うどん
概要[編集]
歴史[編集]
発祥には諸説あり定かではないが、時代順に並べると以下のようになる。 ●遣唐使の一行が索麺の製法を、遣唐使船の寄港地であった肥前国 松浦郡 上五島の人々に真っ先に伝えた説。中国・浙江省岩坦地区に現存する﹁索麺﹂の製造方法が、五島うどんの製造方法に酷似しており、素麺発祥と謳っている三輪素麺に素麺を供給していた島原素麺などの製麺技術が古代から同地域に発達している事など地理的に考えても有力な説である。 ●奈良時代に遣唐使によって唐から渡来した小麦粉の餡入りの団子菓子﹁混飩︵こんとん︶﹂に起源を求める説。 ●青木正児の﹃饂飩の歴史﹄によれば、ワンタンに相当する中国語は﹁餛飩︵コントン‥中国語の発音ではhún tún︶﹂と書き、またこれを﹁餫飩︵ウントン、コントン︶﹂とも書き、これが同じ読み方の﹁温飩︵ウントン‥中国の発音ではwēn tún︶﹂という表記になり、これが﹁饂飩︵ウドン‥中国語の発音ではyún tún︶﹂となったとする説。 ●平安時代に遣唐使として唐に渡った空海が饂飩を四国に伝えて讃岐うどんが誕生したという伝説。 ●平安時代の989年、一条天皇が春日大社へ詣でた際に﹁餺飥(現代ではほうとうと読むがはくたくと読む。神饌として奉納された)﹂を食べたという﹃小右記﹄の記述から、発祥は奈良とする説[3][4][5]。また、それ以前の奈良時代までは索餅・はくたくのいずれも醤で調味しながら野菜とともに煮て現代のほうとうと同様に食べられていた。 ●仁治2年︵1241年︶に宋から帰国した円爾︵聖一国師︶が製粉の技術を持ち帰り、饂飩、蕎麦、饅頭などの粉物食文化を広めたとする説。承天寺︵福岡市、円爾建立︶境内には﹁饂飩蕎麦発祥之地﹂と記された石碑が建っている[6]。また製粉機の詳細を記した古文書﹃水磨の図﹄が残されている。 ●中国大陸から渡来した切り麦が日本で独自に進化したものであるという説。 ●奥村彪生によれば、麺を加熱して付け汁で食するものは中国大陸にはなく、日本の平安時代の文献にあるコントンは肉の餡を小麦の皮で包んだもので、うどんとは別物であり、うどんを表現する表記の文献初出は南北朝時代の﹁ウトム﹂であるとする説[7]。 ●南北朝時代末期の﹃庭訓往来﹄や﹃節用集﹄などに﹁饂飩﹂﹁うとん﹂の語が現れる。江戸時代は﹁うどん﹂と﹁うんどん﹂の語が並存し、浮世絵に描かれた看板などに﹁うんとん﹂と書いてあることがよくあり、明治初期の辞書﹃言海﹄には﹁うどんはうんどんの略﹂と記されている。 ●室町時代に記された﹃尺素往来﹄に﹁索麺は熱蒸し、截麦は冷濯い﹂という記述があり、截麦︵切麦︶が前身と考える説もあるが、その太さがより細く、冷やして食されていたことから、冷麦の原型とされている。切麦を温かくして食べる﹁温麦﹂と冷やして食べる﹁冷麦﹂は総じてうどんと呼ばれた[注 2]。 いずれにせよ、江戸時代前期には現代の形のものが、全国的に普及して広く食べられるようになっていた。 備考 ●中国大陸では﹁乌冬面﹂、台湾などの繁体字文化圏では﹁烏龍麵﹂と表記するが、いずれも日本語の発音に基づく当て字であり、起源・由来とは関係がない。 ●江戸時代中期までは、薬味はコショウだった。江戸時代後期にトウガラシ栽培が軌道に乗るに連れ、その地位を奪い今日に至っている[8]。 ●第二次世界大戦中の1940年9月、食堂などで提供されるうどんに公定価格が設定された。65匁以上の量で一杯10銭[9]。以降、味の良し悪しは関係なく10銭で売られることとなったため、材料入手難と相まってうどんの劣化が進んだ。文化[編集]
日本におけるうどんの文化は、歴史的には蕎麦︵蕎麦切り︶より、うどんの方が古い。また、小麦の原産地は中央アジアから西アジアとされており、小麦は米作に向かない地域で耕作され発展している。﹁門前蕎麦﹂と同じく、参拝者などに対する﹁門前饂飩﹂として古い歴史を持った社寺にまつわる文化的なうどんが各地に存在している︵加須うどん、吉田のうどん、伊勢うどんなど︶。日本東西のうどん・そば文化[編集]
