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=== 日本の船名 ===<!-- 下方にある 2.11「日本」とは異なる表題にする --> |
=== 日本の船名 ===<!-- 下方にある 2.11「日本」とは異なる表題にする --> |
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[[File:Nihonmaru II 06.JPG|thumb|250px|[[日本丸|日本丸II世]]の船名および船籍港表示]] |
[[File:Nihonmaru II 06.JPG|thumb|250px|[[日本丸|日本丸II世]]の船名および船籍港表示]] |
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[[File:耕洋丸船名船籍202309.jpg|thumb|250px|[[水産大学校]]練習船の[[耕洋丸 (4代)|耕洋丸]]の船名および船籍港表示]] |
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日本に[[国籍#船舶の国籍|船籍]]を持つ船は、[[船舶法]]により、船名と船籍港を管海官庁([[地方運輸局]]等)に登録することが求められる。登録が受理されると、管海官庁から20[[トン数|トン]]以上の船には船舶国籍証書、20[[トン数|トン]]未満の船には船籍票が交付される。それには船名と船籍港その他が記載されており、航海中の船長は必ず所持していなければならない。また船首両側と船尾外部の見やすいところに船名を表示することが求められる。 |
日本に[[国籍#船舶の国籍|船籍]]を持つ船は、[[船舶法]]により、船名と船籍港を管海官庁([[地方運輸局]]等)に登録することが求められる。登録が受理されると、管海官庁から20[[トン数|トン]]以上の船には船舶国籍証書、20[[トン数|トン]]未満の船には船籍票が交付される。それには船名と船籍港その他が記載されており、航海中の船長は必ず所持していなければならない。また船首両側と船尾外部の見やすいところに船名を表示することが求められる。 |
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[[日本]]では「[[日本丸]]」のように、名前の最後に「'''丸'''」を付した船名が多い。1900年に制定された「船舶法取扱手続」(明治33年[[逓信省]][[通達|公達]]第363号)では「船舶ノ名称ニハ成ルベク其ノ末尾ニ丸ノ字ヲ附セシムベシ」(船舶の名称はなるべく、最後を丸とすること)と「丸」の付加を推奨していた<ref name="funenokagakukan_fq">{{ |
[[日本]]では「[[日本丸]]」のように、名前の最後に「'''丸'''」を付した船名が多い。1900年に制定された「船舶法取扱手続」(明治33年[[逓信省]][[通達|公達]]第363号)では「船舶ノ名称ニハ成ルベク其ノ末尾ニ丸ノ字ヲ附セシムベシ」(船舶の名称はなるべく、最後を丸とすること)と「丸」の付加を推奨していた<ref name="funenokagakukan_fq">{{Cite web|和書| url=http://www.funenokagakukan.or.jp/sc_08/index.html | title=海・船Q&A | publisher=[[船の科学館]] | accessdate=2012-02-11}}</ref><ref name="nihon-kaijikoho_maru">{{Cite web|和書| url=http://www.kaijipr.or.jp/mamejiten/fune/fune_20.html | title=船名の丸の由来 | publisher=[[日本海事広報協会]] | accessdate=2012-02-12}}</ref>(2001年の訓令改正でこの条項は削除された<ref name="funenokagakukan_fq" />)。 |
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企業が所有する船舶の場合は各企業ごとに命名の慣例があり、海運会社ではその所有する[[フェリー]]に河川や花の名前を付して特徴を出している(「[[さんふらわあ]]」と[[平仮名|ひらがな]]書きにするなど。)。 |
企業が所有する船舶の場合は各企業ごとに命名の慣例があり、海運会社ではその所有する[[フェリー]]に河川や花の名前を付して特徴を出している(「[[さんふらわあ]]」と[[平仮名|ひらがな]]書きにするなど。)。 |
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記録に残るもので「丸」の語尾を持つ最古の船は、[[1187年]]の[[仁和寺]]の文書に記された紀伊国住人源末利所有の「坂東丸」である<ref name="funenokagakukan_fq" /><ref name="kobe-kaijikoho_maru">{{ |
記録に残るもので「丸」の語尾を持つ最古の船は、[[1187年]]の[[仁和寺]]の文書に記された紀伊国住人源末利所有の「坂東丸」である<ref name="funenokagakukan_fq" /><ref name="kobe-kaijikoho_maru">{{Cite web|和書| url=http://www.portnet.ne.jp/~kaijkoho/maru.htm | title=日本の船にはどうして丸をつけるのですか。 | publisher=[[神戸海事広報協会]] | accessdate=2012-02-12}}</ref>。江戸時代には、軍船(将軍御座船「[[安宅丸]]」など)や、[[弁才船]]などの商船に多くの例がみられる。近代の船舶法取扱手続の規定もそれを踏まえたものであるが、そもそもなぜ「丸」が日本の船名に付けられたのかは諸説があって判然としない<ref name="funenokagakukan_fq" />。説のいくつかは、「[[麻呂|まろ]](麻呂・麿)」の転化から「丸」が人名に使われたこととの関連がある<ref name="funenokagakukan_fq" />。 |
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*人格説<ref name="funenokagakukan_fq" /><ref name="kobe-kaijikoho_maru" /> |
*人格説<ref name="funenokagakukan_fq" /><ref name="kobe-kaijikoho_maru" /> |
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:中世の[[問丸]]が所有する船に「丸」を用いたとする説。 |
:中世の[[問丸]]が所有する船に「丸」を用いたとする説。 |
