全国紙
全国紙︵ぜんこくし︶とは全国向けにニュースを報じる新聞である。このうち、首都に本社が置かれる新聞は中央紙ともいわれる。対義語は地方紙︵広義的にはブロック紙も含む︶。日本の全国紙は主に5紙であるとされるため、日本では全国紙を称して、五大紙とも呼ばれる。大手紙︵おおてし︶とも。
日本[編集]
概要[編集]
日本では、読売新聞・朝日新聞・毎日新聞の三大紙に、日本経済新聞・産経新聞を加えた5紙︵五大紙︶が全国紙と称される[1][2][3]。五大紙で日本の新聞の全発行部数の半分以上を占める[3]。特に読売新聞は世界最大の発行部数を誇る[4]。それぞれテレビ局のキー局や準キー局と密接な資本関係若しくは提携関係を持ち︵クロスオーナーシップ︶、日本経済新聞以外はスポーツ新聞をグループ会社あるいは本体より発行している。 三大紙は基本的に全国の5大都市︵札幌市、東京都千代田区・または中央区、名古屋市、大阪市、福岡市・または北九州市︶に地域発行本社・支社︵名称は社によって異なる[注 1]︶を持ち、各本・支社毎に編集しているため、同じ題号の新聞でも各本社によって連載などの記事や特集等が異なる︵﹁朝日新聞大阪本社﹂も参照︶。また、﹁全国紙﹂といっても全国津々浦々で販売部数上位を独占しているわけではない。関東地方や関西地方、山口県を除く地域ではブロック紙や地方紙︵県紙︶が高いシェアを持つ場合も多い[5]。2020年の読売新聞社の調査では、10都府県︵茨城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・滋賀県・大阪府・奈良県・和歌山県・山口県︶を除く37道府県で地方新聞がシェア1位を占めた︵奈良県以外の9都府県で読売新聞がシェア1位︶[5]。県内シェア2位以下では読売新聞を中心に全国紙も多数上位に食い込んでいる。さらに、関東地方や関西地方でも下野新聞︵栃木県︶、上毛新聞︵群馬県︶、神戸新聞︵兵庫県︶、京都新聞︵京都府︶などは地元で高いシェアを持つ。また、沖縄県では全国紙はほとんど購読・販売されておらず、県内では県紙の沖縄タイムスと琉球新報が圧倒的なシェアを持っている。これは地理的要因によるもので、全国紙の印刷工場がない沖縄県内へ県外から朝刊を空輸すると配送が朝のうちには不可能なためである。ただし、日本経済新聞は全国的な地方紙との提携の一環で︵日本経済新聞社#印刷工場の項を参照︶、2008年11月より琉球新報へ委託して現地印刷を開始するようになった。 産経新聞社は過去の歴史的な経緯上、発行拠点が大阪・東京の2本社と西部本部︵旧九州・山口本部︶の3拠点体制であるため、大阪府を主とした近畿地方と東京都を主とした関東地方を主な販売領域としている[6]。実販売数は五大紙の他社に比べて少ない実情があり、ブロック紙最大の販売部数をもつ中日新聞︵東京新聞等を含む︶よりも少ない︵中日新聞の発行部数は毎日新聞、日経新聞よりも多い︶。また、東京本社版は2002年から夕刊を廃止した。なお、産経新聞社のホームページでは﹁﹃モノをいう新聞﹄を標榜し続ける全国紙﹂として発行紙に言及している[7]。 戦時中の1945年には地方紙に全国紙の題号を併記して発行されたこともある。第二次世界大戦下での米軍による空襲の激化による航空輸送の悪化のため地方向けの全国紙の発行を断念、地方紙に全国紙3紙の題号を一緒に掲載する﹁持ち分合同﹂が行われた。 なお新聞自体の発行主体ではないが、地方紙を主体とした加盟報道機関により組織される共同通信社はニュースを全国の加盟報道機関に配信することから、ここで述べる全国紙と同等のメディアと扱われる。また、配信された各新聞の購読部数合計では読売新聞を上回る。 大都市圏以外においては夕刊が発行されず︵読売新聞は富山県及び石川県の都市部で夕刊を発行。東海3県に於いては朝刊のみ発行。産経新聞は近畿地方のみ夕刊を発行。毎日新聞は2008年8月末で北海道の一部、朝日新聞は2010年3月末で福岡県を除く九州の一部で発行されていた夕刊の発行をそれぞれ廃止。また愛知県・岐阜県・三重県の東海3県では毎日新聞が2023年3月末、朝日新聞が同年4月末でそれぞれ夕刊の発行を廃止︶、朝刊の記事も締切時間のせいか地方紙より情報が遅れているケースが多い。 特に朝刊では、1980年代前半ごろまでは地方への紙面電送中継の技術が確立されていなかったこともあり、夕方か夜の早い時間に締め切って、空輸・船便・鉄道輸送を使って翌朝の配達に間に合わせていたため、夕刊発行時とほぼ同時刻の紙面が掲載され、情報格差が大きいことが顕著だった[注 2]が、新聞電送技術の向上、特にデジタル電話回線や、通信衛星[8]を利用して、また全国民放4波化で開局した平成新局に出資する代わりに、地方紙(県紙)への印刷委託が積極的になり、発行本社所在都道府県とほぼ同じ深夜帯まで締切を伸ばして、ほぼリアルタイムでの情報伝達が可能となっている。 