秋の瞳(32)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その32を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 八木重吉の父親としての経験が、こういう詩を描かせるのでは、というように思う詩でした。海で赤ん坊と遊んで、疲れきったけれども憂いがまったくない心情を記しています。
 もう1つの詩「つばねの穂」についてなのですが「つばね」について調べてみたのですが、千萱ちがやの穂のことを「つばな」あるいは「つばね」と呼んだのでは、というように考えました。 参考文献その1 参考文献その2
 

0000 - 秋の瞳(32)八木重吉

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 

細雪(80)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その80を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 新しい新郎候補の「橋寺」と雪子は、どうも上手く交際が始まりそうに見えます。本文ではこう書かれています。
quomark03 - 細雪(80)谷崎潤一郎
  大丈夫きっとうまく行くと思うから、しっかりやって御覧になるがよい、そして一日も早く好い結果を知らして貰いたい、と云って、おめでとう、とまで云ってくれたquomark end - 細雪(80)谷崎潤一郎
 
 ところが雪子の姉の幸子の「観測ではまだなかなか祝って貰えるところまで進行してはいなかった」という状態なのでした。悪い事情も無さそうですし、条件は完全に整っています。
 幸子の夫である貞之助は、雪子には裏の悪い事情は無いんですよということを、長い手紙にして、相手方に送ります。
 それから雪子の性格のよいことや、十一歳の姪の面倒見も良いということを伝えるのでした。
 この繊細な手紙を書くのに、何度も何度も書き直すことになったし、投函しなければ良かったとも考えるようになるのでした。大阪の「烏ケ辻」というところが新郎候補の住む町なのでした。雪子の親族である貞之助がひとりで寺橋を訪ねてみるのでした。
 

0000 - 細雪(80)谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
追記  寺橋氏は仕事も順調で、家庭の事情も再婚に向けてなんとも整っています。「やっぱり訪問してよかったと思った」と本文に書いてありました。結婚したら雪子と一緒に暮らすことになる「十四歳」の娘さんとも逢えたのでした。たいへんな時代の、たいへんな結婚だなあと思いながら読みすすめました。
 作中に記されたレストランの「アラスカ」は2025年にも営業をしているようです。文豪の谷崎を満足させた店で、今もお金持ちが楽しめるレストランなんだそうです。

 

漁師 フィオナ・マクラウド

 今日は、フィオナ・マクラウドの「漁師」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 山あいにある「青々した草原」を通り「楊の谷」の「河ふち」に至ると、そこには、なぜか悲しげな眼をした「猟師」がいて、おばあさんと出会い、すぐに去ってゆきます。作中で、この地について、印象深い記載があります。
quomark03 - 漁師 フィオナ・マクラウド
 山々のかげのくらい沢水に寂しく潜んでる鮭は深い海の音をききつけて、塩のこいしさに舌をあえがし、鰭ひれをふるわし、時が来て海が呼んでるのを悟る……quomark end - 漁師 フィオナ・マクラウド
 
 おばあさんは、この地で、不思議なものをみたと、息子のアラスデルに語るのでした。ケルト神話と太古の世界を描きだす、静謐な短編小説でした。
 

0000 - 漁師 フィオナ・マクラウド

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  以降、ネタバレとなりますので、数日以内に読み終える予定の方は本文を先に読むことを推奨します。天寿をまっとうするときに魂をもらい受けに来る、天界への案内人のような「漁師」というのが描かれた物語で、おばあさんはこの、悲しげな眼をした、たましいの猟師と偶然のように出会うのでした。そのすぐあとに、自宅の炉ばたの椅子に座ったまま、おばあさんは痛みもなく身罷ります。これを見届けた息子のアラスデルのもとへ、「猟師」がやってきてこう告げるのでした。
「別れに言う、平和におくらしなさい、善良なたましいよ、平和におくらしなさい……」

 