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﹁丸﹂は日本船の名前の特徴として海外でも知られており、日本船はマル・シップ Maru-ship として知られる<ref name="nihon-kaijikoho_maru" />︵日本の船主が外国に船体を貸し出し、外国船員を乗り組ませてチャーターする方式も[[マルシップ]]と呼ばれる<ref>{{ |
﹁丸﹂は日本船の名前の特徴として海外でも知られており、日本船はマル・シップ Maru-ship として知られる<ref name="nihon-kaijikoho_maru" />︵日本の船主が外国に船体を貸し出し、外国船員を乗り組ませてチャーターする方式も[[マルシップ]]と呼ばれる<ref>{{Cite web|和書| url=https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/10/101120/01.pdf | title=︵参考︶ | publisher=国土交通省 | format=pdf | accessdate=2012-02-12}}</ref>︶。海外のフィクションにも﹁丸﹂の名を持つ船は登場する︵たとえば﹃[[スタートレック]]﹄シリーズの﹁[[コバヤシマル]]﹂︶。
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== 軍艦の命名慣例 == |
== 軍艦の命名慣例 == |
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=== 概要 === |
=== 概要 === |
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国家の所有物である艦艇の名前は国ごとに特徴があり、日本のように艦種毎に慣例が決まっている国もあれば、[[イギリス]]のように融通無碍に決めている国もある。国を問わずよく使われるのは自国内・領有主張している地域の地名(建造費用を寄付した地域の名をつけることもある)、国外戦勝地名、歴史上の人物や戦功ある軍人の人名、神話伝説にちなんだ名である。ただかつての[[大英帝国]]をはじめ艦艇数が多い国ほどこれだけでは足りなくなり、動植物、天象気象、印象のよい抽象名詞・形容詞など多彩な名前が使われる。多数が建造される |
国家の所有物である艦艇の名前は国ごとに特徴があり、日本のように艦種毎に慣例が決まっている国もあれば、[[イギリス]]のように融通無碍に決めている国もある。国を問わずよく使われるのは自国内・領有主張している地域の地名(建造費用を寄付した地域の名をつけることもある)、国外戦勝地名、歴史上の人物や戦功ある軍人の人名、神話伝説にちなんだ名である。ただかつての[[大英帝国]]をはじめ艦艇数が多い国ほどこれだけでは足りなくなり、動植物、[[天文現象|天象]][[気象]]、印象のよい抽象名詞・形容詞など多彩な名前が使われる。多数が建造される艦艇では「[[伊号第十七潜水艦]]」「[[第一号海防艦]]」「[[PTボート|PT109]]」など記号・数字のみのことも多い。 |
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====級名==== |
====級名==== |
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一般に軍用艦艇は運用上の便 |
一般に軍用艦艇は運用上の便益とコスト抑制のため共通の設計から複数の船を建造しており、同一の設計からなる船をまとめて「級」(Class) や「型」(Type) と呼ぶ。級や型の名前はたとえば「[[秋月型駆逐艦]]」のようにその中で最初に建造された船([[ネームシップ]]、一番艦、Lead ship)の名前を取るのが原則である。事情により建造が一隻だけの場合は個艦名が級名・型名と等しくなる。ただし「[[フラワー級コルベット]]」のように艦名を共通のカテゴリーの単語で揃えてその意味を級名とするもの、「[[O級駆逐艦]]」のように頭文字を揃えてその文字を級名とするもの、「[[42型駆逐艦]]」のように数字だけのものもある(さらに「[[22型フリゲート]]バッチ2」のように細分する)。同じ級・型の艦を互いに「姉妹(しまい)艦」と言うことがある。 |
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====頭語==== |
====頭語==== |
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=== ウクライナ === |
=== ウクライナ === |
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種類に関わらず原則として都市名・地域名が艦名として与えられている︵﹁[[ルーツィク (コルベット)|ルーツィク]]﹂、﹁[[ドンバス (統制艦)|ドンバス]]﹂など︶。その他には人名も見られるが、数は少ない︵﹁[[ヘーチマン・サハイダーチ |
種類に関わらず原則として都市名・地域名が艦名として与えられている(「[[ルーツィク (コルベット)|ルーツィク]]」、「[[ドンバス (統制艦)|ドンバス]]」など)。その他には人名も見られるが、数は少ない(「[[ヘーチマン・サハイダーチヌイ (フリゲート)|ヘーチマン・サハイダーチヌイ]]」など)。内訳は[[ウクライナ・コサック]]かソ連時代のウクライナの著名人など比較的[[ウクライナ人]]の民族アイデンティティーと結び付けやすい時期の人名が多く、[[キエフ大公国]]や[[ハールィチ・ヴォルィーニ大公国]]などあまりに古い時代のウクライナの著名人の名は用いられていない。特殊な例としては、「[[ザポロージャ・シーチ]]」([[ザポロージャ・コサック]]の根拠地の名称)と名付けられた艦が存在する。 |
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ウクライナ海軍の艦艇は旧ソ連海軍の黒海艦隊の約半分を受けついだものだが、艦名はほとんどがソ連時代の名称から変更されている。ただし、「[[コスチャントィーン・オリシャーンシクィイ (大型揚陸艦)|コスチャントィーン・オリシャーンシクィイ]]」はソ連時代の名称([[ロシア語]]名)を[[ウクライナ語]]名に直しただけである。[[ウクライナ国家国境庁]]の管轄である[[ウクライナ国家国境庁海上警備隊|海上警備隊]]艦艇も同じような状況であるが、こちらにも「ザポロージャ・シーチ」と命名された艦艇が存在する。 |
ウクライナ海軍の艦艇は旧ソ連海軍の黒海艦隊の約半分を受けついだものだが、艦名はほとんどがソ連時代の名称から変更されている。ただし、「[[コスチャントィーン・オリシャーンシクィイ (大型揚陸艦)|コスチャントィーン・オリシャーンシクィイ]]」はソ連時代の名称([[ロシア語]]名)を[[ウクライナ語]]名に直しただけである。[[ウクライナ国家国境庁]]の管轄である[[ウクライナ国家国境庁海上警備隊|海上警備隊]]艦艇も同じような状況であるが、こちらにも「ザポロージャ・シーチ」と命名された艦艇が存在する。 |
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=== オーストラリアとニュージーランド === |
=== オーストラリアとニュージーランド === |
