菅野昭正

菅野 昭正︵かんの あきまさ、1930年1月7日 - 2023年3月9日︶は、日本の文芸評論家、フランス文学者、翻訳家。東京大学名誉教授。

読売文学賞選考委員。世田谷文学館名誉館長。日本芸術院会員。

位階は従四位、勲等は旭日中綬章、紫綬褒章。

来歴

神奈川県横浜市出身。浦和高等学校︵旧制︶を経て、東京大学文学部仏文学科卒業。1954年東京大学助手、1957年明治大学講師、助教授、1972年東京大学文学部仏文科助教授、1982年教授、1990年定年退任、名誉教授。白百合女子大学教授。

1997年紫綬褒章受章。2000年度日本芸術院賞受賞。2003年、日本芸術院会員。2006年、旭日中綬章受章。2007年、世田谷文学館館長。2021年4月、館長を退任し名誉館長︵後任は亀山郁夫︶。2022年︵令和4年︶1月、宮中歌会始の召人を務めた。

2023年3月9日、死去。93歳没。死没日付をもって従四位に叙された。

人物

現代フランス文学の翻訳を多数刊行し、近現代日本文学の研究も盛んに行っている。1981年から2001年まで﹁東京新聞﹂などで文芸時評を担当し﹃変容する文学の中で﹄として刊行された。