再生の日の海を眺めて 松本淳三

 今日は、松本淳三の「再生の日の海を眺めて」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 ちょっとこれは唸るような近代詩で、アジテートするような大げさな身ぶりの表現が、現代では通用しがたいのかもしれないのですが。言論の自由がほんとうに無かった、危険な犯罪の言説を述べているわけではないのに投獄されてしまう1900年から1945年までの時代に、こういうことを書いたのか、という、なんだか衝撃的な詩作品でした。自由が無いから自由と書くんだというのを思い知るような詩でした。幸徳秋水の時代のことを書いたのかもしれないですし、もう少しのちの時代の文人のことを書き記したのかもしれません。
 

0000 - 再生の日の海を眺めて 松本淳三

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
(装画のAI使用率は約10%)
 

マルテの手記 リルケ

 今日は、リルケの「マルテ・ロオリッツ・ブリッゲの手記」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 原民喜が、戦時中に愛読した本がこの堀辰雄訳の「マルテの手記」の抄訳だということで、はじめてこれを読んでみました。これは世界的な名作で、ナボコフや画家パウル・クレーがこのリルケ文学に深い影響を受けたのでした。
 デンマークに生まれて、パリで詩人になろうと孤軍奮闘している青年のマルテは、日記のような形式で、散文詩をしたためているのでした。病院の周縁から世界を見てゆく青年マルテのようすが描かれます。本作は抄訳なんですが、いつか「マルテの手記」の全訳も読んでみたい、と思う、みごとな短編化でした。
 

0000 - マルテの手記 リルケ

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  「ヨオドフォルムの匂、揚林檎の油の匂」の歪な匂いに恐怖を感じ、街の人々が、顔を付けかえながら生きていて、自分は過去の自分と切り離されてしまって、今や手紙を書こうと思っても、新しい「私」のことを理解している人は一人もおらず、手紙を書く意味そのものを見失ってしまうのでした。
 さらに、所有をするということにさえ疑問を抱き、ほんとうは、誰もなにも持っていないのではというように考えはじめます。「人は何物をも、又何人をも所有して居らぬ。」そうして「せめて思ひ出だけなりと持つてゐられたなら! が、そんなものを誰が持つてゐよう?」と思い出さえもじつは、埋没してしまって、探しだせないでいるのが人間なのだというように考え始めるのでした。
 作中でマルテは、病院の周縁にある町を歩いてゆきながら、死というものがさまざまな様相を持っていて、それぞれ唯一の存在としてあることを論じてゆくのでした。私的な世界が溶け崩れていってから、秋の朝日の光が織りなす神秘的な街並みを眩く見つめて、「愉快で愉快でしやうがないらし」い「松葉杖を突いて」いる男を目撃し「何んとまあ、あの小さな月にこんな大した魔力があるのだらう!」と讃嘆し、自動オルガンが奏でる音と、「緑色の晴着をきた小さな娘が舞踏をし、ときどきタムバリンを、窓の方へ差し上げながら、叩いて」いるその町なかの音楽に魅せられている、マルテの姿を描きだすのでした。この終盤の詩的な気配に感銘を受ける名作でした。

 

秋の瞳(29)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その29を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 天空の、はるかな世界へと向かってゆく心を描きだした、八木重吉の壮大な、詩でした。擬古文まじりの詩が難読でしたので、現代語と原文の2つを、比較してみました。ちょっと読み比べてみてください。
  
 空の はるかさ
 心よ
 空の はるかな彼方へ 駆け上がっていけば
 突如として 何かが 湧き上がるかのようだ
 ああ 心は かき分けながら登ってゆく
 静かな 水晶のような聖なる 高原へ
(上記はAI翻訳を修正したものです)
 
 いっぽうで、八木重吉の原文の詩はこうなんです。
quomark03 - 秋の瞳(29)八木重吉
 そらの はるけさ
 
 こころ
 そらの はるけさを かけりゆけば
 豁然と ものありて 湧くにも 似たり
 ああ こころは かきわけのぼる
 しづけき くりすたらいんの 高原quomark end - 秋の瞳(29)八木重吉
 
 八木重吉の他の詩はもう少し、柔らかい日常を描いたものが多いと思います。
 

0000 - 秋の瞳(29)八木重吉

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約3頁 ロード時間/約3秒)