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[[イギリス連邦]]に所属している[[オーストラリア]]は国家元首がイギリスの君主であるため、[[オーストラリア海軍]] ('''R'''oyal '''A'''ustralian '''N'''avy; RAN) 軍艦の正式な艦名にはHMAS ('''H'''er '''M'''ajesty's '''A'''ustralian '''S'''hip) が艦名の前に付く。同様に[[ニュージーランド海軍]] (RNZN) の艦名にはHMNZSが付く。 |
[[イギリス連邦]]に所属している[[オーストラリア]]は国家元首がイギリスの君主であるため、[[オーストラリア海軍]] ('''R'''oyal '''A'''ustralian '''N'''avy; RAN) 軍艦の正式な艦名にはHMAS ('''H'''er/His '''M'''ajesty's '''A'''ustralian '''S'''hip) が艦名の前に付く。同様に[[ニュージーランド海軍]] (RNZN) の艦名にはHMNZSが付く。 |
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オーストラリア海軍では、かつてはイギリスと同様な命名方法を取っていたが、小所帯な海軍であるため現在では主要な艦艇は地名で事足りている。[[コリンズ級潜水艦]]では人名が採用されたが、アメリカやイタリアなどとは異なりラストネームのみを艦名としている。 |
オーストラリア海軍では、かつてはイギリスと同様な命名方法を取っていたが、小所帯な海軍であるため現在では主要な艦艇は地名で事足りている。[[コリンズ級潜水艦]]では人名が採用されたが、アメリカやイタリアなどとは異なりラストネームのみを艦名としている。 |
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[[日本]]では、艦名撰定の標準を設け、艦船に体系的に名前を与えるようになったのは、[[1874年]]8月に当時の[[海軍大輔]][[川村純義]]が定めて以降のことである<ref name="海軍制度沿革8">『海軍制度沿革』第15篇 第4章「進水 命名 本籍」、第2節「命名」、序文【艦船ノ命名ニ關スル沿革】より。</ref>。[[江戸幕府]]の海軍には「[[咸臨丸]]」など「丸」の語尾を持つ軍艦があったが、後に「艦」に改められて「[[蟠竜丸|蟠竜艦]]」などと称した。[[明治維新]]の後に「艦」が無くなって現在のような表記となった。 |
[[日本]]では、艦名撰定の標準を設け、艦船に体系的に名前を与えるようになったのは、[[1874年]]8月に当時の[[海軍大輔]][[川村純義]]が定めて以降のことである<ref name="海軍制度沿革8">『海軍制度沿革』第15篇 第4章「進水 命名 本籍」、第2節「命名」、序文【艦船ノ命名ニ關スル沿革】より。</ref>。[[江戸幕府]]の海軍には「[[咸臨丸]]」など「丸」の語尾を持つ軍艦があったが、後に「艦」に改められて「[[蟠竜丸|蟠竜艦]]」などと称した。[[明治維新]]の後に「艦」が無くなって現在のような表記となった。 |
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使う文字は[[日本 |
使う文字は[[大日本帝国海軍]]・[[大日本帝国陸軍]]は漢字︵軍の船艇で一部ひらがな︶。戦後の[[自衛隊]]はひらがなである。海上保安庁の場合は測量船以外は原則ひらがなだが、旧海軍艦の艦名を引き継いだ﹁[[宗谷 (船)|宗谷]]﹂・﹁[[栗橋 (救難船)|栗橋]]﹂のような例外がある。
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明治以後の日本の特徴として、艦船名に[[人名]]を当てないことがあげられるが、これは[[明治天皇]]から艦名についての下問があり、臣下が諸外国では偉人の名前をとることがある旨奏上したところ、同意が得られず、以後日本では艦名に人名を使用しないこととなった<ref>[[片桐大自]]「聯合艦隊軍艦銘銘伝」潮書房光人社、2014年、p.24〜25『大海軍発展秘史』(1944年、弘道館図書)より引用</ref>。しかし[[1982年]](昭和57年)に[[防衛庁]](当時)所有の[[砕氷艦]]の艦船名を公募したところ、日本で初めて[[南極]]探検を敢行した[[白瀬矗]][[大日本帝国陸軍|陸軍]][[中尉]]に因む「[[しらせ (砕氷艦・初代)|しらせ]]」が上位となった。防衛庁は「しらせ」を艦船名に採用するにあたり、人名ではなく[[昭和基地]]近くの地名である『[[白瀬氷河]]』(白瀬矗に因む地名)に由来することとし、人名を艦船名には採用できないという問題をクリアしている。 |
明治以後の日本の特徴として、艦船名に[[人名]]を当てないことがあげられるが、これは[[明治天皇]]から艦名についての下問があり、臣下が諸外国では偉人の名前をとることがある旨奏上したところ、同意が得られず、以後日本では艦名に人名を使用しないこととなった<ref>[[片桐大自]]「聯合艦隊軍艦銘銘伝」潮書房光人社、2014年、p.24〜25『大海軍発展秘史』(1944年、弘道館図書)より引用</ref>。しかし[[1982年]](昭和57年)に[[防衛庁]](当時)所有の[[砕氷艦]]の艦船名を公募したところ、日本で初めて[[南極]]探検を敢行した[[白瀬矗]][[大日本帝国陸軍|陸軍]][[中尉]]に因む「[[しらせ (砕氷艦・初代)|しらせ]]」が上位となった。防衛庁は「しらせ」を艦船名に採用するにあたり、人名ではなく[[昭和基地]]近くの地名である『[[白瀬氷河]]』(白瀬矗に因む地名)に由来することとし、人名を艦船名には採用できないという問題をクリアしている。 |
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** 一等駆逐艦:天象、気象、海洋、季節などに関係のある名。昭和18年には植物名が追加された。 |
** 一等駆逐艦:天象、気象、海洋、季節などに関係のある名。昭和18年には植物名が追加された。 |
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** 二等駆逐艦:植物名。 |
** 二等駆逐艦:植物名。 |
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* 潜水艦:当初は「第○○潜水艦(潜水艇) |
* 潜水艦:当初は「第○○潜水艦(潜水艇)」と大きさに関係なく通し番号が付与されていたが、等級が定められてからは以下のとおり区分けが行われた。 |
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** 一等潜水艦:「伊号第○○潜水艦」。 |
** 一等潜水艦:「伊号第○○潜水艦」。 |
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** 二等潜水艦:「呂号第○○潜水艦」。 |
