土地に還る 豊島与志雄

 今日は、豊島与志雄の「土地に還る」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 豊島与志雄といえば、レミゼラブルの翻訳が有名で、本業は翻訳家だと思うんですが、あまたの小説を書いています。そのなかでもこの敗戦後の復興の日々を記した「土地に還る」というこの小説は、もっとも代表的なもののように思いました。戦争で顔が爛れてしまった笠井直吉という男の、生きてゆくさまを描きだしています。終盤に「戯れ」と「愛情」ということについて黙考する場面があって、笠井の生きかたに迫力を感じました。田中家との親交や、焼けた土地を耕す場面が印象にのこります。
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  直吉は帽子を投げ捨て、強い陽光の中につっ立って、耕作地を見渡しました。瓦礫や鉄材や雑草の茂みなどに点綴されながら、そしてあちこちの新築バラックに遮られながら、広々とした焼け跡一面に、農作物が勢よく伸びあがっていました。直吉自身の畑地にも、茄子の葉が光り、トマトの実が色づき、胡瓜の蔓が絡みあい、菜っ葉が盛り上り、薩摩芋の根本の土がひびわれていました。quomark end - 土地に還る 豊島与志雄
 
 この前後の物語展開と心情描写が、すてきでした。
  

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