受賞歴

●1984年　﹃詩学創造﹄で芸術選奨文部大臣賞

●1986年　﹃ステファヌ・マラルメ﹄で読売文学賞

●1997年　﹃永井荷風巡歴﹄でやまなし文学賞

●1999年　日本芸術院賞

●2011年　﹃慈しみの女神たち﹄で日本翻訳出版文化賞

●2016年　第1回井上靖記念文化賞︵旭川市主催︶

著書

●﹃詩の現在12冊の詩集﹄︵集英社︶ 1974年

●﹃小説の現在﹄︵中央公論社、中公叢書︶ 1974年

●﹃詩学創造﹄︵集英社︶ 1984年／平凡社ライブラリー 2001年

●﹃ステファヌ・マラルメ﹄︵中央公論社︶ 1985年

●﹃横光利一﹄︵福武書店︶ 1991年

●﹃小説を考える 変転する時代のなかで﹄︵講談社︶ 1992年

●﹃セイレーンの歌 フランス文学論集﹄︵小沢書店︶ 1993年

●﹃永井荷風巡歴﹄︵岩波書店︶ 1996年／岩波現代文庫 2009年

●﹃変容する文学のなかで 上 文芸時評1982-1990﹄︵集英社︶ 2002年

●﹃変容する文学のなかで 下 文芸時評1991-2001﹄︵集英社︶ 2002年

●﹃変容する文学のなかで 完 文芸時評2002-2004﹄︵集英社︶ 2007年‥﹁現在文学史年表﹂﹁作者名・作品名索引﹂付

●﹃憂鬱の文学史﹄︵新潮社︶ 2009年　

●﹃明日への回想﹄︵筑摩書房︶ 2009年　

●﹃小説家 大岡昇平﹄︵筑摩書房︶ 2014年

●﹃小説と映画の世紀﹄︵未來社︶ 2021年

共著・編著

●﹃徹底討議19世紀の文学・芸術﹄︵平島正郎・高階秀爾共著、青土社︶ 1975年、新装版2000年

●﹃作家の世界 辻邦生﹄︵番町書房︶ 1978年

●﹃読む事典フランス﹄︵高階秀爾, 木村尚三郎, 荻昌弘共編、三省堂︶ 1990年

●﹃九鬼周造随筆集﹄︵岩波文庫︶ 1991年

●﹃石川淳 短篇小説選﹄︵ちくま文庫︶ 2007年

●﹃石川淳 長篇小説選﹄︵ちくま文庫︶ 2007年

●﹃石川淳 評論選﹄︵ちくま文庫︶ 2007年

●﹃永井荷風再考﹄︵日本放送出版協会、NHKカルチャーラジオ 文学の世界、2011年1 - 3月放送回︶

●﹃知の巨匠 加藤周一﹄︵岩波書店︶ 2011年

●﹃村上春樹の読みかた﹄︵平凡社︶ 2012年

●﹃ことばの魔術師 井上ひさし﹄︵岩波書店︶ 2013年

●﹃書物の達人 丸谷才一﹄︵集英社新書︶ 2014年

●﹃辻井喬＝堤清二 文化を創造する文学者﹄︵平凡社︶ 2016年

●﹃大岡信の詩と真実﹄︵岩波書店︶ 2016年

●﹃遠藤周作 神に問いかけつづける旅﹄︵慶應義塾大学出版会︶ 2020年

翻訳

●﹃ある愛の歴史﹄︵ロジェ・ニミエ、新潮社︶ 1955年

●﹁詩篇﹂︵レイモン・クノー、ユリイカ、﹃現代フランス詩人集2﹄︶ 1956年

●﹃リルケ﹄︵アンジェロス、富士川英郎共訳、新潮社︶ 1957年

●﹁テスト氏﹂︵ヴァレリー、村松剛・清水徹共訳、筑摩書房、世界文学大系51﹃クローデル / ヴァレリー﹄︶ 1960年

●﹃プラネタリウム﹄︵ナタリー・サロート、新潮社︶ 1961年

●﹁ヴェラ﹂ / ﹁ヒルデスハイムの薔薇﹂﹁オノレ・シュブラックの失踪﹂︵リラダン / アポリネール、学生社、﹃フランス短篇名作集﹄︶ 1961年

●﹃情念とはなにか﹄︵ジェローム・アントワーヌ・ロニー、白水社・文庫クセジュ︶ 1962年

●﹃逃亡者﹄︵ピエール・ガスカール、白水社、新しい世界の文学3︶ 1963年

●﹁狭き門﹂︵アンドレ・ジード、中央公論社、世界の文学33﹃ジード / モーリアック﹄︶ 1963年

●﹃美しい夏 / 女ともだち﹄︵チェーザレ・パヴェーゼ、三輪秀彦共訳、白水社、新しい世界の文学9︶ 1964年

●﹃内面の記録﹄︵フランソア・モーリアック、杉捷夫共訳、紀伊國屋書店︶ 1964年

●﹃現代フランス小説史﹄︵クロード・エドモンド・マニー、佐藤朔, 白井浩司, 望月芳郎共訳、白水社︶ 1965年、新装版2006年

●﹁トロピスム﹂︵ナタリー・サロート、新潮社、﹃現代フランス文学13人集2﹄︶ 1965年

●﹁わが友ピエロ﹂︵レーモン・クノー、新潮社、﹃現代フランス文学13人集3﹄︶ 1965年
●改訳﹃レーモン・クノー コレクション5わが友ピエロ﹄︵水声社︶ 2012年

●﹁谷間のゆり﹂︵バルザック、河出書房新社、世界文学全集4﹃谷間のゆり﹄/ ウジェニー・グランデ﹄︶ 1965年

●﹁謎の男トマ﹂︵モーリス・ブランショ、新潮社、﹃現代フランス文学13人集3﹄︶ 1966年
●新版﹃ブランショ小説選﹄︵書肆心水︶ 2005年 に収録

●﹃ヴァレリー全集﹄︵筑摩書房︶ 1967年 - 1968年、のち新版。複数の巻で訳者
●﹃レオナルド・ダ・ヴィンチ論﹄︵ポール・ヴァレリー、共訳、筑摩叢書︶ 1975年。再刊