** 二等潜水艦:「呂号第○○潜水艦」。戦争後期に建造された基準排水量500トン未満の潜水艦は「波号第○○潜水艦」と命名された。 |
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* [[水雷艇]]:[[鳥]]の名前。 |
* [[水雷艇]]:[[鳥]]の名前。 |
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* [[海防艦]]‥[[島]]、[[島嶼]]、[[列島]]の名。﹁多くの島﹂を意味する八十島と五百島も艦名に使われた。[[太平洋戦争]]末期に建造された艦は番号名︵[[丙型海防艦|丙型]]‥奇数番号、[[丁型海防艦|丁型]]‥偶数番号︶も使われた。
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* [[海防艦]]‥[[島]]、[[島嶼]]、[[列島]]の名。﹁多くの島﹂を意味する八十島と五百島も艦名に使われた。[[太平洋戦争]]末期に建造された艦は番号名︵[[丙型海防艦|丙型]]‥奇数番号、[[丁型海防艦|丁型]]‥偶数番号︶も使われた。
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* [[砲艦]]:名所古蹟の名。 |
* [[砲艦]]:名所古蹟の名。 |
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* [[潜水母艦]]:[[鯨]]が末尾に付く名。 |
* [[潜水母艦]]:[[鯨]]が末尾に付く名。 |
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* [[掃海艇]]・[[駆潜艇]]・[[哨戒艇]]・[[輸送艦]]:番号名。 |
* [[掃海艇]]・[[駆潜艇]]・[[哨戒艇]]・[[輸送艦]]・[[特務艦|特務艇]]:番号名。 |
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* [[特務艦]]‥[[海峡]]、[[水道 (地理)|水道]]、[[瀬戸]]、[[港湾]]、[[岬]]、[[半島]]の名。
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* [[特務艦]]‥[[海峡]]、[[水道 (地理)|水道]]、[[瀬戸]]、[[港湾]]、[[岬]]、[[半島]]の名。
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* [[雑役船]]:番号名(公称第○○号)もしくは番号+名詞(第○黒潮など)。1937年から、600トン以上の大型雑役船、曳船および救難船の新造船については、泊地にちなんだ地名(市町村名、地域名など)を使用することができるようになった。<ref>『官房306号 12.1.22 雑役船の公称番号及船種変更の件』第2画像</ref> |
* [[雑役船]]:番号名(公称第○○号)もしくは番号+名詞(第○黒潮など)。1937年から、600トン以上の大型雑役船、曳船および救難船の新造船については、泊地にちなんだ地名(市町村名、地域名など)を使用することができるようになった。<ref>『官房306号 12.1.22 雑役船の公称番号及船種変更の件』第2画像</ref> |
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==== 陸軍 ==== |
==== 陸軍 ==== |
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{{see also|陸軍特 |
{{see also|陸軍特殊船}} |
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[[大日本帝国陸軍]]は[[陸軍運輸部]]兼[[船舶司令部]]を長とする船舶部隊(陸軍船舶部隊)を擁しており、主に兵員や物資の海上輸送を自前で行っていた(なお、陸軍が海軍とは別に揚陸や輸送を目的とする独自の船舶部隊を保有する事は、日本陸軍だけでなく同時期の[[アメリカ陸軍]]でも大々的に行われていた行為である)。大半は民間商船(および民間船員)のチャーター・[[徴用]]によって輸送は行われていたが、古くより[[上陸作戦|上陸戦]]に理解のあった日本陸軍は[[陸軍特 |
[[大日本帝国陸軍]]は[[陸軍運輸部]]兼[[船舶司令部]]を長とする船舶部隊(陸軍船舶部隊)を擁しており、主に兵員や物資の海上輸送を自前で行っていた(なお、陸軍が海軍とは別に揚陸や輸送を目的とする独自の船舶部隊を保有する事は、日本陸軍だけでなく同時期の[[アメリカ陸軍]]でも大々的に行われていた行為である)。大半は民間商船(および民間船員)のチャーター・[[徴用]]によって輸送は行われていたが、古くより[[上陸作戦|上陸戦]]に理解のあった日本陸軍は[[陸軍特殊船|特殊船]]と称す先進的な[[揚陸艦]]([[上陸用舟艇]]母船)を世界に先駆けて多数開発・運用していた。 |
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これら特 |
これら特殊船を中心とする日本陸軍の保有船ないし事実上の保有船には、原則として民間商船と同様に「〜丸」の船名が用いられていた。命名において日本海軍の様な厳格な基準は設けられていないが、特殊船の多くは上陸戦という用途に因み「船の停泊する場所([[港湾|港]]・[[泊地]]・碇泊場)」といった意味を持つ「つ」ないし「津」の一文字が使用され(「[[あきつ丸]]」・「[[玉津丸]]」・「[[吉備津丸]]」・「[[摂津丸]]」・「[[にぎつ丸]]」等)、強力曳船の多くは「海」の一文字が使用(「照海丸」、「[[映海丸]]」、「南海丸」、「北海丸」など)された。 |
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しかしながら例外も多く、陸軍がまず最初に上陸戦の研究・訓練用として購入した[[軍隊輸送船]]である﹁[[宇品丸]]﹂は、陸軍運輸部の本部も置かれている一大拠点である[[広島県]][[宇品]]︵[[広島港#宇品港|宇品港]]︶の地名に由来し、次に建造・保有した日本初にして世界初の[[ドック型揚陸艦]]︵および[[強襲揚陸艦]]の先駆け的存在︶である﹁[[神州丸]]﹂の﹁[[神国|神州]]﹂は、海軍艦艇の﹁扶桑﹂等と同様に日本の異称・雅称であった。この他、後の量産特 |
しかしながら例外も多く、陸軍がまず最初に上陸戦の研究・訓練用として購入した[[軍隊輸送船]]である﹁[[宇品丸]]﹂は、陸軍運輸部の本部も置かれている一大拠点である[[広島県]][[宇品]]︵[[広島港#宇品港|宇品港]]︶の地名に由来し、次に建造・保有した日本初にして世界初の[[ドック型揚陸艦]]︵および[[強襲揚陸艦]]の先駆け的存在︶である﹁[[神州丸]]﹂の﹁[[神国|神州]]﹂は、海軍艦艇の﹁扶桑﹂等と同様に日本の異称・雅称であった。この他、後の量産特殊船においても﹁[[摩耶山丸]]﹂・﹁[[熊野丸]]﹂・﹁[[日向丸]]﹂が該当する。変わったところでは、[[うらる丸]]や[[りま丸]]、[[伯剌西爾丸]]など外国の地名がついているものもある。これらは民間から徴用された船であり、徴用される前の名前のまま、運用された。
