仙台弁
仙台弁︵せんだいべん︶は、江戸時代の仙台藩領内で庶民が使用した言葉を元にした方言。
概要[編集]
仙台弁は宮城県と岩手県東磐井郡、西磐井郡、気仙郡、江刺郡、胆沢郡など旧仙台藩領で使用される方言を指す。成立[編集]
成立は藩成立以前から存在する百姓言葉︵土着語︶、侍言葉︵共通語︶、町人言葉が、江戸文化や藩領内各地の文化を吸収し、一体となって成立したと考えられている。また交通の発達により近隣地域の言葉の影響を受け今日に至ると考えられている[1]。 旧仙台藩領は関東系民族文化の北限であり、方言もその影響を強く受けている。特に関東系の音韻、語法、語彙が一様に支配しており、文化的言語的地盤は仙台藩成立以前の蝦夷討伐の時代に関東地方の移民がもたらしたものであると考えられている[1]。そのため奥羽山脈を隔て隣接する山形県内陸とは方言︵置賜弁、村山弁、新庄弁︶、民族ともに同種である[1]。一方和賀川、猿ヶ石川、甲子川をもって隔てる南部藩領は関西系民族文化の北限であり方言も異なる[1]。 仙台藩は大藩であるが広大な藩領であるにもかかわらず方言は大同小異である[1]。それは仙台藩の特殊な藩制によるものであると考えられている。伊達政宗は鎌倉時代以来の守護地頭制をそのまま使用し、藩内の土地所有を認めたため藩の中にまた藩が存在していた。このように地方分権が行われ各藩主は仙台城下にも領地にも住んでいたため仙台城下の言葉がそのまま隅々まで広がっていったと考えられている。一方で藩境周辺や河川、湊の周辺では隣接、関係地域の影響が見られ、それらは言語学的に独自のものであるとして区別することがある。定義[編集]
﹁仙台弁=仙台藩の方言﹂という定義が一般的である[* 1][2]が、仙台藩の知行域と現行の自治体の枠組み・名称が異なるため、﹁仙台弁﹂の定義は様々見られる。分類[編集]
仙台弁の分類は以下のようになっている︵後藤彰三によるものに一部加筆︶。後藤彰三は、旧仙台藩領域の方言を仙台弁としているが、宮城県の範囲で仙台弁と呼ぶことも了解している。﹁仙台市﹂という行政単位は、現在まで何度も市町村合併を繰り返してきており、方言の範囲として意味を持たない。 東北方言 南奥羽方言 仙台弁…(1)旧仙台藩 岩手県南部方言︵岩手県内陸部の旧仙台藩地域︶ 宮城県方言…(2)宮城県 三陸方言︵岩手県・宮城県の三陸沿岸および北上川本流沿い︶ 仙北方言︵松島丘陵より北側の内陸部および奥松島︶ 仙台方言…(3)仙台都市圏 仙台城下弁…(5)仙台市都心部 仙南方言︵七ヶ宿町・白石市・角田市・丸森町・亘理町・山元町および福島県新地町︶アクセントによる分類[編集]
江戸時代以前の交流圏や方言の分布と、仙台藩の版図とが元々一致していないため、単語のアクセントによる分類では、上述の方言系統とは異なる区分がされる。 一般的に、仙台湾から奥羽山脈まで宮城県を東西に横たわる舌状台地である松島丘陵辺りを境に、 ●北部で特殊アクセント ●南部は崩壊型アクセント ︵北関東の茨城県・栃木県から南東北に広がる︶ とされる[* 2]。 境界となっている松島丘陵辺りは、北部と南部のアクセントの混在地帯と見なして﹁曖昧︵又は混乱︶アクセント﹂とする平山輝男の立場と、仙台都市圏の北部地域として仙台と同じ﹁一型アクセント﹂に含める後藤彰三の立場があり、研究者によって異なる。﹁仙台﹂が示す範囲による分類[編集]
﹁仙台﹂という言葉は、仙台市のみならず、旧仙台藩領内を指す漠然とした広域地名として現在も使われている︵→﹁仙台﹂参照︶。﹁仙台弁﹂﹁仙台出身﹂﹁仙台名産﹂﹁仙台工場﹂など、おおよそ﹁仙台﹂と付くものは、以下の5つの分類のいずれかの範囲を念頭に命名されている。 (一)旧仙台藩領だった地域︵岩手県南部、宮城県全域、福島県新地町︶ (二)宮城県内 (三)宮城県仙台市を中心とした仙台都市圏 (四)仙台市 (五)仙台城の城下町があった地域︵仙台市都心部︶ ﹁仙台弁﹂においては、昭和後期まで、岩手県南部と宮城県の住民の帰属意識が仙台藩であったために、(1)旧仙台藩の範囲で仙台弁と定義されていた。その後、岩手県南部の住民に﹁岩手県民﹂という意識が強くなり、(1)旧仙台藩の範囲で定義されることはまれになった。 また、宮城県内においても、他県出身者の増加で帰属意識が仙台藩から﹁宮城県民﹂になってきたことと、広域地名としての﹁仙台﹂を知らない他の地方の人によって、(2)宮城県の範囲で新たに宮城弁という単語が作られた。しかし、成立過程からも﹁宮城弁﹂は他称であって自身で言うことはまれであり、一般には(2)宮城県の範囲で仙台弁と自称される。 ただし、宮城県内の方言の地域差を取り立てて言う場合に限り、(3)仙台都市圏あるいは(4)仙台市の範囲で仙台弁の定義域とする場合がある。 このように﹁仙台弁﹂は一意に決まらず、かと言って﹁宮城弁﹂という言葉も馴染みがないこと、また、後述するような地域差も考慮して、マスメディアでは(2)宮城県の範囲について﹁宮城の方言﹂﹁宮城の言葉﹂または単に﹁方言﹂などと言うことが多い。 なお、仙台都市圏は支店経済の影響もあって人口の流入・流出共に激しいため、標準語・共通語を使用する者が多いが、この記事では、後述する高齢者が主な話者となっている﹁旧仙台弁﹂と、若年層の男性が主な話者となっている﹁新仙台弁﹂について記載する。また、(5)仙台城下町の範囲である﹁仙台城下弁﹂︵西川源太郎の著作に定義あり︶、および、武家の﹁御家中言葉﹂については取り立てて記載しない。特徴による分類[編集]