●﹃ゆらめく炎﹄︵P.ドリュ・ラ・ロシェル、細田直孝共訳、河出書房新社、人間の文学8︶ 1967年

●﹁ヴァレリー詩集﹂︵平井啓之, 清水徹共訳、新潮社、世界詩人全集10﹃マラルメ、ヴァレリー詩集﹄︶ 1969年

●﹁シャルル・フーリエへのオード﹂︵アンドレ・ブルトン、人文書院、﹃アンドレ・ブルトン集成4﹄︶ 1970年

●﹁パリの憂鬱﹂︵ボードレール、中央公論社、新集世界の文学8﹃ネルヴァル・ボードレール﹄︶ 1970年

●﹁地獄﹂︵バルビュス、集英社、世界文学全集50﹃地獄 / クラルテ﹄︶ 1970年

●﹁従兄ポンス﹂ ︵バルザック、新潮社、新潮世界文学8﹃バルザック2﹄︶ 1971年。のちグーデンベルク21︵電子出版︶

●﹁好きなだけ書きつづけたまえ﹂︵ブランショ、竹内書店、竹内選書﹃バタイユ・ブランショ研究﹄︶ 1972年

●﹃ファルサロスの戦い﹄︵クロード・シモン、白水社︶ 1973年

●﹃小説の記号学﹄︵ツヴェタン・トドロフ、保苅瑞穂共訳、大修館書店︶ 1974年

●﹁子供部屋﹂︵ルイニルネ・デ・フォレ、集英社、現代の世界文学﹃フランス短篇24﹄︶ 1975年

●﹃哲学講義3行動﹄︵ポール・フルキエ、原好男, 田村毅共訳、筑摩書房︶ 1976年、ちくま学芸文庫 1997年

●﹃あの彼らの声が…﹄︵ナタリー・サロート、中央公論社︶ 1976年

●﹁ボヴァリー夫人﹂﹁三つの物語﹂︵フロベール、集英社、世界文学全集17︶ 1976年、のち新版﹁同 第41巻﹂ 1979年
●前者は抜粋﹁ポケットマスターピース フローベール﹂︵集英社文庫ヘリテージシリーズ︶ 2016年

●﹁スヘヴェニンゲンの浜辺﹂︵ポール・ガデンヌ、集英社、世界文学全集24﹃ユルスナール / ガデンヌ﹄︶ 1978年

●﹁宮廷画家の寵児﹂︵ウォルター・ペイター、集英社、世界文学全集42﹃ボードレール / マイヤー / ペイター﹄︶ 1981年。新版﹃ペイター全集1﹄︵筑摩書房︶ 2002年

●﹁マラルメ全集﹂全5巻︵ステファヌ・マラルメ、筑摩書房︶ 1989年 - 2010年
﹃マラルメ全集Ⅰ 詩・イジチュール﹄、編集委員

﹃マラルメ全集Ⅱ ディヴァガシオン﹄

﹃マラルメ全集Ⅲ 言語・書物﹄

﹃マラルメ全集Ⅳ 書簡1﹄

﹃マラルメ全集Ⅴ 書簡2﹄

●﹃不滅﹄︵ミラン・クンデラ、集英社︶ 1992年／集英社文庫 1999年

●﹃パワナ－くじらの失楽園﹄︵J・M・G・ル・クレジオ、集英社︶ 1995年

●﹃科学者たちのポール・ヴァレリー﹄︵J・ロビンソン=ヴァレリー編、紀伊國屋書店︶ 1996年

●﹃ルーヴルの騎手 ルーヴル美術館を創った男 ヴィヴァン・ドゥノンの生涯﹄︵フィリップ・ソレルス、集英社︶ 1998年

●﹃偶然 / 帆船アザールの冒険﹄︵J・M・G・ル・クレジオ、集英社︶ 2002年

●﹃マラルメの詩学﹄︵イヴ・ボヌフォワ、阿部良雄共訳、筑摩書房︶ 2003年

●﹃アフリカのひと / 父の肖像﹄︵J・M・G・ル・クレジオ、集英社︶ 2006年

●﹃慈しみの女神たち﹄上・下︵ジョナサン・リテル、星埜守之, 篠田勝英, 有田英也共訳、集英社︶ 2011年

脚注

(一)^ ^ab“菅野昭正 | 著者プロフィール”. www.shinchosha.co.jp.  新潮社. 2022年12月12日閲覧。

(二)^ ^abcd“菅野　昭正｜現会員｜日本芸術院”. geijutuin.go.jp.  日本芸術院. 2022年12月12日閲覧。

(三)^ “仏文学者の菅野昭正さんが死去、93歳…新聞で長く﹁文芸時評﹂を担当”.  読売新聞. 2023年3月22日閲覧。

(四)^ ﹃官報﹄第961号10頁 令和5年4月19日