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|名前=世親 (天親) |
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|生没年=[[300年|300]] - [[400年]]頃 |
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|説明文=[[興福寺]]北円堂の世親像 |
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'''世親'''︵せしん、{{lang-sa-short|वसुबन्धु}} {{lang|sa|vasubandhu}}︶は、古代[[インド仏教]][[瑜伽行唯識学派]]の僧である。世親は[[サンスクリット]]名である﹁'''ヴァスバンドゥ'''﹂の訳名であり、[[玄奘]]訳以降定着した。それより前には﹁'''天親'''﹂︵てんじん︶と訳されることが多い。﹁'''婆薮般豆'''﹂、﹁'''婆薮般頭'''﹂と音写することもある。
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'''世親'''︵せしん、{{lang-sa-short|वसुबन्धु}} {{lang|sa|vasubandhu}}︶は、古代[[インド仏教]][[瑜伽行唯識学派]]の僧である。世親は[[サンスクリット]]名である﹁'''ヴァスバンドゥ'''﹂の訳名であり、[[玄奘]]訳以降定着した。それより前には﹁'''天親'''﹂︵てんじん︶と訳されることが多い。﹁'''婆薮般豆'''﹂、﹁'''婆薮般頭'''﹂と音写することもある。
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== 生涯 == |
== 生涯 == |
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世親の伝記については、[[真諦]]訳﹃[[婆薮槃豆法師伝]]﹄、玄奘﹃[[大唐西域記]]﹄やその弟子・[[基 (僧)|基]]の伝える伝承、[[ターラナータ]]﹃仏教史﹄中の伝記などがある。
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世親の伝記については、[[真諦]]訳﹃[[婆薮槃豆法師伝]]﹄、玄奘﹃[[大唐西域記]]﹄やその弟子・[[基 (僧)|基]]の伝える伝承、[[ターラナータ]]﹃仏教史﹄中の伝記などがある。
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== 著作 == |
== 著作 == |
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以下のリストは網羅的なものではない。 |
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近年、[[松田和信]]らの研究によって、『倶舎論』→『[[釈軌論]]』→『[[大乗成業論]]』→『縁起経釈論』→『[[唯識二十論]]』 →『[[唯識三十頌]]』という著作の順番が確定しつつある<ref>松田和信 |
近年、[[松田和信]]らの研究によって、﹃倶舎論﹄→﹃[[釈軌論]]﹄→﹃[[大乗成業論]]﹄→﹃縁起経釈論﹄→﹃[[唯識二十論]]﹄ →﹃[[唯識三十頌]]﹄という著作の順番が確定しつつある<ref>{{Cite journal|和書|author=松田和信 |title=Vasubandhu 研究ノート (1)<!--﹃研究ンート﹄は Ci.nii やリポジトリの誤記である、本文の記述に合わせた--> |journal=印度學佛教學研究 |issn=0019-4344 |publisher=日本印度学仏教学会 |year=1984 |volume=32 |issue=2 |pages=1042-1039 |naid=130004024872 |doi=10.4259/ibk.32.1042 |url=https://doi.org/10.4259/ibk.32.1042}} など。</ref>。
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=== 説一切有部系の著作 === |
=== 説一切有部系の著作 === |
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* 『縁起初分分別経論』(縁起論・縁起経釈・''Pratītiyasamutpāda-vyākhyā'') |
* 『縁起初分分別経論』(縁起論・縁起経釈・''Pratītiyasamutpāda-vyākhyā'') |
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* 『金剛般若波羅蜜経論』 - 義浄訳では無著造頌・世親釈とする。 |
* 『金剛般若波羅蜜経論』 - 義浄訳では無著造頌・世親釈とする。 |
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* 『妙法蓮華経優波提舎』(法華論)- インドにおける[[法華経]]の注釈書として唯一現存する<ref>望月海慧 |