主に関西で好まれ、蕎麦が好まれる関東ではあまり好まれないとされるが、蕎麦=東日本、うどん=西日本とするのは正しくない。 江戸時代前期の江戸の市中においては、麺類としての蕎麦︵蕎麦切り︶が普及しておらず、蕎麦がきなどの形で食べられていた。蕎麦切りの元祖は信州そばであり、蕎麦切りの最古の記録は、天正2年︵1574年︶に木曽の定勝寺で落成祝いに蕎麦切りを振る舞ったというものである。これが信州から甲州街道や中山道を通して江戸に伝えられたものとされる。蕎麦切りが普及したのは、蕎麦と蕎麦屋が独自の文化を育む母体となっていったこと、脚気防止のために冷害にも強い蕎麦が好まれたからである。 蕎麦は江戸で広がっていった。一方で関東地方でも、武蔵野や群馬県を中心として、それぞれの名物である﹁武蔵野うどん﹂や﹁水沢うどん﹂をはじめとする専門店も多い[10]。実際、2004年度︵平成16年度︶のうどん生産量は、1位は日本全国に向けて宣伝をしている讃岐うどんの香川県だが、2位は埼玉県であり、群馬県もベスト5に入っている。これらの地域では、二毛作による小麦栽培が盛んで、日常的な食事であり、かけうどんや付け麺︵もりうどん︶にして食べられることが多い。 天正12年︵1584年︶に、大坂で﹁砂場﹂という蕎麦屋が開業した記録があるなど、近畿地方でも早い時期から蕎麦が食べられており、蕎麦切りも普及していった。近畿地方では﹁そば屋﹂よりも﹁うどん屋﹂が多いが、京都では近隣の丹波地方で蕎麦作りが盛んだったため、蕎麦文化も根付いており、専門の﹁そば屋﹂も多いうえににしんそばは京都の名物ともなっている。﹁出石そば﹂をはじめとする近畿北部の蕎麦文化は、江戸時代に信州︵現在の長野県︶から導入されたものだという。 讃岐国︵現在の香川県︶を除く西日本の大部分の地域では、大阪や京都、福岡、鳴門など腰が弱めでつゆ[注 3]を吸いやすい、柔らかい麺が好まれている︵柔肌の大阪うどんより︶。また、関西では﹁かやくご飯﹂︵二番出汁を有効活用した炊き込みご飯︶と一緒に供することも多く、吸い物の感覚として好まれている。日本三大うどん[編集]
﹁日本三大うどん﹂という呼称があるが、日本うどん学会によれば、これは特定の機関が認定したものではなく、それぞれの地域が独自に称しているにすぎないとされる。例えば、以下のものが候補として挙げられる。 ●讃岐うどん︵香川県︶ ●稲庭うどん︵秋田県︶ ●五島うどん︵長崎県︶ ●水沢うどん︵群馬県︶ ●氷見うどん︵富山県︶ ●きしめん︵愛知県︶麺[編集]
小麦粉に2%から6%程度の塩を加えた生地から作られるのが一般的である。その理由は、小麦粉のグルテンを引き締め、生地の弾力性を増加させるためである。生地に加えた塩分の90%前後は、茹でる間に麺から失われる。ごく少数ながら、塩を全く使わないで作られるものもある。 小麦粉以外の炭水化物で作られるうどんもある。北海道倶知安町・留寿都村では、第二次世界大戦中の食料不足時にジャガイモを原料にしたでんぷんうどんを再現して提供している[11]︵後述︶。米粉が原料のうどん状麺類については﹁ライスヌードル﹂参照。うどん用小麦[編集]
日本の伝統的料理であるが、現代において、使用される小麦の半分以上はオーストラリア産スタンダードホワイト︵ASW︶である。ASWが年間76万トン程度が輸入されているのに対して、日本での小麦生産総量は約80万トンで、中華麺や菓子向けなどを除いたうどん用品種は8割強である。低アミロース、もちもちした食感といった特性を備えたうどん向け小麦も日本国内で相次ぎ開発・栽培されている。﹁きたほなみ﹂﹁あやひかり﹂﹁きぬあかり﹂が代表的品種である[12]。規格[編集]
