「阿毘達磨倶舎論」の版間の差分
Tanaka0519 (会話 | 投稿記録) 情報の加筆と修正 |
Tanaka0519 (会話 | 投稿記録) 情報の加筆 |
||
8行目: | 8行目: | ||
== テキスト == |
== テキスト == |
||
旧来は称友による註釈しか梵本が存在せず嘆かれていたが、サキャ派のゴル寺(Ngor Monastery)でラーフラ・サーントクリヤーヤナによって1934年に発見された。 |
|||
後に1946年にはゴーカレによって『本頌』の梵本がとして校訂発表され、1967年にはプラダンによって『釈』の全体が校訂出版された。 |
|||
『本頌』にはチベット訳が1つ、漢訳1種が現存している。『釈論』にもチベット訳が1つと、[[真諦]]訳22巻([[564年]])、[[玄奘]]訳30巻([[651年]])の2種類がある。 |
|||
梵本の他に、『本頌』にはチベット訳が1つ、漢訳1種が現存している。 |
|||
【漢訳】大正1560『阿毘逹磨倶舎論本頌』[[玄奘]][[651年]] |
|||
【蔵訳】北京版5590, 東北版4089, Chos mngon pa'i mdsod kyi tshig le'ur byas pa |
|||
梵本の他に、『釈』にもチベット訳が1つと、漢訳二種が現存している。 |
|||
【漢訳1】大正1558『阿毘逹磨倶舎論』[[真諦]]訳22巻[[564年]] |
|||
【漢訳2】大正1559『阿毘逹磨倶舎釋論』[[玄奘]]訳30巻[[651年]] |
|||
【蔵訳】北京版5591, 東北版4090, Chos mngon pa'i mdsod kyi bshad pa |
|||
また、『本頌』『釈』共にウイグル語訳の断片が発見され、研究されている。 |
|||
== 内容 == |
== 内容 == |
||
|
598偈(漢訳608偈)の偈文と、その注釈の散文で出来ている。本論の特徴は説一切有部の伝統的な教理に対して、[[経量部]]の立場から批判が加えられている部分がある点に特色がある。 |
||
このことから本論のの立場は古来より「理長為宗」や「拠理為宗」として表現された。 |
このことから本論のの立場は古来より「理長為宗」や「拠理為宗」として表現された。 |
||
また、このように伝統的な教理解釈に異を称えることから、伝統的な教理を尊んだ[衆賢]]は『順正理論』によって『倶舎論』の解釈を批判した。 |
また、このように伝統的な教理解釈に異を称えることから、伝統的な教理を尊んだ[衆賢]]は『順正理論』によって『倶舎論』の解釈を批判した。 |
2015年11月4日 (水) 13:32時点における版
![]() |
概要
世親が作成した﹃アビダルマ・コーシャ・カーリカー︵本頌︶﹄ (梵: Abhidharma-kośa-kārikā) の600余の本頌に、世親自ら註釈を書き加えたものが﹃アビダルマ・コーシャ・バーシャ︵釈︶﹄ (梵: Abhidharma-kośa-bhāṣya) で、一般に﹃倶舎論﹄という時は後者の﹃釈﹄ (bhāṣya) のことを指す。 アビダルマの語義には複数あるが、﹃阿毘逹磨倶舎論﹄における﹁阿毘達磨﹂ (abhidharma, アビダルマ) とは、 "abhi+dharma" であり、それぞれ﹁対﹂と﹁法﹂と訳され、﹁法に関して﹂という意味であると自注する。また、﹁倶舎﹂︵kośa, コーシャ︶とは入れ物、蔵、宝物庫の意である。テキスト
旧来は称友による註釈しか梵本が存在せず嘆かれていたが、サキャ派のゴル寺(Ngor Monastery)でラーフラ・サーントクリヤーヤナによって1934年に発見された。 後に1946年にはゴーカレによって﹃本頌﹄の梵本がとして校訂発表され、1967年にはプラダンによって﹃釈﹄の全体が校訂出版された。 梵本の他に、﹃本頌﹄にはチベット訳が1つ、漢訳1種が現存している。 ︻漢訳︼大正1560﹃阿毘逹磨倶舎論本頌﹄玄奘651年 ︻蔵訳︼北京版5590, 東北版4089, Chos mngon pa'i mdsod kyi tshig le'ur byas pa 梵本の他に、﹃釈﹄にもチベット訳が1つと、漢訳二種が現存している。 ︻漢訳1︼大正1558﹃阿毘逹磨倶舎論﹄真諦訳22巻564年 ︻漢訳2︼大正1559﹃阿毘逹磨倶舎釋論﹄玄奘訳30巻651年 ︻蔵訳︼北京版5591, 東北版4090, Chos mngon pa'i mdsod kyi bshad pa また、﹃本頌﹄﹃釈﹄共にウイグル語訳の断片が発見され、研究されている。内容
598偈︵漢訳608偈︶の偈文と、その注釈の散文で出来ている。本論の特徴は説一切有部の伝統的な教理に対して、経量部の立場から批判が加えられている部分がある点に特色がある。 このことから本論のの立場は古来より﹁理長為宗﹂や﹁拠理為宗﹂として表現された。 また、このように伝統的な教理解釈に異を称えることから、伝統的な教理を尊んだ[衆賢]]は﹃順正理論﹄によって﹃倶舎論﹄の解釈を批判した。 近年の研究では世親の﹁経量部﹂の立場の多くは﹃瑜伽論﹄にトレースできることが指摘されている。構成
(一)界品︵かいぼん, dhātu-nirdeśa︶ - 存在の種類 (二)根品︵こんぼん, indriya-nirdeśa︶ - 存在現象の活動 (三)世間品︵せけんぼん, loka-nirdeśa︶ - 世界の構成 (四)業品︵ごうぼん, karma-nirdeśa︶ - 有情の輪廻の原因となる業 (五)随眠品︵ずいめんぼん, anuśaya-nirdeśa︶ - 有情の煩悩 (六)賢聖品︵けんしょうぼん, mārgapudgala-nirdeśa︶ - 悟りの段階 (七)智品︵ちぼん, jñāna-nirdeśa︶ - 智慧の趣類 (八)定品︵じょうぼん, samāpatti-nirdeśa︶ - 禅定の趣類 (九)破我品︵はがぼん, pudgala-viniścaya, [ātmavāda-pratiṣedha]︶恒常的な我性を認める人達に対する反論 界品・根品で基礎的範疇を説明し、世間品・業品・随眠品で迷いの世界を解明し、賢聖品・智品・定品で悟りに至る道を説く。最後に付録の破我品で異説を論破する。文献
- 桜部建『倶舎論の研究 界・根品』(法蔵館、1969年、新装版2011年)
- 山口益・舟橋一哉『倶舎論の原典解明 世間品』(法蔵館、1955年、新装版2012年)
- 舟橋一哉『倶舎論の原典解明 業品』(法蔵館、1987年、新装版2011年)
- 小谷信千代・本庄良文『倶舎論の原典研究 随眠品』(大蔵出版、2007年)
- 桜部建・小谷信千代『倶舎論の原典解明 賢聖品』(法藏館、1999年)
- 桜部建・小谷信千代・本庄良文『倶舎論の原典研究 智品・定品』(大蔵出版、2004年)
論文
関連項目
外部リンク
- 説一切有部において見随眠 -『倶舎論』「随眠品」を中心として-
- 阿毗达磨俱舍论梵汉对勘漢訳二種とサンスクリット原文を比較対称したテキスト。(表示がおかしくなった場合、文字エンコーディングをUnicode(UTF-8)にすると改善)