燕の巣
燕の巣︵つばめのす︶または燕窩︵えんわ、中国語: 燕窝; 拼音: yànwō︶は、アナツバメ類のうちジャワアナツバメなど数種の巣である。広東料理の高級食材とされる。
自然の洞穴に作られた巣︵タイ︶
現在はRC造の建物にアナツバメを誘致して巣を採取している︵タイ︶
アナツバメ類はアマツバメ目アマツバメ科に分類され、東南アジア沿岸に生息する。アマツバメ科は、極端に空中生活に適応したグループであり、繁殖期を除いてほとんど地表に降りることはない。睡眠も飛翔しながらとると言われるほどである。巣材も地表から集めるのではなく、空気中に漂っている鳥の羽毛などの塵埃を集め、これを唾液腺からの分泌物で固めて皿状の巣を作る。なかでもアナツバメ類の一部は、空中から採集した巣材をほとんど使わず、ほぼ全体が唾液腺の分泌物でできた巣を作る。海藻と唾液を混ぜて作った巣という俗説は正しくなく、海藻は基本的には含まれない。
アマツバメ科の鳥は一見スズメ目ツバメ科のツバメなどに似た姿をしているが、むしろヨタカやハチドリに縁が近く、日本のツバメとはかなり縁の遠い系統群の鳥である。
アナツバメの巣は海岸近くの断崖につくられるが、断崖絶壁などに巣を作る習性の鳥は、しばしば鉄筋コンクリート製の建造物の増加した近代的な都市を本来の営巣環境に近似した環境と受け止めて巣作りを行う。ハヤブサやチョウゲンボウの例が著名であるが、アナツバメ類にもこうした傾向が見られる。近年ではこのような習性を利用して、東南アジア諸国の鉄筋コンクリート製建造物の窓を開け放して天然の洞窟に似せた環境を整え、集団営巣地を作らせることができるようになり、市場への供給量が増した[1]。
東南アジア各国はアナツバメを保護するため、生息地への立ち入りを制限し、巣を採取する時期・方法などを厳重に管理している。アナツバメは雛が巣立ちしてしまうと同じ巣を利用することはないため、アナツバメが放棄した巣を採取している。オスは次の発情期になればまた唾液腺から特殊な分泌物を吐き出して新たに巣をつくる。
断崖絶壁における採取作業は非常に危険が伴う作業である。 阮葵生の﹃茶余客話﹄には、よく訓練した猿に布袋を背負わせて採取したと記されている。