乾麺については、日本農林規格の﹁乾めん類品質表示基準[13]﹂にて、小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練った生地を帯状に細く切って乾燥させる製法で機械にて製造しているものは機械麺に分類し、長径[14]が1.7ミリメートル以上に成形したものとしている。また、長径[14]1.3ミリメートル以上1.7ミリメートル未満に成形したものは﹁ひやむぎ﹂の基準でもあるが、それを満たしている場合﹁細うどん﹂とも表示可能である[13]。手延べうどんについては、小麦粉に食塩と水を混ぜてよく練った生地に、でん粉や食用油または小麦粉を塗付して、よりをかけながら引き伸ばして乾燥、熟成させる製法で長径[14]1.7ミリメートル以上の丸棒状または帯状に成形し、﹃手延べ干しめんの日本農林規格﹄の詳細を満たしているものが該当する。 生麺・茹で麺など︵半生・冷凍麺なども含む︶については製麺法を問わず﹁生めん類の表示に関する公正競争規約[15]﹂にて、﹁この規約で﹃うどん﹄とはひらめん、ひやむぎ、そうめんその他名称のいかんを問わず小麦粉に水を加え練り上げたあと製麺したもの、または製麺した後加工したものをいう﹂となっているため、この規約上﹁ひやむぎ﹂や﹁そうめん﹂も内包されており、狭義では﹁生麺・茹で麺タイプはうどんのみ存在する﹂とも解釈できる。しかし、別項にて﹁一般消費者に誤認されない名称に替えることができる﹂となっているため、それにより﹁ひやむぎ﹂や﹁そうめん﹂の名を使用することも認められている[注 4]。 かつては製法の違い︵麺棒や機械で生地を伸ばしてから切るか、細く丸めた生地を引いて伸ばすかなど︶、社会通念上も、細い麺の﹁細うどん﹂と﹁ひやむぎ﹂は明確に区別されていたが、現在では﹁うどん︵細うどん︶﹂と﹁ひやむぎ﹂の名前の区別は基準・規約に沿ったうえで取り扱う業者に委ねられているため、乾麺・生麺などにおいて曖昧となっている部分がある。製法の一例[編集]
●1人分の材料は、小麦粉260グラム︵できあがり750グラム︶、水、食塩適宜。 ●塩と水を混ぜる。 ●うどん粉を容器に入れ食塩水を少しずつ流し込んで混ぜ、固まるほどになったらしばらく寝かせ、板の上に載せ棒で伸ばして細く切る[16]。製法による分類[編集]
麺の状態による名称[編集]
うどん玉︵ゆでうどん︶ 生うどんを製麺後、熱湯で茹でることにより麺の熟成を止め、1食分ずつに分けたもの。丸くまとめるため﹁玉﹂と言われている[注 5]。袋詰めにしたものは﹁ゆでうどん﹂としてスーパーやコンビニなどでも売られる。 カップ入りや袋入りのインスタント製品には、茹でたあとに、酢やエチルアルコールを保存料としてまぶし、真空包装にした製品もある。 生うどん 製麺後そのまま、もしくは表面に粉をまぶして包装されたもの。食味に優れるが、麺の熟成度が時間とともに変化するため長期保存には向かない。少しでも熟成や酸化を抑えるべく、脱酸素剤と一緒に包装している場合もある。 半生うどん 食べる直前に熱湯で茹で、湯切りのあとに流水で締めて供するのが正統。小麦の専用品種の作付けが増加している。脱酸素剤と一緒に包装している場合が多い。 干しうどん 一般的に﹁乾麺﹂と呼ばれる状態。細うどんに多い。製麺後に乾燥させて20センチメートル内外の棒状に揃え、保存しやすくしたもの。 冷凍うどん 熱湯で茹でた直後、急速冷凍したもの。一般的に麺類を凍らせると、凍結時に水分が膨張して分子構造が分断された状態となり食味に劣る。そこで茹で戻してからの弾力を得るため、冷凍うどんでは澱粉がツナギとして使われることがある。 油揚げ麺︵フライ麺︶などインスタント麺 カップ入りや袋入りのインスタント製品は、油で揚げたり、フリーズドライや茹でてから熱風乾燥させたりしたものが使われている。﹁コシ﹂について[編集]
コシとは、柔らかくて張力のある状態をいう。すなわち、伸長度のこと[18]。食感の硬いものを﹁コシ﹂があると誤認識している場合が見受けられるが間違いであり、歯で噛んだ際に弾力のあるものがコシである。讃岐うどんの場合、伸長度が1.7倍、たとえば5センチメートルのうどんを引っ張り8.5センチメートル以上切れずに伸びる状態を﹁コシ﹂があるとしている。 食品加工学研究者の三木英三︵香川大学名誉教授︶は、コシを﹁弾力性と粘りの両方がある状態﹂と定義。小麦粉に水と塩を加えてこねると、小麦粉に含まれる蛋白質のうち弾力性に富むグルテニンと、粘りが強いグリアジンが絡み合ってグルテンの網目構造となり、コシを生み出すと分析している。讃岐うどんや稲庭うどんでは強いコシが求められるが、関西や九州などコシが強くないものを好む地域・人も多い[19]。料理[編集]