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もっとも、他の船舶および舟艇においては「丸」が付かない例外もあり、高速偵察艇である[[高速艇甲]](HB-K)は「稲妻(1号艇)」・「鳴神(2号艇)」・「飛龍(3号艇)」・「吹雪(4号艇)」・「神風(5号艇)」、[[砲艦|砲艇]]である[[装甲艇]](AB艇) には「さきがけ(1号艇)」・「勝鬨(2号艇)」、[[戦車揚陸艦]]に相当する[[機動艇]](SS艇)は「蛟竜(1号艇)」・「蟠龍(2号艇)」・「海龍(3号艇)」と、愛称相当の固有船名がそれぞれ命名されていた。しかしながらこれらの艇名(船名)は試作艇とも言える初期生産艇に限られ、以降の量産艇は命名されておらず、機動艇は「機動第3号艇(旧:海龍)」等と改称されている。同様に多数が量産される船舶・舟艇は固有名を持たないものが多く、機動艇の様に「第○号艇」(○は数字)と称された他、輸送潜水艇である[[三式潜航輸送艇|潜航輸送艇]](マルゆ)は造船所毎の建造順に数字が与えられ「ゆ1」([[日立製作所]]製)、「ゆ1001」([[日本製鋼所]]製)、「ゆ2001」(安藤鉄工所製)等と称されていた。 |
もっとも、他の船舶および舟艇においては「丸」が付かない例外もあり、高速偵察艇である[[高速艇甲]](HB-K)は「稲妻(1号艇)」・「鳴神(2号艇)」・「飛龍(3号艇)」・「吹雪(4号艇)」・「神風(5号艇)」、[[砲艦|砲艇]]である[[装甲艇]](AB艇) には「さきがけ(1号艇)」・「勝鬨(2号艇)」、[[戦車揚陸艦]]に相当する[[機動艇]](SS艇)は「蛟竜(1号艇)」・「蟠龍(2号艇)」・「海龍(3号艇)」と、愛称相当の固有船名がそれぞれ命名されていた。しかしながらこれらの艇名(船名)は試作艇とも言える初期生産艇に限られ、以降の量産艇は命名されておらず、機動艇は「機動第3号艇(旧:海龍)」等と改称されている。同様に多数が量産される船舶・舟艇は固有名を持たないものが多く、機動艇の様に「第○号艇」(○は数字)と称された他、輸送潜水艇である[[三式潜航輸送艇|潜航輸送艇]](マルゆ)は造船所毎の建造順に数字が与えられ「ゆ1」([[日立製作所]]製)、「ゆ1001」([[日本製鋼所]]製)、「ゆ2001」(安藤鉄工所製)等と称されていた。 |
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==== 海上自衛隊 ==== |
==== 海上自衛隊 ==== |
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[[海上自衛隊]]の命名基準は「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」(昭和35年(1960年)海上自衛隊訓令第30号)<ref>http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1960/ax19600924_00030_000.pdf</ref>に定められている。人名、都市名は使用しない、艦名の表記は'''ひらがな'''のみ、同型艦には基本的に同じ系統の名前を使用する([[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]]なら「ゆき」がつくなど)などである。 |
[[海上自衛隊]]の命名基準は﹁海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令﹂︵昭和35年︵1960年︶海上自衛隊訓令第30号︶<ref>[http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1960/ax19600924_00030_000.pdf 昭和35年海上自衛隊訓令第30号]</ref>に定められており、﹁海上自衛隊の使用する船舶の名称を選出する標準について︵通知︶﹂︵海幕総第3807号。昭和56年8月20日︶<ref>[http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/e_fd/1981/ez19810820_03807_000.pdf 海上自衛隊の使用する船舶の名称を選出する標準について︵通知︶︵海幕総第3807号。昭和56年8月20日︶]</ref>においてより細やかな規定が定められている。人名、都市名は使用しない、艦名の表記は'''ひらがな'''のみ、同型艦には基本的に同じ系統の名前を使用する︵[[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]]なら﹁ゆき﹂がつくなど︶などである。
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{{要出典範囲|かつては同型艦の艦名は文字数を揃えるという非公式のルールがあった。このルールが変更されたのは、[[あぶくま型護衛艦]]の「[[ちくま (護衛艦)|ちくま]]」「[[とね (護衛艦)|とね]]」からで、文字数が同型艦の4文字から変更されたのは、当時の海幕総務課の担当者の「何処にあるか判らん川の名前を使えるか」というセンスであった。 |
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[[あさひ型護衛艦 (2代) |
そのほか、先代の同名の自衛艦が物理的に存在する場合はその艦名を用いないという不文律もあった|date=2024年2月29日}}。[[あさひ型護衛艦 (2代)]]の2番艦においては、先代である[[あさひ型護衛艦 (初代)|あさひ型護衛艦]]の2番艦「はつひ」が踏襲されると予想されていたが、「はつひ」は[[1978年]]に[[フィリピン海軍]]に供与され「[[ラジャ・フマボン (フリゲート)|ラジャー・フマボン]]」となっており、同艦は2018年3月15日に退役<ref>[http://globalnation.inquirer.net/165019/ph-navys-oldest-warship-retires-service?utm_campaign=Echobox&utm_medium=Social&utm_source=Facebook#link_time=1521099878 PH Navy’s oldest warship fades away](2018年3月15日).2018年3月17日閲覧。</ref>した。あさひ型護衛艦の2番艦は、2017年10月12日に「[[しらぬい (護衛艦)|しらぬい]]」と命名された。 |
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なお、このルールは旧海軍艦には適用されず、特務艦﹁[[宗谷 (船)|宗谷]]﹂が海上保安庁の巡視船として船名もそのままに現役であったにもかかわらず、海上自衛隊が新たに建造した敷設艦に﹁[[そうや (機雷敷設艦)|そうや]]﹂と命名したなどの例がある。
