魔女 小熊秀雄

 今日は、小熊秀雄の「魔女」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ネオン管が光り輝く近代的未来像の街……「東京の三月の夜の街」を活写した、奇妙な叙事詩なんですが、これは、おそらく中盤と後半が書かれないまま未完作となったものなんです。最後の一文は「未完」で終わるんですが、描こうとしたのは……「嵐のやうにとんでゆく」「激しさと乱暴さと不気味さ」をもつ「悪魔的」な男たちに「恋する」「女」が「悪魔と魔女と聖母」の三者と共に滅んでいってしまった、そういう叙事詩、だったはずなんです。物語と言うよりも、即興で詠まれる詩の断片の集成でした。たぶん。前編が終わらないうちに未完となった作品なので、もっと違う話しなのかもしれないんですが。
 作中に、ウラジーミル・マヤコフスキーを愛読する登場人物が現れます。カジミール・マレーヴィチの混沌とした立体未来主義絵画みたような、謎めいた空間を徘徊する悪魔の描写が美しい、詩なのでした。後半では、おそらくリア王の滅びに似た物語を描こうとしたのでは、と思いました。アンチクライマックスの典型のような終わり方をする、未完の長詩でした。
  

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