多種多様な料理が作られている。料理方法や食べ方による名称分類と、上にのせる具︵加薬、種物、薬味︶による名称分類が存在する。 基本的には一度麺を熱湯で茹で︵時間は、うどんの種類によって数分から1時間程度と差がある︶、それから料理に使用する。これは麺の中のでんぷん質のアルファ化を促すのが目的で、茹でた直後の麺は︵太さにもよるが︶表面の水分量が80%程度にも達するのに対し内部の水分量が少なくなるため︵水分勾配︶、モチモチとした食感が生まれる[20]。茹でた麺は多くの場合一度冷水にさらして締められるが、締めの工程を省略するもの︵釜揚げうどん等︶もある。料理方法や食べ方による種類[編集]
薬味や具は地域や店によりさまざまなものが存在する。かけうどん・素うどん[編集]
ざるうどん[編集]
茹でた麺を冷水で締めて、笊︵ざる︶などの器に盛ったもの。つゆにつけて食べる。﹁もりうどん﹂とも呼ばれるが、ざるそばと同様に刻み海苔の有無で区別される場合もある。薬味は東日本で多いわさびと西日本で多いしょうがに大別される。ぶっかけうどん[編集]
茹でた麺を湯切りして器に盛り、生醤油や少量のつゆをかけて食べる。具は様々であり、具材名を冠して﹁肉ぶっかけ﹂などと呼ばれることがある。 讃岐では賄いとしてゆでた麵につけ汁をぶっかけて食べたことを発祥とする説があり、醬油の製造も盛んだったこともあり﹁醤油﹂をかけて食べる﹁しょうゆうどん﹂とは明確に区別されている。釜揚げうどん[編集]
つけ汁うどん[編集]
茹でた麺を器に盛り、豚肉やきのこなどを煮込んだ汁につけて食べる。「つけうどん」「汁つけうどん」とも呼ばれる。
煮込みうどん[編集]
つゆの中で麺を煮込んだもの。
焼きうどん[編集]
麺を炒めて調理したもの。
上にのせる具(加薬、種物、薬味)による種類[編集]
きつねうどん[編集]
きざみうどん[編集]
細く刻んで油抜きした薄揚げを載せたもの。通常、薄揚げに味付けはされていない。月見うどん[編集]
かけうどんに生卵を落としたもの。卵の卵白︵白身︶を雲、卵黄︵黄身︶を月に見立てたことから月見と呼ぶ。夜空に見立てた海苔を敷く場合もある。山かけうどん[編集]
山芋などのすりおろしをのせたもの。ぶっかけ、冷やしなどの種類もある。生卵や刻み海苔をのせることも多い。地域によっては﹁とろろうどん﹂とも呼ばれる。とじうどん[編集]
﹁卵︵玉子︶とじうどん﹂ともいう。丼の表面を半熟の卵で綴じたもの。鶏肉も使用し親子丼の頭と同じものを載せたものは﹁親子うどん﹂とも呼ぶ。天ぷらうどん[編集]
たぬきうどん[編集]
力うどん︵ちからうどん︶[編集]
かやくうどん・五目うどん・おかめうどん[編集]
﹁たねもの﹂﹁かやく﹂と呼ばれる具を数種類入れたもの。具は、なると、ほうれん草、鶏肉などさまざまで、﹁五目うどん﹂とも呼ばれる。特に具の種類の多いもの︵8種類以上︶については、東京や西日本の一部地域で﹁おかめうどん﹂︵おかめ八目に由来︶と呼ばれることもある。おかめうどんはもともとは東京の太田庵が発祥で本来はそばのメニューであり、松茸や湯葉、かまぼこなどの具がおかめの顔に見立てて配置されている。現在ではかまぼこ以外の具は省略されるか別の食材に置き換えられることが多い。具のことを関西では﹁加薬︵かやく︶﹂と呼ぶことが多い。関東では具の入ったものを﹁種物︵たねもの︶﹂と呼ぶ。卓袱︵しっぽく︶うどん[編集]