最終版の1つ前の版(読売・朝日の朝刊だと13版)の配達エリアは広がったが、近年の急激な部数減による経費削減により、定時の締切を守り、最終版(同14版)のエリアを東京本社だと23区だけに縮小する動きがある。 なお、中日新聞が産経新聞の部数を上回ったこと、中日新聞と東京新聞などが紙銘が異なるだけで経営が一体であること、産経新聞が関西・関東だけで全国的な広がりを欠く(九州7県では﹁しんぶん赤旗﹂日刊紙より少ない)ことから、近年、中日・東京を加えて六大紙ということがある。全国紙・テレビ・スポーツ紙資本関係一覧[編集]
全国紙・テレビ・スポーツ紙資本関係 | ||||
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新聞社名 | 主資本放送局(在京キー局) | 主資本スポーツ新聞社 | 備考 | |
テレビ局 | ラジオ局 | |||
読売新聞 | 日本テレビ放送網(日本ニュースネットワーク) | (アール・エフ・ラジオ日本) | スポーツ報知 | [注 3] [注 4] [注 5] |
朝日新聞 | テレビ朝日(オールニッポン・ニュースネットワーク) | なし | 日刊スポーツ | [注 3] [注 6] [注 7] |
毎日新聞 | なし | なし | スポーツニッポン | [注 8] [注 3] [注 4] [注 9] |
日本経済新聞 | テレビ東京(TXNネットワーク) | 日経ラジオ社 | なし | [注 10] |
産経新聞 | フジテレビジョン(フジニュースネットワーク) | ニッポン放送 (文化放送) |
サンケイスポーツ (夕刊フジ) |
[注 6] [注 11] [注 12] |
各国の全国紙[編集]
アメリカ合衆国[編集]
日本で言うところの﹁全国紙﹂とは概念が少し違い︵99パーセントが地方紙︶、記事が全米規模で配信され"National newspaper"︵全国的な新聞︶とおおよそ呼ばれているのはUSAトゥデイ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、クリスチャン・サイエンス・モニター︵ボストン所在︶、ロサンゼルス・タイムズなどである。このうち、特定地方・都市に偏らず全米の読者を対象としているのはUSAトゥデイと経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルのみ。
カナダ[編集]
カナダではこれまでグローブ・アンド・メール紙が一般紙では唯一の全国紙であったが1998年にナショナル・ポスト紙が創刊され、この2紙が現在全国紙とされる。イギリス[編集]
ブロード・シートと呼ばれているのが、日本で言うところの全国紙である。インデペンデント、タイムズ、ガーディアン︵オブザーバー︶、デイリー・テレグラフ、フィナンシャル・タイムズ、エコノミスト、デイリー・ミラー、デイリー・メール、ザ・サンの9紙が全国紙である。ドイツ[編集]
ビルト、ディ・ヴェルト、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング、ディー・ツァイト、南ドイツ新聞と経済紙であるフィナンシャル・タイムズが全国紙である。イタリア[編集]
フィアット社系のコリエレ・デラ・セラ、民主党系新聞であるルニータ、経済紙のSole-24 Oreが事実上の全国紙である。フランス[編集]
ル・モンド、ル・フィガロ、リベラシオン、フランス・ソワールと経済紙のレゼコーが全国紙である。オーストラリア[編集]
オーストラリアンと経済紙であるオーストラリアン・ファイナンシャル・レビューが日刊の全国紙である。南アフリカ[編集]
ザ・インディペンデント、ザ・メール&ガーディアンと経済紙であるビジネス・デイ、フィナンシャル・メールが日刊の全国紙である。ブラジル[編集]
アメリカ合衆国と似通ったかたちで、影響力が全国に及ぶ新聞紙が全国紙にあたる。フォーリャ・デ・サンパウロ、オ・グローボ、オ・エスタード・デ・サンパウロと経済紙のヴァロー・エコノミコ。韓国[編集]
朝鮮日報、中央日報、東亜日報、ハンギョレ、京郷新聞、韓国日報、国民日報、ソウル新聞が事実上の全国紙である。また、そのうち朝鮮日報、中央日報、東亜日報の三紙をとくに︵韓国︶三大紙とすることもある。中国の全国紙[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
