馬鹿七 沖野岩三郎

 今日は、沖野岩三郎の「馬鹿七」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは農村を描いた牧歌的な小説なんですが、タヌキと交流する馬鹿七と、村の有力者たちとの対話が描きだされます。Stay foolishという話しを連想させるような、なんだかすてきな小説でした。
 

0000 - 馬鹿七 沖野岩三郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  ほんとによくあるタヌキの昔話かと思って読んでいったのですが、ずいぶんダイナミックなことが描かれていました。こういう見たことの無い本を探していたのだ、と感じさせる児童小説でした。

秋の瞳(18)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その18を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 リュウゼツランは、60年に1回しか開花しない、竜のような刺をもつ多肉植物で、もともとはメキシコで生きていて、アガベとも呼ばれていて、これが日本に持ってこられて繁殖したもの、らしいです。その植物をながめて「かなしみの ほのほのごとく / さぶしさのほのほの ごとく」と竜舌蘭のことを描き、竜のうろこのごとき「みづ色」に「寂びの ひびき」をみいだす詩作品でした。
  

0000 - 秋の瞳(18)八木重吉

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約5頁 ロード時間/約5秒)
 

細雪(66)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その66を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 結婚式に出かける人のような、華やかな衣装を着て、大富豪とのはじめてのお見合いをしにゆく、その電車の中での、描写が続きます。戦時中ですから、ぜいたくな着物は、世間的には駄目だったという時代にこういう描写を入れるのが谷崎文学の独自性なのではと思いました。
 雪子は25歳くらいかと思い込んで千ページくらい読んでしまったんですが、じっさいの雪子の年齢は三十三歳なんだそうです。雪子の見た目はもっと若く見えるということが幾度も記されています。
 雪子は1905年あたりの生まれで平均寿命も今より短いですし、はやめにお見合いして婚約者を決めておかないといけない。
 雪子の、目のふちのシミも心労か不調がかさなるとこれが濃くなることがある。当時の化粧ではまったく隠すことができない。これがあると病かなにかの暗い気配がただよってしまうので、お見合いではなんとも気になってしまう。仲人というか世話人役の幸子と夫は、こう考えています。
quomark03 - 細雪(66)谷崎潤一郎
  最初から今度の見合いに熱意を抱き得なかった夫婦は、ひとしお希望が持てないような暗い気持がするのを、なるべく顔に出さないようにしながらも、互にそれを読み取っていたのであった。quomark end - 細雪(66)谷崎潤一郎
 
 今日はお見合いと、蛍狩をするという予定なのでした。前回、中巻の最終話で婚約者と離別してしまった妙子だったんですが、今回は姉の婚姻のための旅に付き添うことに、なにかこう、家族の親睦を感じているようで、この「もうあの不幸な出来事が格別の創痍そういを心に留めていないらしく、元気になっていた」という記載の前後の、妙子の描写が、なんとも人間的な人物描写で、魅入られる場面であると思いました。
 「細雪」は静かな作風ですので、事変の迫力に圧倒されたり感動したりという場面は薄いのかと思うんですが、中巻の終わりと下巻の始まりの描写は、なんだか響いてくるものがあると思いました。
 名古屋ゆきの汽車が途中で、なんだか立ち往生してしまいます。理由はよく分からないのですが、「どかん」という音を立てて、とまってしまって動かなくなる。しょうがないので、汽車の中で持ってきたごちそうをみんなで食べることにした。次回に続きます。
 

0000 - 細雪(66)谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 

芋粥 芥川龍之介

 今日は、芥川龍之介の「芋粥」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 平安時代の官司たちの中で、いつも馬鹿にされている「五位」という名も無いような男がいる、というところから物語が始まる、芥川の代表的な文学作品です。
 主人公は気弱で憶病で、赤鼻でなんだか情けない雰囲気で、近所の悪童たちからさえあざけられていて「周囲の軽蔑の中に、犬のやうな生活を続けて」いる中年男なんです。酒の代わりに、イタズラで変なものを飲まされても気にしていないし気が付かないという、なんとも間抜けで始終「いぢめられ」ている男なんです。
「彼は、一切の不正を、不正として感じない程、意気地のない、臆病な人間だつたのである。」と、芥川龍之介の独特な毒舌で、ユーモラスに、この五位という男の日々が語られているのでした。
 男は女房からも縁を切られてしまった独り者で、だいぶ年齢も嵩んできた。彼はろくにものも言えないし無感覚に生きている状態なんですが、もう五年以上も前からゆいいつ楽しみにしているのが、摂政関白や大臣たちの祝宴で出てくる高級料理のなかで、芋粥の残りものを見つけてきてこれをすすることが好きでしょうがないんです。このほんの少し残された芋粥をすするということが甘露に思えてならなかった。それで宴の席で思わず、大きな声でひとり言を言ってしまう。「何時になつたら、これに飽ける事かのう」と、芋粥の美味に飽きることなんてあり得るんだろうかというようにつぶやいてしまって、周りの人たちからさんざん笑われてしまった。いつもこの五位を笑い者にしている利仁という男がこれを聞きつけて、じゃあたっぷり芋粥を食わせてやろう、と言いはじめるのです。年に1回ほんの少ししかすすれない芋粥を、たらふく食べさせてもらえるということで、五位はあわてふためきながら「いや……忝うござる。」と、ありがたく食べさせてもらいたいと答えるのでした。それから何日か経ったあと……。
 