上記の五目うどんに似るが、地域によって具・出汁など内容が異なる。香川・京都などに多く、山形にも﹁しっぽく﹂が訛ったと推定される﹁すっぽこうどん﹂がある。京都の卓袱うどんは、しいたけの煮付け、かまぼこ、湯葉、板麩、三葉などを乗せたもの。香川では、冬のメニューともなっている。もともとは江戸時代に卓袱料理の影響を受けて京阪地区で考案された[22]。あんかけうどん[編集]
つゆにくず粉や片栗粉などを入れ、とろみをつけた餡をかけたもの。京都では細切りの油揚げを載せて、くずあんをかけ、おろし生姜を添えたものを﹁たぬきうどん﹂と呼ぶが、そこから油揚げを除いたもののことを﹁あんかけうどん﹂呼ぶ。また、餡に溶き卵を混ぜたものを﹁けいらんうどん﹂と呼ぶ。おだまきうどん[編集]
カレーうどん[編集]
鴨南蛮・鶏南蛮・かしわうどん[編集]
﹁南蛮﹂の麺をうどんとしたもの。地域によっては﹁鴨南蛮﹂﹁かもなんば﹂という名前で鶏肉が用いられる例もしばしば見られる。白ネギの流通が少なかった西日本では、青ネギの斜め切りが用いられることも多い。肉うどん[編集]
その他の食べ方[編集]
鍋焼きうどん 土鍋を用いた煮込みうどん。通常は天ぷら、卵、かまぼこ、鶏肉、野菜など多種類の具材が用いられる。 味噌煮込みうどん 汁が味噌仕立てであり、土鍋などで煮込んだ料理。豆味噌を用いたものは愛知県の郷土料理とされている。そのほか、各地でもその地域特有の味噌を用いたものが提供され、それらは田舎煮込みうどん・田舎風味噌煮込みうどんなどと呼ばれることもある。日本国内における地方のうどん[編集]
小麦の生産される土壌、気候、醤油などの醸造業や漁業などの地場産業、流通を担う商人などの存在により、その地域独特の郷土料理となっているもの、また村おこしの一環として地域の名物となったものなど、さまざまな種類がある。北海道・東北地方のうどん[編集]
豪雪うどん[編集]
ジャガイモの一大生産地である北海道羊蹄山麓で、昔から農家の家庭食として﹁でんぷんうどん﹂なるものが食べられてきた。ジャガイモのでん粉と小麦粉などの配合を調整し、時間がたってもおいしく食べられるように改良されたもの。羊蹄山麓が豪雪地帯であること、麺の見た目が雪を連想させる半透明であることが名前の由来である[29]。近年は独自のテレビCMも制作され、道内外での知名度も高まってきている。チホクうどん[編集]
北海道足寄町産のチホク小麦を使用したもの。ほかの一般的なうどんと比べると価格は高いが、他のうどんにはないツルツルとしたのどごしと食感である。名前の由来は池北線[30]沿線地域の俗称から。稲庭(いなにわ)うどん[編集]
甘ったれうどん[編集]
宮城県蔵王町で作られている。小麦は北海道産が使われている。麺に細かく刻んだ葱を散らし、上に卵黄を乗せ、甘みのあるたれを使ってかき混ぜて食べる。ひっぱりうどん[編集]
関東地方のうどん[編集]
おっきりこみ[編集]
二毛作による粉食文化のある群馬県や埼玉県北部・秩父地方の麺の入った野菜煮込み料理[31]。
上州うどん[編集]
桐生うどん[編集]
ひもかわ[編集]
館林のうどん[編集]
群馬県館林市は日清製粉グループ本社の前身の﹁館林製粉﹂発祥の地であり、東毛地方は小麦の産地であることから[32]、歴史的にうどん食文化があった︵江戸時代中頃より館林藩の名物として徳川将軍家に献上されたとの記録がある︶[33][34]。1994年︵平成6年︶より町おこしの観光資源として活用されている[33][34]。乾麺が中心となっており[34]、特徴としては変わりうどんが多数あること[35]。水沢うどん[編集]
群馬県渋川市伊香保町水沢特産。生地をこねてから延ばすまでの間に熟成期間があり、コシがあるのが特徴。
耳うどん[編集]
小山うどん[編集]
栃木県小山市は小麦﹁イワイノダイチ﹂の栽培が盛んで、それを用いたうどんの普及に力を入れており[36]、﹁小山うどん﹂を地元に愛される名物料理として全国にアピールしようと﹁開運小山うどん会﹂が2011年に設立された[37]。加須うどん[編集]
埼玉県加須市で食べられ郷土料理で、門前うどんでもある。
冷汁うどん[編集]
武蔵野うどん[編集]
煮ぼうとう[編集]
一本うどん[編集]
