閑天地 石川啄木

 今日は、石川啄木の「閑天地」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 この随筆集には「夏は来ぬ」というような美しい詩も記されています。おもに日々の雑感を閑天地にて書いています。啄木がラファエロ・サンティの絵画を眺めながら、イタリアやロンドンへの憧憬を書いているところが面白く感じました。世界史や古典思想とかもずいぶん壮大に描きだしていて、なんだか奇妙な随筆なんです。なぜ啄木がカーライルの思想に興味を持ったのか、調べてみると4歳年上の栗原古城がカーライルの本を熱心に翻訳していることがわかりました。啄木は、栗原との親交によって、海外のことを学んでいたようです。
 この随筆は言葉づかいがすてきで「雨声を友として語り」「我がなつかしき故山の読者よ」「稚き心の夢の瞳ひらきぬれば」……というように文体がいま読んでも美しいように思いました。「我が四畳半」という随筆集がこの本の中心を占めているのですけれども、貧しくてもゲーテや与謝野晶子やカーライルの本を読みつづけ、作曲家で思想家のリヒャルト・ワーグナー(ワグネル)の研究を続けた、近代の文学者のあふれる思いを垣間見たように思いました。ところで啄木は意外と勉強ができなかったらしく、カンニングをして落第したことがあるんです、そう思ってこの難文の随筆を読むとなんだか楽しかったです。

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