歩くこと 三好十郎

 今日は、三好十郎の「歩くこと」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 「自分の頭が混乱したり、気持がよわくなったり、心が疲れたりしたときには、私はよく歩きに出かけます。」という文章から始まるこの随筆は、作家の三好十郎が、歩くことや旅をすることについて書いています。この文章が印象に残りました。
 
  もし私という作家の仕事の中に少しでもよいものがあるとしたら、それらが皆、歩くことや旅することと無関係に生れたりできたりしたものは一つもない…………
 
 またこういう指摘をしています。「歴史をふりかえってみても、西洋でも日本でも、えらい思想家や宗教家や芸術家や政治家や科学者などは、たいがい他の人たちよりも、ひじょうによく歩いている。」これは戦後の混乱期に記された随筆なのですが、三好十郎は、歩くことや一人で旅をすることの意味を、あまたの歴史的人物や、あるいは青年の心から読み解いてゆきます。歩くときに自然に生じる、人とモノとの関係のことが記されています。旅をする寸前には自身の健康に気を配っていて、移動をすることによって、いろんな客観的な力が備わってくる。
 ひとつの場所にずっと居ると、無意識に権力に従うようになったり損得を考えて「縦」の仕組みにばかり目がゆくようになるわけですけれども、自分で旅をして自分で歩いてみると、ものごとを横から見る、横の繋がりを発見する。
 現代の作家の随筆を読んでいて、物事に取り組むには、手足を動かして、あるいは体ごと問題にぶつかってゆかねばならない、という話しを聞いたことがあるのですが、今回の随筆はその話しとも通底していて、オチもみごとで、三好十郎はすてきなことを書く随筆家だと思いました……。
 

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