前述の通り、﹁仙台弁﹂には言語学的にみると複数の方言が含まれる。(2)宮城県の範囲の仙台弁は、松島丘陵を境に北側︵北部︶と南側︵中南部︶に大きく分けられ、仙南方言には福島弁との共通の特徴を多く含む。また、南側に含まれる仙台市には転勤族が多く住み、標準語・共通語の影響が強いことから、﹁新仙台弁﹂と言えるような傾向が若者︵男性︶を中心に見られる。 北部の内、三陸方言地域にあたる石巻と石巻に河口が開いている水運の発達した北上川沿いなどでは、太平洋岸の水運で江戸と繋がっていたために、江戸言葉と共通する特徴もよく見られる。これは、東北地方の日本海側の港町が、西廻り航路 ︵北前船︶ で関西と繋がっていたために、京言葉や大阪弁の影響を受けているのと対照をなしている。 なお、三陸方言地域にあたる気仙沼や岩手県大船渡などの三陸海岸︵旧気仙郡︶地域では、漁場を共有しているために同一地域圏が形成されており、南部弁の影響を受けていると見られ、内陸部の方言との差異が認められる。このような地域的な差異や方言の特徴を言う場合には、それぞれの地域名を付けて、俗に﹁石巻弁﹂﹁気仙沼弁﹂﹁一関弁﹂などと言い、仙台市で用いられる仙台弁と区別することも多い。特徴[編集]
仙台弁には、東北地方の他の方言︵東北方言︶に広く見られるような次の特徴がある。 ●有声音に挟まれた無声破裂音の有声化。すなわち、語頭以外の /k/、/t/ がそれぞれ[ɡ]、[d] となる。 ●/s/、/z/ の後ろの /i/ が中舌音化する。 ●﹁…だろう﹂﹁…しよう﹂を意味する﹁べ﹂が用言の後ろに付けられる。 ●格助詞の﹁さ﹂︵方向や授受の対象を表す︶。 ただし、仙台市を中心とした地域では、上の二つ目の﹁/i/の中舌化﹂は、近年の若年層ではあまり聞かれなくなっている。 この他、他の東北方言にはない仙台弁の特徴としては以下のものがある。 ●いわゆる文節の後ろに﹁やー﹂が付せられる。これは概ね標準語の﹁さー﹂に似た意味を持つ。 例 ﹁今日やー、朝からやー、すげー暑かったやー。﹂︵今日さあ、朝からさあ、すごく暑かったよ︶ ●疑問詞のある疑問文の文末に付けられる﹁や﹂。 例 ﹁どうや?﹂︵どうなの?︶ ﹁誰や?﹂︵誰だ?︶ ●標準語の﹁〜んだよ﹂が﹁〜のや﹂になる。 例 ﹁つまんねーのや﹂︵つまらないんだよ︶ ﹁さみぃのや﹂︵寒いんだよ︶ ●用言の後ろの﹁っちゃ﹂、﹁だっちゃ﹂、﹁ださ﹂︵﹁…だよね﹂﹁…だよな﹂を意味する。英語の付加疑問文と同じように用いられる︶[3]。 ●﹁しなければならない﹂を意味する﹁しなきゃない﹂ ︵同義 : ﹁しねげね﹂︶。 例 ﹁行かなきゃない﹂︵行かなければならない︶ ﹁食べなきゃない﹂︵食べなければならない︶ ●動詞の未然形+﹁い﹂︵五段活用︶または﹁らい﹂︵上一段活用と下一段活用︶ で命令の意味を表す。命令形による命令よりぞんざいでないニュアンスがある。また、同様に連用形に﹁さい﹂を付けてつくるさらに柔らかな命令の表現がある。 例 ﹁行がい﹂﹁行きさい﹂︵行きなさい︶ ﹁食べらい﹂﹁食べさい﹂︵食べなさい︶ 上記のうち最後の命令の表現は、若年層ではあまり使われなくなっている。一方﹁しなきゃない﹂は、仙台出身の者も方言だと気づきにくい表現の一つである。仙台都市圏における﹁新仙台弁﹂の形成[編集]
高度経済成長時代に、仙台市は東北地方の拠点ブロックである支店経済都市として人口が激増した。東日本の各地を中心とした転勤族や進学者、移住者などの流入が進み、人口の流動が激しくなった。東日本の人は、他地域においては自己の方言を軽減させようという意識が高いため、仙台都市圏では急速に共通語・標準語が浸透した。それに伴い、元の住民の標準語化も進み、団塊の世代︵核家族一世︶以降において急激に仙台弁が廃れていった。 すると、核家族化した家庭では、親が方言を話さないことになり、団塊ジュニア︵第二次ベビーブーム︶以降世代の方言習得の機会も減った。しかし、学校教育の場では、核家族一世より上の世代の教師や、団塊の世代であっても大家族出身の教師、または仙台都市圏外の仙台弁地域出身の教師がいたため、核家族二世であっても仙台弁に触れることが出来た。すなわち、核家族二世は主に学校生活で、先生が上から話す常体の仙台弁のシャワーを浴びる一方、先生や先輩に対して同級生が仙台弁の敬体で話す場面に遭遇しないことになり、以下の特徴が見られるようになる。 ●家庭では共通語・標準語が用いられるため、アクセントは東京式アクセントになる ●先生が話す常体の仙台弁を習得することにより、友人との間︵常体︶では、共通語・標準語のアクセントの上に仙台弁の語彙が並ぶ ●仙台弁の敬体の習得の場面がないため、目上の人に対しては共通語・標準語の敬語を用いる このような過程を経て﹁核家族二世型仙台弁﹂︵新仙台弁︶が生まれた。但しこの新仙台弁は、その発生過程の限定的環境のせいもあり、旧仙台弁特有の語彙の全てを受け継ぐことが出来ず、また、それぞれの家庭環境によって旧仙台弁のどのくらいの語彙を受け継ぐかに差異があり、定まった方言の体を成しているとまでは言えない。