一本うどん(いっぽんうどん)は、通常のものと比べて、きわめて太い麺を使用する。かつての江戸や京都、名古屋で存在していたが、製法が難しく途絶えていた。近年、埼玉県羽生市や京都で復活をさせ、名物としている。
中部地方のうどん[編集]
帯うどん[編集]
静岡県伊豆の代表的なうどん。幅2.5cmの形状で平たくモチモチの食感。鍋焼きうどんや創作うどんに利用される。
ほうとう[編集]
きしめん[編集]
愛知県の代表的な郷土料理で、麺の形状が平たい。
吉田のうどん[編集]
おしぼりうどん[編集]
おにかけ︵オセーメン・オトウジ︶[編集]
長野県佐久地方の、野菜や竹輪や鶏肉などを入れた煮込料理﹁お煮こじ﹂を元にしており、味噌汁のうわずみを用いる。おかわりの麺を椀から椀に移して食べることを﹁オセーメン﹂と言う。また、柄の長い竹かごで麺を茹で、椀に移しながら食べることを﹁オトウジ﹂という[注 7]。氷見うどん[編集]
小松うどん[編集]
にかけうどん[編集]
ころ(香露)うどん[編集]
名古屋を中心とした中京圏では冷やしうどんを「ころ」と称し、うどんをきしめんに変えたものは「きしころ」と称する。
志の田うどん[編集]
つゆに愛知県特産の白醤油を使ったうどん。油揚げが入っているが、きつねうどんと違って油揚げに味付けはされていない。
伊勢うどん[編集]
近畿地方のうどん[編集]
京うどん[編集]
こぶうどん[編集]
京阪神の店ではよく見られるメニュー。﹁とろろ昆布﹂あるいは﹁おぼろ昆布﹂を乗せて供する。近畿では昆布を﹁こぶ﹂と呼ぶことが多く、メニューにおいても﹁こんぶうどん﹂ではなく﹁こぶうどん﹂と表記される。﹁とろろうどん﹂﹁おぼろうどん﹂と呼ばれることもある。かす汁うどん[編集]
酒造地帯である灘五郷を中心とするエリアで冬季限定で提供する店があり、酒粕を用いた粕汁ベースの料理。専門店よりも定食屋で多く見られるメニューである。かすうどん[編集]
ホルモンうどん[編集]
大阪市の新今宮駅周辺にみられる、ホルモンの煮込みを具材としたもの。牛のフワ︵肺︶がおもに用いられる。中国地方のうどん[編集]
備中うどん[編集]
ぶっかけうどん[編集]
江戸時代、天領だった倉敷に来た代官に差し出されたものが原型という説がある[45]。江戸の蕎麦を由来とする汁であるため、讃岐など他近辺地域のぶっかけうどんよりも濃く甘味が強い汁で、また具が多めである。古くからこの地で食べられていた郷土料理だったが、地元店が倉敷名物として売り出し、定着した。
しのうどん[編集]
大豆うどん[編集]
広島県江田島市の郷土料理。大豆と昆布、鰹節を水に一晩漬けて出汁をとったツユを使い、出汁とりにつかった大豆のほかシイタケ、油揚げ、かまぼこなどの具を乗せる[46]。四国地方のうどん[編集]
鳴門うどん[編集]
たらいうどん[編集]
徳島県北東部の阿波市土成地区の郷土料理[50]。ゆで汁ごと大きなたらいにうつし、つけ汁うどんと同じくつけ汁につけて食べる。
讃岐うどん[編集]
鍋ホルうどん[編集]
香川県多度津町で食べられている。もともとは国鉄多度津工場の労働者向けに精肉店が作っていた鍋ホルモンの﹁しめ﹂として作られたのが始まりとされている[51]。九州地方のうどん[編集]
博多うどん︵福岡うどん︶[編集]
丸天うどん[編集]
ごぼう天うどん︵ごぼ天うどん︶[編集]
福岡県を中心にした地域で食べられている。笹がきごぼうをかき揚げにした︵もしくはバラバラに揚がった︶天ぷら[56]が乗っているもので、九州北部地方の大半の店舗で扱っている。かしわうどん[編集]
五島うどん[編集]
あごだしうどん[編集]
長崎県で食べられている。出汁は当地で獲れるアゴ︵トビウオ︶でとるため、かつおだしよりあっさりした味。長崎地方は古く中国大陸との貿易の歴史があり、五島手延うどんや島原手延そうめんに見られるように手延製法が受け継がれている。奈良時代の文献には﹁麦縄﹂としてうどんが書かれており、これは長崎の五島うどんや島原そうめんに見られる﹁手延製法﹂と一致すると考えられる[59]。ごまだしうどん[編集]