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[[文部科学省]]が建造した﹁[[しらせ (砕氷艦・2代)|しらせ (2代)]]﹂は、同省の[[南極地域観測統合推進本部]]が艦名の公募事務を行い<ref>[http://www.nipr.ac.jp/jare/newship/ 新南極観測船の船名募集 南極地域観測統合推進本部︵2007年︶] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20120626011421/http://www.nipr.ac.jp/jare/newship/ |date=2012年6月26日 }}</ref>、公募での1位は﹁ゆきはら﹂であったが、南極に足を踏み入れた最初の日本人・[[白瀬矗]]の出身地、[[秋田県]][[にかほ市]]から﹁しらせ﹂の艦名を望む投書が多数届いた<ref>[https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/nankyoku/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/05/19/1300625_01.pdf 第132回南極地域観測統合推進本部総会 議事次第]</ref>。このため﹁応募と手紙を合わせれば1位となる﹂として、﹁防衛省海上自衛隊所属の砕氷艦になることから、防衛省で'''現在使われている'''艦艇名は付けられません﹂とする要項に関しては防衛省との間で調整が行われ﹁就航時に初代﹁しらせ﹂は退役しており、混同する恐れはない﹂として2代目の﹁しらせ﹂とした<ref>[https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/nankyoku/07111411.htm 新南極観測船の船名募集に応募していただいた皆様へ]</ref>。また、そもそも初代﹁しらせ﹂についても、当時の命名基準﹁名所旧跡のうち'''主として山の名'''﹂を、﹁名所旧跡のうち'''主として山又は氷河の名'''﹂と[[しらせ (砕氷艦・初代)#艦名の由来|改正した上で命名している]]。
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戦闘に従事する[[護衛艦]]では、旧日本海軍の艦名を引き継いだ例が多い。 |
戦闘に従事する[[護衛艦]]では、旧日本海軍の艦名を引き継いだ例が多い。 |
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ただし、[[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]]・[[あさぎり型護衛艦|あさぎり型]]には初の艦名が多いが、これは前述の文字数制限もあり、「ふぶき」「みゆき」「さぎり」などが使えなかった事も一因である。また、[[深雪 (駆逐艦)|深雪]]は事故喪失艦というのも使われなかった理由であろう。 |
ただし、[[はつゆき型護衛艦|はつゆき型]]・[[あさぎり型護衛艦|あさぎり型]]には初の艦名が多いが、これは前述の文字数制限もあり、﹁ふぶき﹂﹁みゆき﹂﹁さぎり﹂などが使えなかった事も一因である。また、[[深雪 (駆逐艦)|深雪]]は事故喪失艦というのも使われなかった理由であろう。他に使われない艦名には﹁[[大和 (戦艦)|やまと]]﹂(﹁[[しらせ (砕氷艦・初代)|しらせ (初代)]]﹂建造の際は将来建造される新型艦の名称として残しておきたいという理由で外された)、﹁[[神風 (駆逐艦)|かみかぜ]]﹂(戦後の復員輸送中に難破し喪失。また、[[神風特別攻撃隊]]を連想させる)などがある。
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他に使われない艦名には「[[大和 (戦艦)|やまと]]」(事実上の永久欠番){{要出典|date=2021年2月}} |
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、﹁[[神風 (駆逐艦)|かみかぜ]]﹂(戦後の復員輸送中に難破し喪失。また、[[神風特別攻撃隊]]を連想させる)、﹁[[鈴谷 (重巡洋艦)|すずや]]﹂(ロシアの[[サハリン州]]となった[[樺太]]の[[鈴谷川]]に由来)、などがある。
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護衛艦の命名について政治的な配慮がなされることがある。周知の事例としては、護衛艦「[[しらね (護衛艦)|しらね]]」は、本来は別の艦名が予定されていたとされるが、当時の[[防衛庁長官]][[金丸信]]の地元である山梨県にある[[白峰三山]](しらねさんざん)の名称を採用した<ref>{{Cite book ja-jp |
護衛艦の命名について政治的な配慮がなされることがある。周知の事例としては、護衛艦「[[しらね (護衛艦)|しらね]]」は、本来は別の艦名が予定されていたとされるが、当時の[[防衛庁長官]][[金丸信]]の地元である山梨県にある[[白峰三山]](しらねさんざん)の名称を採用した<ref>{{Cite book ja-jp |
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}}</ref>(旧海軍に「しらね」に該当する艦名の一等巡洋艦、巡洋戦艦は存在しなかった)。 |
}}</ref>(旧海軍に「しらね」に該当する艦名の一等巡洋艦、巡洋戦艦は存在しなかった)。 |
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* ヘリコプター搭載護衛艦 (DDH):地 |
* ヘリコプター搭載護衛艦 (DDH):地方名(=旧国名)・山岳名。[[ひゅうが型護衛艦|ひゅうが型]]以降は旧国名が採用されている。 |
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*: [[はるな型護衛艦|はるな型]]などこれまでのヘリコプター護衛艦は山岳から名を取っており、旧海軍の一等巡洋艦(重巡洋艦)・巡洋戦艦の名が与えられていた。一方、2007年に進水した実質的な[[ヘリ空母]]であるひゅうが型は、命名基準にある「地域名」の範疇として、旧海軍で戦艦の名([[伊勢型戦艦|伊勢型]]2番艦「[[日向 (戦艦)|日向]]」と同名)とされていた旧国名をDDHとして初めて採用した。2番艦「[[いせ (護衛艦)|いせ]]」も、同じく伊勢型戦艦1番艦の[[伊勢 (戦艦)|名前]]である。これは次級となる[[いずも型護衛艦]]にも踏襲され、1番艦「[[いずも (護衛艦)|いずも]]」は[[出雲型装甲巡洋艦]]「[[出雲 (装甲巡洋艦)|出雲]]」の名前を、2番艦「[[かが (護衛艦)|かが]]」は、[[大日本帝国海軍|旧海軍]]の[[航空母艦]]「[[加賀 (空母)|加賀]]」の名前を継いだ。 |
*: [[はるな型護衛艦|はるな型]]などこれまでのヘリコプター護衛艦は山岳から名を取っており、旧海軍の一等巡洋艦(重巡洋艦)・巡洋戦艦の名が与えられていた。一方、2007年に進水した実質的な[[ヘリ空母]]であるひゅうが型は、命名基準にある「地域名」の範疇として、旧海軍で戦艦の名([[伊勢型戦艦|伊勢型]]2番艦「[[日向 (戦艦)|日向]]」と同名)とされていた旧国名をDDHとして初めて採用した。2番艦「[[いせ (護衛艦)|いせ]]」も、同じく伊勢型戦艦1番艦の[[伊勢 (戦艦)|名前]]である。これは次級となる[[いずも型護衛艦]]にも踏襲され、1番艦「[[いずも (護衛艦)|いずも]]」は[[出雲型装甲巡洋艦]]「[[出雲 (装甲巡洋艦)|出雲]]」の名前を、2番艦「[[かが (護衛艦)|かが]]」は、[[大日本帝国海軍|旧海軍]]の[[航空母艦]]「[[加賀 (空母)|加賀]]」の名前を継いだ。 |
