力 10.68 円 ●火力 9.90 円 ●水力 (一般水力) 3.98 円 なお、﹁一般水力﹂とは、揚水発電を除いた余剰電力のエネルギー貯蔵を行わない通常の水力発電を指す。 大島は、経産省による試算は特定のモデルを用いた計算にすぎず、実際に費やされた費用からの試算とは異なると指摘した[105]。電力会社が原発建設申請時に提出した試算
電力企業が原子力発電所建設申請時に経済産業省電源開発調整審議会に提出した発電原価の試算は以下のとおりである︵塩谷喜雄﹁本当の原発発電原価を公表しない経産省・電力業界の詐術‥新潮社ニュースマガジン﹂より︶。 ●柏崎刈羽5号機 19.7円/kwh ●浜岡3号機 18.7円/kwh ●泊原発1号機 17.9円/kwh ●女川1号機 17.0円/kwh ●玄海3号機 14.7円/kwh ●大飯3号機 14.2円/kwh ●大飯4号機 8.9円/kwh ●玄海2号機 6.9円/kwh二酸化炭素排出量
温室効果の原因となる二酸化炭素の排出量が少ないことは、原子力発電の利点の一つとされている。電力中央研究所が2000年 (平成12年) に発表した試算によれば、原子力をはじめとする各種発電方式について、発電所の建設から廃止までの発電量と二酸化炭素排出量を考慮した、1kWhあたりの二酸化炭素排出量は以下のように試算した[119]。 ●原子力22グラム ●水力11グラム ●LNG火力 608 グラム ●石油火力 742 グラム ●石炭火力 975 グラム 原子力発電では核分裂反応に起因する二酸化炭素の排出は全くないが、発電所の建設、運用、廃止や燃料の生産、輸送、廃棄物の処分等に起因する二酸化炭素の排出も上記の試算には含まれているため、若干の排出が見られる。この点は水力発電も同様である。発電所建設費の例
●原子力 北海道電力泊発電所3号機 約2,926億円 91.2万kW︵32億円/万kW︶ 2009年 (平成21年) 12月営業運転開始[120][121] ●揚水型水力 東京電力葛野川発電所 約3,800億円 160万kW︵24億円/万kW︶ 1999年 (平成11年) 12月3日1号機営業運転開始[122] ●天然ガス 電源開発株式会社市原発電所 約100億円11万kW︵9億円/万kW︶ 2004年 (平成16年) 10月営業運転開始[123] ●石炭 北陸電力敦賀火力発電所2号機 1,275億円程度70万kW︵18億円/万kW︶ 2000年 (平成12年) 9月営業運転開始[124] ●風力 電源開発株式会社郡山布引高原風力発電所 約120億円 6.6万kW︵18億円/万kW︶ 2007年 (平成19年) 2月 営業運転開始[125]注釈
出典
参考資料
- 神田誠他 『原子力教科書 原子力プラント工学』 オーム社 2009年 ISBN 9784274206603
- 原子力ハンドブック編集委員会編 『原子力ハンドブック』 オーム社 2007年 ISBN 9784274204432
- バーナード・L・コーエン著 近藤駿介監訳 『わたしはなぜ原子力を選択するか 21世紀への最良の選択』 ERC出版 1994年 ISBN 4900622052
- 有馬哲夫 『原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史』 新潮新書 新潮社 2008年 ISBN 9784106102493
- 吉岡斉 『原子力の社会史 その日本的展開』 朝日選書 朝日新聞社 1999年 ISBN 9784022597243