0000 - 芋粥 芥川龍之介

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  以降ネタバレを含みますので、近日中に読み終える予定の方は、ご注意ねがいます。しばらくあとに利仁という男が、五位の目の前に現れて、ちょっとついて来いと言います。すぐ隣町の東山あたりに2人で行くことになるのかと思ってついてゆくと、馬でだいぶ先まで行ってしまう。粟田をすぎて、山科も通りすぎて、京都の山を越えた三井寺あたりまで行ってしまって、五位はくたびれてしまう。どこまで行くのですかと聞いても「もうちょっと先だ」とはぐらかされて、答えてもらえない。さらに琵琶湖を北に行って、日本海のほうの敦賀にまで行ってしまう。このあたりの行脚の風景描写が近代文学の中でもとくに風雅で独特で、秀逸な筆致だなと、思いました。
 それで敦賀にある、利仁の大きな家に招かれて、そこで倒れるように眠ってしまってから、朝に起きたら、豪華で大量の芋粥を出されてしまう。ほんの少しだけ分け与えられる芋粥なら美味であったわけなんですが……飽きるほど出されてしまうともう、どうにも食欲がわかない。男はもう呆然としてしまって、かつて淡い喜びを見出していた、ほんの少しの芋粥のことを懐かしく感じてしまうのでした。

細雪(65)谷崎潤一郎

 今日は、谷崎潤一郎の「細雪」その65を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 今回は下巻のいちばんはじめの書きだしの章ですので『細雪』の上巻と中巻の振り返りのような事態が描かれています。雪子の縁談の相手として、新たに「沢崎」という名古屋の富豪の当主が現れます。この沢崎のあるじと結婚できるかどうか、幸子のほうで調べてもらっていたのですが、どうも沢崎というのは家柄がたいそう立派で、経歴だけを見ると、雪子の婚約者としては申し分のない裕福な資産家だし、二度目の婚姻を求める理由もはっきりしていて適正なもので、さらに蒔岡家の資産上の衰退や、伝統的な家柄というのもしっかり知っている上で、沢崎の当主は雪子を娶りたいというように考えていると判明します。
 これを断ったらもう、雪子は婚期を逃してしまうというように思えるわけで、幸子のほうはこれは縁談を進めるべきだというように考えます。四姉妹の末っ子である妙子の婚約者だった板倉との恋愛が不幸にも終わってしまったということも、世間では噂となっていて、姉の雪子の縁談に多少、負の側面を与えているようです。
 幸子と雪子は話しあって、現代で言うなら数十億円以上の資産を有する名古屋の大富豪との、縁談の話しを進めようということに決めるのでした。雪子の返答は「ふん」とか「はあ」とか、うなずきくらいしかしないでなにも話さないのですが、表情や声色からすると、結婚の可能性があるのなら、お見合いをしてみるという思いでいるようです。
 細雪の全文を読まないけれども、本文をのぞき見したい人にとっては、この『細雪』のいちばんはじめの書きだしの、注射器を手にした姉妹たちの妖しい雰囲気の箇所と、こんかいの下巻の書きだし部分、この2つを10分ほどで読んでみると、細雪全体の雰囲気を掴みやすいのでは、と思いました。
  

0000 - 細雪(65)谷崎潤一郎

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約20頁 ロード時間/約3秒)
当サイトでは『細雪 中巻一』を通し番号で『細雪 三十』と記載しています。下巻の最終章は通し番号で『細雪 百一』と表記しています。
「細雪」の上中下巻、全巻を読む。(原稿用紙換算1683枚)
谷崎潤一郎『卍』を全文読む。 『陰翳礼賛』を読む。
  
■登場人物
蒔岡4姉妹 鶴子(長女)・幸子(娘は悦ちゃん)・雪子(きやんちゃん)・妙子(こいさん)
 
追記  今までの話しの流れからすると、明らかにこの大富豪と雪子との婚姻は、破談に終わるはずなのです……。本文には「望み薄な、アヤフヤな」「夢のような」縁談であって「ちょっと会わせるだけなのだろうから、気軽に、遊びに行くつもりで連れ出して貰えないか知らん、と云うのであった」……と書かれていました。

おじいさんのランプ 新美南吉

 今日は、新美南吉の「おじいさんのランプ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは小学生向けの児童小説で、ランプ屋さんをしていたおじいさんが、仕事をやめて、新しいことをはじめるところが描かれています。新美南吉と言えば美しい風景と動物の描写が特徴的なのかと思っていたのですが、こんかいは寂寥というのか、淋しさのことが中心的に描かれている童話に思いました。
 

0000 - おじいさんのランプ 新美南吉

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記 児童が読むための本なので、後半はのどかな展開でした。ランプを売る仕事は辞めても、こんどは本屋さんとして長々と仕事をつづけたのでした。残された、使い道の無いランプのことが後半に記されてゆきました。慌ててランプ屋さんを辞めなくても、まだまだランプの需要というのはあったなあと、おじいさんはあとから思うのでした。ただ、一つの仕事をいったん停止して、新しい仕事を始めることの重要性を、おじいさんは説くのでした。前半はまどろっこしい展開で読みにくいのですが、読み終えてみると、新美南吉っぽさが表出する、魅力的な童話を読んだなあという気持ちになる作品でした。