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* ミサイル護衛艦 (DDG):山岳名・天象気象。[[こんごう型護衛艦|こんごう型]]以降は山岳名が採用されている。 |
* ミサイル護衛艦 (DDG):山岳名・天象気象。[[こんごう型護衛艦|こんごう型]]以降は山岳名が採用されている。 |
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*: [[はるかぜ型護衛艦|はるかぜ型]]︵戦後初の国産自衛艦︶の命名にあたり、﹁[[はるかぜ (護衛艦)|はるかぜ]]﹂と﹁[[ゆきかぜ (護衛艦)|ゆきかぜ]]﹂が用いられたことに始まる。以後の国産汎用護衛艦 (DD) は﹁〜なみ﹂、﹁〜あめ﹂、﹁〜くも﹂、﹁〜つき﹂、﹁〜ゆき﹂、﹁〜きり﹂とつづき、21世紀に入ってふたたび﹁〜あめ﹂、﹁〜なみ﹂、﹁〜つき﹂が使用されるようになった。
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*: [[はるかぜ型護衛艦|はるかぜ型]]︵戦後初の国産自衛艦︶の命名にあたり、﹁[[はるかぜ (護衛艦)|はるかぜ]]﹂と﹁[[ゆきかぜ (護衛艦)|ゆきかぜ]]﹂が用いられたことに始まる。以後の国産汎用護衛艦 (DD) は﹁〜なみ﹂、﹁〜あめ﹂、﹁〜くも﹂、﹁〜つき﹂、﹁〜ゆき﹂、﹁〜きり﹂とつづき、21世紀に入ってふたたび﹁〜あめ﹂、﹁〜なみ﹂、﹁〜つき﹂が使用されるようになった。
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* 地方隊用護衛艦 (DE):河川の名前。 |
* 地方隊用護衛艦 (DE):河川の名前。 |
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*: 初期には﹁[[あさひ型護衛艦 (初代)|あさひ]]﹂﹁[[あけぼの (護衛艦・2代)|あけぼの]]﹂などもあったが、[[いすず型護衛艦|いすず型]]以降は、河川の名前が定着した。後継となる[[もがみ型護衛艦|もがみ型護衛艦 |
*: 初期には﹁[[あさひ型護衛艦 (初代)|あさひ]]﹂﹁[[あけぼの (護衛艦・2代)|あけぼの]]﹂などもあったが、[[いすず型護衛艦|いすず型]]以降は、河川の名前が定着した。後継となる[[もがみ型護衛艦|もがみ型護衛艦︵FFM︶]]においても、2020年11月19日に進水した2番艦﹁[[くまの (護衛艦・2代)|くまの]]﹂共々河川の名前を採用している。
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* 潜水艦:海象・水中動物・瑞祥動物。 |
* 潜水艦:海象・水中動物・瑞祥動物。 |
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*: 海上自衛隊初の潜水艦としてアメリカから貸与された[[ガトー級潜水艦]]「ミンゴ」(Mingo, SS-261) に「[[くろしお (潜水艦)|くろしお]]」の名前が与えられたことに始まる。2007年11月5日付の改正で「[[瑞獣|瑞祥動物]]」が追加された。瑞祥動物は「[[そうりゅう (潜水艦)|そうりゅう]]」が最初の採用例である。水中動物の名前が与えられた潜水艦はこれまで登場していなかったが、2020年10月14日に進水した「[[たいげい (潜水艦)|たいげい]]」において初めて採用された。 |
*: 海上自衛隊初の潜水艦としてアメリカから貸与された[[ガトー級潜水艦]]「ミンゴ」(Mingo, SS-261) に「[[くろしお (潜水艦・初代)|くろしお]]」の名前が与えられたことに始まる。2007年11月5日付の改正で「[[瑞獣|瑞祥動物]]」が追加された。瑞祥動物は「[[そうりゅう (潜水艦)|そうりゅう]]」が最初の採用例である。水中動物の名前が与えられた潜水艦はこれまで登場していなかったが、2020年10月14日に進水した「[[たいげい (潜水艦)|たいげい]]」において初めて採用された。 |
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* 掃海艦・掃海艇:島の名前。 |
* 掃海艦・掃海艇:島の名前。 |
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* 掃海母艦:海峡の名前。 |
* 掃海母艦:海峡の名前。 |
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* 大型の輸送艦:半島の名前。 |
* 大型の輸送艦:半島の名前。 |
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* 練習艦:神社の名前。 |
* 練習艦:神社の名前。 |
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* 訓練支援艦:峡谷の名前 |
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* 多用途支援艦;灘の名前 |
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* 海洋観測艦:海浜(浦)の名前 |
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* 音響測定艦:海湾の名前 |
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* 砕氷艦:山又は氷河の名前。 |
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* 敷設艦:岬の名前 |
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* 試験艦:文明・文化に関係する土地の名前 |
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* 小型艇:番号・鳥の名前。 |
* 小型艇:番号・鳥の名前。 |
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==== 海上保安庁 ==== |
==== 海上保安庁 ==== |
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海上保安庁が保有する[[巡視船]]名の表記はいずれも[[平仮名|ひらがな]]のみだが、海上自衛隊とは異なり[[促音]]、[[拗音]]に小さな文字を使用しない。測量船のみ漢字表記が用いられている。脚韻を踏む慣 |
