今日は、北條民雄の「精神のへど」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
『いのちの初夜』を発表した北條民雄は、闘病と苦について描いた作家だと思うんですが、今回は、文学や哲学の批評をした短編です。
序盤で、横光利一氏による『いのちの初夜』への寸評を引用しています。「作者がもし私であつたら、書かずに胸中に畳み込んでおいたであらう。……最悪の場合の心理は誰にでもあるものだが、それをそのまま飛びついて書くといふことは、科学にならず感傷になる」この横光氏の評に対する反論としてこう記しています。「横光氏よ、最悪の場合の心理のみが死ぬまで続いてゐる人間が存在するといふことを考へたことがありますか? いのちの初夜は私にとつて最悪の場合の心理でなく、実に最良の場合の心理であつた。」
最悪と最良の区別がつきがたく、善悪の区別がつきがたい。フロオベルによれば狂っているかどうかの区別もつかないし、昼夜の区別さえつかないということがありえる。「ほんとを言ふと、私は近頃だんだん夜と昼との区別がつかなくなつて行くので困つてゐるんだ。ことわつて置くが、これは少しも譬へごとではない。いつたい夜と昼との区別が、諸君につくのか? 誰だつてこの区別をつけることは出来ないのだ。……」
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追記 禅問答をしようとしたのか、文学の哲学的な読解を試みたのか、詩意を書こうとしたのか、判別がつかない箇所のある随筆でした。