やせうま[編集]
大分県で食べられている。弾力ある食感を生かし、きな粉餅のようにきな粉をかけたものである。
団子汁[編集]
しるかえ[編集]
熊本市︵旧飽田町︶の郷土料理。ナンテンの葉をすり潰して濾した汁を小麦粉に加えた薄緑色のうどん。魚うどん(ぎょうどん)[編集]
日本国外[編集]
欧米などの日本食ブームによって、日本食レストランのみならず、レトルトや冷凍麺がスーパーマーケット等で販売され始めており、家庭料理としても一般的になりつつある。 香港では﹁烏冬麵﹂と書いて、広東語読みで﹁ウードンミン﹂と発音する。香港の日本料理店で使われ始めた表記だが、現在では中国大陸でもみかける表記となっている。他に﹁烏龍麵﹂という表記が使われる場合もあるが、これでは読みが﹁ウーロンミン﹂と訛る。﹁烏龍麺﹂の表記は似た発音の漢字を当てはめた物であり、﹁烏龍茶﹂とは何の関係もない。 台湾では烏龍麵、もしくは烏龍湯麵という名称で親しまれている。スープはやや現地化されているが、基本的には日本のものと大差はない。 韓国では20世紀前半の日本統治時代に日本式のうどんが伝えられた。現在でも우동︵ウドン・udong︶の呼び名で知られ、韓国人の好きな日本料理の3番目に位置している[61]。出汁に胡椒が入っているのが普通で、味は似て非なるものが多い。一方、釜山周辺では日本と同様のだし汁ベースのうどんが存在する︵しかしキムチが盛られている︶。なお朝鮮半島には、カルグクスという伝統的な小麦粉の手打ち麺がある。 ベトナムのホイアンには﹁カオラウ﹂︵cao lầu︶という小麦を原料とする太麺の料理があり、17世紀前半の朱印船貿易時代の伊勢商人が持ち込んだ伊勢うどんをルーツとするという説がある。 ハワイは、明治から昭和初期にかけて多くの日本人の移民先となっており、サイミンと呼ばれる麺料理が存在する。現在では中華麺が用いられるが、出汁の味は明らかに和風であり、日本人を中心とした各国の移民たちの交流の中で形成されていった料理であると考えられている。 パラオは、第一次世界大戦の終結時から太平洋戦争終結時まで﹁南洋庁﹂として大日本帝国の委任統治を受けていた経緯から、UDONと称する麺料理がある。日本のものと同様の醤油味だが、沖縄そばの影響︵沖縄県からの移民が多かったため︶か、汁は少なめで、また現地で入手しやすいスパゲッティの麺が使われている点に大きな特徴がある。 2009年に日本を訪れた外国人旅行者を対象に日本政府観光局が行った調査では、日本を訪れた外国人観光客が特に満足した食事のアンケートで寿司、ラーメン、刺し身、天ぷらに次いで5位であり、蕎麦は7位であった[62]。代表的なうどんの写真[編集]
統計一覧[編集]
各都道県ごとの消費量および店舗数の統計データ[編集]
- 2014年の総務省家計調査より、都道府県別うどん・そば消費量ランキング(数値は2012年〜2014年の平均値)
- 各項目10位までの都道府県までのデータを掲載。
- 消費量は1世帯あたりの年間消費金額として算出。
- 表の項目欄の▲▼を押すと押した項目での順位に入れ替わります。
都道府県 | 順位 | 1世帯あたり 消費額 |
順位 | 店舗総数 | 順位 | 人口10万人当たり 店舗数 |
代表的な郷土うどん |
---|---|---|---|---|---|---|---|
香川県 | 1 | 12,570円 | 14 | 630 | 1 | 63.96軒 | 讃岐うどん |
秋田県 | 2 | 9,981円 | 44 | 118 | 43 | 11.24軒 | 稲庭うどん |
山形県 | 3 | 7,970円 | 26 | 308 | 8 | 26.99軒 | ひっぱりうどん |
群馬県 | 4 | 7,460円 | 8 | 856 | 2 | 43.15軒 | 水沢うどん・桐生うどん・ひもかわ・おっきりこみ |
京都府 | 5 | 7,103円 | 15 | 562 | 16 | 21.48軒 | 卓袱うどん |
