サロベツ原野
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サロベツ原野︵サロベツげんや︶は、北海道北部︵道北︶にある豊富町と幌延町の海岸線沿いに広がる湿原である。
概要[編集]
宗谷丘陵南西側に位置する湿原であり泥炭地[1]。独特の植生が豊富に見られることから、一部の区域は特にサロベツ原生花園と呼ばれることもある。東西8km、南北27kmで、面積は216平方kmにも及ぶ広大な湿原である[1]。2005年11月8日にはラムサール条約に登録された[2]。 上サロベツ原野と下サロベツ原野に分かれ、後者は利尻礼文サロベツ国立公園の特別保護地区であり、ペンケ沼、パンケ沼といった沼地が点在する。泥炭性の低湿地であり、海岸砂丘とその背後にある宗谷丘陵によって阻まれた潟湖が、泥炭による長い堆積作用によって形成された。日本国内の泥炭地としては石狩平野や釧路平野に次ぐ広さである[1]。 国指定サロベツ鳥獣保護区︵集団渡来地︶に指定されている︵面積2,560ha、全域が特別保護地区︶。また環境省により、日本の重要湿地500のひとつに指定され保護されている[3]。 地元の主産業は酪農で昭和30年代に畑作からの転換が進んだ[1]。観光施設として豊富町内にサロベツ湿原センター︵みやげ物売場、食事施設併設︶が、幌延町内に幌延ビジターセンター︵近隣に無料展望台あり︶がある。 日本の秘境100選の一つに数えられる。地名の由来[編集]
「サロベツ川#名称の由来」も参照
アイヌ語の﹁サラオペッ︵サロペッ︶[4]﹂もしくは﹁サラオマッペッ︵サロマペッ︶[5]﹂、﹁サラペッ[6]﹂に由来し、いずれも﹁芦原・にある・川﹂の意である[7]。
湖沼[編集]
●長沼 ●パンケ沼 ●ペンケ沼 ●兜沼植生・植物相[編集]
その種類は100種以上にも及び、以下の花が初夏〜初秋にかけて見られる。 ●5月 ミズバショウ、エゾノリュウキンカ、ショウジョウバカマ、ハクサンチドリ、ミツガシワ、ホロムイツツジ ●6月 クロユリ、ヒメシャクナゲ、ワタスゲ、カキツバタ、ヒオウギアヤメ、ツルコケモモ、エゾイソツツジ︵イソツツジの仲間︶ ●7月 エゾカンゾウ、エゾスカシユリ、トキソウ、モウセンゴケ、エゾノヒツジグサ︵ヒツジグサの亜種︶ ●8月 サワギキョウ、ジュンサイ、ネジバナ、エゾミソハギ、ノリウツギ ●9月 エゾリンドウ、ホロムイリンドウ、アキノキリンソウ動物[編集]
以下のような動物が見られる。 ●哺乳類 - エゾリス、エゾシマリス、エゾヤチネズミ、トウキョウトガリネズミ、エゾクロテン、エゾモモンガ、エゾユキウサギ、エゾシカ、キタキツネ、ニホンコテングコウモリ ●爬虫類・両生類 - コモチカナヘビ、エゾアカガエル ●鳥類 - オジロワシ、オオワシ、トビ、ハヤブサ、エゾフクロウ、オオヒシクイ、オナガガモ、ミコアイサ、オオハクチョウ、コハクチョウ、タンチョウ、アオサギ、キマユツメナガセキレイ、オオルリ、ノゴマ、ノビタキ、シマアオジ、カワセミ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、コガラ、アカゲラ、アカエリカイツブリ、ウグイス、スズメ、ハシブトガラス、ハシボソガラス ●魚類・水中生物 - イトウ、テツギョ、ヤマトシジミ ●昆虫 - チャバネエンマコガネ、カラフトマルガタゲンゴロウ、イイジマルリボシヤンマ乾燥化の進行と自然保護[編集]
酪農の発展に伴う農地整備に伴い、乾燥化が進行し、クマザサなど乾燥性の植物が外部から侵入してきている。また、農地化に伴う泥炭地からの放水路の開削などに伴い、湿原の水位も低下してきている。 湿原保護の機運が高まり、放水路への地下水の流出を防ぐ取り組みが、地元や国の連携下、実施されるようになった[8]。 自然再生事業が盛んに取り組まれているが、泥炭の形成は1年間に1mmという非常にゆっくりとしたものであり、湿原の再生には長期間を要する。 2020年には日本野鳥の会とNPO法人サロベツ・エコ・ネットワーク︵豊富町︶がシマアオジ保護地として原野のうち14.8ヘクタールを購入した[9][10]。サロベツ原野に関連する名称[編集]
愛称[編集]
●サロベツ - JR北海道が宗谷本線で運行する特急列車。詳細は同項目を参照。ゆかりのある楽曲[編集]
●サロベツ慕情︵1977年︶ - 都はるみ ●サロベツ絶唱︵1985年︶ - 朝川ひろこ ●サロベツ原野の子守唄︵2003年︶ - 長谷川千恵 ●サロベツ原野︵2006年︶ - 鳥羽一郎 ●サロベツの風に吹かれながら - みのや雅彦交通アクセス[編集]
●鉄道…JR宗谷本線下沼駅、豊富駅、兜沼駅下車 ●バス…豊富駅発の予約制乗合バスあり。サロベツ線の路線バス (サロベツ湿原センター) は、2021年3月31日廃止。[11]。 ●タクシー・ハイヤー…豊富駅前及び幌延町市街に営業所がある。 ●自転車…豊富駅に隣接した豊富町観光協会で自転車を借りることができる︵有料︶。脚注[編集]
(一)^ abcd“2.サロベツ地区の概要” (PDF). 国土地理院. 2022年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月28日閲覧。
(二)^ “Sarobetsu-genya | Ramsar Sites Information Service”. rsis.ramsar.org (2005年11月8日). 2023年4月10日閲覧。
(三)^ “﹁重要湿地﹂の詳細情報︵サロベツ原野︶”. 環境省. 2021年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月28日閲覧。
(四)^ アイヌ語ラテン翻字: sar-o-pet
(五)^ アイヌ語ラテン翻字: sar-oma-pet
(六)^ アイヌ語ラテン翻字: sar-pet
(七)^ “アイヌ語地名リスト ゴ~シブ P51-60P” (PDF). アイヌ語地名リスト. 北海道環境生活部アイヌ政策推進室 (2007年). 2022年12月28日閲覧。
(八)^ “上サロベツ自然再生事業”. サロベツ・エコモ―・プロジェクト. 2022年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月28日閲覧。
(九)^ “日本野鳥の会とサロベツ・エコ・ネットワークが﹁シマアオジ﹂の生息地14.8ヘクタールを購入”. PR TIMES. 日本野鳥の会 (2020年6月11日). 2021年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月28日閲覧。
(十)^ ﹃読売新聞﹄朝刊2020年6月17日北海道面﹁シマアオジの生息地 サロベツ原野を購入 日本野鳥の会など﹂
(11)^ “サロベツ線︵豊富駅~稚咲内︶の運行系統廃止について” (PDF). 沿岸バス (2021年2月25日). 2022年12月28日閲覧。