(一)^ いわゆる3大全国紙は札幌が支社である以外はすべて本社。産経は東京・大阪が本社、福岡は﹁西部本部︵当初は九州・山口本部︶﹂︵札幌と名古屋は現在発行拠点なし︶。日経も東京・大阪が本社、それ以外の3都市は支社の扱いだが、実質地域本社と同等に扱われている。
(二)^ 特に産経は、一部最終版に近い時間に締め切られる名古屋市・岐阜市のごく一部・三重県の大半を除く中京圏と、西部本部が発足する前の2009年︵平成21年︶9月までの九州地方向けのものが、夕方の早い段階で締め切られた紙面であるため、それが顕著に表れていた。
(三)^ abcただし、1951年12月開局時-74年3月まで、日テレとラジオ東京→東京放送︵現・TBSホールディングス・TBSテレビ/ラジオ︶とは、読売・朝日・毎日の大手3紙との共同資本関係があった︵後に毎日新聞社が再建するに当たってはTBSが大株主の一つとなり、一定の報道協定関係はあるが、現在毎日新聞社との関係という点ではBS11デジタルのほうが強い︶。また新日本放送→毎日放送も開局当初は毎日新聞社が大株主だったほか、新旧分離による新聞発行業務を行うための事業会社を改めて設立した際は、毎日放送・TBSともに出資した関係がある。
(四)^ ab日本テレビの子会社にRFラジオ日本があるが、これは神奈川県のみを対象としたローカル局に過ぎず、関東広域圏を対象としているわけでも、全国ネットワークを形成しているわけでもない。開局当初は毎日新聞社と資本関係があり、定時ニュースも原則毎日新聞社からの協賛・記事提供を受けており、MBSラジオ︵当時はラ・テ併営の新日本放送→毎日放送のラジオ局部門︶とも番組の相互ネット供給関係があった。1978年︵プロ野球中継の関係協力強化のため︶に新聞資本・ニュース協賛・記事提供を読売新聞社︵東京本社︶に譲渡。
(五)^ スポーツ報知=持ち株会社・読売新聞グループ本社が親会社であるが、持ち株会社の直系ではない。名古屋は読売新聞中部支社、福岡はスポーツ報知西部本社発行
(六)^ abまた文化放送は朝日新聞社からの直接出資はないものの、日本教育テレビ︵現・テレビ朝日︶の設立時に文化放送・旺文社などがかかわっていたこともあり、元テレビ朝日役員が文化放送に役員として就任したほか、テレビ朝日・朝日新聞社との共催・後援するイベントもある。
(七)^ 日刊スポーツ=北海道は北海道日刊スポーツ新聞社、名古屋・大阪・福岡は日刊スポーツ新聞西日本、沖縄県はフランチャイズ契約で沖縄タイムス社が発行
(八)^ JNNキー局のTBSテレビおよび準キー局の毎日放送やCBCテレビ︵旧・中部日本放送︶とは他系列の関係や局名とは裏腹に現在は資本関係がない。特にTBSはラジオ東京の開局以来一貫して新聞色の払拭を意識してきた。
(九)^ スポーツニッポン=持ち株会社・毎日新聞グループホールディングス直系︵沖縄県はフランチャイズ契約で琉球新報社が発行︶
(十)^ 一般紙ではなく経済紙なのでスポーツ紙は直接の系列にないが、神戸新聞社発行のデイリースポーツとの販売・印刷委託を行っている︵東京本社とは、東京タイムズが休刊した1992年以後委託印刷を締結。一時中断があった。2006年以後、大阪本社が神戸新聞社に印刷委託を開始し、兵庫県向けに配布している︶。
(11)^ サンケイスポーツ・夕刊フジとも、1970-87年までは分社化されていたが、現在は産経新聞社から直接発行している。
(12)^ サンケイスポーツ東日本版は道新スポーツと提携し一部紙面共有。夕刊フジは夕刊紙専売のため大衆紙という見方もできる。
出典[編集]
(一)^ ﹁新聞記事の調べかた﹂︵大阪市立中央図書館︶ - レファレンス協同データベース
(二)^ 全国紙・地方紙の新聞社サイト集 | 調べ方案内 国立国会図書館
(三)^ ab“全国紙とは”. コトバンク. 朝日新聞. 2021年1月12日閲覧。
(四)^ “読売新聞‥会社案内サイト﹁読売新聞へようこそ﹂”. 読売新聞社の会社案内サイト﹁読売新聞へようこそ﹂. 2023年8月16日閲覧。
(五)^ ab“上位3紙朝刊販売部数・世帯普及率”. 読売新聞. 2021年8月16日閲覧。
(六)^ “メディアデータ‥販売部数 | 産経新聞 媒体資料インターネット版”. www.sankei-ad-info.com. 2020年12月18日閲覧。
(七)^ “新聞”. 産経新聞社. 2021年1月12日閲覧。
(八)^ 衛星通信を効率的に使用した新聞紙面伝送システム︵日立製作所社内報﹁日立評論﹂1992年第7号︵通算74号︶]