猫と村正 小酒井不木

 今日は、小酒井不木の「猫と村正」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 怪しい噂が絶えない「魔の列車」を使って、実家に帰るしかなかった「私」は警戒しながら、これに乗車します。じっさいに近くの車両で、盗難事件が起きてしまった。「私」も靴を一足なくしてしまった。
 ところがこれはたんに「私」のミスだったようで、無くしたはずの靴が足元にあった。良く見るとどうも、これは自分の靴では無かった。ちゃんと調べてみると、片足だけ他の人が履いて、トイレに向かってしまった。「私」の靴は帰って来たのだが、この勘違いした男を車掌さんは、ほんとに窃盗犯ではないのか念入りに調べようとすると、この男性はじつは、不自由な身体を動かすのに難儀していて、靴を見分けることが出来ない状態だった。車掌は疑ったことを恥じて謝罪し、元のところへ戻った。
 こういう体験をした「私」は、自分の家の不幸について考えるので頭がいっぱいだったところで、妙に心理的な余裕が生まれて、彼と来歴について話しあったのでした。
  

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  ちょっとネタバレなので今から読む予定のかたはご注意ねがいます。後半に、嫉妬と死が絡む不気味な事件が描きだされるのでした。呪われた刀の村正について男は滔々と語ります。魔の列車の中で語られる、怪談なのでした。先妻の遺骸に乗っていた三毛猫が、後妻にたいして不気味な態度で睨むので、この猫を捨てると、数日したら帰ってくる。それから後妻に、不幸が襲い来るのでした……。猫の祟りとしか思えない病で後妻が苦しみ、猫に襲われる妄想に冒される酷い状態で、不気味な猫がふたたび家に入りこんだのでした。ここで男は村正を抜いて切りつけるのですが、怒りに我を忘れていて事故が起きるのでした。最後は、病に臥した母と家のことが記されます。エドガー・アラン・ポーの「黒猫」を彷彿とさせる暗黒の怪談は、静かに幕を閉じるのでした。