痴人の愛 谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「痴人の愛」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは年下の恋人に翻弄される男の物語なんです。ぼくはこれを十数日間にわけて読んだのですが、序盤から終盤までずいぶん楽しんで読めました。文体が現代のものとほぼ同じ、洗練されたものなのですが、内容はやっぱり鹿鳴館とか文明開化の気配が残っていて、その世界から出ていって古い日本でも無い西洋の複製でもない新しい自己を作らんとする生き方が興味深かったんです。後半になるともう、主人公の心情の描写がしっちゃかめっちゃかになっていて、悪友と浮気性のナオミが次々に問題を引きおこし、まるで狂騒の坩堝に放り込まれたような熱のある展開で、その密度の濃い事件の描写がまた谷崎文学の醍醐味になっていると思います。
 なおみ、という名前は現代ではごく普通の女性名なんですけど、じつは欧米のNAOMIという名前をローマ字読みしたものをもらってきて、日本人の名前として定着した(ようだ……たぶん)というのを知って驚きました。直美とか菜緒美とか良く聞く自然な名前だと思うんですけど、近代以前にはほぼ存在しない名前だったようです。あと辞書で語源を調べると、縁起の良い言葉なんですよ。
 
 

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