道 石川啄木

 今日は、石川啄木の「道」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 啄木と言えば詩人であり歌人なので、小説をあまり書かないんだろうと思っていたのですが、これは石川啄木の中編小説で、読んでみると、なにかドキュメンタリー映像のような、作品でした。5人の教師の、山道の移動と、隣村での教育の会議と、その帰り道を描いた作品でした。間延びした小説なのですが、近代文学や明治末期の教育界の難点や閉塞感を、物語全体で描きだしていて、追体験させられる作品でした。
    

0000 - 道 石川啄木

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  三十年間も教師をやって独身のままの男性教師が、不倫の醜聞の噂を立てられて真剣に悩んでしまっている、その涙ながらの訴えを聞いてなんだか滑稽で笑ってしまっている雀部という男がどうも偽の噂をたてた犯人ではないかという疑いを持つ女教師と、主人公の多吉という教師は、老いた教師たちのことを考えつつ、長い山道を往復し、自分の人生の行く末について空想を、するのでした。

涙のアリバイ 夢野久作

 今日は、夢野久作の「涙のアリバイ」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは……実験的な映画をつくるための短編で、人間の顔をひとつも映さずに、手だけで映像を展開するという、挑戦的な作品の、台本でした。
 

0000 - 涙のアリバイ 夢野久作

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記 話の筋としては「悪人の手」と記された男が、宝石を盗んで、インク瓶に隠します。探偵がすぐにやってきますが、隠された宝石は発見できませんでした。そのあと「美人の手」がやって来て、インク瓶の中に隠された宝石を発見して、手がぶるぶると震えます。この時に「美人」は、犯罪の真相にはじめて気がついて動揺し、インク瓶から宝石を取り出して隠すのですが、これを探偵に目撃されてしまっています。作中に「槻田万策 同 シズ子」とありますから「美人」はつまり「シズ子」なんだと思います。シズ子は、誰かをかばおうとして悲しかったのか、あるいは逮捕される運命をなげいて涙を流したのか……というところで作品は終わります。おそらく、この夢野久作の台本を、忠実に映像化してしまうと、物語の起伏が無く、伏線も筋立ても無い、ただの動く絵のようになってしまうのではと思います。本文と関連性は無いのですが……2024年の「リプリー」という独特なモノクロ映像が展開する名作の、台本はいったいどのようになっているんだろうか、と思いました。

目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩

 今日は、江戸川乱歩の「目羅博士の不思議な犯罪」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 百年前の世界ですが、日の暮れて誰も居なくなった上野の動物園で「私」は奇妙な男に出会います。
 犬の哲学者ディオゲネスを連想させるような放浪する哲学者風の変人男と出会った「私」は、猿をからかう「青年」の、奇妙な話しに引き込まれ、猿と男の異様な狂態をまのあたりにして……。
 

0000 - 目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  ここからは完全にネタバレとなりますので、近日中に読み終える予定の方は、先に本文から読むことをお勧めします。
 事件の真相としては、猿のモノマネの習性を使いこなして、狂気の猿真似をさせてふつうの人間を3人も自滅させるという事件が起き、この謎を解明するために、犯罪予告を行った目羅博士を調べた「青年」は、瓜二つのビルに映し出される、月夜の鏡像の幻によって、異常事態を引きおこすというトリックを暴くのでした。模倣をする人間の本能と月夜のビルに映し出される偽りの鏡像を使った、殺人事件が、月夜の晩にのみ連続して起きていたのでした。実際にこれを行っても犯罪は現出しないはずで、江戸川乱歩は意図的に、現実には使えない方法を考えついたのではないかというように思う、終盤の展開でした。この奇態な犯罪を行った目羅博士は同じトリックによって哀れにも滅びてゆくのでした……。

おせい 葛西善藏

 今日は、葛西善藏の「おせい」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 近代文学は放蕩のかぎりを尽くす中毒者たちが描きだす、不良文学である、という話をむかし聞いて、じっさいに近代作品を読んでみるようになって、あまりそういうものを発見できなかったのですが、これこそまさに、「貧乏、病氣」に塗れ「癇癪、怒罵」を愛人に「浴びせかけ」る「慘めな」「エゴイスト」の小説だ、と思える近代小説らしい鬱屈した作品でした。
 

0000 - おせい 葛西善藏

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  おせいという女性を気に入った「私」は妻があるのにこの若い女性と酒浸りの日々をすごして、不摂生が原因で病気になっては看病してもらい、おせいから借金をし続け、仕事も子育て資金もまったく無いのに、おせいに無茶苦茶なことを述べていて……そのうえ「私」はチェーホフの主人公になったような気分で夢うつつなので、ありました。
 

流浪の追憶 坂口安吾

 今日は、坂口安吾の「流浪の追憶」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これは坂口安吾が放浪と酩酊と、旧友との交流について記したものなのですが、安吾の旅はなぜか居住地や故郷からほとんど離れないまま行き詰まって「這々ほうほうの態で逃げ出」すことが多く、旅をしていると言うよりも「魂の放浪」に傾いていって、思索や幻想や物語世界に入り込む様子が描かれるのでした。本文こうです。
quomark03 - 流浪の追憶 坂口安吾
  私のは精神上の放浪から由来する地理上の彷徨だから場所はどこでもいいのだ。東京の中でもいい。時々一思ひに飛び去りたくなる。突然見知らない土地にゐたくなる。土地が欲しいのではなく、見つめつづけてきた自分が急に見たくないのだ。quomark end - 流浪の追憶 坂口安吾
 
 安吾がこの1930年代の中ごろに唯一、旅に満足できたのは、伊豆の大島に辿りついたときだったようです。
 終盤で、ドストエフスキーの作中人物への思いを記していました。坂口安吾はこう記します。「私がドストエフスキイを愛するのは彼の作中人物がみんな自分の生命力を感じたいためにあせりぬいてゐる、それが甚だなつかしいのも一因である。」
 本作に記された「レエゾン・ド・ビイヴル」というのは、存在理由レゾンデートルのことです。
 

0000 - 流浪の追憶 坂口安吾

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 

秋の瞳(33)八木重吉

 今日は、八木重吉の「秋の瞳」その33を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 八木重吉のお薦めの詩は「秋の瞳」の「心よ」それから「そらの はるけさ」です。
 「水に嘆く」の文語体の自由詩がやや難読でしたので、AIの訳詩も読んでみました。
 
水に嘆く(現代語訳)
 
水辺で 嘆き悲しむ 夕暮れ
波さえも
泣きじゃくるように寄せる、ああ その
長くたなびく髪のような水草が
砂に絡まりながら
 
私が 低く 哀しい歌をうたうと
沈みゆく夕日が
痛々しいほどに 赤く流れてゆく
もし手を触れようものなら
血が流れ出してしまいそうだ。
 
(上記はAI翻訳に修正を加えたものです)
 
「わが もだせば/みづ 満々と みちく/あまりに/さぶし」という詩の言葉が印象に残る作品でした。
 

0000 - 秋の瞳(33)八木重吉

装画をクリックするか、ここから全文を読む。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  今回の「やつて みたし」と記された詩は、「秋の瞳」のなかでもっとも異質な詩なんです。映画館で映画を見る、ということが始まったばかりの時代に、サイレント映画の奇妙な世界観を詩に転じたものなのではと、考えました。これは単体で読むとどうも陳腐さが際立つ内容なのですが、戦前戦中の日本の風潮の一側面がもろに現れた作品のようにも思いました。