極論すれば、旧仙台弁特有の語彙や言い回しが俚言化し、その俚言を取り入れた標準語・共通語の一形態が﹁新仙台弁﹂だ、とまで言える。 なお、この新仙台弁の話者は男性を中心としており、女性は共通語・標準語を話すことが多い。すでにほぼ共通語となった仙台都市圏では、仙台弁だとわかってあえて使用するのは男性くらいのためと考えられる。 核家族二世型仙台弁を話す若者の内、就職先の公用語が旧仙台弁である場合は、旧仙台弁に昇華していく傾向も見られる。 第一次産業と第二次産業の他、高齢者が主な顧客である医療・福祉業界でこの傾向が顕著である。また、仙台弁が廃れた仙台都市圏であっても、仙台市から離れるほど従来の仙台弁が残っている[2]。 昭和以降は﹁ジャス︵ジャージー︶﹂、﹁カッペロ︵カップ麺︶﹂など新たな単語も生まれている[2]。仙台弁と「うる星やつら」[編集]
漫画・アニメの﹁うる星やつら﹂の登場人物であるラムが、語尾に ﹁〜だっちゃ﹂ とつけるため、ラムは仙台弁を話していると思われがちであるが、仙台弁では自分のことを﹁うち﹂とは言わないし、疑問文における﹁〜け?﹂の使い方も微妙に違う。また、アニメ版におけるイントネーションに到っては、全く以って仙台弁︵旧仙台弁︶ではない。作者が新潟県出身のため佐渡方言ではとの誤解も流布しているが間違いである。富山県では﹁だっちゃ﹂、﹁やちゃ﹂のほか語尾に﹁~け﹂を用いるが﹁うち﹂は用いない。しかし石川県では﹁うち﹂を用いるため、ラムの言葉は能登の言葉に近い。
しかし、﹁うる星やつら﹂の作者である高橋留美子︵新潟市出身︶ によると、﹁ラム語﹂の語尾になっている﹁〜だっちゃ﹂﹁〜っちゃ﹂は、井上ひさしの小説の登場人物の言葉からヒントを得たとのこと[4]。井上ひさしは山形県で生まれたが、幼少期から仙台市のラ・サール・ホームで育ち、自身の小説の中で仙台弁︵旧仙台弁︶を多用している。
つまり、﹁ラム語﹂は、﹃作者の高橋留美子による﹁人工言語﹂であるが、有名になった語尾の﹁〜だっちゃ﹂は旧仙台弁由来﹄ ということになる。旧仙台弁の語尾の﹁〜だっちゃ﹂が、前述の核家族二世型仙台弁にも受け継がれて多用されている上、イントネーションが共通語・標準語化した現在の新仙台弁は、人工言語であるラムの言葉と結果として似てしまった。そのため、男性が新仙台弁を他の地方で話すと、﹁ラムと同じ言葉を使っている﹂とか﹁女言葉みたい﹂と言われることがある。
なお、語尾に﹁〜だっちゃ﹂・﹁〜っちゃ﹂をつけるのは、仙台弁の他に新潟県の佐渡弁、鳥取県の因州弁でもみられる。語尾に ﹁〜ちゃ﹂︵"だ" が入らず促音化しない︶を付ける方言には、富山弁、山口弁、北九州弁および九州東部の豊日方言︵宮崎弁など︶がある。
仙台弁を話す著名人[編集]
常時仙台弁を話す著名人はまれであり、基本的に標準語・共通語を話していて、方言の話題になったり素に戻ったりすると仙台弁になる者が多い。また、宮城県内の民放テレビ4局のアナウンサー53人の内、宮城県出身者は6人、地元率11%︵2006年︶であるため、宮城県のローカル番組で仙台弁を聞く機会も限られる。
●さとう宗幸‥ミヤギテレビ﹃OH!バンデス﹄で、コメントがしばしば仙台弁になる。ただし、さとうは岐阜県出身かつ古川市︵現在の大崎市︶育ちのため、本来の仙台弁話者から発音が不自然と指摘されることもある︵いわゆる﹃北部方言﹄という宮城県北部・岩手県南部の広義の仙台弁︶。
●庄司恵子‥宮城県の民謡歌手。TBCラジオ﹃恵子のいーぐする民謡﹄などでは、ほぼ仙台弁で話す。
●白鳥百合子‥仙台放送﹃mashup!音王MUSIO﹄で﹁白鳥百合子の宮城弁講座﹂というミニコーナーがあった。MBS﹃ジャイケルマクソン﹄でも度々仙台弁を披露していた。
●本間秋彦‥仙台弁の使用頻度が大きい。東日本放送﹃突撃!ナマイキTV﹄では、視聴者から寄せられた仙台弁の川柳を解説している。
●森公美子‥出演するどの番組でも、トークがのってくると仙台弁になる。
●山寺宏一‥塩竈市出身でプロフィールに﹁特技‥仙台弁﹂と載せている[5]。
●仙台貨物‥仙台弁を駆使するコミックバンド。
●カズシック‥仙台で活躍するラッパー、タレント、仙台を売りにした最初のミュージシャンとも言われている。ラジオ等で普通に仙台弁が混じる。
●吉川団十郎‥増田町︵現‥名取市︶出身のシンガーソングライター・ラジオパーソナリティ。TBCラジオの﹃ジャンボリクエストAMO﹄﹃葵と団十郎のサンデーAMO﹄等において生粋の仙台弁で話していた。
仙台弁の地名・固有名詞[編集]
仙台弁での発音が地名・固有名詞に影響を与えているものを以下に示す。ただし現在は、仙台弁の読みを正式としているのは定義如来や新伝馬町くらいで、それら以外は標準語・共通語の発音の方を正式な読みとしている。仙台弁の読みが正式ではなくなった時期は不明であるが、例えば、1896年︵明治29年︶に仙台に住んでいた島崎藤村が、﹁市井にありて﹂で名掛丁を﹃名影町﹄と記していることから、この頃はまだ濁音化した仙台弁地名がまかり通っていたと推定出来る。 現時点で優勢な読みの方を黄色地で示すが、両者の間に大差がない場合は両者とも黄色地とする。東北方言︵南奥羽方言︶でよく見られる変化のほか、仙台弁特有の読み方も見られる。共通語 標準語 |
仙台弁 | 備考 | |
