二黒の巳 平出修

 今日は、平出修の「二黒の巳」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 品川の花街にある「桔梗」というお茶屋で働く「お糸」さんという女性と芸者たちと、「私」や「種田君」や友人との交流を描きだした、明治末期の小説です。
 大きな病にかかったり、なんども離縁したり貧乏になったりで先行きの見えない、お茶屋あそびにかかわる男女の様相が描きだされます。
 お糸さんと藤浪君の2人は同い年で、なにか縁がありそうなのですが、どうも現実には平行線なままの二人の、人生の岐路にたった真面目な話が、なんだか印象に残りました。
 

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道 石川啄木

 今日は、石川啄木の「道」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 啄木と言えば詩人であり歌人なので、小説をあまり書かないんだろうと思っていたのですが、これは石川啄木の中編小説で、読んでみると、なにかドキュメンタリー映像のような、作品でした。5人の教師の、山道の移動と、隣村での教育の会議と、その帰り道を描いた作品でした。間延びした小説なのですが、近代文学や明治末期の教育界の難点や閉塞感を、物語全体で描きだしていて、追体験させられる作品でした。
    

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追記  三十年間も教師をやって独身のままの男性教師が、不倫の醜聞の噂を立てられて真剣に悩んでしまっている、その涙ながらの訴えを聞いてなんだか滑稽で笑ってしまっている雀部という男がどうも偽の噂をたてた犯人ではないかという疑いを持つ女教師と、主人公の多吉という教師は、老いた教師たちのことを考えつつ、長い山道を往復し、自分の人生の行く末について空想を、するのでした。

牧場の音楽師 北條民雄

 今日は、北條民雄の「牧場の音楽師」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはほんの数ページで未完となってしまった北条民雄の創作の、没後に公開された断片作品です。北条民雄は闘病中にあまたの作品を書いていますが、未完作もいくつか残っているのでした。
 これは随筆に近い闘病の描写で、作中では宮澤賢治の詩の一節を描きだし、アコーディオンとバイオリンを手にした病棟の仲間と語らいます。
 

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追記  この未完作は「いのちの初夜」のような、あるいは「セロ弾きとゴーシュ」のオマージュ作品のような、人間の物語が描きだされるはずの草稿だったのでは、と思いました。
 途中で引用している賢治の詩の言葉なのですが、これは宮沢賢治全集のどの本にも掲載されていないものでした。具体的には、賢治のいろんな詩を、リミックスした翻案、のようになっています。読んでいてこれはまさに賢治の詩だなと思って、詳細にどの箇所を引用したか調べてみると、「春と修羅」第二集のなかからいろんな言葉を抜き書きして詩のかたちにしたもの、でした。

浚渫船 葉山嘉樹

 今日は、葉山嘉樹の「浚渫船」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
quomark03 - 浚渫船 葉山嘉樹
  私は行李を一つ担いでいた。
 その行李の中には、死んだ人間の臓腑のように、「もう役に立たない」ものが、詰っていた。
 ゴム長靴の脛だけの部分、アラビアンナイトの粟粒のような活字で埋まった、表紙と本文の半分以上取れた英訳本……。quomark end - 浚渫船 葉山嘉樹
  
 という文章から始まる、プロレタリア文学です。いったいなんの物語が始まるのか、興味を惹かれる小説でした。

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追記  浚渫船というのは水底の土砂を整備する船のことで、主人公たちは工事現場で働くために船に乗っていたのでした。作中の「セコンドメイト」というのは二等航海士のことです。主人公は、何の役にも立たない、大きな行李を川底に投げ捨てます。文体や構造が、デヴィットリンチの映画作品のように混沌としていて、怒りや呪いの正体が見えがたくなっているところが、一般的なプロレタリア文学とは異なる魅力を生じさせているように思いました。「死んだ人間の臓腑のよう」なものだけがつまった自身の「行李」を川底に捨て去って沈みゆき、「私」は「足の傷」を抱えたまま歩きつづけたため、「患部に夥しい充血を招い」て化膿してしまっているのでした。
「懲戒下船の手続をとられた」私は、心身共にボロボロになりながらも働くしか無い、と考え、自身が長らく乗っていた船が港を去るのを見送り、一人歩きはじめるのでした。

 

級長の願い 小林多喜二

 今日は、小林多喜二の「級長の願い」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 厳しい貧困にみまわれている家の、お話しでした。国費から消え去るお金を、貧困対策に使うことができれば、まったく働けなくなった「人たちをゆっくりたべさせることが出来るんだ」ということを熱心に語っている、物語でした。
 

0000 - 級長の願い 小林多喜二

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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約5秒)
 
追記  侵略の被害を受けた人々はいったいどうしたら良いのか、考えさせられる短編小説でした。「戦争が長くなればなるほどかゝりも多くなるし、みんながモット〳〵たべられなく」なるという小林多喜二の文章が印象に残りました。

賢者の贈り物 オー・ヘンリー

 今日は、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 これはオー・ヘンリーの代表的な短編です。デラとジム青年という2人の男女が、貧しいながらもクリスマスに良い贈り物をしようと、特別な思いを抱きあい、不思議な事態に至る、ほんの1日だけを描きだした、聖夜の物語でした。

0000 - 賢者の贈り物 オー・ヘンリー

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(総ページ数/約12頁 ロード時間/約3秒)
 
追記  近日中に本作を読み終える予定の方は、先に本文を読むことをお勧めします。ジムにすてきな贈り物をしたいのにほとんどまったくお金を持っていないデラは、自身の美しい髪の毛を売ってしまって、なんだか無作法に切られてしまった髪型のせいで哀れな姿になってしまいます。そのうえジムは、彼女の髪にあう、すてきな櫛を買っていたのでした。行き違いと貧しさからくる苦労はあるのですが、二人はかけがえのない心温まる時間を過ごすのでした。愚かな失敗はあっても、なんだか、よく分からないけど人間的な思いを贈りあう、そんな二人の、若い夫婦の物語なのでした。思いやりか愛情さえあれば、失敗は克服できるのだ、ということを感じさせるクリスマスイブの物語でした。本文の終わりのところで、この物語の顛末として「二人は愚かなことに、家の最もすばらしい宝物を互いのために台無しにしてしまったのです」と記載しているのですが、そのすぐあとにこの二人こそが賢者なのだと書くのでした。「世界中のどこであっても、このような人たちが最高の賢者なのです。」そうしてその賢さの正体については、とくに明言していないところがなんだか、すてきな文学作品なのではと思う短編でした。