山梨県 | 6 | 7,059円 | 25 | 312 | 4 | 36.84軒 | 吉田のうどん・ほうとう |
長野県 | 7 | 6,788円 | 16 | 486 | 13 | 22.90軒 | おしぼりうどん・おにかけ |
埼玉県 | 8 | 6,716円 | 2 | 1,581 | 14 | 21.95軒 | 加須うどん・武蔵野うどん・冷汁うどん・煮ぼうとう |
愛知県 | 9 | 6,691円 | 3 | 1,416 | 23 | 19.03軒 | きしめん・味噌煮込みうどん |
栃木県 | 10 | 6,576円 | 13 | 676 | 5 | 34.04軒 | 耳うどん |
兵庫県 | 11 | 6,559円 | 9 | 781 | 34 | 14.05軒 | |
富山県 | 12 | 6,472円 | 28 | 289 | 9 | 26.86軒 | 氷見うどん |
石川県 | 15 | 6,367円 | 20 | 351 | 7 | 30.29軒 | 小松うどん |
徳島県 | 19 | 6,063円 | 32 | 252 | 6 | 32.73軒 | 鳴門うどん・たらいうどん |
大阪府 | 27 | 5,713円 | 4 | 1,341 | 31 | 15.15軒 | かすうどん |
神奈川県 | 21 | 5,993円 | 5 | 1,185 | 36 | 13.05軒 | |
静岡県 | 22 | 5,901円 | 10 | 760 | 17 | 20.41軒 | |
福井県 | 24 | 5,834円 | 23 | 314 | 3 | 39.50軒 | |
東京都 | 36 | 5,408円 | 1 | 2,901 | 15 | 21.81軒 | 武蔵野うどん |
千葉県 | 38 | 5,245円 | 6 | 1,012 | 29 | 16.34軒 | |
福岡県 | 41 | 4,987円 | 7 | 996 | 21 | 19.57軒 | 博多うどん |
宮崎県 | 45 | 4,375円 | 29 | 284 | 10 | 25.36軒 | 魚うどん |
うどん用小麦の作付面積[編集]
順位 | うどん用小麦品種銘柄 | 主な産地 | 作付面積(単位:ha) |
---|---|---|---|
1 | ホクシン | 北海道 | 100,847 |
2 | 農林61号 | 茨城ほか16府県 | 39,305 |
3 | シロガネコムギ | 石川ほか7県 | 18,931 |
4 | チクゴイズミ | 山口ほか8県 | 12,804 |
5 | ナンブコムギ | 青森ほか5県 | 2,948 |
6 | シラネコムギ | 宮城、長野両県 | 2,294 |
7 | ネバリゴシ | 青森、岩手、秋田、山形各県 | 1,714 |
8 | イワイノダイチ | 栃木、岐阜、愛知、福岡各県 | 1,396 |
9 | あやひかり | 埼玉、三重両県 | 1,360 |
10 | ニシホナミ | 福岡県 | 1,355 |
11 | ホロシリコムギ | 北海道 | 1,241 |
12 | さぬきの夢2000 | 香川県 | 1,235 |
13 | つるぴかり | 群馬県 | 1,139 |
14 | キタカミコムギ | 青森、岩手両県 | 1,098 |
15 | きたもえ | 北海道 | 897 |
16 | きぬの波 | 茨城、群馬両県 | 862 |
17 | ふくさやか | 滋賀、広島両県 | 772 |
18 | タイセツコムギ | 北海道 | 396 |
19 | シラサギコムギ | 岡山、徳島両県 | 386 |
20 | しゅんよう | 長野県 | 368 |
その他[編集]
蕎麦も提供している店舗では、麺の加工や茹での工程で蕎麦粉が付着するおそれがあり、蕎麦のアレルギー物質を摂取する可能性があるため、その旨の注意表示を掲げる店舗もある(そばアレルギー参照)。