---|---|---|---|
鳴子温泉 | なるこおんせん (naruko-onsen) |
なるごおんせん (narugo-onsen) |
濁音化(軟口蓋破裂音の変化:k → g) |
名掛丁 | なかけちょう (nakakechō) |
なかげちょう (nakagechō) |
濁音化(軟口蓋破裂音の変化:k → g) |
定義如来 | じょうぎにょらい | じょうげにょらい | 「イ」と「エ」の曖昧さ 仙台弁の方が現在も正式 |
新伝馬町 | しんてんままち (shintemmamachi) |
しんてんまち (shintemmmachi) |
「a」の有無 仙台弁の方が現在も正式 |
北目町 | きためまち (kitamemachi) |
きたんまち (kitammachi) |
「e」の有無 (撥音便) |
南町 | みなみまち (minamimachi) |
みなんまち (minammachi) |
「i」の有無 (撥音便) |
土樋 | つちとい (tutitoi) |
つっとい (tuttoi) |
「i」の有無 (促音便類似) |
国分町 | こくぶんちょう | - | 現在は「こくぶんまち」とは読まない。 |
(kokubummachi) |
こっぽんまち こっぷんまち (koppummachi) |
促音化 両唇破裂音の変化(b → p) | |
勾当台 | こうとうだい | - | 現在は「こうとうのだい」とは読まない。 |
こどのでえ | 「勾当台通」参照 | ||
大河原町 | おおがわらまち | おがらまち | |
御鍛冶屋前 | おかじやまえ | おがんちゃめ | |
霊屋下 | おたまやした | おだまやんた | |
片平丁 | かたひらちょう | かだっしゃちょ | |
米ヶ袋 | こめがふくろ | こめやふくろ | |
清水小路 | しみずこうじ | すずこうじ | 「シ」と「ス」の統合 |
遺水丁 | やりみずちょう | やりみんちょう | |
松島 | まつしま | まづすま | 濁音化 「シ」と「ス」の統合 |
よく用いられる仙台弁の語彙[編集]
※﹁旧仙台弁﹂、仙台都市圏の﹁新仙台弁﹂の別なく記載。
あ行[編集]
●あばいん ︵おいで︶ 例 ﹁おらいさあばいん!﹂︵私のうちにおいで!︶ ●あべ・あんべ ︵行こう、おいで︶ 例 ﹁ちょっとこっちさあべ!﹂︵ちょっとこっちに来いよ!︶ ●あっぺとっぺ・あぺとぺ ︵1.でたらめ 2.正反対︶ 例 ﹁あんだあっぺとっぺなことばりかだってんな。﹂︵あなたいつもでたらめなことをいってますよね。︶ ●あるく ︵移動の行為を表す。標準語の﹁歩く﹂とはニュアンスが異なる。︶ 例 ﹁車であるく﹂︵車で出かける︶ ﹁特に目的もなく周囲をふらつく﹂などという古語の﹁ありく﹂の名残という説があり、北海道方言でも同様の使われ方がある。 ●あんだい ︵あなたの家︶ 対 おらい ●あんだほ ︵あなたたち︶ 対 おらほ ●あんべぇ (体調︶ ﹁おめぇ、とくとうがおってやぁ、あんべぇ大丈夫か?﹂︵お前、ものすごく疲れて、体調は大丈夫か?︶ ●あんやほに (なんてこった・全くもう!英語でいう﹁OH MY GOD﹂に相当) ●いきなり・いぎなり・いきなし ︵1.急に、突然 2.とても、超[6]︶ 例1 ﹁いきなり殴らったのやー﹂︵突然殴られたよ︶ ﹁先生さいきなり怒らった﹂︵先生に突然怒られた︶ 例2 ﹁イキナリ殴らったのやー﹂︵沢山殴られたよ︶ ﹁先生さイキナシ怒らった﹂︵先生にすごく怒られた︶ ﹁イキナリうめぇ﹂︵とてもおいしい︶ ﹁イキナリすげぇ﹂︵とてもすごい︶ ※番組やイベント等の名称に、1と2の両方の意味をかける例が見られる︵→TBCラジオ﹁イキナリ!﹂、仙台放送﹁mashup!音王MUSIO﹂の活き話5、お笑い集団ティーライズ﹁IGINARI LIVE﹂︶ ●いしけん、ぎっ ︵じゃんけん、ぽんっ︶ ●いずい・いづい ︵不快感があり、その場に居続けられない様子をソフトに表す言葉。具体的には﹁散髪の後でシャツの襟首に刺さった髪の毛で時々チクチクする違和感﹂、﹁初めての場所に通されてどうにも落ち着かない雰囲気﹂等、はっきり拒絶できない割りに鬱屈する東北人の感性を代表する言葉。uncomfortableとirritableを混ぜた感じ。語源は﹁身の毛がよだつほど恐ろしい﹂という意味の古語﹁えずい﹂と考えられ、﹁恐ろしい﹂という意味が無くなって、﹁肌や身体の表面で感じる違和感﹂のみが意味として残り、その感覚が精神的な居心地の悪さにまで適用を広げたと考えられる[7]。なお、土佐弁と博多弁では、﹁えずい﹂との発音で古語の意味のまま方言に取り込まれている。小笠原方言にも﹁気持ち悪い﹂の意味で残っている。 ●いづぬさんすごぅろぐ すづはづくぅづ ︵1,2,3,4,5,6,7,8,9,10。6と7の間で息をつぐ。"n"を入れて﹁すんづはんづくぅづ﹂という場合もある︶ ●いったりかったり ︵突然、自分勝手に︶ ●居娘 ︵﹁いむすめ﹂。婿養子をとった娘︶ ●うるかす ︵水に浸す︶ 例 ﹁飯食った茶碗、後で洗うから、うるかしといて。﹂ ●うんだでば ︵そうですよ︶相槌的な感じで使う ●おがす ︵大きくさせる、育てる。﹁おがる﹂参照︶ ●おがすい、おがしい ︵変だ︶ 例 ﹁このふぐでおがすぐねが?