今日は、ミハイル・クズミンの「フロルスと賊と」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
老いた主人フロルスが病床で、奇妙な夢を見ます。夢の中での体験を、老主人フロルスはこう語ります。「わたしは人を殺したのです。誤解してはいけませんよ。それはあそこでしたのです。夢の中です。わたしは逃げ出しました。」それから「港の関門を通らうとする時小刀を盗んだと云ふ嫌疑で掴まりました。背の高い、赤毛の商人がわたしを掴まへたのです。人がその男の事をチツスさんと呼んでゐましたよ。わたしは力が脱けたやうで、途方にくれてゐました」と述べます。ところが、そのすぐあとに乳母が、現実の世界で「港の関門の所で人殺しを見ましたよ」というのですが、その詳細はフロルスが夢の中で体験したこととピタリと一致するのでした。それから……
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追記 以降はネタバレとなりますので、近日中に読み終える予定の方は、本文を先に読むことをお勧めします。
老主人フロルスはある朝に「日の出る前に起き」て「軽らかな足取で歩」き、従者とともに「監獄の門に入つた」のです。「足早に監獄を見て廻つて」、監獄の看守に「目の光る、日に焼けた、髪の黒い男」のことを訪ねます。そこで夢の中での「私」が監獄を逃亡して、どこかへ行ったという事実をつきとめるのでした。「監獄の門を出た時、フロルスはこれまでになく晴々」とした足どりで「うれしげ」に子供のような声で、従者にこう語るのでした。「どうだい。ムンムス爺い。あれを見い。こんな長閑な空を見たことがあるかい。木の葉や草花がこんなに可哀らしく見えたことがあるかい。」「どうだい。ムンムス爺い。けふのやうに己の元気の好かつた事があるかい。あの雲を見い。丸で春のやうだ。春のやうだ。」
しばらく別荘で快活に暮らすのですが、病状が悪化したのか「突然沈鬱な気色に」なります。急にしゃがれた声でこう言います。「どうしたのだらう。どうしてこんなに暗くなつたのだ。牢屋ぢやないか。」
最後の章で、もの言わぬ児童が、フロルスの身罷ったところを目撃し、それを人々に伝えるのでした。この老主人フロルスの首には「なんとも説明のしやうの無い痕」が残っていました。黒髪のマルヒユスという賊にも、同じような首の傷があって同時刻に亡くなっていたのでした。神話的な気配の、夢と現実が交錯する物語でした。







