夢の国 宮原晃一郎

 今日は、宮原晃一郎の「夢の国」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
  これはなんだか、ほとんど誰も知らない和製の童話で、読んでみると中盤にでてくる、3つの「お土産」のなかから最後のお土産だけを持ち帰りなさい、という話しが印象に残りました。最初の2つは、いっけんすてきに見えて、なんの意味も無いものなので持ち帰るべきでは無い、最後の3つめのものだけはみすぼらしくてもそれを持ち帰りなさいという話しでした。そこから先、奇妙なことが起こります……。
   

0000 - 夢の国 宮原晃一郎

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これは夜に見る夢の中でのできごとを書いているんですが、後半はなんだかさっぱりよく分かりませんでした。絵本では、文章がよくわからないのがなんだかおもしろい、そういう名作があまたにあると思います。これはかんぜんに幼稚園とか小学校低学年に向けて書かれた童話なんだと思います。手塚治虫の書いた本に、夢オチの物語は良くない、というのがあって、僕は子どものころにこれを信じていたんですが、手塚治虫がもっともこだわった文学者にドストエフスキーが居て、じつはドストエフスキーはみごとな夢オチの数々を記しているんです。ドストエフスキーの場合は、夢オチは中盤に出てきて、伏線として夢での出来事を書いて、そこから現実に起きる異変についてより深く論考してゆくという展開が多いんです。おそらく文意としては、夢オチを描くのならこだわって描きなさい、ということなんだと思うんです。調べてみると手塚治虫は「わるい4コマ漫画の例」として「なんでも夢のオチにしてしまう」と記していました。今回の作品を読んでいて、手塚治虫が夢オチを批判したのは、この話しに似た童話を読んで、こういう物語は良くない、と考えたのでは、と思いました……。