﹂︵この服装で変じゃないかな?︶ ●おがっつね ︵おかしい︶ 例 ﹁だれっおがっつね顔してんだおん、しゃっぷりしてや。﹂ ︵だって気持ち悪い顔しているから、知らんぷりしてたよ。︶ ●おがる ︵大きくなる、育つ、威張る。﹁おがす﹂参照︶ 例 ﹁おがっだごだ﹂︵大きくなったなぁ︶ ﹁キノコおがった﹂︵キノコが育った︶ ●おしょすい ︵恥ずかしい。他の方言で使用される﹁お笑止い︵おしょしい︶﹂が訛ったもの︶ ●おだつ・おだづ ︵調子に乗る、いきがる。﹁おだづな﹂と否定形で使用される場合が多い。ときに,肯定的な意味でも用いられる。︶ 例 ﹁おだつなよっ!この!!﹂︵ふざけんな!てめぇ!!︶ ﹁おなごにモテっからって、おだってんのや、だーれ﹂︵女性にモテるから調子にのっているんだよ、奴は︶﹁さいきん,おだってかぁ﹂︵最近,なにかおもしろいこととか,熱中していることとかやっているかい?,肯定的な例︶ ●おだづもっこ ︵いたずら小僧、悪ガキ︶ ●おないん・おんないん ︵〜︵して︶下さい︶ ●おはよう靴下︵爪先など穴が空いた靴下︶ ●おどけでない ︵1.ふざけない。2.ものすごい︶ 例1 ﹁おどけでねぇで、はやぐやれ﹂︵ふざけてないで、早くやりなさい︶ 例2 ﹁昨日や〜、釣りッコしたらや〜、おどけでねぇ数釣れたのや﹂︵昨日、釣りをしたらものすごい数釣れたんだよ︶ ●おはよござりす ︵おはようございます.近隣に﹁おはいでがす﹂を使う地域もある︶ ●おばんです・おばんでがす ︵夕方以降の挨拶﹁今晩は﹂の意味で使う.OH!バンデスというTV番組も存在する︶ ●おっぴさん ︵曽祖父・曾祖母・ひいお爺さん・ひいお婆さん︶ 例1 ﹁おらいのおっぴばんつぁん、とくとう体あんべぇいくて、来月で90歳なっとわ。﹂︵うちのひいお婆さん、ものすごく体調良くて、来月で90歳になります。︶ ●おみょうにち︻お明日︼ ︵またあした、さようなら、の意。わりとフォーマルな席で用いられる。︶ 例 ﹁おみょうにち おしずかに﹂︵明日もよい日でありますように︶ ●おらい ︵うちの家︶ 対 あんだい あんだらい 例 ﹁お茶っこでも出すがら、おらいさ来てけろ﹂︵お茶でも出すから、うちの家に来て下さい︶ ●おらほ ︵俺たち、私たち︶ 対 あんだほ 例 ﹁おらほの学校﹂︵私たちの学校︶ ●おれ ︵私。男性のみならず、女性も使う︶ ●おれさま ︵雷様︶ ●おっかない ︵こわい、おそろしい︶ 例 ﹁ここ、おっかねえなや﹂か行[編集]
●がおる ︵気分が滅入る。︵肉体的・精神的に︶疲れる。精根尽きる︶→英語の "exhausted" や "weary" にあたる。類語の﹁こわい﹂は "tired" や "fatigued" の意味。物がダメになる様子を示す﹁くたびれる﹂も疲れたときに使う。 例 ﹁ま〜だ先生さごしゃかったや〜。いぎなりがおった。﹂︵また先生に怒られた。とても気が滅入った︶ ﹁今日はいきなりがおったや〜﹂︵今日はとても疲れたよ...︶ ﹁この薔薇がおってるよわ﹂︵この薔薇しおれているよ︶ ●がが (母・お母さん) 自分の母をいう言葉ではあるが、多くの女性は言われること嫌ってるため、普段の会話ではあまり使われず、喧嘩やイヤミを言うときに使う侮辱語的な意味合いもある。 例 ﹁田舎のがが達やぁ、なんぼまてに顔さ塗ったてやぁ、レディ・ガガみてぃになんねぇべぇ!!﹂ ︵田舎のお母さん達が、いくら上手に化粧しても、レディ・ガガみたいにならないだろう︶ ●がす ︵です︶︵丁寧の意味の助詞︶ ●がした ︵でした︶︵丁寧の意味の助詞︶ ●かせる ︵食わせる、食べさせる︶ ●かつける (失敗や嘘をついたことを、他人のせいにする・なすりつける。責任のがれの意味) 例 ﹁おめぇ、てほすたごどや、人にかつけるんでねぇ!!﹂ ︵お前、デタラメしたことを、人のせいにするな!!︶ ●かっちゃく ︵引っかく︶ 例 ﹁おらいのねこさかっちゃかったのっしゃ﹂︵うちの猫に引っかかれたのですよ︶ ●かっちゃき ︵鎌、草刈、三角鍬。かっちゃくの名詞形︶ ●〜がな ︵相当、分、こちらの提示に合わせて相手に数量調整してもらう場合︶ 例 ﹁500円がな、あぶらいれでけさいん。﹂︵500円分のガソリンを入れてください︶ ●かばねやみ ︵本当はできるにもかかわらず、なんのかんのと理由をこじつけてなにもしないこと、またそういう人︶ 例 ﹁あだらかばねやみさかだったって、なにもしないがらほっとがいんでば﹂ ●〜っから︵本来、﹁私が〜するから、あなたはしなくていいよ﹂というものの後ろの部分が省略された形だが、後ろの意味が関係ない使い方もある︶ 例 ﹁おれすっから﹂︵私がやるからしなくていい︶ ﹁これ、けっから﹂︵これ、あげるよ︶ ●かます ︵かき混ぜる、時にかき混ぜることで室温〜体温程度にする意味も含めて使う︶ ●がめる ︵盗む︶ ●きゃっぽりくう ︵溝にはまる︶ ●きしゃず ︵おから︶ ●くたびれる ︵ダメになる; 疲れる︶ ●〜けらい︵ん︶、〜してけらい︵ん︶または、〜けさい︵ん︶、〜してけさい︵ん︶ ︵〜下さい、〜して下さい︶︵お願い事や、頼み事をする場合に、丁寧に︵またはやさしく︶物を頼む場合に動詞につける。︶ 例 ﹁このお菓子ば、そごのやろこさ、けでけらい︵ん︶。