* ﹃妙法蓮華経優波提舎﹄︵法華論︶- インドにおける[[法華経]]の注釈書として唯一現存する<ref>{{Cite journal|和書|author=望月海慧, 金炳坤 |title=[妙法蓮華経優波提舎の文献学的研究] 表紙・目次・執筆者略歴・奥付 |month=apr |year=2020 |journal=法華経研究叢書 |publisher=身延山大学国際日蓮学研究所 |url=http://id.nii.ac.jp/1367/00002641/ |ISBN=9784905331131}}</ref>。
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* 『十地経論』 |
* 『十地経論』 |
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* [[無量寿経優婆提舎願生偈|『無量寿経優婆提舎願生偈』(浄土論・往生論)]] - 後に[[曇鸞]]が、『[[無量寿経優婆提舎願生偈註|浄土論註]]』を撰述し、本書を注解する<ref name="ib108">{{Cite book |和書 |author=中村元ほか(編) |coauthors= |others= |date=2002-10 |title=岩波仏教辞典 |edition=第二版 |publisher=岩波書店 |page=108 }}</ref>。[[浄土教]]所依の経論として[[浄土三部経]]と共に高く位置付けられている<ref name="ib108" />。日本の浄土教において、もっとも重要な論書とされる。 |
* [[無量寿経優婆提舎願生偈|『無量寿経優婆提舎願生偈』(浄土論・往生論)]] - 後に[[曇鸞]]が、『[[無量寿経優婆提舎願生偈註|浄土論註]]』を撰述し、本書を注解する<ref name="ib108">{{Cite book |和書 |author=中村元ほか(編) |coauthors= |others= |date=2002-10 |title=岩波仏教辞典 |edition=第二版 |publisher=岩波書店 |page=108 }}</ref>。[[浄土教]]所依の経論として[[浄土三部経]]と共に高く位置付けられている<ref name="ib108" />。日本の浄土教において、もっとも重要な論書とされる。 |
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=== 唯識系の論書 === |
=== 唯識系の論書 === |
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* 『唯識三十頌』(''Triṃśikā-vijñaptimātratāsiddhi'') - 後に多くの論師によって注釈書が作られ、唯識の基本的論書となる。 |
* 『唯識三十頌』(''Triṃśikā-vijñaptimātratāsiddhi'') - 後に多くの論師によって注釈書が作られ、唯識の基本的論書となる。 |
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* 『唯識二十論』(''Viṃśatikā-vijñaptimātratāsiddhi'') |
* 『唯識二十論』(''Viṃśatikā-vijñaptimātratāsiddhi'') |
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== 世親二人説 == |
== 世親二人説 == |
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世親の生存年代については、仏滅後900年、1000年、1100年など、複数の伝承が存在した。また、ヤショーミトラによる『倶舎論』の注釈書や普光『倶舎論記』において、『倶舎論』の著者とは別の古師ヴァスバンドゥ(古世親、vṛddhācārya-vasubandhu)についての言及があることが、指摘されていた。 |
世親の生存年代については、仏滅後900年、1000年、1100年など、複数の伝承が存在した。また、ヤショーミトラによる『倶舎論』の注釈書や普光『倶舎論記』において、『倶舎論』の著者とは別の古師ヴァスバンドゥ(古世親、vṛddhācārya-vasubandhu)についての言及があることが、指摘されていた。 |
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これらをふまえフラウヴァルナーが、ヴァスバンドゥには古師と新師の2人がいる、という説を唱えた<ref>Erich Frauwallner. ''On the Date of the Buddhist Master of the Law Vasubandhu.'' Roma: Istituto Italiano per il Medio ed Estremo Oriente, 1951.</ref>。フラウヴァルナーは、[[僧肇]]﹃法華翻経後記<ref>金炳坤 |