海上保安庁が現在保有する[[巡視船]]名の表記はいずれも[[平仮名|ひらがな]]のみだが、海上自衛隊とは異なり[[促音]]、[[拗音]]に小さな文字を使用しない。測量船のみ漢字表記が用いられている。脚韻を踏む慣例も採用されており、同じ級の船名は一つの命名基準によって命名されるが、近年は{{いつ|date=2013年3月}}複数の命名源が使用されることもある。
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大型巡視船の船名には[[地名]]が主用されており、ヘリコプター搭載巡視船は[[日本国]]の異名(2機搭載型)や[[旧国名]]・[[海峡]]・[[水道]]・[[山岳]](1機搭載型)から、大型巡視船 (PL) は[[半島]]・[[島嶼]]・[[岬]]・[[湾]]・[[海岸]]から、中型巡視船 (PM) は[[河川]]・島嶼から、小型巡視船 (PS) は山岳からとなっている。小型巡視船は天象気象、[[花卉]]、[[天体|星]]や[[星座]]の名前が使用されている。このうち天象気象名は海上自衛隊と同様の命名がなされており、「〜かぜ」、「〜きり」、「〜くも」など旧海軍の[[駆逐艦]]、海上自衛隊の[[護衛艦]]と同名の巡視船も多い。また、消防船 (FL) は「〜りゆう」(「ひりゆう」FL-01など)、消防艇 (FS) は[[滝]]の名(きよたき型消防艇)、灯台見回り船は「〜うん」(「[[積雲|せきうん]]」LM-203など)、「〜ひかり」(「にじひかり」LS-235など)、「〜こう」(「げつこう」LS-187など)、測量船は「〜洋」(「[[昭洋 (測量船・2代)|昭洋]]」HL-01など)の語尾が採用されている。花卉の一部や星、星座名を使用する巡視艇、監視取締艇では「[[コスモス|こすもす]]」CL-246、「[[彗星|こめつと]]」SS-30といった[[日本語]]に由来しない名前も多く採用されている。星、星座名では「[[オリオン座|おりおん]]」SS-51のように日本で慣用的に使用されている発音が採用されており、「オライオン」のような[[英語]]の発音ではない。「[[アヤメ|あいりす]]」CL-239と「[[アヤメ|あやめ]]」CL-134、「[[ポラリス (恒星)|ぽらりす]]」SS-35と「[[北極星|ぽおらすたあ]]」SS-36のように、そもそも原義が同じ単語も採用されている。現在は在籍していないが、Mナンバーの雑船は、個船名は付されずにそのまま「M+3桁の番号」で呼ばれていた。 |
大型巡視船の船名には[[地名]]が主用されており、ヘリコプター搭載巡視船は[[日本国]]の異名(2機搭載型)や[[旧国名]]・[[海峡]]・[[水道]]・[[山岳]](1機搭載型)から、大型巡視船 (PL) は[[半島]]・[[島嶼]]・[[岬]]・[[湾]]・[[海岸]]から、中型巡視船 (PM) は[[河川]]・島嶼から、小型巡視船 (PS) は山岳からとなっている。小型巡視船は天象気象、[[花卉]]、[[天体|星]]や[[星座]]の名前が使用されている。このうち天象気象名は海上自衛隊と同様の命名がなされており、「〜かぜ」、「〜きり」、「〜くも」など旧海軍の[[駆逐艦]]、海上自衛隊の[[護衛艦]]と同名の巡視船も多い。また、消防船 (FL) は「〜りゆう」(「ひりゆう」FL-01など)、消防艇 (FS) は[[滝]]の名(きよたき型消防艇)、灯台見回り船は「〜うん」(「[[積雲|せきうん]]」LM-203など)、「〜ひかり」(「にじひかり」LS-235など)、「〜こう」(「げつこう」LS-187など)、測量船は「〜洋」(「[[昭洋 (測量船・2代)|昭洋]]」HL-01など)の語尾が採用されている。花卉の一部や星、星座名を使用する巡視艇、監視取締艇では「[[コスモス|こすもす]]」CL-246、「[[彗星|こめつと]]」SS-30といった[[日本語]]に由来しない名前も多く採用されている。星、星座名では「[[オリオン座|おりおん]]」SS-51のように日本で慣用的に使用されている発音が採用されており、「オライオン」のような[[英語]]の発音ではない。「[[アヤメ|あいりす]]」CL-239と「[[アヤメ|あやめ]]」CL-134、「[[ポラリス (恒星)|ぽらりす]]」SS-35と「[[北極星|ぽおらすたあ]]」SS-36のように、そもそも原義が同じ単語も採用されている。現在は在籍していないが、Mナンバーの雑船は、個船名は付されずにそのまま「M+3桁の番号」で呼ばれていた。 |
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海上保安庁では地域性に即した活動を目標として各地の海上保安部に近接する地名をその保安部に所属する巡視船に命名している<ref>邊見正和『海上保安庁 巡視船の活動』交通ブックス201 [[成山堂書店]] [[1993年]] ISBN 4-425-77001-3</ref>ため、配属替えに伴って船名を変更する慣例がある。配属替えは頻繁に行われるので船名変更もまた頻繁に行われている。例えば平成16年度には福岡海上保安部所属の「げんかい」PL-121が横浜海上保安部に配属が変更されて「あまぎ」に改名され、横浜海上保安部から[[石垣海上保安部]]に異動した「あまぎ」PL-128は「よなくに」に改名された<ref>{{PDFlink|[ |
海上保安庁では地域性に即した活動を目標として各地の海上保安部に近接する地名をその保安部に所属する巡視船に命名している<ref>邊見正和﹃海上保安庁 巡視船の活動﹄交通ブックス201 [[成山堂書店]] [[1993年]] ISBN 4-425-77001-3</ref>ため、配属替えに伴って船名を変更する慣例がある。配属替えは頻繁に行われるので船名変更もまた頻繁に行われている。例えば平成16年度には福岡海上保安部所属の﹁げんかい﹂PL-121が横浜海上保安部に配属が変更されて﹁あまぎ﹂に改名され、横浜海上保安部から[[石垣海上保安部]]に異動した﹁あまぎ﹂PL-128は﹁よなくに﹂に改名された<ref>{{PDFlink|[https://www.kaiho.mlit.go.jp/01kanku/otaru/kouhou/kouhou280915.pdf 巡視船えさんの解役について]}} 海上保安庁小樽海上保安部、2016年9月15日</ref>。この慣例によって巡視船の一生で変わらない物は船番号のみとなっている。しかし、この慣例もPM-95﹁[[あまみ型巡視船#同型船一覧|あまみ]]﹂のような例外がある。
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=== フランス === |
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2024年2月29日 (木) 10:03時点における版
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商船の命名慣例
日本の船名
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2d/%E8%80%95%E6%B4%8B%E4%B8%B8%E8%88%B9%E5%90%8D%E8%88%B9%E7%B1%8D202309.jpg/250px-%E8%80%95%E6%B4%8B%E4%B8%B8%E8%88%B9%E5%90%8D%E8%88%B9%E7%B1%8D202309.jpg)