﹂︵このお菓子を、そこの子供に、あげて下さい︶ ●ける ︵物をあげる︶ 例 ﹁これ、けっから﹂︵これ、あげるよ︶ ﹁こだの、けでやれ﹂︵こんなもの、くれてやれ︶ ●けろ ︵物をくれ︶ 例 ﹁お金けろ﹂︵お金をくれ︶ ﹁いらねんだごっで、俺さけろ﹂︵いらないんだったら、俺にくれ︶ ●〜けろ・〜してけろ ︵〜くれ、〜してくれ︶︵お願い事や、頼み事をする場合に動詞につける。︶ 例 ﹁このお菓子ば、そごのやろこさ、けでけろ。﹂︵このお菓子を、そこの子供に、あげてくれ︶ ●ごしゃぐ ︵怒る。﹁ごしゃがれる﹂と受身形で用いられることが多い。類語 ごしゃっぱらたでる︶ 例 ﹁まだ先生さごしゃがれだんだべ? ﹂ ●ごみょうにち ︵それではまた明日。 黄昏時にわかれるときに言う︶ 例 ﹁んではまんず、ごみょうにち﹂︵おみょうにち、とも言う。︶ ●こっちゃ ︵こちら︶ 例 ﹁こっちゃ来さいん﹂ ︵こちらへ来なさいな︶ ●こわい ︵疲れる。→﹁がおる﹂参照︶ 例 ﹁はぁ、こえぇ、こえぇ﹂︵あぁ、疲れた、疲れた︶さ行[編集]
●〜さ ︵格助詞。ほとんどの場合は﹃〜に﹄︶ 例 ﹁俺さ任せろ﹂︵俺に任せろ︶ ﹁べごさ餌かせでくる﹂︵牛に餌を食べさせてくる︶ ●さくず ︵米ぬか︶ ●さっぱし ︵さっぱり︶ ●〜さる ︵〜できるの意味。書く+さる=書かさる︶ 例 ﹁何だべ、このペン書かさらねっけよ!違うやつけらいん。﹂ ●ジャス ︵ジャージのこと。ジャージスーツの省略形かと思われる︶ 昭和30年代、仙台市北部近辺を起源とする説が有力。ただし,元はラグビー用語で,千葉,茨城など,関東,南東北の海岸ぞいに広く流布していたとも。体操着が一般的に普及したことに伴うものか。俗に名古屋のケッタマシン、鹿児島のラーフル、福井のジャミジャミと共に昭和四大方言とも言われる。 例 ﹁イキナリいづいジャスだごだ、ほいなのしゃね﹂︵まったく身体にフィットしていないジャージだ、こんな服着ていられない︶ ●ししゃます ︵手に負えない、持て余す、大変だ︶ ●しずね ︵1.落ち着きのない様子 2.うるさい 主に他人に対して使う。意味的には﹁うざい﹂に近い︶ 例 ﹁そこのやろこしずねごだー﹂︵そこのこどもは落ちつきがないなー︶ ●したっけ ︵﹁そしたら・・・﹂=話の途中で次に続ける場合に使う。場合により﹁それなのに・・・﹂の用法もある。 ●しっぱたく ︵たたく、ひっぱたく︶ 例 ﹁しっぱだぐどっこの!﹂ ︵ひっぱたくぞこの野郎!=強い意味でなく、例えばあんまり変なこと言うなよ!と軽くふざけて言う場合にも使う。︶ ●〜︵の︶しゃ? ︵﹁〜︵の︶ですか?﹂ 丁寧の意味の疑問終助詞。﹁〜だっちゃ?﹂ には丁寧の意味はない︶ 例 ﹁行がねのしゃ?﹂︵行かないのですか?︶ ●〜︵っ︶しゃ ︵丁寧な文章で使う︶ 例 ﹁三丁目のっしゃ、愛ちゃん、大学さ入ったんでがす﹂︵三丁目の愛ちゃんが大学に入ったんです︶ ●しゃっこい ひゃっこい ︵冷たい︶ ●しゃね ︵知らない。やってられないという意味が含まれることもある︶ 例 ﹁ほいなごどしゃねっちゃ﹂︵そんなことは知らない︶ ●しゃねっぷり ︵知らないふり。︶ ●じる ︵盗む︶ ●じられる・じらる ︵盗まれる︶ 例 ﹁俺のジャスじらったんだけっともしゃねが?﹂︵俺のジャージ盗まれたんだけど知らないかい?︶ ●すがり ︵蜂︶ 例 ﹁すがりさつづがれっと?﹂︵蜂に刺されるよ?︶ ●すっぱね ︵泥はね︶ ●〜すぺ? ︵﹁でしょう?﹂ 丁寧な意味の助詞﹁す﹂と同意の意味の助詞﹁ぺ﹂←﹁べし﹂︶ 例 ﹁うめすぺ?﹂︵美味しいでしょう?︶ ﹁やるすぺ?﹂︵やりますよね?︶ ●〜すか? ︵丁寧な意味の助詞﹁す﹂と疑問の助詞﹁か﹂︶ 例 ﹁弁当あっためるすか?﹂︵弁当温めますか?︶ ﹁ダメすか?﹂︵ダメですか?︶ ﹁やったすか?﹂︵やりましたか?︶ ﹁夕べ、いるすか?﹂︵夕方いますか?︶ ●そればり・そればっこ ︵それだけ 提示された数量などが意外な場合︶ 例 ﹁30坪? そればり?﹂︵30坪? それだけしかないのですか?︶た行[編集]
●だ〜れ・だれー ︵漢字で書くと﹁誰﹂。人物が出てくる、または暗に出てくる文の文中・文末に間投詞的に用い、反語的な意味を付加したり、直前の文に出てくる人物を浮き立たせたりする役割を担う︶ 例 ﹁おめだづ、どこの高校や?﹂﹁一高︵ィエテコー︶や!だ〜れ﹂。﹁なんだかでっけぇやろっこだと思ってたら、だ〜れ、太郎でねぇか﹂ ●〜だおん ︵〜だもん︶ 例 ﹁いぎなり飛び出すんだおん、びっくったや〜﹂︵急に飛び出すんだもん、びっくりしたよ〜︶ ●たがぐ ︵担ぐ︶ 例 ﹁その荷物たがいでけさいん﹂︵その荷物担いでください︶ ●だから ︵同意の意。ん行の﹁んだ﹂からの変化形。接続詞として使う﹁だから﹂とは発音が違う︶ ●たごまる ︵布地などが寄り集まる。特に着用中の衣服について。糸や紐が絡まる︶ ●〜だっちゃ・〜っちゃ ︵仙台弁の特徴参照︶ ●~だじゃ (上記の~だっちゃが音便化したもので、主に県北から青森県にかけて使用される) ●たばこ ︵一休みするしながら口にするおやつ、お茶等。休憩そのものにも使用︶ 例 ﹁疲れだがらそろそろたばこにすっぺし〜﹂ ●たんぱら (癇癪を起す・腹を立てる。漢字で書くと﹁短腹﹂) ●ちゃかす ︵壊す︶ ●ちゃける ︵壊れる ちゃかすの自動詞。強調の意を表す接頭語﹁ぶっ﹂をつけ、﹁ぶっちゃける﹂とも言う。 ︶ ●ちゃっこい ︵小さい。又はちゃち︶ ●ちゃる ︵盗む︶ ●ちょす ︵さわる。いじる。特に,自分に権限のないものをさわったり,いじったりすること。性的な意味を含むことも少なくない。また,しばしば否定形で用いられる︶ 例 ﹁あんまチョすな〜。ちゃけっぺ〜﹂︵そんなにいじるなよ。壊れちゃうだろ︶ 人に触られたときに﹁ちょすな!﹂︵触るな! 触らないで!︶ ●ちょんちょこ ︵男性器。ちんちん︶ ●っこ・こ ︵接尾辞。指小辞。フランス語の "-ette"、スペイン語の "-ito" と同類︶ 例 ﹁やろっこ﹂﹁わらすこ﹂﹁ブタっこ﹂﹁筆っこ﹂ ●っ、この! ︵間投詞。怒りを表す︶ 例 ﹁おだつなよっ、この!﹂︵調子に乗ってんじゃねーぞ、こらっ!︶ ●っぽ (接尾辞。上記の﹁っこ﹂と同義だがこちらは罵りに使うニュアンスが大きい) ●でがさね (イマイチだ 格好悪い︶ 例 ﹁なんだいまず、おめのかっこ、でがさねえごだ~﹂︵どうしたの、あなたの格好、いまいちだなあ︶ ●ですぅ ︵﹁です﹂。標準語教育の影響で使うようになった。女性が﹁です﹂と言う場合、語尾の﹁す﹂だけイントネーションが上がる。︶ ●てほ (嘘・デタラメ︶ ﹁この、てほ語り野郎!!﹂ ︵この、嘘つき野郎!!︶ ●どいなく ︵どのように︶ 例 ﹁オレ帰った後、どいなくなったのや?﹂︵私が帰った後、どうなったの?︶ ●とくとう (非常に・ものすごく) ﹁野ろっ子どもしずねくてやぁ、とくとう頭にきておだずなぁてごっしゃいだやぁ!!﹂︵ワルガキ達五月蝿くて、ものすごく頭にきてフザケルナて怒ってしまた!!︶ ●とみぎ ︵トウモロコシのこと。唐麦﹁とうむぎ﹂︶ ●トーホグズン ︵﹁東北人﹂を仙台弁で発音したもの︶ ●とすけ ︵くじ、くじ引き︶ ●どんぶく ︵布団生地で作られた冬用寝巻きの上着。どてら、半纏︶な行[編集]
●なまだら ︵だらだらとなまけていること、またそのさま︶ 例 ﹁あのなまだら野郎め、ちっとも仕事をしない﹂ ●なげる ︵捨てる︶ 例 ﹁そごのゴミ、なげでけろ。﹂︵そこのゴミを捨ててちょうだい︶ ●ねばす・ねっぱす ︵ものを貼り付けること︶ 例 ﹁その紙を糊でねばしてけね﹂ ●ねばない ︵ねばならない︶ ●ねっぺ ︵唾︶ ●のっつぉこぐ ︵特に用があるわけでもないのに意味もなくぶらぶらし、体をもてあましていること。しかも当人は自分がのっつぉこいでいることを自覚している場合が多い。命令形はとらない︶ 名 のっつぉこぎ 例 ﹁おんめ、のっつぉばりこがねでゴミでもなげてきてけさいん﹂は行[編集]
●はっと ︵小麦粉を水で捏ねて茹でたもの。すいとんに似ている︶ ●パッタ ︵めんこ︶ ●はかはか ︵わくわく。気分が高揚すること; 心臓がドキドキすること︶ 例 ﹁朝おぎたら、なんだかほれ、ハカハカすんだっちゃ﹂︵朝起きた時、心臓が不整脈を呈しました︶ ●ばか ︵ものもらい。宮城県を中心に岩手・福島・山形の一部でも使用される。︶ ●ばっこ・びゃっこ・ぺっこ ︵少し、だけ︶ ●はっぱり ︵さっぱり、全く︶ 例 ﹁陽子、ハッパリ帰って来ねな﹂︵陽子遅いね。or陽子は全然帰省して来ないね︶ ●ほとんと、ほどんと ︵ほとんど︶ ●ばり ︵ばかり︶ 例 ﹁肉ばり食ってねで、ほれ、野菜もケ﹂︵肉ばかり食べていないで、ほら、野菜も食べなさい︶ ●べこ・べご ︵牛︶ ●ぺろ ︵うどん、麺類[2]。カップ麺を﹁カッペロ﹂と呼ぶ派生語も生まれている[2]。︶ ●べっちょ・べっちょこ ︵女性器︶ ●ほいぢょ ︵包丁︶ ●ほいな ︵そんな︶ ●ほいど ︵乞食︶ ●ほでなす・ほでなし ︵バカ者、ろくでなし︶ 例 ﹁いっそWikiばりやって、このほでなすが﹂ ●ほれ ︵ほら。間投詞︶ ●ほでまず・ほでまづ ︵それでは・とりあえず︶ ‥例﹁ほでまずごみょうにず﹂︵それでは明日にでも・とりあえず明日にでも︶ま行[編集]
●まける ︵こぼす︶ ●まなぐ ︵目︶ ●まやう ︵償う、弁償する︶ ●むぐす ︵漏らす︶ ●むる ︵漏れる︶ ●むんつける ︵拗ねる、いじける︶ ●めくさい ︵ダサい、格好悪い︶ 例 ﹁何やー、その服、めくせー﹂︵何だ、その服、格好悪いなぁ︶ ●めんこい ︵可愛い、愛らしい︶ ●めんめ ︵虫︶ ●もぐす ︵漏らす︶ ●もじゃぐる・もじゃぐれる ︵(衣服等を)ぐちゃぐちゃにする、ぐちゃぐちゃになる︶ ●もぞこい ︵可哀そう︶や行[編集]
●ゆるぐない︵緩くない‥転じて、きつい・きびしい) 例1 ﹁夜勤の仕事(ば)続げんの、おどげでねぇー・・・ゆるぐねえな﹂︵夜勤の仕事を続けるのは大変だ・・・厳しいよ︶ 例2 ﹁あの借金(ば)返すの、ゆるぐねえど﹂︵あの借金を返すのは厳しいぞ︶ ●よったり ︵四人,広辞苑にもある語ではある。なぜか,みたり,は使わない。﹁お﹂がつく場合も少なくない︶ 例 ﹁ほれ,そごのおよったりさん﹂︵おおい,そこにいる四人さんやぁ︶ ●やろっこ、やろこ ︵男の子︶ ● 山学校 ︵中学・高校の不良生徒の不登校を表す、学校に登校せず校外を徘徊しているという意味から︶ 例1 ﹁おめぇやぁ、このめぇ学校いかねぇで、朝から一番町で山学校しったべぇ!!﹂ ︵お前、この前学校に登校しないで、朝から一番町で遊び歩いていただろう!!︶ら行[編集]