これらをふまえフラウヴァルナーが、ヴァスバンドゥには古師と新師の2人がいる、という説を唱えた<ref>Erich Frauwallner. ''On the Date of the Buddhist Master of the Law Vasubandhu.'' Roma: Istituto Italiano per il Medio ed Estremo Oriente, 1951.</ref>。フラウヴァルナーは、[[僧肇]]﹃法華翻経後記<ref>{{Cite journal|和書|author=金炳坤(慧鏡) |url=http://id.nii.ac.jp/1367/00001114/ |title=僧肇記﹁法華翻経後記﹂偽撰説の全貌と解明 |journal=仏教学論集 |publisher=立正大学大学院仏教学研究会 |year=2009 |month=mar |issue=27 |pages=29-55 |naid=120006536756 |issn=0289-0267}}</ref>﹄などに見える鳩摩羅什の伝承に基づき、古師ヴァスバンドゥを4世紀前半の人とし、﹃中辺分別論﹄﹃大乗荘厳経論﹄﹃摂大乗論釈﹄、大乗経典に対する註釈書などを古師ヴァスバンドゥの著作とする。一方、新師ヴァスバンドゥを、仏滅後1000年または1100年=5世紀の人とし、﹃倶舎論﹄﹃唯識二十論﹄﹃唯識三十頌﹄﹃論軌﹄﹃論式﹄﹃論心﹄などの作者とした。
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しかし、古師ヴァスバンドゥと新師ヴァスバンドゥの著作間の共通箇所が次々と指摘され、フラウヴァルナーが用いた史料の信頼性にも疑問が呈されたことから、現在では否定的に考えられている。 |
しかし、古師ヴァスバンドゥと新師ヴァスバンドゥの著作間の共通箇所が次々と指摘され、フラウヴァルナーが用いた史料の信頼性にも疑問が呈されたことから、現在では否定的に考えられている。 |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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* [[桜部建]]・[[上山春平]]『仏教の思想2 存在の分析<[[アビダルマ]]>』([[角川文庫ソフィア]]、[[1996年]]、ISBN 4-04-198502-1) |
* [[桜部建]]・[[上山春平]]『仏教の思想2 存在の分析<[[アビダルマ]]>』([[角川文庫ソフィア]]、[[1996年]]、ISBN 4-04-198502-1) |
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* [[服部正明]]・上山春平『仏教の思想4 認識と超越<[[唯識]]>』(角川文庫ソフィア、[[1997年]]、ISBN 4-04-198504-8) |
* [[服部正明]]・上山春平『仏教の思想4 認識と超越<[[唯識]]>』(角川文庫ソフィア、[[1997年]]、ISBN 4-04-198504-8) |
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=== 現代語訳・訳注 === |
=== 現代語訳・訳注 === |
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『[[阿毘達磨倶舎論]]』の現代語訳・訳注については『[[阿毘達磨倶舎論]]』を参照。 |
『[[阿毘達磨倶舎論]]』の現代語訳・訳注については『[[阿毘達磨倶舎論]]』を参照。 |
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==脚注== |
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<references/> |
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2021年6月2日 (水) 21:04時点における版
世親 (天親) | |
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300 - 400年頃 | |
興福寺北円堂の世親像 | |
尊称 | 世親菩薩、天親菩薩 |
生地 | プルシャプラ |
没地 | アヨーディヤー |
宗派 |
説一切有部 後に、瑜伽行唯識学派 |
師 | 無著(世親の実兄) |
著作 |
『阿毘達磨倶舎論』 『唯識二十論』 『唯識三十頌』 『浄土論』他 |
生涯
著作
以下のリストは網羅的なものではない。
近年、松田和信らの研究によって、『倶舎論』→『釈軌論』→『大乗成業論』→『縁起経釈論』→『唯識二十論』 →『唯識三十頌』という著作の順番が確定しつつある[2]。
説一切有部系の著作
経典の注釈
大乗論書に対する注釈
唯識系の論書
論理学関連
- 『如実論』(Tarkaśāstra) - 漢訳(『如実論 反質難品』)は部分訳か。
- 『論軌』(Vādavidhi)
- 『論式』(Vādavidhāna)
- 『論心』
その他
- 『釈軌論』(Vyākhyā-yukti) - 経典解釈の方法を説く。
- 『止観門論頌』 - 不浄観などを説く。
- Gāthāsaṃgraha - 寓話集的なもの。
- Śīlaparikathā
世親二人説
参考文献
- 桜部建・上山春平『仏教の思想2 存在の分析<アビダルマ>』(角川文庫ソフィア、1996年、ISBN 4-04-198502-1)
- 服部正明・上山春平『仏教の思想4 認識と超越<唯識>』(角川文庫ソフィア、1997年、ISBN 4-04-198504-8)
- 塚本啓祥・松長有慶・磯田煕文 編著『梵語仏典の研究 III 論書篇』(平楽寺書店、1990年)
- 大竹晋『元魏漢訳ヴァスバンドゥ釈経論群の研究』(大蔵出版、2013年3月)