走れメロス 太宰治

 今日は、太宰治の「走れメロス」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは太宰治の代表的な作品で、身代わりとなった友を救いにゆく物語なんですけど、太宰治が原典としたのは小栗孝則の翻訳した『新編シラー詩抄』の『人質』という詩だそうです。再読してみると、水や濁流や泉の描写がみごとで、水と渇きの対比が鮮やかな文学作品だと感じました。本文こうです。
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  ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々こんこんと、何か小さくささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手ですくって、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。……quomark end - 走れメロス 太宰治
 
 ところでシラーの長詩『人質』はここで全文よめるんですよ。なるほど創作というよりも翻訳作品にちかいものだったんだなーとか、太宰治は演劇の舞台みたいに作品を描きだしたんだとか、この「走れメロス」は、太宰の作品と言うよりもシラーの作品という感じがするとか、「メロスは激怒した」というはじまりの文章は太宰治の完全なオリジナルの文章なんだとか、未完の原稿を二校に推敲する時は、太宰はこういう感じで書き直していたのかもしれない、と思いました。
 

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