●〜ら ︵名詞を複数形にする際の接尾語。標準語とは違うニュアンスで用いられることがある︶ 例 ﹁おめら、食べらい、食べらい﹂ ︵あなたたち、食べなさい︶ ●らづもね ︵とんでもない、物凄い。﹁埒も無い﹂︶わ行[編集]
●わらす・わらすこ ︵童子、子供のこと︶ ●わげすと ︵若者︶ん[編集]
●んだ ︵そうだ。肯定の意味︶ ●んだいっちゃ〜 ︵そうだよね〜 肯定の同意を求めるとき︶ ●んだから、だから ︵まさにそうです。強い同意を示す間投詞︶ ●んだすぺ? ︵そうでしょう? 丁寧語︶ ●んだっちゃ、だれ〜 ︵そうに決まってるじゃん。﹁当然である﹂ことをいう時︶ ●んだっけんども ︵そうだけれども︶ ●んだべ? ︵そうだろ?︶ ●んで ︵じゃあね。バイバイ﹁んでね﹂とも︶ ●んでねぐ ︵そうではない。否定の意味︶ ●んでねくてや〜 ︵そうじゃなくてさ〜︶仙台弁に関連した作品など[編集]
ときめきメモリアル4 ヒロインの1人であるエリサ・D・鳴瀬︵声‥立野香菜子︶は仙台弁を使用する。 47都道府犬 声優バラエティー SAY!YOU!SAY!ME!内で放映された短編アニメ。郷土の名産をモチーフにした犬たちが登場する。宮城県は、こけしがモチーフの宮城犬として登場。﹁ワタシ、綺麗ちゃ?﹂などと話す。声優は、宮城県出身の佐藤聡美。 仙台弁こけし 宮城県黒川郡大和町のエントワデザインによってプロデュースされたご当地キャラクター[8]。主に鳴子こけしの﹁鳴子っつあん﹂と弥治郎こけしの﹁弥治郎ちゃん﹂による会話を用いて、仙台弁を解説している。2014年12月にLINEスタンプとTwitterでデビューし、2015年7月には河北新報PR大使、2016年3月には宮城県警採用広報キャラクターに採用されるなど多方面で活動中。公式グッズも多数発売されている。 佐々木眞奈美のあっぺとっぺファーマシー TBCラジオのバラエティ番組︵土曜 8:10 - 8:55[9]︶。宮城県本吉郡津山町︵現‥登米市︶出身の佐々木眞奈美が出演。リスナーからの、宮城弁に関するお便りを紹介するコーナー﹁方言でござりす﹂や、歌詞を宮城弁で替え歌する﹁宮城弁だよ歌謡曲﹂のコーナーがある。脚注[編集]
(一)^ 加藤正信︵東北大学名誉教授︶は、以下のように述べている。﹃﹁仙台弁﹂という用語の定義であるが、今の人たちは、現行行政単位の仙台市の方言という意味に取る人が多いかもしれない。しかし、江戸時代、雄藩、仙台藩の領地が現在の宮城県全体から岩手県南にわたっていて、その範囲に通用している方言を称していたし、現在でも、俗に、宮城県全体にわたる方言を﹁宮城弁﹂と言うよりは﹁仙台弁﹂と言うことが多いようである。﹄︵後藤彰三 2001の序文より引用︶
(二)^ 平山輝男によると、一型アクセントの北端の線は、﹃仙台湾から旧仙台市の、その北方旧七北田村、高砂村等の中間に引く線にはじまり広瀬村の北を過ぎ、旧宮城郡を横断、山形県境を少し北上、そして、加美郡と山形県の境を接する辺りから山形県村山、置賜地方を含めて南下する線﹄︵平山輝男﹁奥羽アクセントの諸相﹂より引用︶である。すなわち、松島丘陵の南麓で、仙台平野においては七北田川流域より南側、愛子盆地においては広瀬川流域より南側が該当する。なお、南北の境界にある松島丘陵辺り︵宮城郡北部および黒川郡︶は、﹁曖昧︵又は混乱︶アクセント﹂、それより北は﹁特殊アクセント﹂としている。
参考文献[編集]
(一)^ abcde宮城縣﹃宮城縣史20︵民俗Ⅱ︶﹄財団法人宮城縣史刊行会、1963年3月20日、13-16頁。
(二)^ abcdeCorporation), NHK(Japan Broadcasting. “宮城ではカップ麺を"カッペロ"と呼ぶ?”. www.nhk.or.jp. 2023年5月21日閲覧。
(三)^ 玉懸元﹁宮城県仙台市方言の終助詞﹁ッチャ﹂の用法﹂﹃國語學﹄第52巻第2号、日本語学会、2001年6月30日、30-43,101、NAID 110002533712。
(四)^ あつじ屋 Archived 2005年4月26日, at the Wayback Machine.︵漫画家・山本貴嗣のウェブサイト︶
(五)^ “山寺 宏一︵ヤマデラ コウイチ︶”. オーディションサイトnarrow. 2021年8月8日閲覧。
(六)^ 今週のことば﹁いきなり﹂︵東日本放送﹁週刊ことばマガジン﹂︶
(七)^ 今週のことば﹁いずい﹂︵東日本放送﹁週刊ことばマガジン﹂︶
(八)^ ﹁広報たいわ﹂2016年︵平成28年︶12月1日発行‥664号22・23面︵pdfファイル︶ - 大和町ホームページ・平成28年広報たいわコーナー
(九)^ 佐々木眞奈美のあっぺとっぺファーマシー 東北放送︵2021年5月9日閲覧︶
- 後藤彰三『胸ば張って仙台弁 : ぬくもり伝えるふるさとことば』宝文堂、2001年。ISBN 4832301101。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 週刊ことばマガジン(東北7県ブロックネット)
- 東北大学方言研究センター
- 宮城の方言:仙台弁メモ(名取市近辺版)(konnokのホームページ) - ウェイバックマシン(2010年12月6日アーカイブ分)
- 仙台弁こけし(仙台弁をしゃべる宮城のご当地キャラクター)